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第8回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年8月22日(火)

(午前)土屋葉:愛知大学/DPI(障害者インターナショナル)日本会議

(午後)福地健太郎:筑波大学/DPI(障害者インターナショナル)日本会議

午前(土屋葉)

会期後半に参加したJDFのメンバー

午前10時40分開会

 午前中の議論では「条約成立に向けた前進のために」と、複数の国から相次いで提案についての撤回が行われ、大きな拍手で受け入れられた。これにより第3条(一般的原則)、第13条(司法へのアクセス)、第18条(移動の自由及び国籍)、第20条(個人の移動性)、第21条(表現及び意見の自由と、情報へのアクセス)が議決されるという「エキサイティング」(マッケイ議長)な展開となった。

 はじめに議長から昨日合意に向けた多くのインフォーマル協議が行われたことについて言及された。また午前中の議事の進め方について、アップデートされた資料に基づき、昨日の会議でとりあげられなかったものについてのみ議論していくという提案がなされた。

 資料にはいる前に国際モニタリングのファシリテーター(メキシコ)から、インフォーマル協議のなかで、この条約から一部分を独立させて、選択議定書にすべきだという提案がなされ、改定された草案が提出されたことが話された。

つづいて改訂版の資料に基づき、昨日と同じ方法で、論争となっているブラケットつまり〔 〕で囲まれた部分は避け、新しい提案について討論が進められた。

 前文(v bis)に関して、エジプト、モロッコ、シリア、スーダンより家族が「すべてのメンバーの成長、成熟にかんする自然の環境である」という言葉を加えるという提案がなされた。これに反対するEU(フィンランド)より、家族の役割をあまりに強調しすぎると障害者の尊厳を守ることにはならないとする意見が提出された。

 第2条(定義)に関して、「言語」の定義の削除を要求していた中国が、インフォーマル協議の結果、点字や手話の重要性を認識するとし、提案を取り下げると発言し、喝采を浴びた。

 ところが、日本は「差別」の定義について、いったんマッケイ議長が反対意見がなかったということで間接差別は残すことになっていたが、日本政府は「あらゆる差別」という言葉によってすべてが包含されるとし、〔直接差別と間接差別〕という言葉を削除すべきだと、いったん決着した問題を蒸し返した。

 第11条(危険のある状況)に関してケニアから「自然災害状況や市民紛争」といった文言を追加で挿入するという提案がなされた。

 これらおよび、第16条(搾取、暴力及び虐待からの自由)、第23条(家庭および家族の尊重)、第24条(教育)、第26条(ハビリテーション及びリハビリテーション)、第32条(国際協力)については文言についてを含めた新たな提案がなされ、さらにインフォーマル協議がつづけられることになった。第17条(個人のインテグリティ(不可侵性)の保護)、第25条(健康)についてはスキップされた。

午後(福地健太郎)

 3時をかなり過ぎてセッションは再開されたが、議長の判断により、非公式協議のために30分の会議の中断が宣言された。かなり活発な駆け引きが非公式に行われているようで、実際に再開したのは、5時を回ってからであった。

 再開後は、リヒテンシュタインによる最終条項の新しい草案が示された。変更点としてもっとも大きいことは、最終条項のHのビスに、タイの提案を踏まえて、この条約がアクセシブルなフォーマットで提供されなければならないという文言が盛り込まれたことであろう。さらにパラグラフGに関しても、国連総会の役割を明確にするための変更がなされた。

 あまりテクニカルな議論で時間を使わないために、希望がある政府は、リヒテンシュタインと直接議論することになった。マッケー議長は木曜日にこの採集条項を投票にかけることにした。

 それから第28条に関して、メキシコからの提案が合意に達し、清潔な水へのアクセスがパラグラフ1.のAに明記されることになった。他のパラグラフはまだ合意に達していなかったため、引き続き議論されることになった。話し合われる点としては、社会(保護)の括弧を外す点、そしてEUからの懸念である、Bで特定のグループを取り上げることであった。

 その後さらに20分間会議は非公式協議のために中断された。6時を少し越える形で、会議は再開した。第7条の子供についての条文において、コンセンサスが取れたとのことで、この条項は決された。

 結果としては、パラグラフ1では、EU提案を反映して、”適当なサポート”ではなく、”必要なサポート”となり、パラグラフ3に関しては、いくつかの国の提案で、子供の年齢と習熟度に応じて、年齢と障害に適した補助を受けるというように変更された。

 残りわずかとなり、議長のあせりが伝わってきた。活発な議論がなされており、また採択を目指す動きが加速したことは評価できるであろう。しかし、NGOに発言権もなく、また傍聴することもできない非公式協議で、プロセスが進められることに少し危機感を感じた。