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厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会

みて、きいて、はなしあおう、元気の出る話

地域移行・本人支援・地域生活支援 東京国際フォーラム

分科会2「地域で自立して生きていくために」

  ありがとうございます。急にここの前に人が増えましたが、A君の補足と司会業で、ちょっといっぱいいっぱいになってきましたので、Aさんのいる生活ホームの職員のSさんに上がってもらいました。Aさんのプライバシーの問題について少しいいですか?

  グループホームの職員、埼玉県では生活ホームと言っていますが、Sです。私の働いている生活ホームには見学者がとても多くて、きのうもオランダやスウェーデンから皆さんに来ていただきました。私は案内するときに、基本的に「ドアが開いている部屋は見ていいですよ」というようにしていますが、閉まっているところをあえて開けて案内するということは自分ではやっていません。住んでいる人がどう思うかなということを考えるようにしています。グループホームの入居者のQさんが来ていますので、Qさんにも聞いてみたいと思います。プライバシーってわかる?

  今は特定の人しかかぎを渡されていません。今は生活ホームにいるので、直接来てもらうという形をとっています。今度大袋に引っ越しをするんですが、私の場合は自分でドアをあけるのが難しいところもあるので、介護に入ってもらう人には、かぎを渡すことがあるかもしれません。何かあったらちょっと困るなと思っているので、そうしようと思っています。

  きのう海外から来られた方がみえたとき、ちょうどQさんのヘルパーさんが来てお掃除をしていたときでした。本人がいないときに、彼女が信頼している介助の人に日中お掃除をしてもらっていたときでした。でもいつもは、Qさんの部屋には、ほとんどいつもドアにかぎがかかっているので、彼女がいないときにベランダ側からエアコンが回っている室外機の音が聞こえたりしても、私があけて入ってとめるということはしていません。でも、対応の仕方は人によって違います。私たちのところは身体障害の人が多く、言葉がうまくしゃべれない人が多いため、ベランダに洗濯物が出ていて雨が降ってきたりしたときは、その人の分は入れています。Qさんのものは雨ざらしのままです。その人によって対応は変わってきます。

  ありがとうございます。とりあえずお三方のお話を聞きました。プライバシーの問題がない人はだれもいないのではないでしょうか。家族の中にもプライバシーの問題があると思います。プライバシの問題に関してご意見や質問をいただければなと思うのですが、いかがでしょうか。

  グループホームというのは、必ず職員がついていて、何でもかんでもやらされているように思います。間違った方式だと思います。プライバシーに関しても、僕の部屋をのぞきにくる人がいます。毎回。でも職員も注意ができない状態でいます。だから自分としては、本当に仲間の関係でプライバシーが守られていないと思っています。

  ありがとうございます。他にはありませんか。では、お願いします。

  最近、おもしろいというか変わったことがあったので発表します。うちは市営住宅に住んでいて、奥さんと子ども3人で住んでいます。僕が車いすで町を歩いているといろいろなうわさがたっていて、この間もうちに入っているヘルパーさんが、「あそこのうちは、年末に100万ぐらいお金がくるらしいよ」とかいううわさをしているのを(聞きました)。うそのことも本当のことも、結構周りに筒抜けです。一方で、どしゃ降りの日に、うちの前の公園で車いすがとまってしまって、自分で何とか帰ろうとしたのですが、結局周りの人が家まで送ってくれたということがありました。プライバシーの問題もあるとは思いますが、逆に町に暮らしていることを打ち明けて、気にしないで暮らしていくことも必要かなと思っています。

  プライバシーという問題もあるんだけれども、結構、Rさんが暮らしているあたりでは、知って知られて、そこから関係が始まっていくみたいなところがあるということですかね。

  ええ。

ウイリアム  先ほどQさんのご意見を聞かせていただきましたが、私はちょっと強硬派で、プライバシーということを守るというんだったら、どんなに信頼のおける親しいスタッフの人でもかぎを渡すのはどうかなと考えます。例えばお部屋を掃除していただく、Qさんが外に出かけていられる時間にやってもらうというのは便利なようですが、やはり自分の家だったら、自分のいるときにスタッフの人に来てもらって、それで「来ました」と言われて、Qさんが「どうぞ入ってください」という形で掃除をしてもらうというようにしたほうがいいのではないでしょうか。ただ、スタッフの人がスタッフの都合で、「今だと、ちょっと掃除しちゃったほうがいいわ」とか、そういう形で勝手に個室に入ってくるというようなことになってしまうとそれはいけないと思います。グループホームの部屋、それは自分の個室、つまり自分の家であり、自分の城であるということを考えたら、例えば、「ここでこういう支援が欲しい」「こういうことをしてほしい」ということを考えるのも本人でなければいけないし、「いつこういうことをお願いできますか」というようにお願いをするのも、やはり本人の意思、自由意思でやってもらう。そういうようにしてやっていかないといけないと考えます。プライバシーの問題を語るときに、家、または自分の空間を守っているかぎというものは、非常に重要なかぎになります。

  ありがとうございます。また家が変わりますからたぶん新しい展開があるかと思います。いろいろな工夫もできていくのではないかと思います。同じような悩みを持っておられたり気にされている方とか、いろいろ取り組んでいらっしゃる方とか、いっぱいいらっしゃると思いますが、どなたか。

  今、グループホームでかぎをつけてプライバシーを守るんだというようなお話を聞いていたんですけど、それは本当のことですよね。私のところもグループホームですが、やはりスタッフが管理をしています。「この人たちを私が管理をするから、かぎなんていうのはとんでもないんだ」と言っていまだにかぎはありません。でもそれでは、本当にそれをつけてもらうように制度を変えない限りできないのか、プライバシーもへったくれもないというようなことになってしまいます。私のところは、練馬にありますD園というところですけれども、共同募金会で建ててくれた建物の2階を私たちが使っているのですがまだかぎはつけてもらえていません。もう十何年たっていますが、「そんなものはとんでもない」ということでつけてもらえないのです。だからそうなると、行政が制度を変えない限り難しいし、プライバシーもなくなるのかなという気がします。

  貴重な御意見、ありがとうございました。かぎを自分で管理できるかどうかは、とても大切な問題だと思います。

  だから、私たちのところでいうと、かぎをつけてもらえない。だから皆さんの話を聞いていて、本当に我々のプライバシーはどうなるんだろうなと。部屋も入ってこられるし、それが当然という見方をされているというのも何かおかしいので、やはり、それはもう行政から率先して変えない限りはあり得ないのかなあと今、お話を聞いていて私はそう感じました。

  どうもありがとうございます。今、個室や家といったあたりのプライバシーの問題が出てきていましたが、もっと広い意味で、例えば地域、さっきBさんが話されたのは、地域の人間関係における精神的なプライバシーのような部分もあったかと思います。先ほどのHさんの話の中で、Hさんは、自宅を開放してガレージセールをやっていると言われましたが、たぶん御近所には障害者がいるということをあまり知られたくないということなのでしょうか。自宅を開放して取り組みを行うのは大変だなあと感じました。その辺、Hさんにお話していただけたら思うんですがいかがでしょうか。プライバシーという部分だけにかかわらなくても結構ですので。

H(母)  私はずっと大阪に住んでいまして、埼玉に引っ越してきたのが17年前です。Hはすぐに養護学校の高等部に行きましたので、周りに知っている人が全然いませんでした。養護学校に行きましてもあまり外の世界は知らずに、卒業して「わらじの会」に行くようになって初めていろんな活動に参加させていただくようになりました。私も最初のうちはボランティアとか、もうどう見ても「わらじの会」は最初のころは人手が足りないというのがわかっていましたので、ボランティアとして一緒に活動していました。そのため、あまり家の周りに知っている人はいないままにずっときてしまいました。「地域で地域で」と言いながら、家の周りで知っている人もあまりいないというところで、Hはずっと「わらじの会」の活動に参加して来ました。歩いて1時間ぐらいかかるんですけれども、そんな状態でしたので、これはやはり地元の家の周りで、いっぱい知っている人が必要だなということで、ガレージセールを始めました。でも月1回ですので、そんなにそれだから急に知っている人が増えたりとかということではあまりありませんが、でもこうやって地道にやっていくことが必要かなというように思います。

私は親なんですけど、今までおっしゃられた方などはかなり自分の考え方をきちんと持っていらっしゃるので、かぎも自分で持ってという考えはわかるのですが、障害の重い知的障害者になると、プライバシーというのは本当に難しい問題ではないかなと思います。Hの場合は、先ほども「ぽぽんた」の活動のところで書きましたけれど、自分は母親とは別々だということを言い出しました。自分のお金も隠すようになったり、自分の部屋に私が少しでも入ると、見張っていて「早く出て行ってほしい」というような感じで嫌がるところがあるのです。かといってそのまま放っておきますと、部屋は掃除しないし、着る物の管理も自分では難しいですし、本当に難しいところだと思います。

  ありがとうございます。たぶん皆さんは、難しいなりにいろいろな取り組みをされていると思います。

ウイリアム  お庭を開放されているというすばらしいコミュニティ活動を、非常にうれしく伺いました。ところで、プライバシーに関する今のご意見について、一言申し上げさせていただきたいと思います。

周りの人が考えている以上に、チャレンジする気持ちを持っていれば私たちは、できるものなんです。今、お母様が、お嬢さんがお部屋を掃除しないとおっしゃいましたけれども、たぶんそれも娘さんに、「自分でやれるわよ、やりましょう」と言ってあげたら、たぶんお母様が驚くぐらいできるはずだと考えています。と申しますのも、私の妹がダウン症ですが、現在自立してボーイフレンドと一緒に共同生活をしております。彼も妹よりもちょっと重い障害を持っているというカップルなんですけれども、日常生活をこの2人で助け合ってやっています。このダウン症の妹は、知的レベルとしては6歳~7歳ぐらいであると診断されています。ですから、この2人が独立して2人きりで生活するなんてしょせん無理だと、最初は周りの人たちから大反対されました。また悲観的に見ていました。しかし、私たちはできるはずだと考えて、本当に徹底的にトレーニングを妹にやってもらったんです。もちろん集中してやらなければいけないし、本当に長い時間がかかりましたけれども。「できないんじゃないか」というような思い込みではなくて、「できるんじゃないか、できるはずだ」というように意識を変えるべきだと思います。これは周りの人だけではなく本人もそうです。「自分はできるんだ。やりたいことがあるんだからするんだ」というように変えることで、思っている以上のことができます。

ジェーン  「できる」「できない」ということで、その可能性を閉ざすということではなく、心を開く、柔軟なとらえ方、考え方をすることが重要だと思います。

  ありがとうございます。だいぶ時間が押してきましたが、もう少し会場の方のお話を聞きたいと思います。どうぞ。

  大分県から来ましたXと申します。大分は日本の南の九州という島にあります。今、大変参考になるお話をいただきました。僕は建築学が専門です。そういう立場から意見を一つ言わせていただきたいと思い、手を挙げました。

今のプライバシーの問題ですが、専ら周りの方々のサポートの問題が取り上げられました。心構えの問題もありますが、空間の問題もプライバシーに大きく関係していると思います。ちょっと長くなるといけないんですが、皆さんご存じのように今、13万人の人が日本では入所施設にいるわけです。今度の自立支援法は、もしかしたらこの入所施設をこのまま残してもいいよという法律でもあるように考えられます。今のままの名前を変えて、今のが住まいだよということになる。それはもうとんでもないことだと思いますし、一方で十何万人分のグループホームをつくりましょうというような動きがあって、これは大変結構ですが、その皆さんが描いているグループホームというのは、実は一つ屋根の下の一戸建ての家に4~5人で住んでいるという、例えば、私が入りなさいと言われたら決して入りたくない生活環境です。でもそれが当面の目標になっている。地域生活を実現しようというグループホーム。それが非常に問題だと思います。私は、生活環境を豊かにしていくという発想が必要だと思います。かぎがあって個室だけではなくて、少なくともおふろとトイレがあってキッチンがある。そうしたものが固定されて初めて自分の家と言えるのだと思います。自分の空間をサポートしてもらう必要性が高い人は、豊かな空間が用意された家をつくらないといけないと思います。今日大変おもしろかったのは、ウイリアムさんとジェーンさんが共に、「グループホームなんて嫌だ」と言われました。日本よりはるかに広くていいグループホームなのに、それでもやはり望ましくないという空間のイメージを持っていらっしゃるのを知って嬉しく思いました。お二人が言われたことを是非次の望ましい生活環境にしてもらいたいと思います。私自身、今日の日本的のグループホームを目標にしてはいけないと思っています。それについて、もし関係の方でご意見などがあったら伺いたいし、一応建築の立場からそういうような見方をしている者がいるというのを知っていただきたいと思いまして発言しました。以上です。

  ありがとうございました。

ウイリアム  貴重な情報をいただきありがとうございました。実はオランダも、皆様に思っていただけるほど状況はよくありません。本当にプライバシーがないような状況で、大部屋で10人12人の人が生活をしているというような状況も実はあります。ただし、そのような状況というものはよくないと、そういう状況は変えなければいけないということでいろいろな人々が働きかけております。私たちの団体もその一つです。何よりもいけないのは押しつけだと思います。「これをしなさい」「あれをしなさい」「こういうふうに暮らしなさい」「こういうグループホームに入りなさい」「施設がいいですよ」ということではなくて、一人ひとりがみずから考えて、「こういうものをこういうふうにしたい」「自分にはこういうほうが便利だ」というように考える。つまり選択というもの、自分が選ぶという自由、これを私たちは獲得しなければいけないと思います。

ジェーン  スウェーデンの状況は数年前までたぶん日本に非常に近かったのではないかと思います。だから、皆様の感じています問題もわかりますし、また恐れ、不安感というものも十分に理解できます。本人もそうだし、そしてまた介護、支援のスタッフの方々、または御家族の方々も、自立した生活というのは本当に成り立つかどうかと不安に思っていらっしゃると思います。しかし、スウェーデンでは、すべての大規模施設は解体されました。もうなくなりました。みんな自立できるというような方向に変わっておりますし、グループホームというものも上限が5人です。5人以下のグループホームだけが許可されています。これは、スウェーデンの大きな変化です。ですから、日本でも現状を変えていくことができると思います。現状を越えたいろんな可能性があるんだ、変えていくことができるんだということを、スウェーデンの経験を通して申し上げたいと思います。

  ありがとうございました。

時間がなくなってしまいました。プライバシーの話は、それを支えている文化や、プライバシーが何を守っているのかということも含めての話だと思います。先ほどQさんの話がありましたが、Qさんは、ヘルパーさんとつき合う時間よりも、勝手に出て行って自由に活動することを大事にしていると思います。プライバシーとは何か、何を大事にしているのかといった問題も含めて、もっともっと話が掘り下げられると思いますが、残念ながら時間がきてしまいました。お互いの日々の活動の中で引き続き考えていただくことにして、今日はこれで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)