社会の中で働く自閉症者 -就労事例集-
池田輝子記念福祉基金障がい者ジョブコーチ支援事業
用語解説
- アセスメント (Assessment)
- 「評価」と訳されることが多いが、ジョブコーチによる就労支援においては、テスト等の客観的基準を用いて評価することだけでなく、実習を通じた行動観察等を含めて、支援対象を適切に理解するためのプロセス全体を指す。ジョブコーチの支援対象は障がいのある人のみでなく、企業も含まれることから、「障がいのある人のアセスメント」、「働く職場のアセスメント」の2つの側面がある。
- ジョブマッチング (Job Matching)
- 障がいのある人の特徴と、職場の特徴の最適な組合せを作り出すことを言う。ジョブコーチの重要な役割の一つであり、適切なジョブマッチングを行うためには、障がいのある人のアセスメント、働く職場のアセスメントの双方をていねいに行い、企業と調整を行うことが必要とされている。
- ナチュラルサポート (Natural Support)
- 職場の従業員がジョブコーチに代わり、就労継続に必要なさまざまな支援を自然に、または計画的に提供すること。ジョブコーチは直接障がいのある人を支援するだけでなく、ジョブコーチが職場から退いた後、職場の従業員が主体的に障がいのある人を支えることを目標にナチュラルサポートの形成を重視することが大切である。
- フェイディング (Fading)
- 狭義にはジョブコーチが職場で支援する時間を減らすことを意味する。広義には、職場で支援する時間を減らすことを最終的な目標として、支援の開始時から、あらゆる支援の量と質を漸減させていくプロセス全体を指す。狭義のフェイディングを成功させるためには、ナチュラルサポートを重視し、広義のフェイディングを着実に実行していくことが必要である。
- フォローアップ(Follow Up)
- フェイディングを終了した後、定期的な職場訪問、電話連絡などの方法によって、職場の状況を把握し、必要に応じて職場に介入することも含めた定着支援のプロセスを指す。ジョブコーチは集中支援がクローズアップされがちだが、フォローアップはジョブコーチの支援に欠かすことができない重要な要素である。
- モデリング(Modeling)
- 仕事のやり方の手本、見本を示して見せること。ジョブコーチが職場で仕事を教える技術であるシステマティック・インストラクション(系統的教授方法)において用いられる指示の4つの階層(言語指示、ジェスチャー、モデリング、手添え)の一部。
- トライアル雇用
- 企業が障がい者を雇用する際に、企業と障がい者が試行的雇用期間(トライアル雇用)を経ることにより、双方とも評価や準備をしっかり行って安心して本格雇用に移行するための制度。トライアル雇用の期間は原則3 ヶ月。トライアル雇用の期間、企業は障がい者と労働基準法等の労働関係法規に従って雇用契約を結ぶことが必要であり、企業に対しては月額50,000 円の奨励金が支給される。問い合わせはハローワーク。
- 障害者職場適応訓練制度
- 実際の職場で訓練を行うことにより、職場や作業環境に適応することを容易にする制度。
訓練終了後は、その職場で雇用されることを期待して実施する。一般の職場適応訓練は6
ヶ月間(重度の場合は1 年)、短期職場適応訓練は2 週間(重度の場合は4 週間)と期間が定められている。事業所に対して、月額24,000 円(重度の場合は25,000 円)、短期の場合は日額960 円(重度の場合は1,000 円)が支給される。問い合わせはハローワーク。 - 企業内授産
- 授産施設等が事業所と受託契約を交わして受注作業を行うが、作業の場所を福祉施設内ではなく、企業内で行う場合に企業内授産ということがある。企業の中で障がいのある人が働いているが、企業と障がいのある人は雇用契約を交わしておらず、障がいのある人への報酬は作業工賃として支払われる。
- ジグ(Jig)
- 治具。作業等を行いやすいように、補助的に用いる道具等の総称。
- インテーク(Intake)
- 受理面接、受付相談などソーシャルワークの最初のプロセス。
- ラポート/ラポール(Papport)
- 信頼関係を構築すること。支援を受ける側と支援する側との間には基本的な信頼関係の構築が必要であり、インテーク面接等においても先ずラポートの形成が重要である。
本稿では、固有名詞以外の表記を”障がい”で統一しました。