音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月8日(月)

玉村公二彦
奈良教育大学 助教授

21条:健康とリハビリテーションに対する権利

 午前から午後にかけて、21条「健康とリハビリテーションに対する権利」の非公式協議及び公式協議があった。前半最終日(8月5日)のロシア、セルビア・モンテネグロの発言に続いて、非公式協議では、チリ、イエメン、中国、イギリス(EU)、バチカン市国、メキシコ、日本、イスラエル、オーストラリア、ペルー、シエラレオネ、韓国、アルジェリア、コロンビア、タイ、イラン、ニュージーランド、ケニア、ブラジル、コスタリカ、ヨルダン、インド、ロシア、ジャマイカ、ナイジェリア、モロッコ、ウガンダ、ウクライナ、カナダ、アルゼンチン、イギリス(EU)、スーダン、イスラエル、ノルウェー、カタール、シンガポール、アメリカ、イエメン、マリが発言。

 EUやオーストラリアからは21条を2つに区分し、内容的重複を避け、サブパラグラフを削除する提案が書面で出されるなど、全体を通して、21条全体を2つに分け、21条「健康に対する権利」と21条bis「リハビリテーション」とすることについて支持があった。

 健康に関する条項とリハビリテーションに部分の条項とに分けるに際して、(1)健康の部分にリハビリテーションという文言を関係する部分は残しておくのか、すべてをbisのリハビリテーションに移動させるか、(2)21条bisのリハビリテーションに関しては「リハビリテーションの権利(Right to Rehabilitation)」(オーストラリア案)として権利性を明示するか、新しい権利となるという懸念のもと、健康・生活を下支えするものとしてリハビリテーションを位置づけるのかが議論になった。この議論では、「健康」「リハビリテーション」の概念や定義が問題となった。

 健康については、病気でないということだけではなく身体的精神的健康を示すWHOの概念など健康の概念が拡大されていることを受けたに留意するよう発言があった。なお、健康に関する権利については、社会権規約と一般意見を考慮する必要が指摘された。

 リハビリテーションについては、医療リハビリテーションのみならず、教育、職業、社会的リハビリテーションなど広範囲のものとなっており、医療モデルだけではなく社会的なモデルで考えていく必要があると指摘された。条項を区分する場合についても、健康に対応する医療的リハビリテーションは健康の条項に残しておく等の指摘もあった。いずれにしても、リハビリテーションの定義を行う必要が強調された。なお、オーストラリア提案「リハビリテーションの権利」については、新しい権利を提案しているものと誤解を生む可能性があるので慎重なものとなった。ただ、子どもの権利条約23条3にリハビリテーションについての言及があり、それらを参考に、リハビリテーションの位置づけと促進を行うことが議長より示された。あわせて、議論の中で、生涯にわたって障害に広く対応できるようハビリテーション・リハビリテーションという表現が使用するという方向がとられていった。議長のまとめでは、21条bisも「ハビリテーション・リハビリテーション」と表現されていた。

以上の総論的な議論の上で、柱書きの表現やサブパラグラフの削除・整理の意見が出された。

 柱書きの表現では、「認める(recognise)」「努力する(strive to)」という表現を削除し、より強い表現とすることが多くの国から要請された。

 サブパラグラフについては、細かすぎる部分や他の条項に含まれている部分の重複を整理する必要が指摘された。

 (a)の「市民に提供されるものと」という表現の中での、「市民(citizen)」は誤解を与えるので「人」に変更。

 (c)の地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)の重要性の指摘とその促進については多くの支持があった。

 コストの問題は、health careを無償ないし利用可能な低価格で提供するよう発言があった。

 (f)(g)(h)などは研究開発や職員養成であり、統合整理、(j)(k)(l)などの削除の提案もあった。

 公式協議では国際機関として、WHOが健康の権利とリハビリテーションに関する発言、ILOが、広い概念としてのリハビリテーションを指摘し、リハビリテーションを別条項とする発言があった。

 NGOの発言については、コーカス(IDC)を中心に発言があった。リハビリテーション・インターナショナル(RI)は、多くの障害者にとって社会生活を送る上で、ハビリテーション・リハビリテーションを広く理解し実現することが重要だとして、ハビリテーション・リハビリテーションを別条項にする発言を行っていた。

 21条については、2つに区分し21bisをつくること、そして重複や他の条項とのリンクを整理するという方向でファシリテーターへ任されることとなった。

 5時30分再開

 ファシリテーターの都合で、22条を後にまわし、23条から議論をすることとなった。

23条:社会保障及び十分な生活水準

 議長からこれまでの全般的な意見の概要が示された。

  • (1) 社会権規約との一貫性をもたせる(社会権規約第9条)。また、社会保障が先に書かれるべきか、十分な生活水準が先に書かれるべきかということも議論があった。
  • (2) 23条は細かすぎるが、より細かくするという意見もあった。
  • (3) 社会保障の意味が各国によってちがうことをどのように処理すべきか(しかし、社会権規約には社会保障の条項がある)。
  • (4) 家族の位置づけ
  • (5) 障害の重度重複という表現の問題
  • (6) 住宅供給の問題
  • (7) 清浄な水について
  • (8) その他

 23条の全体の議論にうつり、ニュージーランド、日本、タイ、モンテネグロ、ヨルダン、イスラエルの発言があった。ニュージーランドからは第2パラグラフを第1パラグラフに移行させるなどの提案が、文書で出された。

 全体として、十分な生活水準のパラグラフを前にもってきて、第2パラグラフで社会保障を記述する方向で議論がだされている。また、社会保障では、生命保険と健康保険を区別するなどの意見もあった。

 6時終了