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資料1

2.国際シンボルマーク関連資料

国際シンボルマークの現状と課題
寺山久美子 (東京都立医療技術短期大学教授)


Ⅰ.ISAの制定経過

国際シンボルマーク(International Symbol of Access:以下ISA)については、財団法人日本障害者リハビリテーション協会が図1(省略)に示すようなパンフレットを作り、その普及に努めている。またISAの制定の経緯に関してInternational Rehabilitation Review No.1 No.2 (1970)は以下のように知らせている。

  1. 国際障害者リハビリテーション協会(Rehabilitation International : RI)International Comission on Technical Aids : ICTA(補助機器住宅交通国際委員会)はMr.Karl Montan(スウェーデン)委員長のもと、3年間をかけて国際シンボルマークを選定した。
  2. ICTA委員会が国際シンボルマーク選定のために設けた専門家委員会のメンバーは次の通りである。
    Dr.Alain Rossier(医師、スイス)
    Mr.Bo Berndal(グラフィックデザイナー、スウェーデン)
    Mr.William O. Cooper(国際戦傷病者連盟)
    Mr.Manfred Fink(国際障害労働者市民連盟)
    Dr.Aleksander Hulek(ポーランド障害者リハビリテーション協会事務局長)
    Mr.Peter Kneebone(国際グラフィックデザイナー協会連盟)
    Mr.Esko Kosunen(国連障害者リハビリテーション局長)
    Mr.William P.McCanbill(米国障害者雇用大統領委員会)
    Prof. Dr.Karl Schwanzer(国際建築家連合)
  3. 各国で使われていたさまざまなシンボルの検討も行われたが、次の基準に基づいて作業が行われた。すなわち、デザインがあいまいでないこと、容易に意味が判ること、適当な距離から判断できること、材質、大きさを問わず作成が容易なこと。
  4. 上記の基準に基づいて選ばれたシンボルは、1968年7月スカンジナビア・デザイン学生連合のセミナーにおける特別プロジェクトで生まれたものに、多少の修正を加えてできたものである。
  5. ICTA委員会に最終的に提出されたマークは、デンマークのMiss Susannne Koefoedのデザインによるもので、スカンジナビア・デザイン学生連合から世界の障害者のために寄贈された。
  6. 1969年9月ダブリンで開催された国際障害者リハビリテーション協会総会で採択された。(以上International Rehabilitation Review No.1 1970より)
  7. 採択後1年あまりを経て、各国で利用されはじめると、マークの大きさや色あるいは法律問題や、使用管理の問題がでてきた。国際障害者リハビリテーション協会役員会で検討した結果、作成基準ならびにシンボルマークの使用方法については国際協会が勧告を提出することとし、シンボルマークの作成、法律的保護及び管理の問題については、各国または地域レベルで取り組むべきということになった。(以上International Rehabilitation Review No.2 1970より)また、1978年1月22日フィリピンのバギオで開催された国際障害者リハビリテーション協会評議員会では以下のような「国際シンボルマークに関する新決議」を定めた。

    1)

    シンボルマークは常に、国際障害者リハビリテーション協会評議員会で承認されたものと同じデザイン及び比率通りに使用するものとし、転載する場合はこれに従うこと。シンボルマークの色は他の色を使わなければならない特別な理由がない限り、国際道路標識法(International Road Sign Conventions)に照らし合わせ、濃いブルーの地に白で描いたものとする。図柄は方向を示すために顔を左向きにする場合以外は、顔はかならず右向きにすること。

    2)シンボルマークのデザインを変えたり、書き加えることは許されない。シンボルマークはその本来の姿を歪められない範囲内において、サインをつけたり、方向標示や目的を示すサインをつけて共に使用してもよい。

    3)シンボルマークは車いす使用者も含め、可動性が制限されているすべての者が利用できる建物や施設及びそこへの道を示す目的以外には決して使用してはならない。

    4)障害者が利用できる建築基準は1974年に国連障害者生活環境専門家会議(United Nations Expert Group Meeting on Barrier - Free Design)が採択した最低基準を参考にして、各国の当該当局が決定すること。

    5)シンボルマークの転載については、この本来の目的を広く知らしめ、あまねく認知させることを目的とした出版物やその他のメディア以外には、これを禁ずる。その場合、シンボルマークを普及させるためであっても、障害者の利用を考慮したものに直接関係しない出版物やメディアに載せる場合は、「障害者の利用を考慮した建物・施設を示す国際シンボルマーク」であるとはっきり明記しなくてはならない。

    6)シンボルマークが商業目的、例えば、広告、トレードマーク、便せんの模様さらに障害者のまたは障害者が作成した商品及び作品等に使用することを禁ずる。ただし、商業目的を前提として設備を改善したものについて、これを宣伝したり明示したりするためにシンボルマークを使用することはこの限りではない。

    7)各国において、本決議に表明されている方針に従ったシンボルマークの合法的管理は、国際障害者リハビリテーション協会の各国加盟団体のみがこれを行う。ただし、各国加盟団体はこれにかわる当該当局に委任してもよい。国際障害者リハビリテーション協会に加盟していない国においては、国際障害者リハビリテーション協会が文書をもって認可した機関がこれを行う。


評議員会は:

国際シンボルマークがしばしばその本来の目的以外に使用されていることを遺憾に思う。例えば、シンボルマークが身体障害者ドライバー用、遭難信号用や他の標示目的といった適切な標示マークが決められていないものに流用されていることである。さらに、シンボルマークが特別なデザイン図や特定の障害者のためのものとして使用されていたりすることである。従ってこの評議員会に引き続き、作業都会、国際障害者リハビリテーション協会自助具・住宅・交通委員会(Rehabilitation International Commission on Technical Aids Housing and Transportation)及び当該国際団体と共同で、さらに個別に標示マークを作製する必要があるかどうか、検討するよう事務総長に要請した。

国際規格協会(International Organization for Standardization)に対し、同協会が国際シンボルマークを国際基準マークとして採用し、併せて国際障害者リハビリテーション協会と協議の上、国際障害者生活環境基準及び国際建築基準を作製するよう勧告する;

障害者に対し、利用可能な施設があることを広く知らしめる必要性を強調する。そして同様に都市計画家、建築家、政府関係者及び一般市民に対し、障害者の生活圏拡大及び国際シンボルマークに関する啓発運動を行う必要性を確信するものである;

各国政府に対し、新たに建築されるすべての公共建築物、交通及び施設は、コミュニティの全員が平等に利用できるようにすべきであることを要求する。すべての住宅の公共エリア、普通の住宅のいくつか及びレクリエーション施設がこの生活圏拡大の基本原則にのっとって建設されるべきである。さらに現存の建物及び施設が改造されるならば、この基本原則にのっとって改造されるべきである;

本決議に明記されている方法でシンボルマークをできるだけ広く普及させ、これらの方針からそれてシンボルマークが使用され、障害者の人権擁護に役立てようとする評議員金の意図がそこなわれないように、関係者すべてに強く訴える;

国際障害者リハビリテーション協会の加盟団体及びその他のすべての協力団体に対し、本決議の内容をあらゆるコミュニケーション手段を駆使して広く知らしめるよう要請する。


Ⅱ.ISAに関するICTA委員会の取り組み

1.ISA国際調査

1987年に行われたICTA委員会では「ISAに関する国際調査」の実施を決定し、ワーキング・グループとしてGeald Cornelisson(オランダ)、Wycliffe Noble(イギリス)、Johan Kaiser(オーストリア)を選んだ。調査は1年にわたり、世界82力国に対して行われ、1988年に東京で開催されたRIのICTAセミナーで結果が報告された。以下、その概要を記す。

①調査表の配布先

RI加盟団体 86
RI準加盟団体 23
RIの各国事務局長    69
ICTA委員 47

225


(注:1国に複数の加盟団体をもつものもある。日本は2加盟団体)

②主な質問事項

  1. ISAの使用の有無とその分野
  2. ISAの配布責任者(団体)
  3. ISAの配布条件(法、指針等による規制の有無)
  4. ISA以外のシンボルマーク使用の有無
  5. ISA使用に関する明確化、再調整の必要陸についての意見


③回収率
アフリカ(12力国へ配布、33.3%回収)、アラブ諸国(20ヵ国、40%)、アジア太平洋地域(20力国、40%)、ヨーロッパ(26力国、77%)、ラテンアメリカ(8ヵ国、62.5%)、北アメリカ(2ヵ国、50%)、中南米諸国(6ヵ国、0%)。

④結果の要約

  1. RI加盟団体の中にもISA使用に関して採択された決議を知らないところがいくつかある。簡潔で有効なパンフレットを作成し新たな広報活動を開始させる必要がある。
  2. ISA使用に関しての方針を新たにより正確なものにして立てる必要がある。
  3. ISA使用許可に関する一定の審査基準を権威ある個人もしくは団体に委ね、RIにおいても確立する必要がある。
  4. RIはすべての国に使える設問を設定し、各国語に訳して試用してみるべきである。ISA使用の最低基準が必要である。
  5. 視覚障害者、聴覚障害者についてもシンボルマークの必要性がある。国によってはすでに一定のシンボルマークを使っているところがある。デザイン等を明確にし、RIで公式に採択されたものとすべきである。
  6. RIは、従来より一層各国及び国際基準機構との連携をとっていくべきである。RIとしてはISOへの代表者を派遣するかワーキンググループ3の招集者の役割をとっていくべきである。

2.ICTA委員会における審議

以上のような「ISAに関する国際調査」でわかったISAに関する課題について、ICTA委員会は1989年10月のスペイン・マドリッドにおける審議を経て、1990年9月オランダにおける会議において、以下のような「ISA使用に関するガイダンス」(案)を作成した。

  1. 障害を持つ人々が利用できるよう環境を整備し、施設をつくることをすべての国が目標とすべきである。
  2. .これから作ろうとするISAの使用に関するガイドラインは「障害者のアクセス向上のためのガイドライン(“Guidelines for improving access for disabled people”ICTA - RADAR 1983)」で提示されている内容のものとなる。
  3. 国によっては、上記1及び2に要約されている最終目標を達成するため、段階的な推進プログラムが必要となろう。
  4. これを達成するため、またこういった状況の下で計画する環境における建物の最低基準は、
    ①出入口のアクセス
    ②アクセシブルで、かつ使用できる施設
    ③トイレがアクセシブルであること
    である。
  5. この最低基準は、最終的に達成すべき基準とみなされるべきものではない。「障害者のアクセス向上のためのガイドライン」の15の条項(注)こそ目標たるべきである。

<表示場所>

  1. ISAは国際的に、誰が見てもすぐわかるシンボルマークであり、一番先に利用する場所に提示されるべきである。
  2. ISAは適切な地域の障害者組織が建築物を調査し、地域または国の組織に推薦を行って初めてその建築物に与えられ、また、主要な出入口に表示できる。
  3. ISAは、建築物内の使用可能な施設の出入口(例えばトイレやエレベーター)に表示できる。
  4. ISAはアクセシブルで使用できる公共輸送システムにおいても使用できる。

<デザイン>

  1. いかなる時もRIによって承認され、著作権を持つデザインの様式、型、寸法比を使用しなければならない。
  2. ISAは、国際的に承認されている交通標識・歩行者用標識と関連して、また一緒に使用することができるが、ISAそのものは伝えるべき情報を混乱させるような他の造形をそのデザインの中に入れてはならない。
  3. 障害者の意見を代弁するアドボカシー機関がパンフレットや書類や出版物でISAをロゴとして使用することはできる。

<他のシンボルマーク>

  1. ISAが表示されている建築物でも他のシンボルマーク、特に感覚障害者を表すものがさらに積極的に情報をもたらすものならば、除外してはならない。

このガイダンス(案)で注目すべきは7の使用に関する審査の項と、13の感覚障害者を表わすシンボルマークの必要性を認め、「車いすマークとの併用」を打ち出した項であり、いずれも国際調査からの提案に基づいたものであった。なおこのガイドライン案は各国に持ち帰って今後検討される。

(注)「障害者のアクセス向上のためのガイドライン」(Guidlines for improving access for disabled people)は1983年にICTA委員会が作成したもので、15項目から成るもの、即ち屋外関係3項目、駐車場と出入口関係5項目、屋外関係3項目、視覚触覚的手がかり3項目、安全関係1項目、その他となっている。


Ⅲ.ISAに関する日本の取り組み

1.「国際シンボルマーク検討委員会」の活動

以上述べてきたように、ICTA委員会はISAの正しい普及と障害者のアクセス向上のために活発な活動を展開してきた。

わが国においても、近年、特に1981年国際障害者年以降、アクセスヘの関心が徐々に高まりをみせ、それに伴ってISAの使用も増加してきた、増加してきたのは喜ばしいことであるが、使用目的に混乱もみられるようになってきた。例えば、「障害者専用の施設」を表わすシンボルであったり、「障害者用製品」を示すシンボルであったり、あるいは「障害者であることを示す」シンボルであったりというような使われ方も目立ってきた。

一方、ISA使用に関する基準がないこともわが国でも大きな問題である。アクセシブルか否かの審査もなく、誰でもマークを購入できて、貼れるということである。またISAに対する法的保護も不完全である。日本障害者リハビリテーション協会はISAを商標登録の手続きをし、1982年「商標登録第1562455号」として登録を許可されている。しかし、これは本・雑誌等印刷物関係のみに適用されるに過ぎないものである。

さらに、「ISAが視覚障害者や聴覚障害者にとって適切なマークとはいい難いのではないか」という問題もある。

以上のような、ISAに関する混乱した状況の見直しを行い、本来のISAの目的である「障害者の人権擁護、地域社会資源を障害者にとって利用しやすいものにする」ことを達成するための有効な手段として生かす方策を検討することが是非必要である。そこで、回本のICTA委員会のもとに「国際シンボルマーク検討委員会」が設置され、第1回の委員会が1989年10月13日に開催された。検討委員会は1990年12月20日の第4回委員全をもって、一応の主な活動を終了した。主たる活動とは、「ISA国内調査」と、ISAの誤った使用事例の検討である。

なお、委員金のメンバーは以下の通りである。

井口要(新宿身障明るい街づくりの会代表)
岩淵紀雄(ベターコミュニケーション研究会事務局長)
嶋倉優子(東京都心身障害者福祉センター聴覚言語障害科)
高橋儀平(東洋大学建築学科専任講師)
田中徹二(東京都心身障害者福祉センター視覚障害科)
寺山久美子(東京都立医療技術短期大学教授)※
中村盛夫(弁理士)
野沢克哉(東京都心身障害者福祉センター聴覚言語障害科)
野村歓(日本大学助教授)
初山泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所長)
三沢了(頚髄損傷者連絡会事務局長)
村上琢磨(東京都心身障害者福祉センター視覚障害科)
村田稔(弁護士)

※委員長

2.ISA国内調査

「国際シンボルマーク検討委員会」では、以上のような経過を踏まえ、国内におけるISAの受け入れられ方、使用状況の実態を把握するという目的で、次の4種類の調査を行うことに決定した

  1. ISAに関する意識調査
  2. ISAに関する地方自治体における実情等の調査
  3. ISAに関する障害者団体における実情等の調査
  4. ISAに関する障害者個人における実情等の調査

なお、検討委員会での討議の結果、4種類の調査には、ISAのマークのみでなく、盲人を表示する国際的標識(図2)、世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク(図3)、全国中途失聴者難聴者団体が定めている難聴者を表す国内で通用するマーク(図4)に関する調査も併せて行うことになった。

図2:盲人を表示する国際的標識 図3:世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク 図4:全国中途失聴者難聴者団体が定めている難聴者を表す国内で通用するマーク
図2盲人を表示する国際的標識 図3世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク 図4全国中途失聴者難聴者団体が定めている難聴者を表す国内で通用するマーク

(1) ISAに関する意識

1.調査の概要

「一般市民がISAをどの程度認識しているか」をまず知ることを調査のとっかかりとした、検討委員会の委員が関与している大学、講習会等に参加していた学生、主婦、会社員等不特定の日本人健常者に対し、集団面接による本調査を協力依頼した。調査表は図5の如くである。

図5「シンボルマークに関する意識調査」表

下に示した4つのシンボルマークについてお尋ねします。あなたはこれらを見たことがありますか。それぞれ該当する番号に○をつけてください。またそのマークがなにを表わしていると思いますか。「」内にご自由に書いてください。

(実際のシンボルマークは青色もしくは黒色です)

図:国際シンボルマーク1.見たことがある2.見たことはない
このシンボルマークは何を表していると思いますか。
図:盲人を表示する国際的標識1.見たことがある2.見たことはない
このシンボルマークは何を表していると思いますか。
図:世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク1.見たことがある2.見たことはない
このシンボルマークは何を表していると思いますか。
図:全国中途失聴者難聴者団体が定めている難聴者を表す国内で通用するマーク1.見たことがある2.見たことはない
このシンボルマークは何を表していると思いますか。
最後にあなたの年齢と性別を教えてください。
年齢( )歳、性別(男、女)
ご協力ありがとうございました

2.調査の結果

調査結果は以下の如くである。
(1) 調査対象者
*男女別

不明 総数
175 401 91 667

*年齢別

10代 20代 30代 40代 50代 60代 不明 総数
176 326 36 20 12 1 96 667

(2) 「下に示した4つのシンボルマークを見たことがありますか」という質問に対して

見たことがある 見たことはない 無回答
1 図:国際シンボルマーク 661
(99%)
5
(1%)
1
2 図:盲人を表示する国際的標識 143
(21%)
552
(78%)
2
3 図:世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク 27
(4%)
673
(96%)
3
4 図:全国中途失聴者難聴者団体が定めている難聴者を表す国内で通用するマーク 9
(1%)
657
(99%)
1


(3) 「1のマークは何を表していると思いますか」という設問に対して、上位10位までを記すと

  1. 車いすで利用できる設備・施設(95名)
  2. 車いす専用
  3. 車いすのための施設
  4. 身障者専用
  5. 身障者の(ための)施設・設備
  6. 車いす用トイレ
  7. 身障者用トイレ
  8. 身障者
  9. 車いす使用者
  10. わからない・無回答(18名2.7%)


ちなみに「身障者が利用できる設備」と正確を出したのは5名(0.7%)のみであった。

(4).「2のマークは何を表していると思いますか」という設問に対して

  1. 視覚障害者(目の不自由な人)(113名)
  2. わからない・無回答(70名、10.5%)
  3. 視覚障害者の(ための)用の何か(65)
  4. 視覚障害者専用(62)
  5. 視覚障害者のための設備・施設(34)
  6. 視覚障害者を優先(30)
  7. 視覚障害者が使用できるもの(18)
  8. 視覚障害者用の設備・施設(15)
  9. 視覚障害者のための点字ブロック(14)
  10. 視覚障害者のためのマーク(11)

なお、「老人」をイメージした者が20名あった。

(5) 「3のマークは何を表していると思いますか」という設問に対して

  1. わからない・無回答(170名、25.5%)
  2. 聴覚障害者(耳の不自由な人)(115)
  3. 聴覚障害者を考えた(ための)設備・施設(60)
  4. 聴覚障害者のための何か(49)
  5. 聴覚障害者専用(31)
  6. 聴覚障害者に関する何か(26)
  7. 聴覚障害者のためのマーク(22)
  8. 難聴者が利用できるもの(13)
  9. 聴覚障害者はおことわリ(12)
  10. 難聴者用(10)

(6) 「4のマークは何を表していると思いますか」という設問に対して

  1. わからない・無回答(441名、66.1%)
  2. 口のきけない人(4)
  3. ろうあ者専用(3)
  4. 聴覚障害者のための案内板(2)
  5. 聴覚障害者が使うのに貼ってあるマーク(2)
  6. 耳の不自由な人の何か(2)
  7. 日本の難聴者用のマーク(2)
  8. 高齢者(2)

以下はすべて単数回答で、イメージは種々である。
以上から、ほぼ次のようなことがいえると思われる。

・調査対象者は20代が多く、「これをもってわが国の一般市民のISAに対するイメージのもち方」を必ずしも表しているとはいえないが、参考資料として役立つ。

・ISAについてはほぼ全員、何らかの形で見ているが、その理解の仕方は多くの場合誤っている。

・その他のマークについては、知られてもいないし、理解の仕方も正しいものではない。

調査

2.シンボルマークに関するアンケート

 地方自治体267、障害者団体35、障害者(視覚障害者以外145名、弱視者72名、点字使用者282名、計499名)に同様のアンケートを配布し調査を行った。回答率は自治体70.8%、障害者団体51.5%、視覚障害者以外の個人49.9%、弱視者51.4%、展示使用者22.3%であった。

  ここでは紙面の都合上、地方自治体と障害者団体についての結果のみ報告する。

(1)シンボルマークに関するアンケート(自治体)
Ⅰ.次のようなマークを貴自治体で使用したことがありますか.該当する番号を○で囲んでください。

図:国際シンボルマーク
使用したことがある 182
使用したことがない 5
無回答 2
合計 189


「使用したことがある」自治体は、どこに使用しましたか。(複数回答可)

建築物 166 バス・電車等 14
公園 79 タクシー 26
駐車場 106 市民向け等広報 53
28 その他 28


図:盲人を表示する国際的標識
使用したことがある 9
使用したことがない 174
無回答 6
合計 189



「使用したことがある」自治体は、どこに使用しましたか。(複数回答可)

建築物 3 バス・電車等 0
公園 0 タクシー 0
駐車場 0 市民向け等広報 3
2 その他 3

「その他」の内訳
・盲人用信号機
・福祉のまちづくり要綱の冊子表示に、また要綱の中で標示の例として


図:世界ろう連盟が定めた聴覚障害者を示す世界共通のシンボルマーク
使用したことがある 6
使用したことがない 178
無回答 5
合計 189



「使用したことがある」自治体は、どこに使用しましたか。(複数回答可)

建築物 1 バス・電車等 0
公園 0 タクシー 0
駐車場 0 市民向け等広報 2
0 その他 3

「その他」の内訳
・市民化窓口
・福祉のまちづくり要綱の冊子表示に、また要綱の中で標示の例として
・銀行の通帳・病院の診察券等に入れてもらうため、市でシールを作成
*いわき市では右記のマークを使用(健康保険証・貯金通帳他証書などに使用)

Ⅱ.質問Iでこのマークについて「使用したことがある」と答えた自治体のみお答え下さい。あなたの自治体ではシンボルマーク(車いすマーク)を貼る上で基準がありますか。

図:国際シンボルマーク
ある 61
ない 120
無回答 1


1.「ある」と答えた自治体は、どのような基準(指導指針・要綱等含む)に基づいて貼っていますか。

  • 旭川市福祉の街づくり環境整備要綱
  • 帯広市建築物等に関する福祉環境整備要綱
  • 北海道福祉環境整備要綱
  • 苫小牧市福祉のマチづくリ環境整備要綱
  • 勝田市の福祉環境整備基準・都市環境整備要綱(高崎市)
  • 埼玉県みんなが住みよい福祉のまちづくり推進指針
  • 千葉県障害者の住みよい街づくり推進指針
  • 柏市福祉のまちづくりのための施設整備要綱
  • 習志野市公共施設に関する福祉環境整備要綱
  • 相模原市福祉環境整備指針
  • 藤枝市福祉のまちづくりのための建築物等環境整備要綱
  • 秦野市福祉のための都市環境整備要綱
  • 福祉のまちづくりのための建築物等整備要綱
  • 長野市福祉環境整備指導要綱
  • 松本市福祉のまちづくり環境整備基準
  • 上田市福祉のまち環境整備基準
  • 高山市建築物等の障害者向け整備基準
  • ハンディキャップを持つ人のための施設整備手引き(静岡県民生部)
  • 三島市福祉の街の環境づくり推進指針
  • 静岡県施設整備手引き(富士宮市)
  • 豊田市福祉環境整備要綱(公共施設には取り付けない。民間施設が要項に適合した場合に市より交付する。)
  • 草津市障害者福祉環境整備要綱
  • 福祉のまちづくりのための環境整備要綱(豊中市)
  • 八尾市の福祉のまちづくりのための環境整備要綱
  • 箕面市福祉のまちづくり環境整備要綱
  • 寝屋川市福祉のまちづくり環境整備要綱
  • 河内長野市福祉のまちづくり環境整備要綱
  • 高石市福祉のまちづくり要綱
  • 岸和田市福祉のまちづくりのための環境整備要綱
  • 尼崎市福祉のまちづくり環境整備要綱
  • 伊丹市福祉のまちづくりのための都市施設整備要綱
  • 松江市福祉環境整備要綱
  • 福祉のまちづくり環境整備要綱(呉市)
  • 東広島市の建築環境整備要綱
  • 山口市建築物等環境整備要綱
  • 施設整備指針(防府市)
  • 今治市建築物等に関する福祉環境整備要綱
  • 建築物等に関する福祉環境整備要綱(宇和島市)
  • 太宰府市福祉環境整備指針
  • 長崎市の建築物に関する福祉環境整備指導基準
  • 生活環境整備指針(別府市)
  • 施設整備の基本的事項(身体障害者福祉街づくりのしおり)(宮崎市)
  • 川崎市福祉の街づくり環境整備要綱
  • 広島市福祉のまちづくり環境整備要綱、同実施要綱
  • 北九州市福祉都市環境整備要綱(建築物・駐車場等の建物関係のみ)
  • 京都市では、国際シンボルマーク掲示基準に準拠して、「福祉まちづくりのための建築物環境整備要綱」を制定しております。その主な内容は、玄関・出入口・傾斜路・通路・廊下・便所及びエレベーターが基準を満たしているものについては、15センチ角のシンボルマークを、玄関・出入口・傾斜路及び通路が基準を満たしているものについては、8センチ角のシンボルマークを、それぞれ建築主に交付しています。
  • 千代田区福祉環境整備要綱
  • 目黒区施設福祉環境整備要綱
  • 中野区の要綱:福祉のまちづくり環境整備要綱による
  • 杉並区福祉環境整備要綱
  • 武蔵野市福祉環境整備指導要綱
  • 東京都指導要項(調布市)
  • これまでは身障者トイレなどに特に基準に基づいてではなく貼っていたが、平成2年7月1日以降は、北区福祉のまちづくり整備要綱に基づいて貼ることになる。
  • 札幌市福祉の街づくり環境整備要綱
  • 県の福祉のまちづくり環境整備要綱(?)


2.「ない」と答えた自治体ではシンボルマーク(車いすマーク)を公立施設や民間施設に標示するよう指導していますか。

1 公立施設に限り標示するよう指導している 29
2 公立施設と民間施設に標示するよう指導している 20
3 現在は指導していないが計画はある 20
4 今後も特に計画はない 37

・福祉都市施設整備要綱によりシンボルマークを交付することにしていたが、実際は交付したことがなく、今年要綱を改正するときに条項を除外した。(宝塚市)


Ⅲ.あなたの自治体ではシンボルマーク(車いすマーク)をどのように入手していますか。

1 日本障害者リハビリテーション協会から購入している 25
2 独自に作っている 75
3 1または2以外から購入している 42
4 購入していない 47
無回答 4

(複数回答あり)
・建築業者が独自に作っている
・請負人側で入手している
・問い合わせで貴協会を紹介しているが、区では使用していない

Ⅳ.このシンボルマークは別紙のような目的で作られたものですが、そのことを知っていましたか。

知っていた 167
知らなかった 20
無回答 2
合計 189


2.シンボルマークに関するアンケート(当事者団体)
Ⅰ.貴団体としては、国際シンボルマーク(車いすマーク)は必要だと思いますか。

図:国際シンボルマーク
必要 17
必要でない 1
わからない 0
無回答 0
合計 18


1.「必要」と答えた団体は、その理由を教えてください。

1 障害者優先の建物を示すため 1
2 障害者も利用できる建物を示すため 12
3 その他 5


2.「必要でない」と答えた団体は、その理由を教えてください。

1 障害者だけを強調することはない 0
2 本来どの建物も誰でもが利用できるべきだ 1
3 その他 0

・現実的には難しい面があることはよく存じていますが、あえて理想的な意味の回答をいたしまた。

Ⅱ.国際シンボルマーク(車いすマーク)について、なにかご意見がございましたら下記にご記入ください。

  • 車いすのマークのように、障害種別を象徴すると、限定されるような印象を持つので、抽象的でもそれが国民一般に障害者のマークだと周知できるものを考えてもよいのではないかと考えます。
  • シンボルマークが車いすであることは抵抗がある。他の障害もあるので、もっと抽象的であってもよいと思われる。
  • 問題
    1マークのデザインは、ハンディキャップ全体を表現した方が良い。必要に応じて補助的に各障害別マークを利用したら良いのではないか。
    2マークの使われ方の基準があいまいであり、法的規制や基準をはっきりさせてほしい。例えば、バス・タクシーには車いすで乗れないのに使われている。福祉用品にやたらとマークがはられている。など
  • 老齢化社会においては、マークは障害者のみを象徴していない。施設のみでなく、車いすの入れる商店などにも貼付すべき。また利用できる施設は車いすを常備してもらいたい。タクシー等で車いすごと運ぶのは不便である。
  • 障害者の存在をより多くの人にイメージしてもらうためには、マークそのものは必要かもしれません。私たち聴覚障害者の立場から言えば、建物さえ障害者に利用できるようにすればそれでよい、という考え方で終わってほしくありません。
  • シンボルマークがついていると車いすのみと、他の弱者を拒絶する場合がある。例えば、杖や松葉杖を用いている人も含むようにしたい。
  • 大変わかりやすいマークで、今後も続けて必要だと思います。
  • 公共バスがアクセシブルでないのに貼ってあるのは誤用で直ちに撤回すべし。駐車場等一般の人が停めても罰則規定がないのもこのマークの権威を失わせている。
  • 特別問題を感じたことはなく、現状のままでさしさわりがないのではと思う。改めて問われると確かにマークのイメージから車いすの障害者に限定されることがあるかもしれない。
  • 本来なら、シンボルマークがついていない建物でもすべて車いす使用者が何の不自由もなく出入り出来るような構造にすべきだと思います。が、実情ではなかなかそうもいかないので、マークを目立たせることがとりあえず必要だと思います。
  • 特にありません。
  • 本来、障害者と健常者を区別するマーク等は存在すべきものでないが、現実では共に共存出来るような社会構造となっていない限り、現社会生活上必要である。一例として、障害者が外出した時、特定の所しか利用出来ない現状からマーク標示の必要性がある。
  • 本来は、前記Iの2であるべきですが、一般の理解を促すためには、この種のマークは必要でしょう。マークが不要な所は天国でしょうか。
  • 障害者と健常者の共用というところを強調することが大切。障害者専用というのでは、逆差別のように思われる。・車いすマークが、「障害者」を代表するマークとしてまちがわれないようにしてほしい。車いすマーク=視覚障害者も使える施設・設備とは必ずしもなっていない面があります。
  • この「シンボルマーク」は車いすの障害のみを表しているのでしょうか。または「障害者」のマークなのでしょうか。若し、後者の方でしたら、このマークは適当でないと思いますが…。


以上のアンケート結果より、次のようなことがいえると思われる。
<地方自治体の場合>

  1. ISAのマークはほとんどの団体で使用している。
  2. 使用している場所は建物、駐車場、公園、広報、駅、タクシー、バス、電車の順である。
  3. その他の3つのマークはほとんど使用していない。
  4. ISAマークの使用基準を持たない団体が多いが(63.5%)、何らかの整備要綱を持っている団体も3割程度みられる。
  5. ISAマーク普及のための積極的取り組みは何らかの形でなされている団体が多いが、20%の団体は特にその計画はしていない。
  6. ISAマークの購入先では、本来の配布先である「日本障害者リハビリテーション協会」は13.2%と少ない。
  7. 感覚障害者に関しては、独自のマークを作成している団体もわずかながらある。


<障害者団体の場合>

  1. ISAの必要性については、ほとんどの団体がそれを認めている。
  2. ISAアンケートに関連して、数々の貴重な意見が寄せられて、興味深かった。

Ⅳ.ISAの課題と今後

以上、ISAについてICTA委員会の活動、わが国における事情について報告した。「国際シンボルマーク検討委員会」では「ISAに関する国内調査」の結果を1991年度のICTA委員会に報告し、アクセスに関する諸問題を世界的レベルで解決するべく努力したい。また、国内でのISAをめぐる諸問題については、当面、「ISA使用マニュアル」を作成し、その正しい普及と啓蒙に努力していく予定である。高齢化社会をひかえ、わが国も、「真にハンディキャップをもつ人にとってアクセシブルなまち」を目標に各レベルで努力していかなくてはならないであろう。
(リハビリテーション研究 No.67、日本障害者リハビリテーション協会、pp.2-13,1991年3月)



主題 : 国際シンボルマーク使用指針(21ページ~39ページ)
発行 : 財団法人日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052  東京都新宿区戸山1-22-1
TEL : 03-5273-0601 FAX : 03-5273-1523