報告 佐藤 聡(JDF条約小委員会委員長、DPI日本会議事務局長)
皆さん、こんにちは。DPI日本会議の佐藤聡(さとう さとし)と申します。私は、JDFの中で条約小委員会の委員長をさせていただいております。このたび、9月の15日から19日、スイスのジュネーブで開かれました国連障害者権利委員会にJDFから派遣していただいて傍聴してまいりましたので、概要をご説明いたします。
今日は二部構成でして、あとからパネルディスカッションで一緒に行った長瀬先生、野村弁護士、崔さんにご報告いただきますので、その前に私は、パワーポイント、写真を使いまして、どういう流れでこの権利委員会があるかということをご説明したいと思います。
まず、スイスのジュネーブは、湖がありまして、そこの横に権利委員会の会場が立っております。これは、高等弁務官事務所だそうです。この中で大きい部屋を使って、そこで審査があるんですけれども、全部の日程は9月の15日から10月の3日まであるのですが、私たちが傍聴したのは、ニュージーランドとメキシコと韓国。とりわけ、韓国は日本と制度・政策が非常に似ているということで、そこを重点的に傍聴するということで行ってまいりました。
スライド1:第12回国連障害者権利委員会 2014年9月15~19日 ジュネーブ
まずですね、15日月曜日なんですけれども、午前中オープニングがありまして、昼からニュージーランドの審査でした。審査は、建設的対話というんですけれども、1つの国を2日に分けて行うんですね。1日目は午後の3時から6時、2日目は午前中の10時から1時。この3時間ワンセットで2つやって6時間で1カ国終わりなんですね。その際に、3時の前のお昼休みに、1時45分から2時45分まで、1時間使いまして、サイドイベントなんですが、プライベート国別ブリーフィング。ニュージーランドのパラレルレポートを作られた、障害当事者のグループの方たちの発表があります。これは委員の皆さんに、できるだけ声をかけて、お昼休みなんですけど、来ていただいてやっておりました。
ずらっとだいたい20人くらいニュージーランドの方たちが座られて、それで報告をするんですけれども、リーダーの方は女性の聴覚障害の方でした。手話で、司会をして、リードをして、全体的な報告をする。自分達の国の実態としてこういう問題があるということを障害当事者の視点から報告をしておりました。報告会はたくさんの委員の方が来て聴いておられまして、30分報告して、そのあと委員の方が30分質疑をするという形です。それが1時間で終わりまして、3時から今度ニュージーランド政府が来まして、そこで報告です。だいたい20分くらい政府が概要を報告しまして、そのあと10分間担当の委員の方、権利委員会の委員の方18名いらっしゃるんですけれども、そのうちの1人の方がそれぞれの国の担当になって、事前に訪問していろいろと調べられて、それを10分ぐらいでお話されていました。
スライド2:ニュージーランド審査(建設的対話) 2014年9月15-16日
スライド3:プライベート国別ブリーフィング ニュージーランド 2014年9月15日13:45-14:45
スライド4:リーダーは聴覚障害の女性
スライド5:報告を聞く委員 テレジア・デグナー委員(中央)
スライド6:ニュージーランド審査開始 9月15日15:00~18:00
それが6時で終わりましてそのあとは、たいてい、どこかでサイドイベントをやっております。この日はEU主催のサイドイベントで、それをちょっと見てまいりました。このときにロバート・マーチンさんという、この方は国連のニューヨークの権利条約を作られるときも発言をされた方で、知的障害の当事者の方です。この方が今度次の権利委員の選挙にはじめて知的障害の当事者として立候補されるということです。
もうひとつ国別ブリーフィングをするときに、現地でお世話をしてくださるIDAという団体があるんですけれども、その事務局のヴィクトリア・リーさん。この方は日本にも以前お招きしたんですけれども、この写真の真ん中の女性なんですけれども、彼女が中心になっていろいろと世話をして教えてくれるのですね。リハーサルもこの人がいろいろとやってくださいました。ちょっと飲んでいましたらマーチンさんも通りかかり、また一緒にお話をしました。
スライド7:EU主催 サイドイベント
スライド8:ロバート・マーチンさん(ニュージーランド 知的障害当事者)
スライド9:ビクトリア・リーさんと意見交換会
スライド10:ロバート・マーチンさんも登場
これが3日目になるんですけれども、9月17日、韓国の審査の日です。この日も同じようにお昼休みの1時45分から1時間かけて、韓国はNGO報告書連帯という広いネットワークを作って、そこがパラレルレポートを作成したんですけれども、その方たちがずらっと並んで発表します。この方が中心で司会をされていましたけれども、イ・ソック副委員長です。ご覧のとおりおそろいのTシャツを皆さん着ていらっしゃったんですね。前に選択議定書、韓国はまだ選択議定書を批准していないんですけれども、背中に25条のe、保険の条項が留保されているので、これを撤廃して批准するようにというメッセージを書いたTシャツを着て、韓国の皆さんは報告をされました。
この方は精神障害の当事者の弁護士の方なんですけれども、韓国での精神科病棟の実態を訴えておられました。この手に持っていらっしゃるのは絵なんですけれども、強制入院させられた患者さんが、病院の中で、虐待などを受けている。それを絵で描いたものです。報告を前でしているんですけれども、後ろでは報告書連帯の事務局の女性が、Facebookに打っていくんですね。韓国語と英語と同時に1人で2つ打っていました。そして、様子が全部韓国の皆さんには随時伝わっていました。
スライド11:プライベート国別ブリーフィング 韓国報告書連帯 2014年9月17日13:45-14:45
スライド12:NGO報告書連帯 イ・ソック副運営委員長
スライド13:韓国から50名を超える傍聴団
Tシャツ「前に“選択議定書批准”、背中に“25条の留保の撤廃”」
スライド14:精神科病院の実態を訴える
スライド15:審議の様子はFacebookで中継
スライド16:審議の様子はFacebookで中継
これは1時間のサイドイベント、ブリーフィングが終わった後なんですけれども、夜一緒に食事をしたヴィクトリア・リーさんの後ろの方が司会をしていました。終わるとすぐに寄ってきて打ち合わせをしていました。ヴィクトリアさんに夜お会いしたときにお話を聞いたんですけれども、まず、事前に、どういう報告をしたいのか、委員に対してどういうことを訴えたいのかを明確にしていく。ほとんどの国の人は、たくさん報告をしたがるのだけれども、それではダメなので、これとこれとこれという具合に明確にして、どんどん絞っていく。訴え方もより委員の人にインパクトを与えられるように明確にやっていく。そのやり方をリーさんが全部教えてくださる。前の日にみんなで集まって、練習する。この日は1日目の審査がこれから始まるのですが、委員さんにどういう質問をしてもらいたいか、韓国の人は考えているのですね。リーさんが、こういう質問はこの委員さんが得意だから、この方にアプローチしてはどうですかとアドバイスをする。韓国の皆さんは、審査の前の日も当日も、ずっとロビーに集まって、打ち合わせをして、準備をされていました。これも終わってからすぐに打ち合わせをしている。事務局の方との打ち合わせです。
スライド17:サイドイベント終了後 ビクトリアさん(IDA)と打ち合わせ
スライド18:サイドイベント終了後 ビクトリアさん(IDA)と打ち合わせ
そして、3時から韓国の審査がはじまりました。これが正面ですが、正面に議長がいて、右側に韓国政府の方がいらっしゃいます。6名ぐらいの方が順番に報告をされていました。韓国の傍聴団は、50数名いらっしゃいまして、これはこれまでの権利委員会では、最大の傍聴団だったということです。手前の方が傍聴席なんですけれども、このマイクのあるところを取らないと、ヘッドセットを取らないと音が全くないのですね。早く行って席を取らないとあぶれてしまうのですね。朝早く席を取っていました。
これは、おもしろいので、ぐるっとiPhoneで180度撮ってみたんですけれど、左が後ろで右が正面です。こういう感じでたくさんの方が来られていました。これが日本の傍聴団です。記録を取って傍聴していました。韓国の審査がここで終わって、皆さんお疲れ様でした、というところです。
スライド19:韓国審査開始 2014年9月17日15:00-18:00
スライド20:韓国審査開始 2014年9月17日15:00-18:00
スライド21:審査を見守る韓国大傍聴団
権利委員会史上最大の傍聴団!
スライド22:会場を180度で見ると
スライド23:日本からの傍聴団
スライド24:韓国審査終了
ちょっとここで、合理的配慮が会議の中でいくつかありましたので、紹介します。手話の方が、正面のカメラの右側に2人立っていらっしゃいます。常に2人立っていらっしゃって、国際手話と英語の手話をされています。正面にスクリーンがあり、英語の文字通訳がほとんど同じスピードで出てきます。入口にはサイドイベントのチラシがありました。
スライド25:会議での合理的配慮 1 2つの手話(国際手話・英語手話)
スライド26:会議での合理的配慮 2 文字通訳
スライド27:入り口にはサイドイベントのチラシ
韓国の審査のあとに報告書連帯のシン・ヘス運営委員長、イ・ソック副委員長、権利委員会の委員のキム・ヒョンシックさんを交えた食事会をさせていただきました。そこで、報告書連帯はどういうふうに作られたか、パラレルレポートをどうやって作り上げてきたか、お話をいただきました。これに関しては、あとから崔から報告があります。
スライド28:韓国NGO報告書連帯と意見交換会
シン・ヘス運営委員長(社会権規約委員会委員)、イ・ソックさん、キム・ヒョンシク権利委員会委員、キム韓国DPI会長
スライド29:NGO報告書連帯の経緯や取り組み
それで傍聴は終わったんですけれども、国際的にはこういうことが議論されている、今はこういう時代なんだなという、世界のレベルを感じることができました。女性差別、複合差別の問題。日本ではなかなか取り上げられてないんですけれども、この権利委員の中では、委員さん何人もがこのことをたくさん質問されていた。ですから、そういう時代なんだなということが明確にわかりました。傍聴に行くと、世界的にはこういうふうにやっているんだ、こういう議論になっているんだということが非常によくわかりました。ぜひ皆さん、権利委員会は、年に2回されていますので、これからもいろんな方に行っていただいて、一緒にパラレルレポートの準備をしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
スライド30:傍聴終了
みなさん ジュネーブに行きましょう!