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厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会

みて、きいて、はなしあおう、元気の出る話

地域移行・本人支援・地域生活支援 東京国際フォーラム

分科会4「地域移行と地域生活支援を考える」

河東田  私は今、東京の国立(くにたち)というところで、地域保健福祉計画の策定にかかわっているのですが、障害者関係の計画の章で、脱施設、脱病院を打ち出し、その受け皿をしっかりつくっていけるような取り組みに入っていこうという計画を立てました。行政もその考えを受け入れてくださいましたので、その方向で進んでいくと思いますが、この問題は、ご本人のこともさることながら、私たちの問題でもあるのではないかと思っています。私たちはこういう場所をこのように用意し、今後こうしていきますという計画を作り、提示していく必要があると思います。

では、次の質問に移っていきます。多くの方から、障害を持っている方々の終の棲家はどこになるのかという質問をいただきました。入所施設は困る、じゃあグループホームなのか、グループホームも終の棲家としては困ると思っていらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。それでは、ケアつきの自立アパートなのだろうか等々いろいろな考えが浮かんでくると思います。3人の方々がどう考えているのかを伺ってみたいと思います。いかがでしょうか、では杉田さんからお願いいたします。

杉田  地域移行プロセスをお示ししたときに、入所施設や在宅があって、いろいろな訓練があって、グループホームやアパートがあって、夫婦生活があってと、だんだんレベルアップしているように示してしまったのですが、私自身はそうでなくてもいいのではないかと考えています。入所施設は私たちの間違いだったと思いますが、グループホームで住んでいる人たちを見ておりますと、仲間と楽しそうに暮らしているようすが見られます。個人的にはこのような暮らしがあってもいいのではないかと思っています。ただ、今のグループホームは、だれと住むかは本人たちが選べていないという実態があったり、だれと住むのかについても選べるようにはなっていないなどの問題点があります。

問題点は改善していく必要があります。ただ、普通の人も家をルームシェアしながら暮らしている人もおりますので、大好きな人と、異性でなくても友達と一緒に住めるような環境と方法があってもいいのではないかと思います。

レスリー  私も同じ意見です。施設というところは終の棲家になってはいけないと思います。オーストラリアの状況はどうかといいますと、グループホームに住む人もいれば、アパートに住む人もいれば、田舎のような遠く離れたところに住む人もいます。ふるさとへ帰る人もいますし、ふるさとには帰らない人もいます。ですから、暮らしの形態や暮らし方はそれぞれさまざまだということだと思います。

だれと一緒に住むかということですが、これも選択肢があって、だれと住みたいかを決められるようにすべきではないかと思います。ただ、その施設に長く住んでいた人にとっては、一番一緒に住みたいと思っている人は一緒に長く施設にいた人ということになるかもしれませんけれど。

河東田  小林さん、ちょっと違う質問をさせてください。多くの方から、重度の方や身体的に重度というだけではなくコミュニケーションもなかなか取れない、医学的な対応を必要としている方々の地域移行やら地域生活をどう考えておられるのかお伺いしたいと思います。

小林  これまで,障害の重い人や高齢の人は,施設で暮らすしかないと考えられて来ました。それは逆で,むしろ障害の重い人や高齢の人達の方が施設は向かないのではないか,グループホームなどのような少人数の生活が必要なのではないかと思います。しかしこれらの人たちの地域生活を実現するためにはお金がかかります。また多くの人手も必要です。しかし今の日本の現状では制度がそこまで進んでいなくて,結局は施設での集団生活を余儀なくされているのです。

伊達では、12月に,行動障害のある人と重症心身障害の人たちを対象としたグループホームを開設する予定です。これには伊達市もお金を出してくれています。今度の自立支援法の中で障害の重い人達を対象としたケアホームや重度包括払いの制度がスタートしますが,それを先取りしたものです。伊達では毎年270人ぐらいの赤ちゃんが生まれてきます。そのうち知的障害や身体障害,難病を持ったハイリスクの子供が1.5%から2%,年間4、5人ぐらいの割で生まれて来ますが,年間たった4、5人ぐらいですから一生涯にわたって支えることができるはずだと考えています。ですから本人や家族が望むのであれば,どんなに障害が重くても地域生活を続けられるよう,グループホームづくりを進めて来ました。そんな運動の積み重ねの中で、重症の人達のケアホームを実現することができましたが,今の日本の現状では、よほど支援者や家族,そして市町村の協力がなければ、行動障害のある人や極めて重い障害のある人たちの地域生活は難しいと思います。

河東田  ありがとうございました。もう終了の時間が迫っておりますので、どなたかお一人だけご意見をいただけませんでしょうか。今日午前中からずっと聞いていただいて、感じたこと、それからまだ伝えたくて伝えられなかったことがございましたらおっしゃって下さい。いかがでしょうか。

  私は現在埼玉に住んでおりまして、小林さんの伊達市、あるいは宮城県にも見学に行かせていただきました。事業団に所属しておりまして、先ほど小林さんがおっしゃられたとおり、リストラされて退職をいたしました。現在は専門学校で教えておりますが、これから私もいろいろ勉強していきたいと思います。ところで、地域生活を送っていくには、経済的な基盤が必要になるわけです。そこでお伺いしたいのは、現在1級、2級という年金がございます。その年金と今回の「障害者自立支援法」の中で言われている一割負担でどう自立ができるのか、収入の確保ができるのかをお伺いしたいと思います。本人も家族も経済的な基盤の弱さを感じて足踏みをしてしまうのではないでしょうか。オーストラリアではどうなのかも知りたいところです。

河東田  終了時間になってしまいましたので、Eさんからはご意見をいただいたという扱いにさせていただきます。さて最後に、ご援助をいただいた日本障害者リハビリテーション協会の関係者に今日1日の評価につながるご感想ないしご意見をいただければ幸いです。

  私は、リハビリテーション協会の参与をしておりまして、それで来ておりますが、本来の仕事は大学の教員をしております。私はもともと身体障害の分野の出身でして、身体障害の方ですと一定期間の訓練が終わったらそれでもう我々の役割はなくなります。そのために、伊達のように一生涯ずっとかかわり続けていることに若干違和感がありました。それに関して小林さんのお話や皆さんのお話を聞いていく中で、一生涯かかわることの必要性もあるのかなという感じを持ちました。また、そうではないという意見があることもわかりました。このことについては今後関係者の皆様が結論を出していかれるのだろうと思いました。私にとっては勉強させていただき、とても有意義でした。どうもありがとうございました。

河東田  シンポジウムと言いますと意見がかみ合わなかったり、不消化の状態で終わることが多いのではないかと思います。しかし、今日は私のまとめが必要ないぐらい、レスリーさんからは具体的な状況の整理をしていただきました。小林さんからは、全国的にもとても参考になるような新たな北海道での取り組みが紹介されました。今日いただいたものを各地に持ち帰り、実践に役立てたり、調査研究を行っていきたいと思います。

私どもの関係で言いますと、杉田さんを中心にしながら、地域移行に関する個別支援プログラムを作成しているところです。この個別支援プログラムを盛り込んだ報告書を4月末までに厚生労働省に提出することになっていることをご承知おき下さい。

では今日は、長時間にわたりまして、私どもの発表やら報告を聞いていただきまして本当にありがとうございました。まだまだ課題が多い取り組みですが、皆さんと一緒にぜひ前に進めていきたいと思います。今日ご参加いただいた小林さん、レスリーさん、杉田さん、そして通訳をして下さった荒木さんに感謝を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

では、この後、オランダからの報告をいただきます。オランダからもスウェーデンに劣らない報告をいただけるものと思います。ぜひご参加いただきたいと思います。

それでは第4分科会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。(拍手)