障害者権利条約は20カ国の批准を得て、2008年に発効しました。批准国は2011年3月現在98カ国に達し、そのうち約4分の3は途上国です。権利条約の基本的な考えが途上国の地方にも届くためにはどうしたらいいかについての議論が始まっています。
1970年代から開始された、CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)は、見直しの会議を経て、2004年に作成された合同政策方針を実現するため、WHO,ILO,UNESCO等によりガイドラインが2010年に完成しました。
CBRガイドラインでは障害者権利条約の基本原則がCBRの原則として取り上げられており、権利条約をコミュニティレベルで実施するためにCBRが重要な役割を果たすと考えられています。ガイドラインの完成までには多くの障害当事者、専門家などが顔を合わせて話し合う場がもたれました。その時に中心的に関わった一人が、障害政策アドバイザーのマヤ・トーマスさんです。
当協会では、2011年2月11日に、「インクルーシブなコミュニティ作りのために―CBRガイドラインはどう使われるべきか?」をテーマとして、マヤ・トーマスさんの講演を中心とするセミナーを開催しました。午後には、琉球大学教授の高嶺豊さん、社会福祉法人むそう理事長の戸枝陽基さんのお二人の講演と、続いてマヤさん及び講師全員と参加者との対話交流会を開催しました。
日本の地域福祉とCBRとが同じ場で対話することを試みた結果、マヤさんから、むそうの活動にはCBRの原則が多く含まれている、というコメントがあり、日本の事例とCBRとの共通点を確認する機会にもなりました。
ここに報告書を作成しましたので、ご高覧ください。この冊子は、2016年度に日本財団のご協力を得て、公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会が実施した、「CBID*研修プログラム開発事業」の報告書です。
・はじめに
・プログラム
・主催者あいさつ
日本障害者リハビリテーション協会副会長 松井亮輔
・特別講演 「CBRガイドラインと障害のある人の生活の質へのリフレクション-インドおよび中国での
CBRプロジェクトの評価に基づいて」
マヤ・トーマス氏 「アジア太平洋障害リハビリテーションジャーナル」編集委員
・講演1 「弱さを接着剤に共生のまちづくりを進める―日本の地域福祉の事例」
戸枝陽基氏 社会福祉法人むそう理事長
・講演2 「障害者権利条約とCBID」
高嶺豊氏 琉球大学教授
・マヤ・トーマスさんとの対話交流会
「インクルーシブなコミュニティを作るために-CBRガイドラインはどう使わるのか」
進行:中村信太郎氏(国際協力機構国際協力専門員(社会保障分野))
・閉会あいさつ
・講師プロフィール
・コーディネータープロフィール