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厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会

みて、きいて、はなしあおう、元気の出る話

地域移行・本人支援・地域生活支援 東京国際フォーラム

分科会3「本人活動の支援のあり方」

コーディネーター 花崎三千子 (「札幌みんなの会」支援者)
発題者1 アンデシュ・ベリストローム (スウェーデン・グルンデン協会支援者)
発題者2 ロール・コック (オランダ・LFB支援者)
発題者3 光増昌久 (「札幌みんなの会」支援者)
発題者4 本田隆光 (「ふれんずトトロ」支援者)
 (支援者向け分科会、企画者:花崎三千子、札幌みんなの会支援者)

午前の部

花崎  日本で本人活動と言われるセルフアドボカシーの活動が始まったのは、今から15年ほど前になります。その中で、私は三つの大きな変化があったと考えております。第一の変化は、知的障害のある当事者の方たちが自分に自信を持って、仲間に勇気を与えたということです。第2の変化は、比較的身近な支援者に、支援のあり方のそれまでの誤りを教えてくれたということです。第3の変化は、社会全体に知的障害があるということはどういうことなのか、それまでは何もできない人たちという認識が一般的だったのを大きく変えました。今日の分科会は、この三つの大きな変化の中で、特に2番目に挙げました支援のあり方について、――これは本人たちが突きつけたことになりますが――その支援のあり方、どうあるべきなのかということを論議していきたいと思います。

午前と午後にわたりますが、午前は主に、4人の講師の方の時間です。それから午後は、皆さん方が発言をしていただく時間ですので、まず午前は聞いていただきたいと思います。

最初に、講師の方に簡単に自己紹介をしていただきます。その前に、通訳の方も自己紹介をお願いします。

山口  山口マサコと言います。今日の第3分科会の通訳を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

アンデシュ・ベリストローム  私はアンデシュ・ベリストロームと言います。スウェーデンのイェテボリにありますグルンデン協会で仕事をしています。そこでは当事者の人たちのリーダーグループというのがあります。自分たちで責任を持って自分たちで決めていこうというリーダーグループのコーチング、コーチ役として仕事をしています。リーダーグループの人たちがいろいろな活動を決めたり、あるいは資金をどう充てていくかということを話す際、私はコーチングという役割を果たします。

山口  私の名前はロール・コックと言います。オランダのオンダリングシュタルク連盟で支援者として仕事をしています。私が仕事をしているのはオランダの南西部のほうです。そこを拠点としてあちこち移動し、旅をして仕事をしています。私はコーチとして仕事をするわけで、その仕事はすばらしいものだと思っています。

花崎  先ほど、アンデシュさんのグルンデン協会については、マーリンさんとジェーンさんのお二人の方が説明をされました。けれども、オンダリングシュタルクについてはまだ説明をしていただいていないので、今簡単に説明していただければと思います。

ロール・コック  私の所属していますオランダのオンダリングシュタルク連盟というのは、オランダ全土をカバーしている全国的な組織です。オランダの中に四つのオフィスがあります。それからサービスについてはオランダの中心部にサービスセンターというものを置いています。私が所属をしております団体は、オランダの全国的な組織であるということをまずはご理解ください。

我々の考えというのは、当事者の人たちはみんなが思っている以上にいろいろなことができる、それを支援していく、コーチングということで我々が支援していくという考え方です。このコーチングをどういう形でやるかというのは、後でお話をします。

オンダリングシュタルク連盟という組織は、既に20年の歴史を持っています。1985年に組織の活動がスタートしました。すべての障害者の人たちを支援していくことが我々の仕事であると考えて、いろいろな活動を行っています。

光増  おはようございます。私は北海道小樽から来ました光増と申します。「札幌みんなの会」という本人のグループの支援を十数年しています。今日は、「札幌みんなの会」のことではなくて、「人権セミナー」という札幌で行っている市民運動的な本人活動、その主体は本人がやっているということを紹介しながら、本人の支援というものを考えてみたいと思います。よろしくお願いします。

本田  おはようございます。私は、福島のいわき市にあります本人活動の「ふれんずトトロ」というところの支援を10年近くやってきている本田と申します。よろしくお願いいたします。今日は、「ふれんずトトロ」とのかかわり、全国の仲間も含めた動きの中で、支援ということが私自身もどう変わってきたかということを紹介しながら本人活動支援のことを考えてみたいと思います。よろしくお願いします。

花崎  それでは、これから、順番にお話をしていただきます。まずアンデシュさん、お願いします。

アンデシュ  こんにちは。今、ここに座って話すということに自分自身で違和感を覚えています。と言いますのも、ある特定のグループを知的障害があるとか、あるいは精神的な障害があるとか、あるいは特定の診断名をつける、それについて話すということに対して自分の気持ちの中で違和感があります。

私がお話できることは、私自身が世界の、あるいはヨーロッパの人たちとやってきた、People firstの人たちやあるいはほかのスウェーデンの友人と語ってきたこと、それを伝えることが、私の今日できることだと思っています。

私はコーチです。そして私は社会学者でもあります。そしてまたセラピストでもあります。一部の人は私のことを専門家だと思っています。スタッフコーチもやります。

基本的に私は一人の人間です。人間としてのを持って生まれてきました。そして、それを持ってコミュニティの中で生き、友達やほかの人とともに生きていくということをやります。私が持っている機能の中には、だんだん年を取ってきて時が経過して、前よりも悪くなったというところもあるし、前よりもよくなったというところもあります。

私の名前は、アンデシュ・ベリストロームです。これから皆さんにお話することは、私がグルンデンの仲間たちと一緒に話し合ってきたこと、そしてその話を通してどういう結論に至ったかということをお話していきたいと思います。

このグルンデン協会というのは、最初はFUBという親の会の一部門として始まりました。この部門が独立してグルンデン協会という形になったのが2000年。そして当事者たちといろいろな立場の支援者たちとの協力の中でずっとやってきました。そういう経過の中で、幾つかの言葉が頻繁に使われてきました。そして、その言葉の意味というものを深く論議するようになっていきました。例えば影響(influence)という言葉がどうして重要なのだろうかというようなことです。このような話し合いを通して、いくつかのキーワードがグルンデンにとってとても大事だということに気づいていきました。

そして、「影響」「自己決定」「参加」「信頼」「尊重」という5つのキーワードが浮かび上がってきました。この5つのキーワードは、一人ひとりの社会生活にとって欠くことのできない根本的な事柄であると考えるようになりました。

私たちはまた、コーチングということから得られた経験についても話し合いを持ちました。生活のいろいろな場面、自宅で、あるいは職場で、あるいは余暇時間において、コーチングについて話し合いをしました。メンバーの人たちは、コーチをされたときのよい経験、それからどのようなコーチングは嫌だったのかという経験についても話し合いをしました。そして、ある経験がよかったのに、別の経験が嫌だったのはなぜだろうかということについても考えました。私たちは、組織の構造やモデル、規則についても話し合い、こういったことが障害を持つ人たちとどう関連するのだろうかということも話し合ってきました。そしてまた、排除されること(exclusion)、あるいは排除されたという感覚について話し合いました。それを自分の人生について大きな意味を持つインクルージョン(inclusion)と比較しながら考えていきました。

グルンデンが独立した組織になってからは、グルンデンのメンバーとコーチたちの関係を検討することがさらに前よりも大切になりました。グルンデンは、その時からも今も、コーチたちの雇用主というわけですから、一緒に協力していくための最善のあり方とはどういうものかと考えていく必要がありました。つまりメンバーたちが自分の置かれた状況について、パワー(力)とコントロールを持っていると感じることができているかどうかついて話し合いをしました。

やがて私たちは、「これこそが正しい」と信じることができるメンバーとコーチの関係のあり方を見つけることができるようになりました。そしてその関係のあり方を説明できるような方法も見つけました。グルンデンのメンバーたちやコーチたちは、今、コーチということについての説明、発表というものをいろいろな機会で行っています。教育プログラムの学生やあるいはスウェーデン国内の職員、ソーシャルワーカーに対して説明を行ったり、あるいは会議や大会の場においても説明をしています。

グルンデンのキーワードというのは、いかなる人の人生においても最も重要な言葉であり、表現方法です。ましてノーマルなことから排除されてきた人々の身に立ってみれば、そのようなキーワードはさらに重要性を増します。コーチになるための訓練プログラムにおいて、こうしたキーワードについて深く検討し、議論することが基本的な要素であると考えています。このようなキーワードが、自分の人生にどういう影響を与えていたか、どういう衝撃を与えてきたか、それをきちんと考えることができれば、ほかの人に対してもグルンデンのキーワードが同じような影響を持っているに違いないということが理解できます。このことは、私たちに「障害者」というレッテルを張ってきた相手の人たちにとっても同じことだと思います。