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第5回国連障害者の権利条約特別委員会

コーディネーターによる障害者権利条約第五回特別委員会報告書 付録 2

項目 内容
仮訳 JDF(日本障害フォーラム)
備考 ドラフト段階のレポートを翻訳したもので、その後最終版が出されている
  • 1. 1月24日から2月4日まで、条文草案第7条5項、第8条、第8条第2次案、第9条、第9条第2次案、第10条、第11条、第12条、第12条第2次案、第13条、第14条及び第15条に関する非公式協議が開かれた。
  • 2. 非公式協議では全般に作業部会条約草案が討議のたたき台として使用されたが、作業部会条約草案への政府修正提案集(コンピレーション)にまとめられている、前回の協議で提出された文書及び提案も考慮された。
  • 3. 協議は条文草案に関するできるだけ多くの問題を解決することを目的として開かれた。この報告書では、文言について一般的合意が得られた箇所と、今後の審議で解決する必要がある見解の相違が残された箇所とを示しているが、一般的合意に達した場合でも、条約の全体像が明らかになった段階で、今後各代表が条文草案を再検討することができなくなるわけではないということがはっきりと確認された。
  • 1. 1月24日から2月4日まで、条文草案第7条5項、第8条、第8条第2次案、第9条、第9条第2次案、第10条、第11条、第12条、第12条第2次案、第13条、第14条及び第15条に関する非公式協議が開かれた。
  • 2. 非公式協議では全般に作業部会条約草案が討議のたたき台として使用されたが、作業部会条約草案への政府修正提案集(コンピレーション)にまとめられている、前回の協議で提出された文書及び提案も考慮された。
  • 3. 協議は条文草案に関するできるだけ多くの問題を解決することを目的として開かれた。この報告書では、文言について一般的合意が得られた箇所と、今後の審議で解決する必要がある見解の相違が残された箇所とを示しているが、一般的合意に達した場合でも、条約の全体像が明らかになった段階で、今後各代表が条文草案を再検討することができなくなるわけではないということがはっきりと確認された。

第7条5項

  • 4. 条文草案第7条5項に関する討議を積み重ねた結果、「障害のある人の事実上の平等を促進することを目的とする措置は、障害に基づく差別と解してはならない。」という文言を残すことについては一般的合意が得られた。しかし、「措置」という言葉に「特別」或いは「肯定的」などの形容詞を付けて意味を限定するかどうか、また付ける場合はどちらの形容詞が望ましいかについては合意が得られなかった。
  • 5. 更に、「この条約に定義する」という文言を、「障害に基づく」に変更することについては、おおむね支持が得られた。
  • 6. 「別個の基準」という文言を残すか否かは、言語学的な言い回しの問題や実質的な内容の問題が解決されるかどうかによって決定されることとなった。特別措置の廃止に関する文言をどのようにするかについては全く合意が得られなかった。コーディネーターは最後の2つの文言に関し、今後各代表との作業を進めることを、ファシリテーター(リヒテンシュタインのStefan Barriga氏)に委ねた。
  • 7. 以上の協議を反映し、草案第7条5項は以下のように修正された。
    「第7条5項 障害のある人の事実上の平等を促進することを目的とする(特別/肯定的)措置は、障害に基づく差別と解してはならない。【ただし、その結果として、いかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず、】【これらの措置は、機会及び取扱いの平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない。/これらの措置は、平等な機会及び取扱いの目的を考慮しても、もはや正当化されなくなった場合、廃止されなければならない。】」

第8条

  • 8. 本条約に生命に対する権利に関する条文を入れることについて、委員会内で合意が得られた。また、その内容については、作業部会草案に基づいたものとすることが広く支持された。条文草案に「他の者との平等を基礎として」という文言を追加することについて、一般的合意が得られた。
  • 9. 一部の代表は、自然災害、武力紛争及び外国による占領などの危険のある状況に関する規定を盛り込んで、条文草案の内容を広げることを提案した。しかし中には、これに難色を示し、より簡素化されたアプローチを支持する代表もいた。協議の積み重ねの結果、作業部会草案におけるより簡素化されたアプローチをとることで一般的合意が得られた。しかし条約の他の部分に、公の緊急事態が発生したときや、危険な状況における障害者の保護を盛り込むことについても合意が得られた。そのような保護は、新たな第8条第2次案草案に盛り込まれているが、その最終的な配置は今後検討するということで了解された。
  • 10.その他にも、作業部会草案第8条を推敲したり、これに書き加えたりする提案が出された。
  • 11.これらの様々な見解を考慮し、コーディネーターは以下の文言を第8条として提案した。
    「締約国は、すべての人が生命に対する固有の権利を持っていることを改めて確認し、かつ、障害のある人が当該権利を他の者との平等を基礎として、効果的に享受することを確保するためのすべての必要な措置をとる。」

第8条第2次案

  • 12.条文草案第8条第2次案では、障害のある人の安全を保護する締約国の義務を、更に範囲を広げて扱っている。第8条草案に関する審議を考慮し、コーディネーターは、以下の文言を提案し、委員会での検討を求めた。
    「【締約国は、住民全般への危険のある状態において、障害のある人が、とりわけ脆弱であることを認知し、その保護のためにすべての実行可能な措置をとる。 】」
  • 13.「全ての実行可能な措置」という文言は、子どもの権利条約第38条4項からの引用である。
  • 14.第8条第2次案の文言を、「危険のある状態」の具体的な例を盛り込んで更に詳しくするか否かについては、見解の相違が見られた。この問題については、更に各代表との作業を進めるよう、ファシリテーター(エクアドルのEduardo Calderon氏)に委ねられた。

第9条

  • 15.非公式協議の結果、ファシリテーター(カナダのRebecca Netley氏)によって提案された草案に基づいて第9条を再構成することに関し、委員会において一般的合意が得られた。作業部会草案第9条(d)号、(e)号及び(f)号に含まれている論点は、ファシリテーター案では扱われていないが、これらは条約の他の条文で扱うことで、一般的合意が得られた。
  • 16.委員会はまた、条約に規定されている権利及び自由が侵害された場合の、効果的な救済の規定に関する提案を認め、後日これを再び採り上げることで合意した。

第9条第1項

  • 17.第9条1項に関して討議が重ねられた。非公式協議に続き、(作業部会草案の(a)号に基づく)第9条1項のファシリテーター案を以下のように修正し、使用することについて、一般的合意が得られた。
    「第9条1項 締約国は、障害のある人が法の前での人としての認知への権利をどこにおいても持っていること再確認する。」

第9条2項柱書き

  • 18.「法的能力」の意味を含め、第9条2項の柱書きの文言については、一般的合意は得られなかった。一部の代表は、「法的能力」とういう文言に憂慮を示し、もしこの文言を使用する必要があるなら、各国の母国語に適切に翻訳され、解釈されなければならないとした。各代表は会期中に、ファシリテーター案に基づく現在の文言を検討する必要がある。委員会はまた、「若しくは行為能力」という文言を残すかどうか検討しなければならない。この文言は女性差別撤廃条約などの、他の条約のこれに該当する条文では使われていないからである。
  • 19.委員会は、「可能な限り」という文言について、これは利用可能な資源の制約に言及することを意図しており、障害者の能力の程度をいうものではないと述べた。
  • 20.次回の委員会で各代表が検討すべき条文草案は、以下の通りである。
    「締約国は、障害のある人が他の人との平等を基礎としてすべての分野で【法的能力】 を持つことを認め、【その能力】【行為能力】を行使するために支援が必要な場合、可能な限り、次のことを確保する。」

第9条2項(a)号

  • 21.委員会は、第9条2項(a)号に関し、以下の文言にすることで一般的合意を得た。
    「この支援は、その者が必要とする支援の程度に比例し、その者の状況に適合したものであること、また、その者の法的権利を侵すものではなく、その者の意思と選好を尊重し、利益相反と不当な影響力がないこと。適切な場合には、こうした支援は定期的で独立した審査のもとにおかれること。」

第9条2項(b)号

  • 22.第9条2項(b)号については委員会で合意は得られなかった。一部の代表は、2項(b)号の論点は、2項(a)号で述べられている支援の継続において十分扱われているので不要だとの見解を示した。2項(b)で別にまた言及することで、締約国による乱用を助長し、また全ての障害者が法的能力を持つという概念と意思決定支援の概念とが損なわれてしまう可能性があるからである。しかし、2項(b)号の文言は具体的すぎると感じながらも、個人的代理人と、その利用に関する保護について別途言及することを望む代表もいた。
  • 23.第9条2項(b)号の現在の文言は以下の通りである。
    「締約国が、最後の手段としての個人的代理人任命の手続き(法により確立される)を規定する場合、そうした法は、任命及び個人的代理人によって下された決定に対する、権限のある独立かつ公平な機関による定期的審査を含む、適切な法的保護を提供する。個人的代理人の任命とその行動は、本条約並びに国際人権法に合致した原則によって導かれる。」

第9条第2次案

  • 24.草案第9条の協議中、条約のどこかに障害のある人の司法へのアクセスを保障する文言を含めることに対し、多くの代表の支持が得られた。大部分の代表は、これを別の条文にする案を支持した。一部の代表が非公式に会合を持ち、この点を含んだ第9条第2次案として別の条文草案を作成した。
    「締約国は、捜査段階や他の予備的段階を含むすべての法的手続きにおいて、直接、間接の関係者として、障害者の効果的な役割を促進し、障害者に他の者との平等を基礎として効果的な司法へのアクセスを確保するものとする。」

第10条1項

  • 25.第10条1項の作業部会草案に関して、委員会で一般的合意が得られた。ただし、2箇所について修正案が提出された。
  • 26.まず、第10条1項(a)号中の、「障害を理由とする差別なしに」という文言を削除し、柱書きに「他の者との平等を基礎として」という文言を追加することで一般的合意が得られた。
  • 27.次に、一部の代表が、第10条1項(b)号の、「いかなる場合にも障害を理由として」という文言中の、「障害」という言葉の後に、「だけ」或いは「のみ」という言葉を入れることを提案した。ある代表は、この問題の別の解決方法として、「障害の存在が自由の剥奪を正当化しない。」という文言を同項の最後に加えることを提案した。一部の代表は更に文言を検討する必要があるとしたが、この提案を協議のたたき台とすることで一般的合意が得られた。また、第10条1項(b)は本質的に1項(a)号を詳しくした内容なので、余計であるとする代表もいた。この問題の更なる協議は、ファシリテーター(トリニダード・トバゴのGaile Ramoutar氏)に委ねられた。
  • 28.協議の結果、第10条1項の草案は現在以下の通りである。
    「第10条1項 締約国は、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。
    (a) 障害のある人が身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
    (b) 障害のある人がその自由を違法に又は恣意的に奪われないこと並びにあらゆる自由が法律で定めることなしに奪われず、かつ、いかなる場合にも【障害だけ/のみを理由として奪われないこと】【障害の存在が自由の剥奪を正当化しないこと】。」

第10条2項

  • 29.第10条2項柱書きの最後の部分を、「最低限、次のことを障害のある人に保障する。」とすることについて、委員会内で一般的合意が得られた。
  • 29の2.自由の剥奪が起こる可能性がある様々な状況の簡単なリストを第10条2項の柱書きに入れるという提案に対し、おおむね支持が得られた。「市民的、犯罪的、行政的或いはその他のプロセスを通じ」という文言を、柱書きの「自由」の前に入れることに関して、多くの支持が得られた。
  • 30.国連憲章前文と同様に、第10条2項(a)号の「尊厳」の後に「及び価値」を加えることで一般的合意が得られた。また、第10条2項(a)号の後半部分を、「・・・及びその人権を尊重し、この条約の目的及び原則に従い、障害に合理的に配慮する方法で、取り扱われること。」とするという提案についても一般的合意が得られた。
  • 31.第10条2項(b)号の、「利用可能なフォーマットによる十分な情報」という文言を「十分かつ利用可能な情報」と変更し、「法的権利及び」を「自由の剥奪の理由」の前に入れることについて一般的合意が得られた。更に、この項の終わりの部分に、自由権規約第9条2項と同様、「迅速に」という言葉を「提供されること」の前に入れることが提案された。
  • 32.コーディネーターは、さしあたっては、「及び、公正な発言の機会を得る(これには、発言の権利も含まれる)こと」という文言を第10条2項(c)号(i)の最後に入れ、この項で、裁判に訴えるプロセスに関する見解を示すことを提案した。委員会では、また、第10条2項(c)号(ii)の文言を以下のように変更することについて、暫定的な合意が得られた。「自由の剥奪について、他の者との平等を基礎として、定期的な審査を含め、審査を求めること。」
  • 33.第10条2項(d)に盛り込まれている見解については、委員会内で十分な支持が得られたが、その配置については2つの意見に分かれた。一つは、作業部会条草案を短くし、「この条約の定めに反し、自由が奪われた場合には、賠償を受けること」という文言にするものであり、もう一つは、この2項(d)号を削除し、自由権規約第9条5項に基づき、新に「違法に自由を剥奪された障害のある人は、賠償を受ける権利を有する。」という文言の第10条3項を別途設けるというものである。この問題は関心のある代表の間で協議するよう、ファシリテーターに委ねられた。
  • 34.協議の結果、現在、第10条2項は以下のような文言となっている。
    「第10条2項 締約国は、障害のある人が【市民的、犯罪的、行政的或いはその他のプロセスを通じ】自由を奪われた場合には、最低限、次のことを障害のある人に保障する。
    • (a) 人道的にかつ人間の固有の尊厳及び価値を尊重して、及びその人権を尊重し、この条約の目的及び原則に従い、障害に合理的に配慮する方法で、取り扱われること。
    • (b) 法的権利及び自由の剥奪の理由に関する十分かつ利用可能な情報を【迅速に】提供されること。
    • (c)次のことのための法的その他の適当な支援の速やかな利用を提供されること。
    • (i) 自由の剥奪の合法性を裁判所その他の権限のある独立のかつ公平な機関において争うこと、【及び、公正な発言の機会を得る(これには、発言の権利も含まれる)こと】(この場合には、その者は、いかなるこのような訴えについても、速やかな決定を受けるものとする。)。
    • 【(ii) 自由の剥奪について、他の者との平等を基礎として、定期的な審査を含め、審査を求めること。】
    • 【(d) この条約の定めに反し、自由が奪われた場合には、賠償を受けること。】
    • 【第10条3項 違法に自由を剥奪された障害のある人は、賠償を受ける権利を有する。】

第11条

第11条新1項

  • 35.一部の代表が、この条文草案には、他の人権条約には盛り込まれている、拷問の利
    用に関する重要なかつ無条件の禁止が欠けていると指摘した。そして、自由権規約第7条の第1文を引用した第11条1項を新に入れることで、この問題を解決すべきだと提案した。同文は、以下の通りである。「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。」この提案に対し、「障害のある何人も」という文言を用いることで、委員会内で一般的合意が得られた。委員会はまた、作業部会草案2項の最初の文言を付け加えることで合意し、その結果、この項は自由権規約の第7条を正確に反映するものとなった。第11条1項は、現在以下のような文言となっている。
    「第11条1項 障害のある何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、締約国は、障害のある人が十分な説明に基づくその自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けることを禁止し、このような実験から障害のある人を保護する。」

現行の第11条1項

  • 36.第11条2項となる作業部会草案の1項について、委員会において広く合意が得られた。
    「第11条2項 締約国は、障害のある人が、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上、教育上【、医学上/衛生上、】その他の措置をとる。」

現行の第11条2項

  • 37.作業部会草案第11条2項の内容について、委員会において広く合意が得られた。しかし、2つの問題について見解の相違が見られた。
  • 38.第一に、「十分な説明に基づく、その自由な同意」という文言について、議論が生じ、言葉を加え、「十分な説明に基づく、その自由な、かつ事前に明確に表明された同意」とすることが提案された。一部の代表は、現在の文言の内容は、国際的な人権法において十分理解されているとの考えを示し、事前に、かつ明確に同意を表明する必要があるということは既に事実上盛り込まれていると言えるとした。自由権規約委員会は自由権規約第7条に関する一般的意見20号の中でこの見解を示している。他の代表は、本条約は障害者に合わせた内容とする必要があるので、「明確に表明された」同意という特別な規定が必要だとした。この問題の更なる審議は、ファシリテーター(スウェーデンのCarina Martensson氏)に委ねられた。
  • 39.第二に、「又はその他の形式の」という文言を「医学的又は科学的」の後に付け加え、「医学的又は科学的又はその他の形式の実験」とするという提案があった。この文言案についてはファシリテーターに委ねられた。
  • 40.最後に、第11条2項全体について、一部の代表は構成の変更を提案したものの、委員会において一般的合意が得られた。全ての代表は、「締約国は、障害のある人が十分な説明に基づくその自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けることを禁止し、このような実験から障害のある人を保護する。」という文言については同意した。また、障害のある人を「いかなる実際上又は認知上の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的介入又は強制的施設収容」から保護するという問題と原則についても一般的合意が得られたが、その的確な文言(「施設収容」及び「認知上の」機能障害の意味を含む)については、この規定の配置と共に、更に検討が必要である。しかし、その後の協議において、これらの問題を第12条第2次案に入れるのが適切であるという意見が、広く支持された。
  • 41,更に、第11条草案に障害者が収容される機関のモニタリングに関する規定を盛り込むという提案が出された。委員会はこの提案について審議しなかったが、後日改めて採り上げることを決定した。

第12条

  • 42.多数の代表が第12条の作業部会草案について、繰り返しが多いことを指摘したので、コーディネーターは協議のたたき台として、現在も作業中であることを了承した上で、ファシリテーター案を使用することを提案した。
  • 43.第12条では、介入・治療への自由なインフォームドコンセントの権利とは別の問題として、暴力及び虐待からの自由に焦点を絞り、前者は第12条第2次案で扱うことで、委員会内で一般的合意が得られた。

第12条1項ファシリテーター案

  • 44.ファシリテーター案の第12条1項から「及びその家族」を削除することで一般的合意が得られた。しかし一部の代表が、2項の「障害のある人」の後にこれを挿入することを提案した。
  • 45.「女性及び少女」或いは「女性及び児童」は特に暴力や虐待に対し弱い存在であることが広く支持されたが、この問題をどこで、またどのように言及するかについては何も合意は得られなかった。関心のある代表は、この問題の適切な扱い方について検討する協議に参加するよう求められた。
  • 46.委員会は、第12条1項3 中の、暴力及び虐待の形態リストの取扱いに関する多数の提案を検討したが、選択肢を一つに絞ることはできなかった。関心のある代表は、ファシリテーター(チェコ共和国のIvana Grollova氏と共にこの問題の解決に取り組むよう求められた。
  • 47.協議の内容を考慮し、第12条1項は現在以下のような文言となっている。
    「第12条1項 締約国は、家庭の内外における【あらゆる形態の搾取及び暴力、虐待から】【・・・を含む、あらゆる形態の危害から】【遺棄、暴力、傷害又は精神的若しくは身体的虐待、拉致、いやがらせ(ハラスメント)、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は経済的及び性的搾取及び虐待を含む搾取を含む、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待から】障害のある人を保護するため、すべての適当な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。」

第12条2項ファシリテーター案

  • 48.第12条2項に関し、1項と同様、障害のある人の家族或いは介助提供者に言及する必要性について見解の相違は見られたものの、一般的合意が得られた。また、一部の代表が、2項は1項と重複しているので不要であるという見解を示した。現在第12条2項の文言は、以下の通りである。
    「また、締約国は、とりわけ、障害のある人【及びその介助提供者】に対する適切な形態の支援(暴力及び虐待の事例を避け、認知し、報告する方法に関する情報の提供及び教育を含む。)を確保することを通じて、暴力及び虐待を防止するためのすべての適当な措置をとる。」

第12条3項ファシリテーター案

  • 49.公の緊急事態における障害のある人の問題を盛り込むという提案は、委員会で協議されなかったが、委員会は、この問題を扱った別の条文草案に関する協議の際に、改めて採り上げることを了承した(第8条第2次案に関する審議を参照)。

第12条4項ファシリテーター案

  • 50.障害のある人によって利用される機関及びプログラムのモニタリングに関する項について、委員会は明確に支持を表明した。また、「監視」の前に「定期的」という言葉を追加することについて、多くの支持が得られた。
  • 51.第12条4項の範囲について、委員会で協議された。一部の代表は、4項の範囲を広げるよう提案したが、障害のある人によって利用されるサービス及び機関を含んではいるが、銀行などの一般大衆によって利用されるサービス及び機関までには広げるべきではないという点で一般的合意が得られた。ファシリテーターは代表と共に、この点に関して適切な文言を作成するよう要請された。
  • 52.委員会での協議の結果、第12条4項は第12条3項とされ、現在以下のような文言となっている。
    「締約国は、【障害のある人が他の者から分離して生活する、若しくはそのサービスを利用する】官民双方のすべての機関及びプログラムが、市民社会との連携のもとに、独立した機関(障害のある人を含むものであり、暴力もしくは虐待を予防するためにモニタリング報告を社会全般に提供するもの)によって定期的かつ効果的に監視されることを確保する。」

第12条5項ファシリテーター案

  • 53.第12条5項について、以下のような若干の再整理を要するとしながらも、委員会内で一般的合意が得られた。また、「福祉」、「認知的」及び「価値」という言葉を5項に追加することに対して、支持が表明された。協議の結果、第12条5項は第12条4項とされ、現在以下のような文言となっている。
    「締約国は、いかなる形態の暴力、若しくは虐待かを問わず(保護施策の提供を通じて生じた暴力若しくは虐待を含む)、その被害者である障害のある人の身体的【認知的】及び精神的な回復及び、リハビリテーション、並びに社会的再統合を促進するためのすべての適当な措置をとる。こうした回復及び再統合は、その者の健康【及び福祉】、自己尊重、尊厳【、価値】、並びに【自律】を涵養する環境で行われる。」

第12条6項ファシリテーター案

  • 54.第12条6項について、委員会内で一般的合意が得られた。ある代表が、「・・・及び、適切な場合には、裁判に参加すること」という文言(作業部会草案の文言)を残すべきであると提案した。しかし、委員会全体の意向としては、これはこの項の内容に含まれており、改めて説明する必要はないということであった。
  • 55.ある代表は、この項で暴力及び虐待の防止についても扱うべきであると提案した。しかし他の代表は、防止については他の箇所で扱われており、ここで繰り返す必要は無いとの考えを示した。関心の有る代表は、この問題をファシリテーターと協議するよう求められた。
  • 56.協議の結果、第12条6項は第12条5項とされ、現在以下の文言となっている。
    「締約国は、障害のある人に対する暴力及び虐待の事例が発見され、調査され、適当な場合には、訴追されること、並びに、こうした事例では、保護施策が利用できることを確保するために、効果的な法制度及び政策を設ける。」

第12条第2次案

  • 57.一部の代表が、非自発的治療は拷問に等しいので、作業部会草案にあるように第11条の下で引き続き扱われるべきであるとの見解を示した。しかし大多数の代表は、介入への自由なインフォームドコンセントの権利に関する問題は、それだけに焦点を当てた別個の条文で扱うべきであるとの意見を示した。

第12条第2次案1項

  • 58.第12条1項を、障害のある人の全体性を、他の者との平等を基礎として保護する締約国の積極的な義務の規定から始めることについて、委員会内で一般的合意が得られた。第12条第2次案1項は、以下の通りである。
    「第12条第2次案1項 締約国は、障害のある人の【身体的及び精神的】全体性を、他の者との平等を基礎として、保護する。」

第12条第2次案2項

  • 59.作業部会草案の第11条2項にある、「いかなる実際上又は認知上の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的介入又は強制的施設収容から、障害のある人を保護する」という締約国の義務を、第12条に移すことについて、一般的合意が得られた。
  • 60.一部の代表は、第12条第2次案2項で、介入の種類(不妊手術、中絶或いは臓器切除など)を具体的に列挙することを提案した。また、一部の代表は、この問題は第14条で扱うのが最も適切であると提案した。
  • 61.第12条第2次案2項は以下の通りである。
    「第12条第2次案2項 締約国は、いかなる実際上【又は認知上】4 の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的介入又は強制的施設収容から、障害のある人を保護する。」

第12条第2次案3項

  • 62.ファシリテーター案の第12条1-3項、1-4項及び1-5項(草案第12条に関する協議に基づき変更)は一つにまとめ、もっと一般的な義務に変えるということで、委員会内で一般的合意が得られた。
  • 63.一部の代表は、1―3項、1-4項及び1-5項を条文中に残すことを希望したが、その他の代表は、既に条文草案第9条で、障害のある人が法的能力を行使できない状況について規定しているとの見解を示した。同意なしでの介入への権利を繰り返すことは、障害のある人が自由なインフォームドコンセントを表示する法的能力を持つという仮定を覆す危険があり、条約の精神に反してしまう可能性がある。
  • 64.他の代表は、非自発的な治療に関する規定を入れるのなら、それが非差別を基礎として実施されるという規定も入れるべきであるとの見解を示した。つまり、非自発的介入の根拠を一つ一つ挙げるよりも、むしろこの項では、非自発的介入(例えば、同意を得ることが不可能な医療的緊急事態が発生した場合など)の規則は、障害のあるなしに関わらず、全ての人にとって同じであることを明確に記すべきであるというのである。
  • 65.このような規定に関して、一部の代表が支持を表明した。そして条文の草案を推敲するようファシリテーターに委ねられた。第12条第2次案3項は以下のようになった。
    「非自発的介入を含む、医療的緊急事態若しくは公衆衛生への危険の問題がある場合、障害のある人は他の者との平等を基礎として扱われる。」

第12条第2次案4項

  • 66.全ての代表が、この項が必要であると同意したわけではなかったが、一部の代表は、締約国は、自由なインフォームドコンセントへの権利に対する例外の適用を最小限に抑え、また保護施策を提供する義務を負うという規定を、条約草案に盛り込むことを提案した。以下の提案を検討するという点では一般的合意が得られた。
    「第12条第2次案4項 締約国は、障害のある人の非自発的治療に関して以下を確保する。
    • (a) 代替策の積極的な促進によって最小限に抑えること。
    • (b) 法律に定められた手続きに従い、かつ適当な法的保護施策の適用を伴い、例外的な状況でのみ実施されること。
    • (c) 可能な限り最も制約の少ない環境で実施され、当事者の最善の利益が十分に考慮されること。
    • (d) その人にとって適当であり、治療を受ける人若しくはその家族への金銭的負担なしに提供されること。」

第13条

柱書き

  • 67.柱書きの、「適当な措置」の前に「すべての」を加え、「意見」のあとの「及び」を「権利を含む」に書き換え、「及び考え」を「情報」の後に入れることにより、他の条約と同じ様にするという点で、一般的合意が得られた。
  • 68.ファシリテーター(モロッコのOmar Kadiri氏)によるコメントに引き続き、コーディネーターは、ファシリテーター案中の「適切な形態のコミュニケーション・・・・コミュニケーション手段」という文言を「障害のある人が選択した手話、点字、及び拡大的及び代替的なコミュニケーション、他のすべての利用可能な手段、コミュニケーションの様式及び形態」と書き換えることを提案した。
  • 69.ある代表は、条文草案に「思想の自由」の概念を加えることを提案した。委員会は、思想の自由は自由権規約の表現の自由から引用した別の条文で扱われていると指摘し、この問題を後日改めて採り上げるとした。
  • 70.以上の協議の結果、柱書きは以下のようになった。
    「締約国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、障害のある人が選択した手話、点字、及び拡大的及び代替的なコミュニケーション、他のすべての利用可能なコミュニケーション手段、様式及び形態を通じて、情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む表現及び意見の自由に対する権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。この措置は次のことを含む。」

第13条(a)項

  • 71.第13条(a)項ファシリテーター案を使用することについて、一般的合意が得られた。
  • 72.しかし、一部の代表は、「公共の情報」という文言が、何らかの方法で限定されなければ、制限無く情報を提供できるという意味になってしまうと憂慮を示した。この問題を解決するために、委員会において、多数の提案が出された。まず、(a)項中の「公共の」という言葉を、「広く提供されている」或いは「公的」などの言葉を使って限定するという提案がいくつか出された。次に、同項を「適当な措置をとること」という文言で終える提案が出された。そして第3の提案として、「要請に応じて」という文言を加えるという案が出された。
  • 73.これらの提案については、何も一般的合意は得られなかった。他の代表は、最初からアクセシビリティーを考えて設計されたシステムやフォーマットなら、政府が多額の余計な費用を支払う必要はないので、限定する言葉は必要ないと述べた。
  • 74.協議の結果、第13条(a)項は以下のようになった。
    「(a)【公的な/公共の/公的で公共の/広く提供されている公的な】【社会全般に対して意図された/締約国及び他の公的機関が社会全般に提供する】情報を障害のある人に【要請に応じて】適時に、障害のある人が追加の費用を伴わず、多様な障害に対して適当な利用可能な形態及び技術で【提供するための適当な措置をとること/提供すること。】」

第13条(b)項

  • 75.コーディネーターは(b)項の終わりの部分として、「是認し、促進すること」という文言を暫定的に採用することを提案した。委員会は、一貫性を保つために、「様々なコミュニケーションの様式」を、さしあたって、柱書きで使われている文言に書き換えることで同意したが、第13条(b)項の更に簡潔で明確な表現についての同意は得られなかった。
  • 76.以上の結果、第13条(b)項は以下のようになった。
    「第13条(b)項 公的な言葉のやり取りにおいて、障害のある人が選択した手話、点字及び、拡大的及び代替的なコミュニケーション及び、他のすべての利用可能なコミュニケーション手段、様式及び形態の使用を【是認し、促進すること。】」

第13条(c)項

  • 77.委員会は再度、(c)項の「障害のある人が選択した・・・・・コミュニケーションの様式」に換えて、柱書きの文言を使用することに関し、暫定的に同意した。
  • 78.しかし、(c)項の最後に、「教育プログラムを提供すること」若しくは「研修の機会を促進すること」という文言を入れることについては、同意は得られなかった。
  • 79.委員会は、第13条の条文草案中に(c)項を残すことで同意したが、その適切な配置については今後の審議に委ねられた。
  • 80.第13条(c)項は現在以下のような文言となっている。
    「第13条(c)項 障害のある人及び、適当な場合には、その他の関係者に対し、手話、点字及び、拡大的及び代替的なコミュニケーション、及び他のすべての利用可能なコミュニケーション手段、様式及び形態の使用を教育することを目的とする【教育プログラムを提供すること/研修の機会を促進すること】。」

第13条(d)項

  • 81.委員会は、第13条(d)を条約の他の箇所にある別の同様な項と統合し、一般的義務に関する第4条に移すという、第4回特別委員会で採択された決議5 を確認した。

第13条(e)項

  • 82.委員会は、第13条(e)項を第17条(教育)及び第19条(アクセシビリティー)との関連で後日検討することを決定した。

第13条(f)項及び(g)項

  • 83.委員会は、第13条(f)項を残すことで、一般的合意に達したが、民間主体によって提供される情報が第13条(a)項で扱われているとするかどうかに関する問題は未解決のまま残された。
  • 84.作業部会草案中にある、「奨励すること」という文言を各項に入れるかどうか、或いは「促すこと」若しくは「義務づけること」を使って強化するかどうかについては、全く合意が得られなかった。協議中、この問題を討議する際には、各代表は、最多の国々の関心を集めた条約を策定する必要があることを心に留めておかなければならないということが再認識された。
  • 85.一部の代表が、(f)項と(g)項を統合するという提案をした。また、別の代表は、柱書きに加え、(f)項或いは(g)項、若しくは両方の項で、或いは別の項を設けて、インターネットに言及することを提案した。
  • 86.第13条(f)項及び(g)項は、現在以下の通りである。
    「第13条(f)項 公衆にサービスを提供する民間主体が、その情報及びサービスを障害のある人にとって利用可能かつ使用可能な形態で提供することを【奨励すること/促すこと/義務づけること】。」
    「第13条(g)項 マスメディアが、そのサービスを障害のある人にとって利用可能なものにすることを【奨励すること/促すこと/義務づけること】。」

第13条(h)項

  • 87.政府修正提案集(コンピレーション)の第13条(h)項の概念を残すことが望ましいかどうかについて合意は得られなかった。しかし、今後の会議で更に詳細に検討されるまでは、これを残しておくということが決定された。
  • 88.第13条(h)項は、更なる審議が必要であるが、以下の文言となっている。
    「第13条(h)項 国単位の手話を【発展させること/認知すること/促進すること】。」

第13条(i)項、(j)項及び(k)項

  • 89.ファシリテーター案の第13条(i)項、(j)項及び(k)項の概念は、条文草案の第13条に入れるべきではなく、後日、第19条(アクセシビリティー)の草案に関する協議の際に、検討するということについて、委員会内で一般的合意が得られた。

第14条

  • 90.第14条の作業部会草案の内容を2つの別の条文に分けることに対して、広く支持が得られた。プライバシーの問題を扱っている作業部会草案の(1)項は、第14条に残される。家庭及び家族に関する問題を扱っている作業部会草案の(2)項は、新たな第14条第2次案となる。
  • 91.委員会は、作業部会草案の(1)項中の多くの箇所が自由権規約の同様な規定から引用されていることを指摘した。更に、第14条草案と、同じく医療記録のプライバシーに関する問題を扱っている第21条(j)及び第21条(l)草案の間に重複しているところがあることも指摘した。
  • 92.協議の積み重ねの結果、委員会は、自由権規約の第17条の文言(子どもの権利条約の第16条にも見られる)を、若干の修正をした上で条文の基礎として使用することで、一般的合意に達した。
  • 93.第一の修正は、「居住場所若しくは生活様式に関わらず」という文言を加えることによって、障害のある人の特別な状況を考慮することである。一部の代表はこの文言は不必要に長いと指摘したが、この修正に関して一般的合意が得られた。
  • 94.第二の修正は、より最新のコミュニケーション技術を考慮し、用語を更新することである。移民労働者の権利に関する条約でも使われている文言を基にした、「通信、若しくは他の種類のコミュニケーション」という文言を使うことについて、一般的合意が得られた。
  • 95.協議の結果、第14条草案は、現在以下のようになっている。
    「障害のある何人も、居住場所若しくは生活様式に関わらず、そのプライバシー、家族、家庭、若しくは通信、若しくは、他の種類のコミュニケーションに対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。すべての障害のある人は、こうした干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を持つ。」

第14条第2次案

  • 96.委員会は、作業部会草案が意図しているのは、締約国が、家族の規模、結婚及び生殖などの問題に関する政策を含め、一般大衆を対象とした家庭及び家族の問題に関する政策を変更するよう促進することではないと指摘した。この条文の目的は、このような問題に関して、障害のある人が他の者との平等を基礎として扱われるようにすることだという点で、委員会において一般的合意が得られた。
  • 97.作業部会草案の第14条(a)項、(b)項及び(c)項は、それぞれ第14条第2次案(1)項(a)号、(b)号及び(c)号とされ、作業部会草案の第14条(d)項、(e)項及び(f)項はそれぞれ第14条第2次案(2)項、(3)項及び(4)項とされることについて、委員会において一般的合意が得られた。
  • 98.第14条第2次案(a)項を削除し、その概念を(b)項及び(c)項にまとめるという提案が出された。一部の代表がこの提案を支持した(その内容については特別委員会のウェブサイト、www.un.org/esa/socdev/enable/rights/.参照)

第14条第2次案1項柱書き

  • 99.作業部会草案の第14条(2)項の柱書きを、第14条第2次案(1)項の柱書きとすることで、一般的合意が得られた。更に、「他の者との平等を基礎として」という文言を挿入することについても合意に達した。その結果、現在柱書きは以下の通りである。
    「第14条第2次案1項 この条約の締約国は、婚姻及び家族関係に関わるすべての事項において、障害のある人に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとるものとし、特に、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。」

第14条第2次案(1)項(a)号

  • 100.一部の代表が、(1)項(a)号の文言は、表現があからさますぎて、一般的合意に達することができないと指摘した。
  • 101.委員会は、この項の基本的な問題は、大部分の国が歴史的に見て、家族関係や婚姻の問題に関して、障害のある人に対し、一般大衆と違った扱いをしてきたという現実があることであると述べた。締約国が障害のある人に対し、このような違った扱いをしてはならないという、この項の基本的なアプローチについては、全く異論はなかった。更に、この項が、決して様々な国及び文化における一般大衆に対する一般的な規則について意見を述べたり、あるいは影響を与えようとしたりするものではないことが、了承された。
  • 102.後者の考え方を反映し、一部の代表が、「国内の法律に従って」或いは「各国の国内法令、国の習慣、及び国の伝統に従って」という文言の追加に対する支持を表明した。しかし、これらの文言の追加により、条文の内容が、障害のある人を社会の他の者と全く区別せずに扱うというこの条文草案の基本的な義務に反する法令や伝統に左右されることとなってしまう可能性があることが、委員会によって指摘された。
  • 103.一部の代表が、この条文中に詳しい事項があまりに多く規定されていることで、既存の権利が侵害されたり、或いは権利について同意されていないことが強いられたりする可能性があるとして、この項の削除を支持した。しかし、他の代表は、障害のある人はこの分野での差別的な扱いに対し、特に弱い存在であるといえるため、この問題を扱った項は残す必要があるとの意見を表明した。
  • 104.その他の提案は、以下の通りである。
    ― 「セクシャリティ」を削除し、「法的結婚を通じて」を加える。
    ― 文章を、「障害のある人のセクシャリティは、他の者との平等を基礎として尊重さ
    れる。」と書き換える。
  • 105.委員会は、スペイン語での草案作成に関して、「親たること」では男性と女性の両方に言及しなければならないという点を指摘した。
  • 106.協議の結果、第14条第2次案(1)項(a)号は、現在以下の文言となっている。
    「第14条第2次案(1)項(a)号 障害のある人が、【各国の国内法令、国の習慣、及び国の伝統にしたがって】【そのセクシャリティを経験し】【法的結婚を通じて】性的その他の親密な関係を持ち、かつ、親たることを経験する平等の機会を否定されないこと。」

第14条第2次案(1)項(b)号

  • 107.この草案のたたき台として、自由権規約第23条(2)及び第23条(3)を引用することについて、委員会内で一般的合意が得られた。
  • 108.「かつ、夫と妻が平等なパートナーであること」という文言を追加する提案は、一部の代表から支持された。
  • 109.委員会は、草案の内容が、障害のある人と障害のない人との結婚を含んでいないと解釈される可能性があると指摘した。この問題はファシリテーター(南アフリカのAnthony Miyeni氏)に委ねられ、できれば、「男女」という表現ではなく、「障害のある人」という表現を使用しながら、この曖昧性を解決する文言を見つけるよう要請された。
  • 110.協議の結果、第14条第2次案(1)項(b)号は、現在、以下の文言となっている。
    「婚姻をすることができる年齢の障害のあるすべての【男女】【人】が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻し及び家族を形成する権利が認知されること。【かつ、夫と妻が平等なパートナーであること。】」

第14条第2次案(1)項(c)号

  • 111.第14条第2次案(1)項(c)号の前半部分について、委員会内で一般的合意が得られた。
  • 112.(c)号の後半部分にある、「性と生殖及び家族計画に関する教育」という文言は、この引用元である女性差別撤廃条約の第16条(1)項(e)号の内容から更に踏み込んだ内容であると指摘された。また、この条文は、いかなる場合においても、一般的に適用される国内法令が許容する範囲での、各国政府の家族計画或いはそれに関連する一般的な政策の変更を求めたり、これに損害を与えたりすることを意図するものではないということについて、一般的合意が得られた。そして、「一般的に適用される国内法令が許容する範囲で」という文言の追加に対して、おおむね支持が得られたが、これによってこのアプローチが理解されたことが確かめられた。しかし、一部の代表は、「並びに情報にアクセスできる権利」から最後までを削除することを希望した。
  • 113.強制的不妊手術、強制的中絶或いは強制的な臓器切除については、条約内のいずれかの箇所において明確に禁止しなければならないという意見に対して、多数の支持があったことが、委員会によって指摘された。しかし、この問題をどこで扱うかに関しては、全体の合意は得られなかった。(第12条第2次案に関する協議を参照。)「並びに生殖能力を保持する平等な機会」という文言を(c)号に追加する提案は一部の代表から支持されたが、この概念は内容にこめられているという代表もあった。
  • 114.協議の結果、第14条第2次案(1)項(c)号の文言は次のようになった。
    「障害のある人が、【一般的に適用される国内法令が許容する範囲で】他の者との平等を基礎として、子どもの数及び出産間隔について自由にかつ責任をもって決定する権利、【並びに情報にアクセスできる権利、性と生殖及び家族計画に関する教育にアクセスできる権利、並びにこれらの権利を障害のある人が行使できるようにするために必要な手段にアクセスできる権利、並びに生殖能力を保持する平等な機会】。」

第14条第2次案2項

  • 115.「並びに、あらゆる事例において、子どもの利益が最も重要であること」という文言の追加について、委員会内でおおむね支持が得られた。
  • 116.「養子縁組」という用語に関わる問題が委員会で討議された。「国内法令にこれらに類する制度が存在する場合」という文言は、この問題を解決する目的で女性差別撤廃条約の第16条(1)項(f)号から借用したものであることが指摘された。この問題に憂慮を示している代表は、現在の文言でよいかどうか確認するため、ファシリテーターと会合を持つよう求められた。
  • 117.女性差別撤廃条約第16条(1)項(f)号の「権利並びに義務」という文言は、作業部会草案では省かれていたことを委員会が指摘した。バランスをとるために、この文言を残すという意見に支持があったが、反対を唱える代表もいた。関心のある代表はこの問題をファシリテーターと協議するよう要請された。
  • 118.作業部会草案2項の後半部分は、同項の前半部分で言及されている状況においてのみ適用される支援であるという意味にとられる可能性があると、委員会が指摘し、最後の文の冒頭部分の文言(「これらの権利を保障する目的で」)を削除すれば問題が解決されると述べた。この文言に関連する別の問題が作業部会草案の脚注49で提起されている。それは、締約国が必要な資源を確保できるかどうかに関する問題である。委員会はこの脚注を残すことで合意した。
  • 119.協議の結果、第14条第2次案2項は、現在次のようになっている。
    「この条約の締約国は、子どもの後見、監督、管財、養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度についての障害のある人【の権利並び義務】【に対する差別がないこと】並びに、あらゆる事例において、子どもの利益が最も重要であることを確保する。締約国は、障害のある人が子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、その者に適当な支援を与える。」

第14条第2次案3項

  • 120.どの子どもも、子どもの障害、或るいは1人又は両方の親の障害を理由に、その親から分離されないことについて、委員会内で一般的合意が得られた。委員会は、いかなる分離も、子どもの最善の利益のためでなければならず、またこのための審査は、障害のない人と同じ基準に基づいて行われなければならないという点で、合意に達した。
  • 121.「直接的或いは間接的に」という文言を削除することについて、一般的合意が得られた。また、司法の審査の概念を、法律によって確立された他の形態の審査へと拡大するという提案に対しても、反対意見は上がらなかった。協議の結果、第14条第2次案3項は、現在以下のようになっている。
    「締約国は、子どもがその意思に反して、その親から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が、司法の審査及び法律によって確立された他の形態の行政上の審査に従うことを条件として、適用可能な法律及び手続に従って、その分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定するときは、この限りでない。いかなる場合も、子どもは、障害のある親から、子どもの障害、若しくは、親一人、若しくは親二人の障害【を理由に/の存在のために】分離されない。」

第14条第2次案4項

  • 122.委員会は、本条約では、条文を一般的かつ無理なく簡潔にしていきたいという希望を述べた。その一方で、委員会は、現行の人権条約の一般的な適用にも関わらず、障害のある人が、これまで特有のひどい差別に苦しんできた分野があることを指摘した。そのため、詳細を正確に提供しなければならない分野と、条約が過度に複雑かつ反復的にならないようするべき分野とのバランスをとる必要がある。
  • 123.(f)項で扱われている具体的な問題を、もし入れるとすれば、条約中のどこに配置するべきかについては、何も合意は得られなかった。多数の代表が、同様な問題が包括的に扱われている草案第5条でこの内容を扱うことを支持した。しかし、その他の代表は、この文言を第14条第2次案に残す必要があると強く主張した。
  • 124.委員会は、後日、この項の最適な配置について検討することに合意した。
  • 125.第14条第2次案4項の内容についても、全く合意が得られなかった。以下のような多数の修正案が出され、支持された。
    ― セクシャリティという言葉を削除する。しかしこの提案も反対された。
    ― 情報という言葉について、これが利用可能な情報であることを示すため、説明を加えて限定する。これは、一般大衆だけでなく障害のある人自身にも、この問題に対する認識が必要であるという事実を伝えることとなる。この提案は反対されなかった。
  • 126.協議の結果、第14条第2次案4項の文言は、現在以下の通りである。
    「第14条第2次案4項 締約国は、障害のある人の【婚姻及び家族関係に関するすべての事柄において】【セクシャリティ、結婚及び親であることに関する】否定的認識及び社会的偏見を変える目的で、意識向上を促進すると共に、教育並びに情報を公衆に対して利用可能な形態で提供するための【すべての】適当かつ効果的な措置をとる。」

第15条

  • 127.委員会は第15条の協議を開始したが、残された時間内では協議を終えることはできなかった。委員会は第15条を次回の特別委員会で再び採り上げることとした。

注:

  • 1.草案第12条3項に関する討議の際、ファシリテーターによって次の提案が新に出された。「緊急事態、とりわけ武力紛争或いは外国による占領の際の、障害のある人の特別な脆弱性を考慮した措置に対し、特別な配慮がなされるべきである。」この提案はこの場では協議されなかったが、委員会は第8条第2次案に関する協議を行う際に、これについて再び審議することを了解した。
  • 2. 中国語、ロシア語、アラビア語では、法的能力とは「行動する為の法的能力」というよりはむしろ「権利に対する法的能力」を意味する。
  • 3. 第一の選択肢は、暴力の形態に関するリストを入れることであるが、「・・・を含む、あらゆる形態の危害からの保護」という文言と共にリストを入れることによって、リストに限定されないことを明確にする。第二の選択肢は、リストを削除し、提案されている「あらゆる形態の搾取及び暴力、虐待」という明確な表現に書き換えることである。そして第三の選択肢は、第二の選択肢にある文言を使用するが、前文に暴力の形態に関する詳しいリストも入れるものである。
  • 4. この項の的確な文言については、「認知上」という語を含め、更に委員会で検討する必要がある。この問題に関する討議については本報告書のパラグラフ40を参照。
  • 5.A/59/360、付属書IV、第9パラグラフ

原文へのリンク:http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahcdocguide.htm