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著作権に関して

●井上
ちょっと話が戻ってしまって申し訳ないのですが、そういう障害の学生さんに対して、印刷された教科書がそのままでは読めないような場合、DSSでスキャナーにかけてテキストデータなどをCD-ROMに焼いて、学生さんに一時的に貸し出すのでしょうか。

●渡部
いえ。

●井上
あげてしまうのでしょうか。たとえば、1冊本を買ったということで、お金が補償金のような形でその著者に行くのでしょうか、それとも別のやり方なのでしょうか。

●渡部
河村さんのほうがご存知だと思いますので、あとでバックアップをお願いしますね。
アメリカ著作権法で、チェーフィー(Chafee)改正注釈1515と言って、視覚障害者あるいはその他の障害者の著作権が保護されている作品の点字、音声またはデジタルテキストなどの適切なフォーマットへの複写は可能という改正があるんです、1996年にできたと思うのですが。それに則って、もちろん自分は教科書を買わなければならないけれど、学生にとっては、買った教科書が使い物にならないじゃないですか。だから、私達のオフィスが学生が使えるように音声化、デジタル化したりして、それを提供する。よって、CD化されたものというのは、私達のオフィスのものではなくて、学生のものになるんですね。ですから、CDを作ったときに、ちゃんとその学生の名前もしっかり書いてあるんです、誰のためだって。

●井上
日本でもそのようなことをやろうとすると、たとえば大学の図書館では、筑波技術大学など一部の大学を除いて基本的にはできません。著作権者からの許諾を逐一得ればよいのですけれど。それから、点字図書館ではできるのですが、あれは貸すだけですよね。

●河村
テキストはどちらもできません。

●井上
テキストはダメですか。

●河村
音声化と点字です。

●井上
ということは、たとえその学生さんが原本を購入していたとしてもダメなわけですよね。読めない教科書を買わされているのに、それを人に頼んで読める形式に変換してほしいといってもダメなのですね。このあたりは今後、少しはましになるかなとは思っているのですが。

●河村
これから著作権法が変わればの話ですけれどね。

●井上
そのアメリカでのチェーフィー改正のことですが、それは10年くらい前ですね。アメリカ国内でのその当時の気運といいますか、チェーフィー改正に向けての社会的な動きがあって、おそらくADAとも連動していたと思うのですが、そのあたりの事情や経緯についてもしご存知でしたら教えてください。

●渡部
それは河村さんにお願いしてよろしいですか。

●河村
私も決定的な転機というのは知らないのですが、もともとはブラインド・オア・フィジカリー・ハンディキャップ(blind or physically handicap)というふうにカテゴライズされて、視覚障害と、両手がないというような身体障害の人には録音図書、あるいは点字図書の提供はいいんだというのが、著作権法の規定だったんですね。それに対して、今日私達がテーマにしているカテゴリーの、読みに障害のある人々というのが、実際にはRFB&Dの利用をどんどん伸ばしていったんですね。RFB&Dは、最初はどれだけニーズがあるかわからないところで、とりあえず視覚障害者用に作ってある録音図書の提供を始めてみたら、e-テキストも含めて、どんどんそちらの利用が伸びていったわけですね。予想以上に伸びたんですね。それがもう動かぬ現実で、実際に同じニーズを持っている、同じ困難を持っているんだということがわかってきて、それを追認したというのがチェーフィー改正だと思います。つまり、改正してから伸びたのではなくて、実際に利用が伸びて、それを合法的に追認したのだと思います。

それで、ADAとかそういうものはもちろんバックアップしているわけですね。あるいは、1970年代、1973年ですか、全障害児教育法という、全ての障害を持つ児童が義務教育を受ける権利があるというような、かなり昔から、見えない障害についての法律上の配慮というのは行われてきていて、その上に乗った実績というのはずっとあって、それが録音図書の利用者としてぐんぐん伸びたという実績を作っているわけですね。今RFB&Dの利用者の70%は、視覚障害者以外の障害者ですから、そういう意味では読みに障害のある人々の中で、視覚障害者は必ずしも多数派ではないのですね。でもそれは、サービスとしては、一体のサービスとして合理的に作っているわけですね。
日本の場合、特殊なのは、結局ヨーロッパでもアメリカでも、読みに障害のある人が録音図書を共通に使えるのなら、素直に著作権法もそれを認めればいいというところが、なんで読めないのかという診断を基準にするというのに近いやり方で、視覚障害はいい。それ以外は駄目、とずっとなってきたおかしさというのが、この日本で録音図書を活用できればずいぶん楽になったであろうという人達が、ずっと録音図書から疎外されてきたというこれまでの歴史があるんですね。それがアメリカとの違いで、チェーフィー改正というのは、たぶん既成事実を後から、明らかに意味があるし誰も非難しないことなのに、形式論理の上では違法になる。それはよくないから、そうすると法律そのものに誰も敬意を払わなくなりますから、法律を合わせた、というふうに私は理解しています。

それでは、そろそろ締めの時間になってきました。日本の状況も折に触れご紹介して、それについてのコメントもいただきました。これから、日本からコメンテーターで参加していただいている二人が、日本でこれから、特に大学生を中心とした見えない障害のある人達に、次にどのようなことを進めていったらいいのかということで、これをやっていったら日本の状況もよくなるでしょう、というようなご提言というか、自分自身についての提言になるかもしれないのですけれども、それはそのまま決意表明になるかもしれませんが、そういったことを一つ二つ述べていただいて、締めの言葉にしていただきます。最後に渡部さんのほうから、日本の状況を参考にしながら、アメリカのほうでは次にどういうことをやっていこうとしているのか、ちょっと伺ったところでは、今までDSSのほうでレコメンデーションとかを書いていたのを、今度は本人達が書くのを指導していくんだというような、全く違う次の一歩というのをちょっとうかがっていますが、そのあたりももう少し詳しくうかがって、ではアメリカではこの次にどこへ行こうとしているのかということを、最後にお話いただきます。では井上さん、萩原さん、渡部さんということで一人ずつお話いただきたいのですが。