音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

精神保健サービスの評価とモニタリングに関する研究

考察

 ヨーロッパ諸国においては、精神保健医療福祉サービスの質の向上を図るために、アウトカムの視点からの評価が積極的に行われている。また、アメリカやオーストラリアにおいては、政策がどの程度進展しているのかについて、各指標の全国値及び各州の達成度を年度毎に公表をしている。

 このように、国外においては既に精神保健サービスの水準を評価し、公表がされている。ただし、地方分権化が進んでいる国においては、全国値を提示するのには困難が伴い、また、病床数や医療費などを中心とした公表のために具体的なサービス内容を評価することが可能なデータや指標が極めて限られている現状にある。

 わが国においては、精神保健医療福祉施策の立案や評価の際に参考となる各種調査が企画・実施されており、詳細な分析が可能である。しかし、これらの調査は、指標の定義が統一されていないことや各調査結果が単独で公表されているため、全国的な集計が容易ではないことから、精神保健医療福祉施策を効果的に推進していく上で十分に活用されていない現状にある。

 そこで、本研究では既に公表されている既存の統計情報及び研究成果を活用し、都道府県・指定都市の精神保健医療福祉の水準を示す評価指標を開発した。このように、客観的指標を用いて現状や施策の進捗状況を評価することにより、各都道府県・指定都市においては根拠に基づきより効果的・効率的に各種施策を推進していくことが可能になると考える。既にいくつかの都道府県では、今回提示した指標を事務事業の評価指標として活用しており、目標値を定めて達成度を年度毎で公表していた。

 国民に対する行政の説明責任の徹底、国民本位の効率的で質の高い行政の実現、国民的視点に立ち成果重視の行政への転換が行われている中で、精神保健医療福祉施策の評価と計画的推進は引き続き検討すべき重要な課題であるといえよう。今後は、提示した評価モデルの具体的な活用方法、すなわち企画立案(Plan)、実施(Do)、評価(See)を主要な要素とするマネジメント・サイクルに組み込まれ、有効に機能していくための理論と実務の両面からの検討が必要であると考える。そのためにも、今後、精神保健医療福祉施策に関連する指標別年度別のデータベースを構築し、当事者、地域住民、教育関係者、保健医療福祉関係者、行政等が利用可能な情報提供体制を整備すること強く望まれる。

まとめ

 本研究により、これまで個別に報告されてきた行政調査や研究成果などを整理し、都道府県・指定都市の精神保健医療福祉の水準を継続的に評価する指標を開発するとともに、各指標の目標値、実績値、経年変化について都道府県・指定都市別で比較可能な形で分かりやすく提示することができた。今後は、提示した提示モデルの具体的な活用方法及び精神保健医療福祉関係者が利用可能な情報提供体制が整備されることが望まれる。