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厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会

みて、きいて、はなしあおう、元気の出る話

地域移行・本人支援・地域生活支援 東京国際フォーラム

分科会1「本人活動とエンパワメント」

講師・助言者
マーリン・アシュテレイ(スウェーデン・グルンデン協会)
ヴィレム・クワッケル(オランダ・LFB)
(支援者:リッチェ・オーメン、オランダ・LFB)
(本人たちの分科会・大阪「かえる会」を中心に企画)

●午前の部

 そろそろ始めてもよろしいでしょうか。(拍手)

皆さん、おはようございます。今から「『元気のでる』話をしよう!」という分科会を始めます。大阪から来ました、ミス日本のAです。(一同笑い)今日は司会をします。よろしくお願いします。この分科会は、「『元気のでる』話をしよう!」という分科会です。元気に活動しているスウェーデン、オランダ、日本の「かえる会」の話を聞きます。参加をしている当事者の皆さんには、この話を聞いて元気になってほしいと思います。また支援者の皆さんには、当事者が元気に活動できるために、どのような支援をしたらいいのか考えてほしいと思います。

まず中身に入る前に、ここに集まった人たちはお互い知らない人ばかりだと思うので、自己紹介をしたいと思います。隣の人や前や後ろの人と自己紹介をします。名前やどこから来たか、生活のことや仕事のこと、趣味などを話すのもいいかもしれません。自己紹介をした後は、お互いに褒め合ってください。「あなたのその笑顔はすてきですね」「あなたのそのひとみ、すてきですね」などと、お互いのすてきなところを探して褒めてください。そして最後に握手をして別れます。終わったら、また後ろや前の人と自己紹介をして褒め合い、最後に握手をしてください。皆さん、わかりましたか。それでは始めましょう。

(会場内で参加者が互いに自己紹介しあう)

皆さん、たくさんの人とあいさつできましたか。そろそろ終わりなので、席についてください。

それでは、早速中身に入っていきたいと思います。まずは内容の確認をしましょう。まずは元気の出る話を聞こうということで、スウェーデン、オランダ、日本の「かえる会」の当事者の話を聞きます。スウェーデン、オランダ、かえる会がどのような活動をしているか、自分たちと同じことをしているのか違うことをしているのか、元気が出るということですが、本当に元気が出るのでしょうか。楽しみですね。その後に質問をする時間があります。ここまでが午前の部です。その後は、昼御飯のため、1時間休憩をします。午後からは、皆さんから意見を出してください。午前中に聞いたスウェーデン、オランダ、かえる会の活動の話を参考に、どうしたら元気が出るかを話し合ってください。そして、最後に元気が出る話をして、皆さんが元気になったらこの分科会は終わりです。

それではまず、元気の出る話を聞こうということで、スウェーデン、オランダ、日本の「かえる会」の話を順番に聞いてもらおうと思います。トップバッターは、スウェーデンの話です。スウェーデンのマーリンさんから話をしてもらいます。マーリンさん、それではよろしくお願いします。

マーリン  では、始めます。私はエンパワーメントについて感じることをお話しします。私のエンパワーメントの道しるべとして、子どものころの話、学校のこと、アメリカでの経験、私生活、そして今についてお話しします。

私は1972年に生まれました。ですが、そのときお母さんは私の世話をすることができませんでした。そこで乳児院に移らなければなりませんでした。その後、私をかわいがってくれる家族と一緒に住むことができました。そこに10カ月ぐらい住んでから、男の人と女の人がやってきて、自分たちの子どもになれる子どもがいないかと探しに来ました。それで、私がついていくことになって、その人たちと週末を一緒に過ごしました。その後で2人が私を気に入ってくれたので、乳児院に来て、「ぜひ、この子をください」と言いました。乳児院に私をくださいと言ってくれたので、私はこの2人と一緒に住むことになりました。2人は私を長女として迎えてくれました。その後、男の子や女の子のきょうだいができて、私のことをとてもかわいがってくれました。

次に私の学校についてお話しします。4年生になったとき、先生たちは、なぜ私が学校の勉強についていけないんだろうと頭をひねりました。「この子が怠け者だからなんだろうか」「それとも勉強の理解に問題があるからなんだろうか」「勉強がわからないんだろうか」と。それで、初めのうちは普通学校に通っていました。でも5年生になったとき、普通学校ではなくて養護学校に移りました。それは先生たちと私の両親が、私の問題を話し合って決めてくれたことです。新しい養護学校に移ってから、私は頭がいい子になりました。そこでは、ほかの子たちよりもちょっと進んでいたからです。でも、私はアメリカに住んだことがありますが、アメリカでは知的障害がある人でも、知的障害のない人と同じクラスで勉強していました。それはとてもよいことだと思いました。

もう学校を出てからだいぶたちますけれども、その後の私生活についてお話ししたいと思います。私はとても幸せな私生活を送っています。つまり、結婚もしましたし子どもも生まれました。学校を出てから13年になりますが、ずっとグルンデン協会で働いています。初めはグルンデンの受付係で、電話に出たり人に伝言をしていました。やがてキッチンで働くようになって、それも10年間続けています。それからまたオフィスで働くようになりました。スターバックスでも働いていました。いろんな機会があるので、こういう仕事ができるのはとてもいいことだと思います。また理事会で書記をしています。世界のいろいろな場所の世界大会に出る場合、私たちが働きかけている問題について、世界ではどうなっているのかということを知ることは、とても大事なことだと思います。

私は5年前に母親になりました。男の子がいます。しかしそのことでいろんな出来事がありました。私は最初、妊娠していることをだれにも話さなかったのです。でもそれは、決していいことではなかったと思います。自分の子を自分で育てるのではなく、里親に預けなければならないということが嫌だったので、妊娠していることをだれにも言いませんでした。私はそのときとても悲しくて、その1年は悲しい1年でした。生んでも自分の子どもと一緒に住むことができなかったからです。でも本当のことを言うと、それが一番よかったかもしれません。私のその男の子が、自分の人生をうまくスタートすることができたからです。今、その子が5歳になりました。現在は、私が選んだ家族と一緒にその男の子は暮らしています。でも私も、1週間に一度その子と会うことになっています。そのときが、1週間の中で一番楽しいときです。私は最近結婚しました。この結婚相手の男性はとてもすてきな人で、大好きです。

私は現在、グルンデン協会で働いています。これまでいいことも悪いことも経験しましたが、そのおかげでどんどん強くなったし、ひとりだちができるようになったと思います。私が仕事をするとき、コーチがいつもついていなければならないということも、今ではなくなりました。自分自身に自信が持てるようになりました。私と同じ状況に置かれた人たちにも、もっとひとりだちできるチャンスをあげることが大事だと思っています。こうして仕事を通じて強くなることができたのは、私の仕事にとってもいいことだと思います。

エンパワーメントをどのように使うかについて考えていることは、知的障害のある人で親になりたい人や親になった人を助けることです。これからも知的障害のある人で親になりたい人、親になった人、いろいろな問題を抱える人がいると思いますが、そういった人たちを私は助けてあげることができると思います。そのようにして、エンパワーメントを使っていくことができると思います。地域社会やソーシャルワーカーの人たちの、正しい情報や支援さえあれば、私たちは子どもの世話を手伝ってもらうことができるわけです。ですから、自分の子どもと無理やり別れるのではなくて、そのような支援を得て自分で育てることができるようになると思います。親になったり親になりたい人は、一緒になってもっと強くなり、お互いに助け合って自分たちの権利のために闘う必要があると思います。

私がエンパワーメントを使って実現したいことは、「本当の仕事」をふやすことです。つまり、年金をもらいながらデイセンターで活動するというのではなくて、本当の給料をもらえる仕事をふやしたいのです。「あの人はきちんと仕事ができた」といった例や、「自分にもできた」といった経験のある人がたくさんいますから、デイセンターの活動をどうするか、そんな話し合いをするのが時間のむだに思えることがあります。私たちは、「本当の仕事」を実現するためのいろいろなやり方を学ぶ必要があります。「本当の仕事」、お給料をもらえる仕事を持った人たちに起きるいろいろなすばらしいことを、お互いに語っていく必要、話し合っていく必要があると思います。

もう一つ頑張ろうと思っているのは、女性の問題です。私たちのオフィスの仲間は、女性の問題に取り組むプロジェクトを立ち上げました。この問題は、私たちの組織にとって本当に大事なことだと思います。社会の中で差別されたり、性的に虐待されて、地域社会から何の支援も受けられない女性がたくさんいます。ですから、大変、急を要する、急いでやらなければならない仕事だと思います。その上、知的障害のある女性は、もっと難しい立場に置かれています。孤立していて助けを求める先がないという場合が多いからです。彼女たちが、社会の中で本当に差別されて、ひとりぼっちになっている場合が多いからです。グルンデン協会では、この問題やそのほかの問題に真剣に取り組んでいます。

私と一緒に働いてくれている仲間と、私たちは毎日いろんなことを学んでいます。新しい経験を積んで、その結果に基づいて先に進んでいきます。だんだん強くなっていきますし、また自分に対する自信も出てきます。それが私にとって大きな満足になっています。

それではこれで最後ですが、皆さんどうもありがとうございました。いつかスウェーデンでお会いしたいと思います。(拍手)