修正議長草案と議長草案の比較
川島聡・長瀬修 仮訳
(2006年4月4日付)
第11条 危険のある状況
締約国は、公衆が危険のある状況([……の状況を含む。])に置かれる場合には
障害のある人が特に被害を受けやすい境遇に置かれる集団であることを認め、また、障害のある人を保護するためのすべての実行可能な措置をとる 。
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第12条
法律の前における平等の承認
73
- 締約国は、障害のある人が、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有することを改めて確認する。
[ 締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての分野において
[法的能力](原注1:A/AC.265/2005/2, annex IIの第20パラグラフを見よ。)を有することを認めるものとし、また、
[その能力]を行使するための支援が必要な場合には、
次のことを確保する。


2 bis. 締約国は、障害のある人がその法的能力を行使する場合に必要とする支援への障害のある人のアクセスを提供するための適当な立法措置その他の措置をとる。
2 ter. 締約国は、国際人権法に従い、法的能力の行使に関連するすべての立法措置その他の措置が濫用を防止するための適当かつ効果的な保護を定めることを確保する。その保護は、法的能力の行使に関連する措置がその者の権利、意思及び選好を尊重し、利益相反及び不当な影響を生じさせず、その者の状況に比例し及び適合し、可能な限り最も短い期間適用し、並びに定期的で、公平な、かつ、独立の司法審査に従うことを確保しなければならない。この保護は、そのような措置がその者の権利及び利益に影響を及ぼす程度に比例したものでなければならない。]

- 締約国は、財産の所有又は相続についての、自己の財務管理についての並びに銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信用への平等なアクセスについての障害のある人の平等な権利を確保するためのすべての適当かつ効果的な措置をとる。また、締約国は、障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。
第13条 司法へのアクセス
第14条 身体の自由及び安全
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- 締約国は、次のことを確保する。
(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、身体の自由及び安全についての権利を享有すること。 (b) 障害のある人が他の者との平等を基礎として自由を不法に又は恣意的に奪われないこと、いかなる自由も法律で定めることなしに奪われないこと、並びにいかなる場合においても障害の存在により自由の剥奪が正当化されないこと。 - 締約国は、障害のある人が、
いかなる手続を通じても自由を奪われた場合には、
他の者との平等を基礎として国際人権法による保障を受ける権利を有すること並びにこの条約の趣旨及び原則に従い取り扱われること(合理的配慮の提供によるものを含む。)を確保する 。
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第15条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由
- 障害のあるいかなる人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、締約国は、障害のある人が十分な説明に基づくその自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けることを禁止するものとし、また、当該実験から障害のある人を保護する。
- 締約国は、障害のある人が拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる。
- 議長草案11条全体(条文番号、見出し、規定内容)に付されていた角ブラケットを削除。「危険のある状況」の後に、角ブラケット付きの「([……の状況を含む。])を挿入。「障害のある人が特に被害を受けやすいpersons with disabilities are especially vulnerable」を「障害のある人が特に被害を受けやすい境遇に置かれる集団であるpersons with disabilities are a group in especially vulnerable circumstances」に修正。
- 「法律の前における人としての平等の承認Equal recognition as a person before the law」(議長草案12条見出し)を「法律の前における平等の承認Equal recognition before the law」に修正。
- 議長草案12条2(b)のみに付されていた角ブラケットが、12条2全体に付された。12条2柱書に関しては、「[その能力that capacity][行為能力capacity to act]」から「[行為能力]」の部分を削除。「[その能力]」の後に「原注1」を挿入。「…次のことを可能な範囲において確保する。」から「可能な範囲においてto the extent possible」の部分を削除。12条2(a)に関しては、「適当な場合には、その支援が、定期的なかつ独立の審査に従うこと」から「適当な場合にはWhere appropriate」の部分を削除。
- 議長草案12条2とも一部関連する内容。修正議長草案12条2の「本案」に対する「代替案」。この「代替案」にも角ブラケットが付されている。
- 議長草案の13条柱書を13条1に修正し(柱書のみから成る議長草案13条を、条文構成上、13条1, 2に修正)、その内容も次のように修正。「を容易にしfacilitating」を「in order to facilitateを容易にするため」に修正。including the investigative and other preliminary stagesをincluding at the investigative and other preliminary stagesに修正(訳語の変更なし)。「効果的なアクセス」の後に「(手続上の及び年齢に適した配慮の提供によるものを含む。)including through the provision of procedural and age appropriate accommodations」を挿入。
- 議長草案に見られない新たなパラグラフ・内容。
- Liberty and security of the personを「人身の自由及び安全」と訳す場合もあるが、本翻訳では、さしあたり「身体の自由及び安全」と訳した。自由権規約9条の政府訳は、the right to liberty and security of personを「身体の自由及び安全についての権利」と訳し、人種差別撤廃条約5条(b)の政府訳は、The right to security of person and protection by the State against violence or bodily harmを「暴力又は傷害(……)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利」と訳している。
- 柱書と(a)(b)(c)(i)(ii)(d)から成る議長草案14条2を、条文構成上、その柱書を除いて削除。修正議長草案14条2柱書は、議長草案12条の柱書及び(a)の要素を含む。議長草案12条柱書に関しては、「民事上、刑事上、行政上その他の手続を通じて」を「いかなる手続を通じてもthrough any process」に修正。「障害のある人が少なくとも次のことに関する保障を受けるthey have at least the following guaranteesことを確保する」から「少なくとも」の部分を削除。「他の者との平等を基礎として」を追加。「保障を受けること」を「国際人権法による保障を受ける権利を有することentitled to guarantees in accordance with international human rights law」に修正。議長草案12条(a)に関しては、「人道的にかつ人間固有の尊厳及び価値を尊重して、並びに障害のある人の人権を尊重し、この条約の趣旨及び原則に従い、かつ、障害に合理的に配慮する方法で、取り扱われること」を「この条約の趣旨及び原則に従い取り扱われること(合理的配慮の提供によるものを含む。)and shall be treated in compliance with the objectives and principles of this Convention, including by provision of reasonable accommodation」に修正。