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「障害者の権利条約」国連特別委員会議長草案に関する意見書

第2部

第26条〔ハビリテーション及びリハビリテーション〕

○修正
  1. 第1項の「最大限の身体的、精神的、社会的及び職業的能力」(fullest physical, mental, social and vocational ability)を「自らの選択に基づく最適の身体的、精神的、社会的及び職業的能力」(optimum physical, mental, social and vocational ability based on their choice) に修正する。
  2. 第2項では、とりわけ保健と保健面でのリハビリテーションの重要性を認識し、「保健、雇用、教育及び社会サービスの分野」の文言から教育と社会サービスを削除し、特別に言及するのは「保健及び雇用」のみとする。
  3. 第1項(c)として、「ハビリテーション及びリハビリテーションの目標およびプログラムの決定は、インフォームド・コンセントの原則に基づき、障害のある人または本人の望む支援者の選択と同意に立っておこなうこと。」を新たに追加する。
○意見
第1項について、単なるなる最大限の能力ではなく、自己選択・決定に基づく「最適の能力」に達することを可能にする措置が必要である。なお、「最適」の文言は、「障害者に関する世界行動計画」及び「障害者の機会均等化に関する基準規則」のリハビリテーションの定義でも用いられている。

第27条〔労働及び雇用〕

○意見
  1. (a) の「…苦情処理に関し、法律を通じて障害のある人を保護するための措置」については、国内の法制度との関連では「個別労働紛争解決の促進法」に基づいて、厚生労働省の所管である各都道府県の労働局に設置された「紛争調整委員会」がある。本条項との関連で、〔統計及びデータ収集〕(議長草案第31条)のとり方を再検討する必要がある。たとえば、「職場のいじめ」の実態把握をする場合に、各都道府県から上げられてくるデータが、女性、障害者、外国人等の属性が不明なまま、件数の合計だけが出されても実際上の意味をなさない、という基本的な問題がある。また、政府は労働年齢期間にいる障害のある人の就業率等の就業状態に関する統計を作成・公表すべきである。(理由:厚生労働省が社会保障審議会障害者部会(第8回)の「資料3 障害者の就業について」で公表している就業者数126万人のうち、常用雇用者数は、39万人であるの対し、同省が「平成15年度障害者雇用実態調査」で公表している雇用者数は、約49万人であり、両者の数字には大きな差がある。こうした差は、統計の信頼性を損ないかねない。)
  2. (f) では、作業部会草案では明記されていた「割当雇用制度」が、議長草案では明記されていない。第6回特別委員会の審議において、一般的合意が得られなかったためであるが、この論点については、政府との意見交換会でも繰り返し議論になっていたところである。「割当雇用制度」については、その運用しだいで、とくに差別禁止との関連でプラスにもマイナスにも作用していくという問題をはらんでいるため、(f) の「積極的差別是正措置」の中に位置づけて取り組んでいくという考え方が必要である。その上で、障害のない人との平等性を確保していくという観点から、一時的措置か恒久的措置としていくかについては、実態を踏まえて整理していくことが重要である。
  3. (g)では、障害に対する「合理的配慮」を「労働(職場)環境の整備」のひとつとして考え、「労働基準法」あるいは「障害者雇用促進法」などのなかで法整備をはかるべきである。たとえば、現在の『障害者雇用対策基本方針』のなかにある「(第3)事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事業」にもっと強制力をもたせることができないのか。また、入社後に障害をもち、解雇にいたる場合、その過程で事業主が「合理的配慮」をしたのかどうか、それをしていない場合には解雇は不当とするように法律を整備すべきである。
  4. 議長テキストでは、一般就職が困難な障害のある人について、一般就労にかわる選択肢は提示されていないが、現実には、そうした選択肢を必要とする、障害のある人は相当数にのぼる。障害者自立支援法では、従来の授産施設などを「就労移行支援施設」と「就労継続支援施設(雇用型と非雇用型)」に再編することが意図されているが、これらの施設で就労する障害のある人も労働者に準じた処遇が可能なように、労働法を適用できるようにすべきである。

第28条(十分な生活水準及び社会保護)

○意見
  1. おおむね妥当であり、受け入れられる内容である。
  2. 作業部会草案で用いられていた「社会保障social security」という文言を「社会保護social protection」に変更することは大きな問題があるとは言えない。
  3. 「清浄な水へのアクセスaccess to clean water」という文言を残すことは妥当である。

第29条〔政治的及び公的活動への参加〕

○修正
(a) 項-(ii) で、「(略)並びに政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する権利を保護すること。」の「政府の」部分を「政府と自治体の」に修正する。
○意見
  1. (a) 項-(ii) について、「(略)並びに政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する権利を保護すること。」とあるが、議長草案においても「公的活動」の内容提示が不十分になっている。
  2. 「公的活動」の内容については、JDFとして提出した「国連・障害者権利条約第6回特別委員会の審議に関する要望書」(本年7月19日付)では、作業部会草案第18条(政治的及び公的活動への参加)に対する言及で次のように指摘している。
    (以下、同要望書から)
    「公的活動」については、広い意味での参政権と公務就任権とは深い関連性があることを踏まえて、次の点について検討していただきたい。
    (1)公務就任権については、官公庁における障害者雇用の別枠採用の促進との関連で、雇用における合理的配慮の明確化を含めて検討する必要があること。
    (2)国や自治体における障害のある人の生活領域にかかわる審議会や障害者計画の検討委員会に当事者が委員として参画する場合の、基本的な情報保障やコミュニケーション等に必要な具体的支援を確保する必要があること。

    つまり、「公的活動」とは、ナショナルのレベル(「政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する」)での問題と、ローカルのレベル(自治体のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する)での問題の双方が含まれるべきである。つまり、「公的活動」に関連する「公務を遂行する」の意味は、「公権力の行使と公の意思の形成にたずさわること」となり、その範囲は、通常、政府と自治体の両方が含まれるというのが一般的解釈である。

第30条〔文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加〕

○修正
「国際法の規定を尊重すると同時に」は削除する。国際法の遵守は当然であり、この文脈で強調する必要は認められない。
○意見
  1. 第3項の「知的所有権が障壁とならないこと」は重要であり支持する。
  2. 第4項の障害者の文化的、言語的アイデンティティへの言及も重要である。これは手話をアイデンティティとするろう者にとってはとりわけ重要である。

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