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第2回障害者権利委員会
2009年10月19日―23日 ジュネーブ

障害者権利条約第35条第1項に基づき締約国によって提出される、条約が指定する文書に関する指針

事務総長による覚書

1.障害者権利条約(以下条約)第35条第1項に従い、各締約国は、国際連合事務総長に対し、障害者権利委員会(以下委員会)による検討のために、(a)この条約が関係締約国について効力を生じた後2年以内に、かつ、(b)その後は少なくとも4年ごとに、および委員会が要請するときはいつでも、この条約に基づく義務を履行するためにとられた措置に関する報告を提出する責任を負う。第36条第1項でも、委員会が追加の情報を締約国に要請することができると規定している。

2.報告指針の目的は、締約国による報告の準備を容易にし、これらが包括的なものとして統一された方式で提出されることを確保するために、締約国に対し、報告の形式と内容について助言することである。また、報告指針を順守することにより、条約第36条および委員会手続規則36第3項(*)に基づき委員会が追加の情報を要請する必要性を、軽減することができる。

*訳者注:現在の手続規則では規則44。規則36は可否同数の表決。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/rightafter/G1349672jp.html

3.締約国は、報告の準備過程を含めた報告過程を、国際的な義務の順守を確保する手段としてだけでなく、より効果的な政策立案と条約実施を目的とした、自国の管轄区域内における人権保護の現状を評価する機会としても見なさなければならない。したがって、報告の準備過程において、各締約国には以下の機会がもたらされる。

(a)国内の法律と政策を、締約国が加盟している関連のある国際人権条約の規定と調和させるためにとられてきた措置を、総合的に見直す機会。

(b)人権全般の促進に照らして、各条約に定められている権利について、その享有促進の進捗状況を監視する機会。

(c)各条約の実施に向けた取り組みについて、その問題点と欠陥を明らかにする機会。

(d)これらの目標を達成するための適切な政策を計画し、開発する機会。

さらに締約国は、障害者団体を含む非政府機関に、報告の準備に参加するよう奨励し、これを促進しなければならない。これらの機関による、このような建設的な参加は、報告の質の向上をもたらすとともに、すべての人による障害者権利条約で保護されている権利の享有を促進するであろう。報告には、市民社会、特に障害のある人を代表する団体との協議で使用された手続と、この過程を完全にアクセシブルにすることを確保するためにとられた措置に関する説明を含めなければならない。

4.締約国は、障害のある人の多様性を認識し、尊重し、一般論ではなく、さまざまな障害種を具体的にとりあげた報告を行うことを確保しなければならない。

5.委員会は、国際人権条約に基づく報告に関する統一指針(HRI/GEN/2/Rev.5)を考慮した本指針を採用する。本指針は、委員会の総括所見、一般的意見および声明に反映される、条約の適用にかかわる委員会の実践の進展を踏まえ、今後更新される。

6.条約第35条に基づき締約国によって提出される、条約が指定する文書に関する指針の全文は、本文書の付録に掲載されている。

付録

障害者権利条約第35条に基づき締約国によって提出される、条約が指定する文書に関する指針

A.現在の報告制度と、共通基幹文書および障害者権利委員会に提出される、条約が指定する文書に含めるべき情報の構成

A.1 国際人権条約に基づく報告に関する統一指針に従って提出される締約国の報告は、共通基幹文書と条約が指定する文書の2つの部分で構成される。

A.2 共通基幹文書

A.2.1 統一指針に従い、共通基幹文書には、報告を行う締約国に関する一般的な情報、人権の保護と促進のための一般的な枠組み、性別、年齢別、おもな人口集団別および障害別のデータに加えて、非差別と平等に関する情報、さらには効果的な救済策を掲載しなければならない。

A.3 条約が指定する文書

A.3.1 障害者権利委員会に提出される、条約が指定する文書では、共通基幹文書に掲載されている情報を繰り返したり、締約国によって採択された法律を単に列挙したり、説明したりするだけではいけない。むしろ、締約国の領土または管轄区域内の、あらゆる種類の障害を持つすべての人による、条約で認められている権利の完全な実現に影響を与える法律と慣行の最新動向に関する分析情報を考慮しつつ、条約第1条から第33条までの実施に関する法律上および事実上の具体的な情報を盛り込まなければならない。また、前述の目標に向けてとられた実質的な措置と、それによって達成された進展に関する詳細な情報も含めなければならない。この情報は、障害のない人を対象とした政策および法律と関連付けて提示することが適切な場合は、そのようにして提示されなければならない。すべての場合において、データの出典を示さなければならない。

A.3.2 条約で認められている権利に関して、条約が指定する文書には、以下を記載しなければならない。

(a)締約国は、条約で定められている各権利を実施するための政策、戦略および国内の法的枠組みを採用し、この目的のために利用できるリソースと、そのようなリソースの、最も費用対効果の高い利用方法を明らかにしたか。

(b)締約国は、包括的な障害者差別禁止法を採択し、これに関連のある条約の規定を実施したか。

(c)統一指針付録3に従って提供される情報に加えて、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によってまとめられた枠組みと指標例一覧表(HRI/MC/2008/3)も考慮した、条約に定められた各権利に関する指標と関連のある国内基準の承認を含む、これらの権利の完全な実現に向けた進捗状況監視のために導入されたあらゆるメカニズム。

(d)条約に基づく締約国の義務が、国際機関の一員としての締約国の活動に完全に統合されることを確保するために導入されたメカニズム。

(e)条約に定められている各権利に関連のある具体的な訴訟例について、これらの権利の国内法秩序への導入と直接適用。

(f)条約に定められている権利を侵害された場合、被害者が補償を受けられるようにするために導入された、司法上およびその他の適切な救済措置。

(g)締約国には制御不能な要因から生じる、条約に定められている権利の完全な実現を妨げる構造的あるいはその他の重大な障害と、それらを克服するためにとられた措置の詳細。

(h)条約に定められている各権利の実現に関する、性別、年齢別、障害種別(身体障害、感覚障害、知的障害および精神障害)、民族的出身別、都市/農村人口別、およびその他の関連カテゴリー別に分類された、過去4年間にわたる年次比較に基づく統計データ。

A.3.3 条約が指定する文書は、アクセシブルな電子形式および印刷形式により配布されなければならない。

A3.4 報告は、統一報告指針の第24項から第26項および第29条に従うものとする。

A3.5 条約が指定する文書の形式は、統一報告指針の第19項から第23項に従うものとする。最初の報告は60頁を超えてはならず、その後の条約が指定する文書は、40頁を上限とする。パラグラフには順に番号を付けなければならない。

A.4 最初の報告

A.4.1 最初の条約が指定する文書は、共通基幹文書とともに最初の締約国の報告を構成し、締約国が委員会に対し、国内の法律と慣行がどの程度条約と一致しているかを示す最初の機会となる。

A.4.2 締約国は、条約のすべての条文について、具体的に論じなければならない。共通基幹文書に掲載されている情報に加えて、法的規範が障害のある人の現状に与えている影響と、条約の規定の侵害に対する救済策の実際の利用可能性、実施および効果の詳細な分析を、女性および子どもなどのとりわけ脆弱な集団に特別な注意を払いつつ、条約が指定する文書の中で提供し、説明しなければならない。

A.4.3 最初の条約が指定する文書には、障害のある人による条約で定められている各権利の享有にかかわる、法律、慣行または伝統、もしくはその他の方法で強制された、障害を理由とするあらゆる区別、排除あるいは制限について、たとえそれらが一時的なものであっても、その情報が既に共通基幹文書に掲載されていない限り、概要を記載しなければならない。

A4.4 最初の条約が指定する文書には、条約に定められている権利と規定に関係のある救済策を保障し、これについて規定している、憲法、法令、司法文書およびその他の関連文書からの十分な引用、またはこれらの文書の要約を、特にそれらが報告に添付されていない場合、またはそれらが国際連合の作業言語の1つで利用できない場合、含めなければならない。

A.5 定期報告

A.5.1 その後の条約が指定する文書は、共通基幹文書とともに、その後の定期報告を構成し、前回の締約国の報告の検討から、最新の報告の提出までの期間に焦点を合わせるものとする。

A.5.2 定期的に提出される、条約が指定する文書は、条約の条文に従った構成としなければならない。いずれかの条文について新たに報告するべきことがない場合は、その旨記載しなければならない。

A.5.3 このようなその後の条約が指定する文書では、少なくとも以下の3つの点を、最初に取扱うものとする。

(a)前回の報告の総括所見(特に「懸念」と「勧告」)の実施と、実施がなされなかった事例の説明、または遭遇した困難に関する情報。

(b)締約国による、条約実施に向けてとられた追加の法的措置およびその他の適切な措置に対する、結果重視型の分析的考察。

(c)市民的、政治的、経済的、社会的、文化的もしくはその他の分野における、障害のある人による人権と基本的自由の行使と享有を阻む、未解決の障害または新たな障害に関する情報と、これらの障害を克服するために想定される措置に関する情報。

A.5.4 定期的に提出される、条約が指定する文書では、障害のある人に対する差別の撤廃と、障害のある人の人権の完全な享有の確保においてとられた措置の影響を特にとりあげ、長期間にわたる傾向を分析しなければならない。

A.5.5 定期的に提出される、条約が指定する文書では、障害のある人のさまざまな集団、特に複数の形態の差別の対象となっている集団にかかわる条約の実施についてもとりあげなければならない。

A5.6 条約の実施に影響を与える締約国の政治的および法的取り組みに根本的な変化が発生した場合、あるいは、文書および判決またはその他の決定の添付を必要とする、新たな法的措置または行政的措置が締約国によって導入された場合、条約が指定する文書の中で、その情報が提供されなければならない。

A.6 例外的な報告

A.6.1 本指針は、委員会手続規則に基づいて要請され、管理される可能性のある、いかなる例外的な報告に関する委員会の手続にも影響を与えるものではない。

A.7 報告の付属文書

A.7.1 報告は、報告の検討を容易にするために、必要に応じて、報告国が委員会のすべての委員への配布を望む、国際連合の作業言語の1つで作成された主要な立法文書、司法文書、行政文書およびその他の補足文書の、十分な数の複製を添付し、電子形式および印刷形式により配布されなければならない。これらの文書は、報告に関する統一指針第20項に従い、提出することができる。

A.8 国際連合の会議、サミットおよびレビューの成果を実施するための措置

A.8.1 条約が指定する文書には、ミレニアム開発目標の障害要素の実施に関する情報と、その他の関連のある国際連合の会議、サミットおよびレビューの成果に関する情報も含めなければならない。

A.9 一般的な性格を有する勧告

A.9.1 条約が指定する文書を準備する際には、委員会によって採択された一般的な性格を有する勧告が考慮されなければならない。

A.10 留保および宣言

A.10.1 留保および宣言に関する一般的な情報は、統一報告指針第40項(b)に従い、共通基幹文書に含めなければならない。さらに、条約の留保および宣言に関する具体的な情報を、委員会に提出される、条約が指定する文書と、留保に関する委員会の声明に加えて、委員会の総括所見に含めることが適切である場合にはこれに含めなければならない。締約国による、条約のいずれかの条文に関する留保または宣言は、すべて説明がなされなければならず、また、その存続についても明確にされなければならない。

A.10.2 特定の条文に言及しない一般的な留保、あるいは、第4条、第5条および第12条に関する留保を行った締約国は、それらの留保の解釈および効果に関して報告を行わなければならない。締約国が、他の人権条約における同様な義務に関して留保または宣言を行った場合は、そのすべての留保または宣言に関する情報を提供しなければならない。

A.11 国際労働機関(ILO)の条約

A.11.1 締約国が、統一指針付録2にリストが記載されている国際労働機関(ILO)の条約のいずれかに加盟しているか、あるいは、国際連合の専門機関の他の関連条約に加盟していて、かつ、条約で認められているいずれかの権利に関連のある監視委員会に既に報告を提出している場合、条約が指定する文書で情報を繰り返すのではなく、それらの報告の各部分を添付するべきである。しかし、条約の下で発生し、それらの報告では十分に網羅されていない事項はすべて、本条約が指定する文書で取扱われなければならない。

A.12 選択議定書

A.12.1 締約国が選択議定書を批准し、あるいはこれに加入し、委員会が当該議定書に基づき受理した通報に関して、救済策の提供の必要性またはその他の懸念を表明する見解を示した場合、条約が指定する文書に、当該通報を引き起こしたいかなる状況も再発しないことを確保するためにとられた救済措置およびその他の措置に関する詳細な情報を含めなければならない。さらに報告では、締約国が選択議定書の実施を妨げる障害と見なしている現行法のあらゆる規定と、そのような規定を見直す計画の有無を示さなければならない。

A.12.2 締約国が選択議定書を批准し、あるいはこれに加入し、委員会が選択議定書第6条に基づく調査を実施した場合、条約が指定する文書に、調査への対応においてとられたさらなる措置のすべてについて、その詳細を含め、かつ、調査を引き起こした侵害が再発しないことを確保しなければならない。

B.委員会に提出された、条約が指定する文書における、条約の一般規定に関連のある部分

条約第1条から第4条まで

これらの条文では、条約の目的、定義、一般原則および一般的義務を定めている。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.分析対象のデータを収集する際に使用された障害の定義。どの機能障害が含まれるのか、および「長期」の概念化。

2.条約第1条および第2条に定められている概念が、国内法において、どのような方法および手段で定義され、理解されているか。特に、障害に基づく差別をしている、あらゆる法律、規則、社会的習慣または慣行。

3.「合理的配慮」の概念および「不釣合いな又は過重な負担」に関する要件について、締約国がどのような方法および手段で定義し、理解しているか、例をあげる。

4.条約第3条および第4条に定められている一般原則と一般的義務が、どのように実施されてきたか。締約国はその効果的な実現を、どのように確保しようとしているか。特に、第4条で規定されている、障害に基づく差別をしない、条約に定められている権利の完全な実現の促進の原則について、例をあげる。

5.具体的な非差別措置の効果と、障害のある人による、条約に定められている各権利の平等な実現の確保に向けた進捗状況に関する、ジェンダーおよび年齢に基づく視点を含む、分類された比較可能な統計データ。

6.締約国が、条約に定められているいずれの権利の漸進的実施に努めてきたか。即時実施を約束してきた権利はどれか。後者の措置の影響についての説明。

7.障害のある女性、少年および少女を含む障害のある人の、条約導入のための法律と政策の開発、実施および評価への関与の程度。これらの過程に関与してきた障害のある人の、ジェンダーおよび年齢に基づく視点から見た多様性も示されなければならない。

8.締約国には、第4条第4項に基づき、条約に記載されている措置よりも高いレベルで障害のある人の権利を保護する措置があるかどうか。

9.締約国が連邦国家または極めて地方分権化が進んでいる国家である場合、いかなる制限または例外もなく、締約国のすべての地域に条約の規定が及ぶことを、どのように確保してきたか。

C.報告における、特定の権利に関する部分

第5条―平等および非差別

この条文は、すべての者が法律の前において平等であり、いかなる差別もなしに、平等を基礎として、法律による平等な保護および利益を受ける権利を有することを認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が他の者との平等を基礎として、その利益を保護し、または追求するために、法律を利用することができるかどうか。

2.障害のある人に、あらゆる種類の差別に対する平等の、かつ、効果的な法的保護を保障するためにとられる、合理的配慮の提供を含む効果的な措置。

3.障害のある人の事実上の平等を達成するための差別是正措置を含む、彼らの多様性を考慮した政策および計画。

第8条―意識向上

この条文は、障害のある人の肯定的なイメージを促進するために、効果的な意識向上政策を実施するという締約国の義務を定めるものである。報告には、障害のある人に関する意識の向上と、彼らの権利および尊厳ならびに能力および貢献の尊重を促進し、彼らに対する固定観念や偏見と闘うためにとられた措置に関する情報を含めなければならない。

締約国は以下について報告しなければならない。

1.教育制度および主流の媒体(メディア)による活動を通じて行われる、一般社会を対象とした公衆啓発活動。

2.障害のある人およびその他の社会を対象とした、条約と条約に定められている権利に関する意識向上と情報提供のためにとられた行動。

第9条―アクセシビリティ

この条文は、障害のある人ができる限り自立して生活すること、および生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするために、締約国が適切な措置をとる義務を定めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が、他の者との平等を基礎として、都市および農村の双方において、条約第9条第2項(b)から(h)に従った、物理的環境(信号表示器および道路標識の利用を含む)、輸送機関、情報通信(情報通信技術および情報通信システムを含む)、および民間主体によって提供されるものも含めた、公衆に提供される他の施設およびサービスにアクセスすることを確保するためにとられた立法措置およびその他の措置。

2.アクセシビリティの技術標準規格および指針と、それらの履行の監査、違反に対する制裁措置。課徴金として得られた資金が、アクセシビリティ活動の推進に適用されているかどうか。

3.アクセシビリティ要件を義務付けた、公共調達に関する規定およびその他の措置の利用。

4.官民両部門における、アクセシビリティを阻む障害および障壁の確認と撤廃。明確な目標と期限を定めた全国的なアクセシビリティ計画。

第10条―生命に対する権利

この条文は、障害のある人の、他の者との平等を基礎とした、生命に対する固有の権利を再確認するものである。

締約国は以下について報告しなければならない。

1.障害のある人の、他の者との平等を基礎とした、生命および生存に対する権利を、法律で認め、保護しているかどうか。

2.障害のある人が、恣意的な生命の剥奪の対象となっているかどうか。

第11条―危険のある状況および人道上の緊急事態

この条文は、武力紛争、人道上の緊急事態または自然災害が原因で発生する状況など、危険のある状況における障害のある人の保護および安全を確保することを、締約国に義務付けるものである。

締約国は、障害のある人を国内の緊急時対応手順書に含めるためにとられた措置を含む、彼らの保護および安全を確保するためにとられたあらゆる措置について報告しなければならない。

締約国は、人道支援を目的とした救済策が、人道上の緊急事態に陥った障害のある人にとってアクセシブルな方法で実施されることを確保するためにとられた措置、特に、障害のある人が緊急避難施設および難民キャンプで衛生施設およびトイレが利用できること、かつ、それらが障害のある人にとってアクセシブルであることを確保するためにとられた措置について、報告しなければならない。

第12条―法律の前における平等な承認

この条文は、障害のある人が、法律の前に人として認められる権利を有することを再確認するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が、生活のあらゆる側面において、他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを確保するために、締約国によってとられた措置。特に、障害のある人の身体的および精神的なインテグリティの維持、市民としての完全参加、財産の所有または相続、自己の財務管理の平等な権利と、銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信用への平等なアクセスを持つ権利、ならびに障害のある人がその財産を恣意的に奪われない権利を確保するための措置。

2.障害を理由に完全な法的能力を制限する法律が存在するかどうか、また、条約第12条の順守に向けてとられている行動。

3.障害のある人が、その法的能力の行使と自己の財務管理に利用できる支援。

4.支援付き意思決定モデルの悪用に対する保護措置の存在。

5.すべての障害のある人の法律の前における平等な承認に関連した、意識向上と啓蒙活動。

第13条―司法へのアクセス

この条文は、障害のある人が、法的手続から排除されることなく、他の者との平等を基礎として、司法への効果的なアクセスを持つ権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.調査段階その他の予備段階を含むすべての法的手続における、障害のあるすべての人による司法への効果的なアクセスを確保するためにとられた措置。

2.国内の司法制度および刑務所制度における職員に対する、障害のある人の権利に関する効果的な訓練を確保するためにとられた措置。

3.法的手続において、あらゆる種類の障害のある人による司法制度への効果的な参加を、その立場(被害者、加害者、証人または陪審団の一員など)にかかわらず確保するために提供される手続上の配慮を含む、合理的配慮の利用可能性。

4.障害のある子どもと若者による効果的な参加を確保するための、年齢に応じた配慮。

第14条―身体の自由および安全

この条文は、障害のある人が、身体の自由および安全についての権利を享有すること、障害の存在を理由に、自由を不法にまたは恣意的に奪われないことを確保するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.あらゆる種類の障害のあるすべての人が、身体の自由および安全についての権利を享有すること、また、いかなる人も障害を理由にその自由を剥奪されないことを確保するために、締約国によってとられた措置。

2.あらゆる種類の障害のあるすべての人の施設収容または自由の剥奪を許可するすべての法律を廃止するためにとられた行動。

3.自由を剥奪されてきた障害のある人が、彼らに残されている人権を完全に享有するために、必要な合理的配慮を提供され、他のすべての人と同じ手続上の保障から利益を得ることを確保するために導入された、立法措置およびその他の措置。

第15条―拷問または残虐な、非人道的な、もしくは品位を傷つける取扱い、もしくは刑罰からの自由

この条文は、拷問、残虐な、非人道的な、品位を傷つける取扱いや刑罰から、障害のある人を保護することを定めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.法的能力の行使に支援が必要な人を含む障害のある人を、その自由な同意なしに医学的または科学的実験を受けることから効果的に保護するためにとられた措置。

2.拷問を防止するための国家戦略およびメカニズムへの、障害のある人のインクルージョン。

第16条―搾取、暴力および虐待からの自由

この条文は、家庭の内外におけるあらゆる形態の搾取、暴力および虐待から障害のある人を保護し、特に障害のある子どもと女性に注意を払うものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.家庭の内外におけるあらゆる形態の搾取、暴力および虐待(ジェンダーおよび子どもを理由とする状況を含む)から障害のある人を保護するためにとられた立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置。

2.障害のある人(その家族および介助者を含む)を援助および支援し、搾取、暴力および虐待(ジェンダーおよび子どもを理由とする状況を含む)の事案を防止し、認識し、および報告するための社会保護措置。

3.障害のある人を対象としたすべてのサービスおよび計画が、独立した当局により効果的に監視されることを確保するためにとられた措置。

4.暴力の被害者となるすべての障害のある人が、効果的な回復、リハビリテーションおよび社会復帰のサービスと計画へのアクセスを持つことを確保するためにとられた措置。

5.暴力を防止し、被害者を支援するために利用できるすべてのサービスとリソースが、障害のある人にとってアクセシブルであることを確保するためにとられた措置。

6.障害のある人に対する搾取、暴力および虐待の事案が明らかにされ、調査され、かつ、適切な場合には訴追されることを確保するための法令および政策(女性および子どもに重点を置いた法令および政策を含む)。

第17条―個人のインテグリティの保護

この条文は、障害のある人の、身体的および精神的なインテグリティを尊重される権利を定めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人を、その自由な同意なしに施される医学的(またはその他の)処置から保護するためにとられた措置。

2.すべての障害のある人を強制不妊手術から保護するためにとられた措置と、少女および女性を強制中絶手術から保護するためにとられた措置。

3.この権利の実現を確保するための独立した審査機関の存在、組織および役割と、これらの機関によって採用された計画および措置。

第18条―移動の自由および国籍

この条文は、障害のある人の移動の自由、居所を選択する自由および国籍についての権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が国籍を取得する権利と、それを奪われない権利、および障害のある人が任意に出入国する権利を確保するためにとられた立法措置または行政措置。

2.障害のあるすべての新生児が、出生時に登録され、氏名と国籍を与えられることを確保するためにとられた措置。

第19条―自立した生活および地域社会へのインクルージョン

この条文は、障害のある人の、地域社会で自立して生活し、これに参加する権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.パーソナルアシスタンスを必要としている人に対するその提供を含む、利用可能な自立生活スキームの存在。

2.障害のある人が地域社会で生活できるようにする在宅支援サービスの存在。

3.障害の種類を考慮した、共同住宅および介護用住宅を含む、生活様式にかかわる居住サービスの選択肢の存在とその種類。

4.一般住民向けに提供されている地域社会サービスおよび施設への、障害のある人のアクセシビリティの程度。

第20条―個人の移動性

この条文は、障害のある人が可能な限り自立して自由に移動する権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.アクセシビリティのための信号表示器および道路標識の利用を含む、障害のある人が、自ら選択する方法により、自ら選択する時に移動することと、さまざまな形態のアシスタンス(人、動物または支援技術および補装具)に、負担可能な費用でアクセスすることを容易にする措置。

2.このような技術の質を高め、負担可能な費用で利用できるようにし、利用者にとって使いやすくすることを確保するためにとられた措置。

3.障害のある人および専門職員に対する移動技能の訓練のためにとられた措置。

4.移動補助具、補装具および支援技術を生産する主体が、障害のある人の移動のあらゆる側面を考慮に入れるよう、奨励するためにとられた措置。

第21条―表現および意見の自由ならびに情報へのアクセス

この条文は、障害のある人の、あらゆる形態のコミュニケーションであって自ら選択するものによる表現および意見の自由(情報および考えを求め、受け、および伝える自由を含む)についての権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.一般公衆に提供される情報が、障害のある人にとってアクセシブルで、適時に、かつ、追加の費用の負担なしに提供されることを確保するためにとられた立法措置およびその他の措置。

2.障害のある人が、あらゆる形態の公的な活動と情報へのアクセスにおいて、手話、点字、拡大代替コミュニケーションおよび他のすべてのアクセシブルな手段など、自ら選択するコミュニケーションの手段を使用できるようにするためにとられた立法措置およびその他の措置。

3.民間主体および大衆媒体に対し、その情報とサービスを障害のある人にとってアクセシブルな様式で提供することを勧奨するためにとられた措置(民間部門による代替様式の情報へのアクセスの阻止または制限を防止するためにとられた措置を含む)。

4.大衆媒体のアクセシビリティの程度と、ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ(WAI)の基準を順守している公開ウェブサイトの割合。

5.手話の公式な承認にかかわる立法措置およびその他の措置。

第22条―プライバシーの尊重

この条文は、障害のあるすべての人の、私生活、名誉および信用を保護される権利を認めるものである。

締約国は、障害のある人の個人情報、健康に関連する情報およびリハビリテーションに関連する情報についてのプライバシーを保護するためにとられた措置について、報告しなければならない。

締約国は、プライバシーの保護を口実とした障害のある人の隠匿がないようにとられた措置について、報告しなければならない。

第23条―家庭および家族の尊重

この条文は、障害のある人の、婚姻をし、家族を形成し、自分が持つ子どもの数を自由に決め、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持する権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が、完全かつ自由な合意に基づいて婚姻をし、家族を形成する権利を行使できることを確保するためにとられた措置。

2.障害のある人が、家族計画、生殖・出産および養子縁組または養育を支援する計画を利用できるようにするためにとられた措置。

3.障害のある親が、子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、必要に応じて、親子関係を保障されつつ、適切な支援を受けることを確保するためにとられた措置。

4.いずれの子どもも、その子どもの障害または一方もしくは両方の親の障害を理由として、親から分離されないことを確保するためにとられた措置。

5.障害のある少年または少女の隠匿、遺棄、放置または隔離を防止する目的で、その父親と母親および家族を支援するためにとられた措置。

6.親が監護することができない障害のある少年および少女の施設収容を回避し、彼らがより広い範囲の家族から、また、これが不可能なときは、広く地域社会の中の家庭的な環境で、代替的な監護を受けることを確保するためにとられた措置。

7.障害のある人、特に少女と女性の、強制不妊手術を防止するためにとられた措置。

第24条―教育

この条文は、障害のある人の、機会の平等を基礎とした教育についての権利を認め、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育制度と生涯学習へのアクセスの促進を確保するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.すべての障害のある子どもが、早期教育、義務的な初等教育と中等教育、および高等教育へのアクセスを持つことを確保するためにとられた措置。

2.早期教育を受けている障害のある少年および少女の数に関する情報。

3.さまざまな教育段階で存在する、少年および少女の教育における重大な格差に関する情報と、これらの格差を解消するための政策および法令の有無。

4.効果的な教育と完全なインクルージョンを確保するために、学校と教材がアクセシブルであること、ならびに障害のある人が必要とする個別化された合理的配慮と支援が提供されることを確保する立法措置およびその他の措置。

5.点字、手話、拡大代替コミュニケーション、移動性およびその他の分野における特別な技能訓練サービスを必要とする子ども、成人または教師による、それらの利用可能性。

6.ろう者の言語的なアイデンティティの促進のためにとられた措置。

7.教育が、その個人にとって最も適切な言語、コミュニケーションの形態および手段、環境で行われることを確保するためにとられた措置。

8.教育制度において、専門家向けの障害に関する適切な訓練を確保するための措置、ならびに障害のある人を教育チームに組み込むための措置。

9.高等教育における、障害のある学生の数と割合。

10.ジェンダー別および研究分野別の、障害のある学生の数と割合。

11.生涯学習教育へのアクセスを確保するための、合理的配慮の提供およびその他の措置。

12.障害のある人とその教育上のニーズの早期発見を確保するために締約国によってとられた措置。

第25条―健康

この条文は、障害のある人が、到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有することを認め、障害のある人が、地域社会において費用を負担することなく、ジェンダーを考慮した保健サービス(保健に関連するリハビリテーションを含む)にアクセスすることを確保するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人を差別から保護し、彼らが質の高い保健サービス(性および生殖の分野における保健サービスを含む)に、同一のアクセスを持つことを確保する立法措置およびその他の措置。

2.障害のある人が、地域社会において、自由に、かつ、費用を負担することなく、障害関連の保健リハビリテーションへのアクセスを持つことを確保するためにとられた措置。

3.子ども、女性および高齢者に注意を払い、農村部を含めて必要に応じて提供される、二次障害の発現を予防し、これを最小限に抑えるための保健サービス、早期発見および早期介入計画。

4.一般公衆向けの保健キャンペーンが、障害のある人にとってアクセシブルであることを確保するための立法措置およびその他の措置。

5.医師およびその他の保健専門家に対し、障害のある人の権利に関する訓練を行うために、農村部も含めて導入された措置。

6.障害のある人に対するいかなる保健医療も、十分な説明に基づく自由な同意に基づいて施されることを確保するための立法措置およびその他の措置。

7.健康保険およびその他の保険が法律で義務付けられている場合、これらへのアクセスにおける差別からの保護を確保する立法措置およびその他の措置。

8.公衆衛生施設が、単に利用可能であるだけでなく、完全にアクセシブルであることを確保するためにとられた措置。

9.HIV/エイズおよびマラリアの予防に関する意識向上と、点字を含むさまざまなアクセシブルな様式による情報提供のためにとられた措置。

第26条―ハビリテーションおよびリハビリテーション

この条文は、保健、雇用、教育および社会サービスの分野における、ハビリテーションおよびリハビリテーションについての包括的な計画を通じて、障害のある人が最大限の自立、十分な身体的、精神的、社会的および職業的な能力ならびに生活のあらゆる側面への完全なインクルージョンおよび参加を達成し、かつ、維持することを可能とするための措置を定めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.保健、雇用、教育および社会サービスの分野における、障害のある人のための総合的なハビリテーションおよびリハビリテーションについての計画(早期介入、ピアサポートおよび農村部におけるこれらのサービスと計画の利用可能性を含む)。

2.ハビリテーションおよびリハビリテーションについてのサービスと計画への参加が、任意であることを確保するためにとられた措置。

3.ハビリテーションおよびリハビリテーションについての計画に従事している専門家および職員に対する初期訓練と継続訓練の促進。

4.ハビリテーションおよびリハビリテーションに関する、障害のある人向けの補装具および支援技術の促進、供給、知識および使用のための措置。

5.特に第三世界の国々での支援技術の交換における国際協力の促進のためにとられた措置。

第27条―労働および雇用

この条文は、障害のある人(雇用の過程で障害を持つこととなった者を含む)が、開かれた、インクルーシブで、かつ、アクセシブルな労働市場および労働環境への参加により、働き、生計を立てる権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.あらゆる雇用段階およびあらゆる形態の雇用における差別からの保護を確保し、障害のある人が他の者との平等を基礎として働く権利、特に、同一の労働に対して同一の報酬を得る権利を認めるためにとられた立法措置。

2.条約第1項(a)から(g)に従った障害のある人の完全かつ生産的な雇用の達成のために導入された、対象を絞った雇用計画および政策の影響。

3.条約第1項(e)に従った、公的機関および民間企業の民営化、人員削減および財政再建の結果、解雇された障害のある人の再雇用を容易にするための措置の影響。

4.企業家精神を奨励するための協同組合の設立と起業の促進を含む、合理的配慮の提供としての技術的援助および経済的援助の利用可能性。

5.一般労働市場における障害のある人の雇用に向けた差別是正措置および有効な行動手段。

6.職場における障害のある人に対するいやがらせを防止するための積極的かつ有効な行動手段。

7.開かれた雇用と職業訓練サービス(自己雇用の促進に関するサービスを含む)に対する障害のある人のアクセシビリティ。

8.障害のある男女の間で存在する重大な雇用格差に関する情報と、障害のある女性の地位向上を促進するためにこれらの格差を解消する政策と法令の有無。

9.障害のある人の中でも最も脆弱な集団の特定(例もあげる)と、労働市場への彼らのインクルージョンに向けて導入された政策および法令。

10.障害のある人の労働組合の権利の促進のためにとられた措置。

11.以前従事していた業務の遂行を妨げる障害をもたらした労災に苦しんでいる労働者の、職業維持と再訓練を確保するためにとられた措置

12.締約国の非公式経済における障害のある人の就労に関する情報と、彼らの非公式経済からの脱出を可能にするためにとられた措置、および基本的なサービスと社会保護へのアクセスを確保するためにとられた措置。

13.第27条第2項に基づき、障害のある労働者を不当な解雇、強制的または義務的労働から保護するために導入された、法的保護措置に関する説明。

14.第1項(k)に従い、技術的および職業的技能を備えている障害のある人が、労働市場に参加および復帰するために必要な支援を得て、その地位を向上することを確保するためにとられた措置。

15.障害のある学生が、一般労働市場への同一のアクセスを持つことを確保するためにとられた措置。

16.現場での仕事、在宅勤務(オフサイト/自宅)および下請けなど、さまざまな形態の就労と、新たな通信技術によりもたらされた就労の機会を確保するためにとられた措置。

第28条―適切な生活水準および社会保護

この条文は、障害のある人の、適切な生活水準と社会保護についての権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.清浄な水、適切な食料、衣類および住居の利用可能性と、障害のある人によるこれらへのアクセスを確保するためにとられた措置およびその例。

2.障害に関連する追加費用をまかなう計画の利用可能性を含む、障害のある人による、負担可能な価格でのサービス、補装具およびその他の適切な援助へのアクセスを確保するためにとられた措置。

3.障害のある人、特に障害のある女性および少女ならびに高齢者による、社会保護計画および貧困削減計画へのアクセスを確保するためにとられた措置。

4.障害のある人を対象とした公的な住宅供給計画と、退職に関する給付および計画に向けた措置。

5.貧困と障害の関連性を認めるためにとられた措置。

第29条―政治的および公的活動への参加

この条文は、障害のある人の政治的権利を保障するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人、特に精神障害または知的障害のある人の、政治的権利を保障する法令および措置(制限が存在する場合は、その制限と、それを克服するためにとられた措置を含む)。

2.障害のあるすべての人の、自力で、あるいは、自らが選択する人物の援助を受けて、投票する権利を確保するためにとられた措置。

3.投票の手続、施設および資料の完全なアクセシビリティを確保するためにとられた措置。

4.障害のある人による、政治的および公的活動への参加の権利の完全な享有を評価する指標。

5.地方的、地域的および国内的な段階において、障害のある人の権利と利益を代表する組織を設立し、維持するために障害のある人に提供される支援が存在する場合、その支援。

第30条―文化的な生活、レクリエーション、余暇およびスポーツへの参加

この条文は、障害のある人が文化的な生活に参加し、その創造的、芸術的および知的な潜在能力を開発し、および活用し、独自の文化的および言語的なアイデンティティの承認および支持を受け、他の者との平等を基礎として、レクリエーション、余暇およびスポーツの活動に参加する権利を認めるものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある人が、他の者との平等を基礎として、創造的、芸術的および知的な潜在能力を開発し、および活用する機会を含む、文化的な生活に参加する権利を承認し、促進するためにとられた措置。

2.障害のある子どもを考慮し、公共調達および公的資金の条件付き利用などを通じて、文化施設、レジャー施設、観光施設およびスポーツ施設を、障害のある人にとってアクセシブルにすることを確保するためにとられた措置。

3.知的財産法が、障害のある人による文化的資料へのアクセスを妨げる障壁とならないことを確保するためにとられた、関連のある国際的な取り組みへの参加を含む措置。

4.ろう文化を促進するためにとられた措置。

5.賞およびメダルの授与において、障害のある人を差別し、区別する取扱いの廃止を含む、障害のある人のスポーツへの参加を支援するためにとられた措置。

6.障害のある子どもが、他のすべての子どもとの平等を基礎として、遊戯施設、レクリエーション施設、レジャー施設およびスポーツ施設(学校制度に作られたこれらの施設を含む)に参加するためのアクセスを有することを確保するためにとられた措置。

D.障害のある少年、少女および女性の特定の状況に関する報告の部分

第6条―障害のある女性

ジェンダーの側面は、該当する条文のそれぞれにおいて主要なものとして位置付けられるべきであるが、特にこの条文の下では、条約に定められている権利と基本的自由の行使および享有と、あらゆる形態の差別の撤廃を女性に保障することを目的として、女性の完全な発展、地位の向上およびエンパワーメントを確保するために締約国によってとられた措置に関する情報を、報告に含めなければならない。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある女性および少女のジェンダーの不平等が、立法段階と政策段階および計画開発において認識されているかどうか。

2.障害のある少女および女性が、障害のある少年および男性との平等を基礎として、すべての人権と基本的自由を享有しているかどうか。

3.障害のある少女および女性が、障害のない少女および女性との平等を基礎として、すべての人権と基本的自由を享有しているかどうか。

第7条―障害のある子ども

適切な場合には、障害のある子どもによる、条約に定められているすべての権利と基本的自由の完全な享有を確保するために、特に障害のある子どもに関するあらゆる決定が、その子どもの最善の利益を考慮したものであることを確保するために、締約国によってとられた措置に関する補足情報を、報告に含めなければならない。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.障害のある少年および少女に関する意思決定の根拠となる原則。

2.障害のある少年および少女が、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明でき、この権利を実現するための障害および年齢に適した支援を受けられるかどうか。

3.障害のある少年および少女の状況における関連のある変化。

4.障害のある子どもが、他の子どもとの平等を基礎として、権利所有者と見なされているか。

E.特定の義務に関する報告の部分

第31条―統計およびデータ収集

この条文は、締約国によるデータ収集の過程について規定するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.人権と基本的自由、倫理、法的保護措置、データ保護、秘密性およびプライバシーを尊重する条約の実現に向けて、締約国が政策を形成し、および実施することを可能とする、統計および研究データを含む分類された適切な情報を収集するためにとられた措置。

2.これらの統計の普及と、これらの統計への障害のある人のアクセシビリティを確保するための措置。

3.データ収集および研究の過程への障害のある人の完全参加を確保するためにとられた措置。

第32条―国際協力

この条文は、条約の目的および趣旨を実現するための国内的な努力を支援するものとして、締約国による国際協力が重要であることを認めるものである。

国際協力のドナー国または受益国として、締約国は、以下について報告しなければならない。

1.国際協力が、障害のある人にとって、インクルーシブかつアクセシブルであることを保障するためにとられた措置。

2.ドナーの資金が被援助国によって適切に使用されることを保障するためにとられた措置(実施例および対象を絞った資金援助の成功件数とその割合も示す)。

3.特に障害のある人を対象とした計画および事業と、それらに割り当てられた総予算の割合。

4.女性や子どもなど、障害のある人の中で最も脆弱な集団のインクルージョンに向けてとられた差別是正措置。

5.計画および事業の設計、開発および評価に、障害のある人がどの程度参加しているか。

6.開発された一般的な計画および事業の中で主要なものとして位置付けられている、障害のある人向けの活動がどの程度あるか。

7.情報、体験、訓練計画およびベストプラクティスの交換および共有などを通じた、能力構築の促進と支援に向けた活動。

8.ミレニアム開発目標(MDG)をターゲットとした政策および計画において、障害のある人の権利が考慮されているかどうか。

9.障害のある人の援助に関する技術的なノウハウと専門知識の交換にかかわる計画の開発、進捗状況および効果。

第33条―国内的な実施および監視

この条文は、条約の国内における適用とフォローアップについて規定するものである。

締約国は、以下について報告しなければならない。

1.異なる部門および段階における条約の実施に関連する活動を容易にするため、政府内に調整のための仕組みを設置し、または指定することに十分な考慮を払い、条約の実施に関連する事項を取扱う1または2以上の担当部局を政府内に指定するためにとられた措置。

2.人権の保護および促進のための国内機関の地位および機能に関する原則を考慮に入れた、条約の実施を促進し、保護し、および監視するための枠組み(適切な場合には、1または2以上の独立した仕組みを含む)の設置と、このためにとられた措置。

3.市民社会、特に、障害のある人および障害のある人を代表する団体(ジェンダーの視点を含む)の、監視の過程と報告の準備への参加を得るためにとられた措置。

4.さまざまな部門が、障害のある人の権利について同じ認識を持ち、その促進に向けて取り組めるようにすることを目的とした、すべての政府機関の検討議題への障害問題の統合。

5.障害のある人にかかわる政府の各部門の事業と計画および機能。

6.国内的な実施および監視のための予算配分。


original:
United Nations CRPD/C/2/3
Convention on the Rights of Persons with Disabilities
Distr.: General
18 November 2009
Original: English
Committee on the Rights of Persons with Disabilities
Second session
Geneva, 19-23 October 2009
Guidelines on treaty-specific document to be submitted by states parties under article 35, paragraph 1, of the Convention on the Rights of Persons with Disabilities
http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRPD/CRPD-C-2-3.pdf

翻訳:JDF(日本障害フォーラム)