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修正議長草案と議長草案の比較

川島聡・長瀬修 仮訳
(2006年4月4日付)

第21条 表現及び意見の自由と、情報へのアクセス

締約国は、次のことその他により、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、変更部分手話、点字、補助代替コミュニケーション並びに自ら選択する他のすべてのアクセシブルなコミュニケーションの手段、様式及び形態(原注2:特別委員会は、定義に関する条文を討議した後、このリストを再考することを望むかもしれない。その条文におけるコミュニケーションの定義に諸代表が満足するのであれば、特別委員会は、その完全なリストを具体的に記すよりも、ここではコミュニケーションという言葉を用いることを望むかもしれない。)を通じて、表現及び意見の自由(情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる 。注釈99

(a) 障害のある人に対し、様々な種類の障害に適したアクセシブルな様式及び形態で、適時にかつ追加の費用を伴わず、公衆向けの情報を提供すること。
(b) 公の対話において、変更部分手話、点字、補助代替コミュニケーション並びに障害のある人が自ら選択する他のすべてのアクセシブルなコミュニケーションの手段、様式及び形態を用いることを承諾し及び容易にすること 。注釈100
(c) 公衆にサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間主体が、情報及びサービスをアクセシブルかつ使用可能な形態で障害のある人に提供するよう勧奨すること。
(d) マスメディア(インターネットにより情報を提供する者を含む。)が、そのサービスを障害のある人にとってアクセシブルにするよう変更部分奨励すること 。注釈101
(e) 変更部分 手話の使用を承認し及び促進すること 。 注釈 102

第22条 プライバシーの尊重 注釈 103

  1. 障害のあるいかなる人も、居所又は生活様式とのかかわりなく、そのプライバシー、家族、家庭、通信その他の形態のコミュニケーションに対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。障害のある人は、こうした干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
  2. 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の個人情報、健康情報及びリハビリテーション情報に係るプライバシーを保護する。

第23条 変更部分家庭及び家族の尊重 注釈 104

  1. 締約国は、婚姻、家族及び対人関係に係るすべての事項に関し障害のある人に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとるものとし、また、変更部分次のことのために婚姻、家族及び対人関係に係る国内法、慣習及び伝統が障害を根拠として差別しないことを確保する変更部分(原注3:特別委員会は、この条文が婚姻、家族及び対人関係に係る自国の政策及び法令を決定する締約国の権限に影響を及ぼすことを意図するものではないことに留意した。むしろ、この条文の趣旨は、それらの問題に関する自由又は制限が存在する場合には、それらが障害に基づく差別なしに適用されることを確保する義務を締約国に負わせることにある。)注釈105
    (a)障害のある人が、[そのセクシャリティを経験し、]性的関係その他の親密な関係を持ち、かつ、親たることを経験する平等の機会を変更部分有すること 。注釈106
    (b)婚姻をすることができる年齢の障害のあるすべての変更部分が、両当事者の自由のかつ完全な合意に基づいて婚姻をし及び家族を形成する権利を認めること 。注釈107
    (c)障害のある人が子どもの数及び出産間隔について自由にかつ責任をもって決定する権利、並びに変更部分年齢に適した情報にアクセスする権利、性と生殖及び家族計画に係る教育にアクセスする権利、これらの権利の行使を可能とするために必要な手段にアクセスする権利、並びに生殖能力を保持する平等の機会にアクセスする権利 注釈108
     
  2. 締約国は、子どもの後見、監督、管財、養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度についての障害のある人の権利及び責任を確保する。あらゆる場合において、子どもの利益は至上である。締約国は、変更部分障害のある人が子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、その者に対し適当な援助を与える 。注釈109
  3. 変更部分 締約国は、障害のある子どもが家族生活に関して平等の権利を有することを確保する。この権利を実現するため並びに障害のある子どもの隠匿、遺棄、放置及び隔離を防止するため、締約国は、障害のある子ども及びその家族に対して早期の及び包括的な情報、サービス及び支援を提供することを約束する 。 注釈 110
  4. 締約国は、子どもがその親の意思に反してその親から変更部分分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が、変更部分司法の審査に従うことを条件として、適用可能な法律及び手続に従い、その分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合であっても、子どもは、その子どもの障害又は一方若しくは両方の親の障害を根拠として親から分離されない 。注釈111
  5. 変更部分 締約国は、直近の家族が障害のある子どもを監護することができない場合には、一層大きな範囲の家族のなかで、かつ、それがないときは家庭的な環境の地域社会のなかで代替的なケアを提供するためのすべての努力を行うことを約束する 。 注釈 112

第24条 教育

  1. 締約国は、教育についての障害のある人の権利を認める。この権利を差別なしにかつ機会の平等を基礎として実現するため、締約国は、次のことを指向する、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育及び、インクルーシブな生涯学習を確保する。
    (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己価値に対する意識を十分に育成すること、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
    (b)障害のある人が、その人格、才能及び創造力並びに、精神的及び身体的な能力を最大限度まで発達させること。
    (c)障害のある人が、自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。
  2. この権利を実現するため、締約国は次のことを確保する。
    (a)障害のある人が障害を根拠として一般教育制度から排除されないこと、並びに障害のある子どもが障害を根拠として無償のかつ義務的な初等教育及び中等教育から排除されないこと。
    (b)障害のある人が、自己の住む地域社会において、変更部分他の者との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができること 。注釈113
    (c)個人が必要とするものに対する合理的配慮
    (d)障害のある人が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般教育制度内で受けること。変更部分障害のある人の個別的な支援ニーズを[十分に満たすため][一般教育制度が十分に満たすことができない環境においては]、締約国は、完全なインクルージョンという目標に即して、変更部分学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境において、効果的で個別化された支援措置が提供されることを確保する 。注釈114
  3. 締約国は、障害のある人が地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを容易にするための生活技能及び社会性の発達技能を習得することを可能としなければならない。このため、締約国は、変更部分次のことを含む適当な措置をとる注釈115
    (a)点字、代替スクリプト、変更部分コミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態、並びに歩行技能の習得を容易に変更部分すること、また、ピアサポート及びピアメンタリングを容易にする変更部分こと注釈116
    (b)手話の習得及びろう社会の言語的なアイデンティティの促進を容易にする変更部分こと注釈117
    (c)盲、ろう及び盲ろうの人変更部分(特に子ども)の教育が、その個人にとって最も適当な言語変更部分並びにコミュニケーションの様式変更部分及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保する変更部分こと
  4. 変更部分 この権利の実現を確保することを助長するため、締約国は、手話又は点字に通じた教員(障害のある 教員を含む。)を雇用するための並びに教育のすべての段階における教育に従事する専門家及び職員に対する訓練を行うための適当な措置をとる。その訓練には、障害への認識を組み入れ、かつ、適当なコミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態の使用並びに障害のある人を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れなければならない 。 注釈 118
  5. 締約国は、障害のある人が、差別なしにかつ変更部分他の者との平等を基礎として、一般の高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習変更部分にアクセスすることができることを確保する。このため、締約国は、変更部分合理的配慮が障害のある人に提供されることを確保する 。注釈119

第25条 健康

変更部分 健康 変更部分 ジェンダーに敏感な 注釈 120
(a) 障害のある人に対して他の者に提供されるものと同一の範囲、変更部分及び水準の変更部分無償の又は入手可能な保健サービス([性と生殖に関する保健サービス]変更部分(原注4:特別委員会は、「性と生殖に関する保健サービス」という句の使用が新たな国際法上の義務又は人権を認めたものではないことに留意する。特別委員会は、このパラグラフ(a)が、社会権規約12条又は子どもの権利条約24条に定める健康についての権利に追加しない又は当該権利を変更しない非差別の規定であることを了解する。むしろ、パラグラフ(a)の趣旨は、締約国に対し、保健サービスが提供される場合にはそれが障害に基づく差別なしに提供されることを確保することを要求することにあろう。)及び住民公衆衛生計画を含む。)を提供する 。注釈121
(b) 障害のある人が特にその障害を理由として必要とする保健サービス(適当な場合には早期発見及び早期治療を含む。)並びに更なる障害(特に子ども及び高齢者の障害を含む。)を最小化し及び予防するためのサービスを提供する。
(c) これらの保健サービスを、障害のある人自身が属する地域社会(農村を含む。)に可能なかぎり近くで提供する。
(d) 保健の専門家に対し、変更部分特に、訓練を通じて並びに公的な及び民間の保健ケアに関する倫理基準の公表を通じて障害のある人の人権、尊厳、自律及びニーズに関する意識を高めることにより、他の者と同一の質のケア変更部分十分な説明に基づく自由な同意を基礎変更部分としたものであることを含む。)を障害のある人に提供することを要請する 。注釈122
(e) 公正かつ合理的な方法で提供されなければならない健康保険及び、変更部分生命保険を国内法が認めるときは、生命保険が提供される場合において、障害のある人に対する差別を禁止する 。注釈123
  1. …through sign languages, and Braille, and augmentative alternative communication and all other accessible means, modes and formats of communication of their choice…を…through sign languages, Braille, augmentative and alternative communication, and all other accessible means, modes and formats of communication of their choice…に修正(訳語の変更なし)。「原注2」を追加。
  2. …sign languages, and Braille, and augmentative alternative communication and all other accessible means, modes and formats of communication of their choice by persons with disabilities…を…sign languages, Braille, augmentative and alternative communication, and all other accessible means, modes and formats of communication of their choice by persons with disabilities…に修正(訳語の変更なし)。
  3. 「勧奨するUrging」を「奨励するEncouraging」に修正。
  4. 「[自国の手話a national sign languageを[発展させること][承認すること][促進すること]。]」(議長草案20条(d))を「手話の使用を承認し及び促進することRecognizing and Promoting the use of sign language.」に修正し、角ブラケットを削除。
  5. 主要人権諸条約の政府訳では「privacy私生活」(自由権規約17条)、「private lives 私生活」(自由権規約14条1)、「privacy私生活」(子どもの権利条約16条1、40条2(b)(vii))とする例が見られる(privacyの訳語については、永井他編『新解説 子どもの権利条約』日本評論社(2000年)108頁。宮崎編『解説・国際人権規約』日本評論社(1996年)202頁、波多野『逐条解説 児童の権利条約』有斐閣(1994年)116-117頁参照)。なお、ヨーロッパ人権条約の翻訳では、private lifeを「私生活」(6条1)と、private and family lifeを「私的及び家族生活」(8条1)と訳す例が見られる(松井他編『国際人権条約・宣言集(第3版)』東信堂(2005年)72-73頁)。
  6. Respect for the home and the family(議長草案23条の見出し)をRespect for home and the familyに修正(訳語の変更なし)。1柱書(a)(b)(c), 2, 3から成る議長草案23条を、条文構成上、23条1柱書(a)(b)(c), 2, 3, 4, 5に修正。
  7. 「他の者との平等を基礎として特に次のことを確保する。in particular shall ensure, on an equal basis with others:」を「次のことのために婚姻、家族及び対人関係に係る国内法、慣習及び伝統が障害を根拠として差別しないことを確保する。shall ensure that national laws, customs and traditions relating to marriage, family and personal relationships do not discriminate on the basis of disability so that:」に修正。「原注3」を追加。
  8. 「[一般に適用のある国内法、慣習及び伝統に従い、]」を削除。「平等の機会を否定されない」を「平等の機会を有する」に修正。
  9. 「[並びに両当事者が平等の対等者であること]」を削除。「障害のあるすべての[男女][人]」を「障害のあるすべての人」に修正。
  10. 「[、並びに情報にアクセスする権利、性と生殖及び家族計画に係る教育にアクセスする権利、これらの権利の行使を可能とするために必要な手段にアクセスする権利、並びに生殖能力を保持する平等の機会にアクセスする権利]」に付されていた角ブラケットを削除し、「情報」の前に「年齢に適したage-appropriate」を挿入。「[一般に適用のある国内法が認める範囲内で、]」も削除。
  11. 「障害者disabled persons」を「障害のある人persons with disabilities」に修正。
  12. 議長草案に見られない新たな内容(議長草案23条3の内容は、修正した上で修正議長草案24条4に移動)。
  13. 議長草案に見られない新たなパラグラフ。議長草案23条3の規定を次のように修正した内容。第1文の「分離されない」は、is not separatedをshall not separatedに修正(訳語の変更なし)。「権限のある当局が、一般に適用のある国内法及び国内的手続に従い、かつ、法律で定める司法の審査又は他の形態の行政の審査に従うことを条件として」を「権限のある当局が、司法の審査に従うことを条件として、適用可能な法律及び手続に従い」に修正。この修正により、子どもの権利条約9条1(この政府訳はparentsを「父母」と訳しているが、ここでは「親」と訳した(永井他編『新解説 子どもの権利条約』日本評論社(2000年)79頁以下参照))に一層類似した。
  14. 議長草案に見られない新たなパラグラフ・内容。
  15. 「可能な程度までto the extent possible」を削除。「他の者との平等を基礎として」を追加。
  16. 「一般教育制度が障害のある人の支援ニーズを十分に満たすことができない例外的な環境においては、In exceptional circumstances where the general education system cannot adequately meet the support needs of persons with disabilities」を「障害のある人の個別的な支援ニーズを[十分に満たすため][一般教育制度が十分に満たすことができない環境においては][In order to meet adequately][In those circumstances where the general education system cannot adequately meet] the individual support needs of persons with disabilities」に修正。「効果的な代替支援措置effective alternative support measures」を「効果的で個別化された支援措置effective individualized support measures」に修正。「学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境においてin environments which maximise academic and social development」を追加。
  17. 「このため、締約国は、To this end, States Parties shall:」を「このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとるTo this end, States Parties shall take appropriate measures, including:」に修正。これに伴い、サブパラグラフ(a)(b)(c)の冒頭部分を動名詞(…すること)に修正。
  18. 「歩行技能orientation and mobility skills」の前に「コミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態、並びにaugmentative and alternative modes, means and formats of communication and」を挿入。なお、orientation and mobility skillsは「歩行技能」と訳した。
  19. 「盲、ろう及び盲ろうの子どもの教育the education of children who are blind, deaf and deaf/blind」を「盲、ろう及び盲ろうの人(特に子ども)の教育the education of persons, and in particular children, who are blind, deaf and deafblind」に修正(deaf/blindからdeafblindに修正された点については訳語の変更なし)。「最も適当な言語及びコミュニケーションの様式the most appropriate languages and modes of communication」を「最も適当な言語並びにコミュニケーションの様式及び手段the most appropriate languages and modes and means of communication」に修正。
  20. 議長草案24条4と同条2(e)の要素を盛り込んだ内容(条文構成上、議長草案24条2(e)を削除)。
  21. may access をare able to accessに修正(訳語の変更なし)。「機会の平等を基礎として」を「他の者との平等を基礎として」に修正。「障害のある人に適当な支援を与えるshall render appropriate support to persons with disabilities」を「合理的配慮が障害のある人に提供されることを確保するshall ensure that reasonable accommodation is provided to persons with disabilities」に修正。
  22. 「身体的及び精神的な健康physical and mental health」を「健康」に修正。「保健サービス」の前に「ジェンダーに敏感なthat are gender sensitive」を挿入。
  23. 「[性と生殖に関する保健サービス]」の後に「原注4」を挿入。「同一の範囲及び水準の入手可能な」を「同一の範囲、質及び水準の無償の又は入手可能な」に修正。
  24. 「必要な場合には、…により、by, where necessary,…」を「特に、…により、by inter alia,…」に修正。「他の者と同一の質のケアを十分な説明に基づく自由な同意を基礎としてcare of the same quality to persons with disabilities as to others and on the basis of free and informed consent」を「他の者と同一の質のケア(十分 な説明に基づく自由な同意を基礎としたものであることを含む。)care of the same quality to persons with disabilities as to others, including on the basis of free and informed consent」に修正。
  25. 「国内法が認めるときはwhere permitted by national law」を「生命保険を国内法が認めるときはwhere such insurance is permitted by national law」に修正。

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