音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会

みて、きいて、はなしあおう、元気の出る話

地域移行・本人支援・地域生活支援 東京国際フォーラム

分科会4「地域移行と地域生活支援を考える」

四点目として,高崎市に「国立のぞみの園」という最も障害の重い人達が入所しているコロニーがあり、積極的に地域移行を進めようとしています。この施設の開設当時、重複障害の人達は、都道府県の施設では受けとめられなくて、全国から国立コロニーに入所していったという経過があります。国立コロニーは1970年に開設されたわけですが、北海道からも11名の人たちが入所し,それ以来30年以上にわたってほとんど帰省していないという人もいます。その人たちに北海道に帰ってきてもらおう、そのためにその人たちを受け入れるグループホームを優先しようということになりました。

五点目として在宅障害者の利用ということです。これまでは、主に施設事業者がグループホームをつくっていましたので、入所者のうち比較的手のかからない人たちからグループホームに移行していました。ケアが少なくてもよい人たちが移行して、その後に養護学校等を卒業した人たちが新たに入所する、在宅から施設に移るという形です。このような流れの中で、在宅の人たちがダイレクトにグループホームに入るということがあまりありませんでした。そうではなくて、在宅者がグループホームを利用したいということであればそれを受け入れる,そういったところを優先しようということです。

六点目として、地域移行計画やグループホーム整備計画等の計画をたてている市町村を優先するということです。こうした優先順位のもとで緊急に400人分のグループホームを指定したということです。オーストラリアのような本格的な動きではなくて、北海道や伊達市のマイナーな動きですが,実践について報告させていただきました。(拍手)

河東田  かけ足で発表していただきましたが、伊達、もしくは北海道での新しい動きがよく伝わってきたのではないかと思います。最後に報告をしていただいた北海道での優先順位をつけながらグループホームをつくっていく、もしくは地域生活支援のシステムをつくっていく、これはほかの自治体でもとても参考になる動きではないかと思います。

では、まだ時間がございますので、小林さんに対する質問をいただきます。まず、レスリーさんに小林さんのお話の感想を聞いてみましょう。

レスリー  大変興味深かったです。特に受け皿の重要性に着目していらっしゃるというところが大事だと思いました。すいません、日本でのケアの歴史というものを知らないものですから、最初の施設ができたのが1968年だったのでしょうか。

小林  そうではなくて、公立のコロニー(知的障害者総合援護施設)が初めて開設されたのが1968 年です。それ以前に,数は多くありませんが小規模の子供の施設や大人の入所施設がありました。

河東田  日本で施設が最初にできたのは1891年、滝乃川学園というところです。

では、客席で手を挙げていらっしゃる方がいますね。ご所属とお名前をおっしゃっていただき、簡単にご質問をお願いいたします。

  「埼玉県移送サービスネットワーク」のCと申します。小林さんの話の中で、伊達の町だけでなく、地元にも数多く帰っていくとおっしゃられました。地元に帰っても、地元のグループホームに入居する場合が多いと思いますが、そういう人たちに対する援助の仕方というのはどのようになっているのでしょうか。それぞれの地域に任せてしまっているのかどうかもお聞きしたいと思います。

河東田  小林さんよろしくお願いいたします。

小林  当時のコロニーは終生保護施設として、一生涯にわたって面倒を見るというイメージが強くありました。しかし「太陽の園」はいち早く社会復帰に取り組み,社会復帰するにあたっては,それぞれの生まれ育った地域に帰っていくということを原則にしました。しかし、知的障害者の場合,アフターケアのない社会復帰は考えられません。ですから昭和48年から10年間、私はケースワーカーとして出身地に帰った人達のアフターケアのために北海道全域を駆け巡りました。出身地への戻り方は,家庭に帰った人もいますし、働ける人は地元の通勤寮等に戻った人もいます。それから当時は、住み込みのような形で職親さんにお願いしたケースもありました。さらに、地元に入所施設ができると、できる限り近くの人はそちらに移るように働きかけました。そんな形で地域移行が始まった当初の10年間は,全道を駆けずり回るというのが実態でした。今は,北海道は21の障害福祉圏域に地域援助センターがあり、それぞれのエリアで支援することになっていますので,地元に帰るとそこにケアを引き継ぐという形になります。伊達市地域生活支援センターは、伊達市を中心とした西胆振6市町村をエリアとして支援活動を行っています。

河東田  基本的なご回答はいただいたと思いますが。そのほかにはいかがでしょうか。

  浦和大学のBです。小林さんのお話は何回かお聞きしていて、いつもこれでいいのかなというのがよく自分ではわからないのです。日本の地域の中で異常に障害者の方が多い地域になっていますが、そのことをどう考えておられますか。また、結婚されている人まで支援の対象になっているようですが、結婚されれば別に支援の対象から外れてもいいのではないかと思いますが、その辺はどのように整理されておられますか。

それからもう一つは、ケースファイルみたいなものがどこかにあるのでしょうか。例えば、何人の方がどこにおられるのかというものが、常に支援センターでわかっているということは、何らかの形でそういう方をファイルみたいなもので管理しているのでしょうか。その二つです。

河東田  恐らく多くの人が知りたがっている内容だと思います。じゃあ、小林さんお願いします。

小林  伊達に障害のある人たちがたくさん集まっているというのは、決してノーマルなことではないと思います。しかし、障害者を一度施設等に集めてしまいますと,10年20年とその施設に暮らしている間に,出身地に戻れなくなってしまいます。例えばここにいる方の中にも,ふるさとは田舎だけれども、若いころに東京に来て,もうずっと東京に住んでいるので,ふるさとには知り合いもいないという人がたくさんいると思います。何らかの理由でふるさとに帰れなくなった人は,結果的に伊達の市民になります。こうした傾向は,善しあしの問題ではなく,現実的な対応として今後も続くと思います。

それから結婚している人までケアが必要なのかということですが,わたしは必要だと思います。私は今眼鏡をかけています。この眼鏡があることによって普通の暮らしができます。私にとって、この眼鏡が一生涯必要なように、知的の障害がある人たちについては一生涯にわたる人の支援が必要です。それは施設で暮らしていても,グループホームで暮らしていても,家族と暮らしていても、あるいは結婚したとしても、やはり人の支援が必要なのです。支援が要らなくなった人は,それは障害者ではない人で,当然私たちの支援から外れていきます。支援を求めてくる限り、どこに住んでも,しっかりとサービスを届けるのがわたしたちの使命だと思っています。それから、支援センターには登録者全員のケース台帳があります。

河東田  本当はもっと議論をされたいのだろうと思いますが、多くの方に、もう少し最近の伊達のことを知っていただくために質問を出していただきたいと思います。その後で、レスリーさんから一言いただきます。レスリーさんも一言とおっしゃられています。ほかにどなたかいらっしゃいませんか。

はい、それでは車いすの方お願いいたします。

  さいたま市の市議会議員をしておりますDと申します。17年度、グループホームが400箇所認められたというのはすごいことだと思いますが、やはりこういうことは予算がないとできないことだと思います。これでどのくらい予算がついたのでしょうか。だいたいさいたま市は、福祉の予算を取るのがものすごい大変でなかなか認められないところがありますが、もしおわかりになりましたら、どのくらいの予算がついたのかを教えていただければと思いました。

小林  グループホームが400カ所認められたのではなく,北海道全体で100箇所400人分が認められたということです。

北海道では予算がないということで、これまで毎年100箇所分しかグループホームが認められていませんでした。しかし入所施設の予算をグループホームに移せばよい訳で、入所施設から地域への移行を進め,入所定員を削減したところからグループホームの開設が認められました。しかしこれには難しい問題があって、入所施設と地域支援のコストが違います。入所施設はパックで支援しますから安上がりです。しかし地域支援のほうは、パックではなくサービスが小分けとなりますので,その分だけどうしてもコスト高となります。自立支援法の中で、「イコールフィッティング」ということが強調されていますが、入所施設も地域生活支援も、同じ要介護状態の人であればどのサービスを使ってもコストを同じにしようということです。入所施設も昼と夜を分離したサービスとなりますが,入所施設から園内の日中活動に通う人も、施設から出てグループホームから通所施設に通う人も,原則的にはコストを同じにしようという考えです。

これでは地域移行は進みません。地域に出た方が2~3割のコスト高になるからです。施設の予算よりも地域支援の方が絶対にコストが高くなります。それでも障害のある人達の願いに応えて,地域移行を進める,これはお役人の仕事でもありますが,政治の世界でもあります。地域福祉が進めば進むほど予算が増大していきますが、そのことをいかに市民に理解してもらえるか,ここが重要なポイントだと思います。

河東田  埼玉県でもぜひチャレンジしていただければと思います。また、午後のディスカッションの中で取り上げていただく課題がたくさん出てきたと思います。

では、午前中を終わるにあたりましてレスリーさん、一言お願いいたします。

レスリー  伊達の話を聞いていますと非常に興味深い例で、コミュニティの側の態度というものが変わってきているのではないかと思います。そういう意味では、研究結果のようなものでコミュニティの態度が変わってきていますよというものでもあれば見たいと思います。

小林  市民の意識調査を実施したことはあります。

河東田  調査結果の資料は残念ながら日本語だということです。お二人のお話からヒントを得たことがたくさんあったのではないでしょうか。一方で疑問もたくさん出たのではないかと思います。そうしたことを、お手元のアンケート用紙に記入していただきたいと思います。今お書きいただきたいと思います。では、とりあえず、午前中のお二人のお話とそれを基本にしたやりとりをこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。また午後お会いしたいと思います。(拍手)