精神障害者地域リハビリテーション実践ガイド

概要

本書は、精神障害をもつ人の地域リハビリテーションに携わる精神科ソーシャルワーカ、保健婦、看護婦、および学生、家族、当事者、精神保健ボランティアを対象とした初級・中級レベルの実践ガイドブックである。

本書は、はじめて地域リハビリテーションに携わる援助者が抱きやすい疑問を解決し、知っておくべき知識・技術を理解するために、図表や「理解のポイント」「実践のコツ」を整理し、わかりやすく提供することを目的としている。また、携わって数年になる中堅の方にも、これまでの実践を振り返り、整理する上で、役立てていただければと考えている。

目次をみていただければわかるが、本書は4章に分かれている。

「第1章実践の枠組みを知る」では、精神障害をもつ人の地域リハビリテーションを理解する上で必要な、「地域リハビリテーション」、「障害」、「援助」といった基本的な枠組みについて解説している。

「第II章精神疾患との関係を知る」では、精神障害の特性である「障害と疾患の共存」という点を踏まえて、最低限知っておいてほしい「精神疾患のメカニズム」、「薬とのつきあい方」、「思春期の精神障害」について解説している。

「第III章援助の実際を知る」では、地域リハビリテーションで実際に活用する援助技法について、一部事例を提示して具体的に、かつ、そのエッセンスについて解説している。

「第IV章制度・施策を知る」では、地域リハビリテーションを展開する上でバックグラウンドとなる制度・施策動向について、近年の動向を踏まえて解説するとともに、精神障害をもつ人が住みやすい地域づくりの実践例を解説している。

編者らが所属する学部では、社会福祉・臨床心理・地域づくりを柱に教育を行っている。本書の構成にも、そうした視点が反映されている。専門家だけが精神障害をもつ人を支えるのではなく、地域社会自体が精神障害をもつ人にとっても住みやすい場所となることが望ましいことは言うまでもない。そうした地域リハビリテーションの推進に本書が一助となればと願っている。

目次

第I章 実践の枠組みを知る

第1節 地域リハビリテーションの目的

1. 精神障害者の地域リハビリテーションとは何か …2

2. 精神障害者の地域リハビリテーションはなぜ必要か …4

3. 地域リハビリテーションの対象とニーズ …6

4. 地域リハビリテーションの方法と効果に関する実証的研究 …10

5. 成果をあげている地域リハビリテーションに共通の要素 …12

6. わが国における地域リハビリテーションの発展方向 …13

第2節 障害のとらえ方障害論

はじめに …19

1. 障害全般に共通する障害のとらえ方 …19

2. 精神障害の特性のとらえ方 …26

3. まとめ …30

第3節 援助のとらえ方 ― 援助関係論

はじめに …33

1.  助関係の特徴 …33

2.  援助の倫理 …35

援助関係のあり方 …36

4.  対話に基づく援助関係 …42

第II章 精神疾患との関係を知る

第1節 精神疾患のメ力ニズムを理解する

1.精神疾患における疾病と障害との関係 …48

2.治療モデルとリハビリテーション・モデル …49

3.リハビリテーションと福祉 …50

4.精神疾患の分類 …51

5,ストレスと精神疾患 …57

6.精神分裂病の急性期エピソードの経過 …58

7.再発の防止 …60

第2 節 薬とのつきあい方

1.飲まなければ治るものも治らない …68

2.薬を飲まずに損をするのは本人 …70

3.新時代を迎えて …72

4.治療は今日積極的に行われ、かなりの成果をあげている …74

5.再発がおこるとき …75

6.医者をかえない方がよいのでは? …77

第3節 思春期事例の相談と援助的介入

はじめに …79

1. 思春期の成長growthと発達development …80

2. 思春期の発達上の問題 …82

3.援助のポイント …86

第皿章 援助の実際を知る

第1節 基本的な援助技法

1.ソーシャルワークにおける援助技術 …92

2.対人援助の技法(利用者と家族に直接かかわる) …95

3.環境介入(間接的介入) …98

4.援助者として心がけたいこと …102

第2節 ケアマネジメント

はじめに …104

1.全体像 …105

2.各段階の技術 …108

3.周辺の技術 …117

おわりに …120

第3節 グループワーク

はじめに …122

1.グループワークの目標と有効な要因 …122

2.グループワークの実際 …124

3.メンバーのプロセス …125

4.グループワークを効果的に運営する工夫 …131

おわりに …135

第4節 コミュニティワーク

1.精神保健福祉分野におけるコミュニティワークへの着目 …137

2.コミュニティワークとは? …139

3.社会福祉援助におけるコミュニティワークの位置 …140

4.コミュニティワークの組織と関係者 …142

5. コミュニティワークのプロセス …143

6.目標としての福祉コミュニティの形成 …147

7.コミュニティワーク実践のポイント …149

第5節 多職種間の連携

1.多職種間の連携 …153

2.ケース …157

3.Aさんの場合の職種間の連携 …160

4.チーム援助の基本 …162

第6節 就労支援

1.基本的な考え方と支援の流れ …166

2.相談 …168

3.就労準備訓練 …172

4.就職活動支援 …178

5.就職後のフォローアップ …181

第IV章 制度・施策を知る

第1節 精神障害者福祉施策の変遷と新たな潮流

はじめに …186

1.障害者施策の系譜と精神障害者施策 …187

2.現状と問題点 …191

3.精神障害分野をめぐる新たな潮流 …194

4.21世紀初頭の政策課題 …197

おわりに …200

第2節 精神障害者が利用できる経済面にかかわる制度・施策

はじめに …202

1.とりまく情勢と当事者・家族の生活を把握する …202

2.経済面にかかわる制度・施策の全体像を知る …205

3.経済面にかかわる制度・施策の活用のしかた …207

4.精神障害者保健福祉手帳 …217

5.その他の施策一経済的側面から見て …218

おわりに …219

第3節 精神障害者が住みやすい地域づくりを目指して

各地の実践例

はじめに …221

1.小平・東村山・東大和地域精神保健業務連絡会 …221

2.「総合リハビリテーションセンター」となった麦の郷 …226

3.雪国の支え合いの中で育まれた「またたびの家」 …231

4.本物の地域生活とは …236

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