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平成17年度厚生労働科学研究

発表会:「障害のある人をサポートする情報を共有するには?」

-言語的意思伝達に制限のある重度障害者に対してIT技術等を活用した意思伝達手段の確保を支援するための技術開発に関する研究-

講演1 「情報共有で障害のある人とのコミュニケーションを変える」

中邑:納得というのは非常に重要なことです。これがいわゆる多様なモダリティを用いる意味でもあるということです。一つのモダリティだけでというのは成り立たないということです。

もう一つ重要な方法は情報の分割という方法です。ちょっと一回実験をやってみたいと思います。また皆さんと視線回避が起こるのは承知のうえでやっています。

ぴっぽっぱ。ぴっぽっぱ。今広島からおいでになったオオサワさんは、私の真似をしております。ぴっぽっぱ。ぴっぽっぱ。

坂井:動作のエコラリアですね。

中邑:分かってもらえないですね。どうして分かってもらえないのか。では、こちらの。ぴっ、ぽっ、ぱっ。どうもありがとうございます。ぴってどういう意味ですか。

会場・オオサワ:立ちなさい。

会場・オオサワ:ぽっ。

会場・オオサワ:こちらへどうぞ。

中邑:ぱっ。

会場・オオサワ:ここへ座って。

中邑:すばらしい、どうもありがとうございました。

坂井:なぜ最初の人は分からないんですか。

中邑:同じことをやった。ぴっぽっぱ。ぴっぽっぱ。これをぴっ、てやって立ち上がって、次にぽっ、てやって動いて頂いて、ぱっ、てやったら座る。こういうふうにすれば理解できるということです。一つ一つその間にインタラクションがあれば実は理解できるものを、我々はついつい一度に伝えてしまおうとするということをよくやってしまうわけです。

先程ハシクラさんに伝えた情報って量が多過ぎた。分かりやすく言っても分からなかった。例えば、アネックスホールの奥の収納庫に行って、そこに行くためにこの国際会館の係の人に鍵をもらって云々ということを言うと、もう分からない、もういい。だからといって彼女ができないわけではないのです。こちらの指示が的確であればできるものを、こちらの、いわゆるコミュニケーションスキルが低いために、彼女はできなかったということです。今の例がまさに典型的な例なわけです。情報を分割していくということです。

支援者の情報というのは、一度にどっと示されることがあります。施設なんかでは申し送りという。さーっと書いてあって見る気も起こらないという。こんなこと言ったら怒られますけど、そういう方って多いと思うんです。忙しい中、どうしてこれを読まなければいけないのかという。これが一つの問題。それを我々のシステムは解決するものでもあるわけです。

で、昔とにかく情報をたくさん詰め込もうとしていた経験者からお話を頂きます。

坂井:こういうこともありました。今の話でいうと、学校の先生とか施設の先生方が、イメージがわきやすく伝えると。はい、今から運動場へ行って寄って来ます。それから小さいある石を拾って来ます。ついでに木の下でどんぐり拾ってくるからね。はい、靴を履き替えて、はい運動場へ行って、はい集合って言ったら、みんな蜘蛛の子ちらしたようにどこにでも走っていきます。

だけどその時に、情報は分けて伝えることができるから、まず靴を履き替えましょう、そこで待って、靴を履き替えたところの子供たちにまずは、はい、じゃあ運動場へ行きましょう。運動場は、広い運動場であれば困るので、鉄棒の前に集まりましょう、それから、木の下へ行ってどんぐりを拾いましょう。まあ石拾いましょう。こういうふうに分けて伝えると、全然問題なく伝えられる。

中邑:そうですね。これは我々でも一緒だと思います。

だけどこういうこともあるわけです。さあ、みんな、トイレに行って手を洗って、おやつを食べようね。坂井先生が指示をする。いきなり子供はおやつを食べる。そしたらこの人怒るわけですよ。

そういうことってよくあります。ですから情報を分割するというのは一つの重要な方法であるということです。あと、情報を助けるこういうエイドを用いる手もあります。今日はぬかします。

もう一つは話題を共有するということです。話題に興味が無いからコミュニケーションが成立しない。ですから、また、1300。いくかもしれませんが、もう拒否して下さい。拒否して頂いて結構です。私は興味がありませんというふうに明確に言って頂いていいわけです。もう一回言ってみますか。

坂井:これはそうだけど、先生ね。ちょっと待って下さい。僕ね興味があるっていうものを絶対出してみせます、任せて下さい。ちょっと待って。

中邑:そうですか。いいですよ。もう必死になって、もう意地でもあちらの方とお話をしようということです。はい。

坂井:これは絶対最高ですからね。これ見て笑えなかったら…。

中邑:なんか顔をしかめておられますよ。ああ、笑っておられますね。

坂井:これは笑いを共有するには最高なんです。中邑先生、見てみますか。これ先生見たらですね、これ皆さん後で是非私をつかまえて見に来てください。いいですか。

中邑:僕が鼻くそをほじっている写真です。

坂井:これはちょっと、今日ちょっと紹介します。

中邑:人の前で、僕、鼻くそほじってるのを見た。

坂井:今日見ました。

中邑:そうですか。こういうふうに、今中邑が話をしているという。だから中邑がというのが一つ皆さんの頭の中にある。そこに、この鼻くそをほじるという写真があるといったら、これはみんなに話したいと思うという。

坂井:これ、もっとすごいものがあるんですよ。鼻くそほじって、隣の女性の方に叩かれているところ。

中邑:これは何のために作ったんですか。

坂井:これはですね、鼻くそほじる子供がいたんですね。鼻くそほじったらだめだよって、鼻かみなさい、っていうわけですけど、鼻かめって言って、鼻噛みに行かれたら困るわけで、鼻をかむってこういうことだよって教えるってことで中邑先生にモデルになって頂いて、鼻を噛むところまで。鼻をかんだら叩いてもらうところまでをかいているんです。これを見て子供鼻くそほじりをですね、しようと思ったけど、ぴっとやめる子がいるんです。

中邑:はい、ということです。全然それ今、余談でしたけど。こういうふうに話題っていうのは非常に重要だということです。そのことを考えなければならない。

ところが重度の障害になればなるほど、その人たちとの話題の共有というのが難しくなる。例えば重度重複障害の方。先程関わっておられる方が、重度重複障害の方とコミュニケーションを何の話題にするかと非常に難しいです。あるいは、若い20代の人が、80過ぎのおじいちゃんやおばあちゃんと話題を共有するとは、いったい何をするのか、これは非常に難しい。

中邑:あるいは重度の知的障害のある人、その人たちとの話題の共有というのが、これまた難しい。そこが問題だということです。そこで話題を共有するために、やはり我々は何らかの支援ツールが必要になるということです。この後サポートブックというお話を、実際にそれを作って実践しておられるお母様である、丸岡さんからお話を頂こうと思いますが、それまた皆さん楽しみにして下さい。

話題を共有するものとして、記憶エイドやサポートブックがあるということです。ここにあるのは、記憶エイドとしてのVOCA、何も難しいものではありません。これはあちらの方で展示されてますが、この中に音声を録音することができるというものです。これが録音できるだけで、実は人とのコミュニケーションが広がっていくということです。

こういうことがありました。ある肢体不自由の青年が、いつもこういう車椅子に乗って、だらーっとこうやって下を向いているんです。いつもよだれがだらーっと垂れている。こういうふうにいつも下を向いてよだれをたらしている青年のところを、いわゆる施設の方、どうやって通り過ぎる。

坂井:おはよう。

中邑:たまに顔を上げるんですけど。

坂井:おはよう。

中邑:だいたいこう言うんです。おはようとか元気、これで終わってしまう。それはなぜかと言うと、こちらの職員の方も、何を話していいか分からない。そこで我々考えたのは、あの中に、おはようございます、と入れるわけです。おはようございます。

坂井:あ、おはよう。元気、今日は。あ、はい、おはよう。

中邑:という形で実は、ここで一言二言会話が成り立つということです。

ところがこれも三日もすれば、だいたい職員さん、飽きてきますよね。おはようございます。

坂井:おはよう。