共和病院(大府市)の取り組み

松崎 穂氏

共和病院(大府市)の取り組み:スライド1(図の内容)

よろしくお願いします。皆さん、声は届いてますでしょうか。よろしいですかね。それでは皆さん改めましてこんにちは。まずは、簡単に当院のご紹介をさせていただきます。

当院は愛知県大府市にありまして、優しい医療、楽しい職場という理念のもと働いています。この優しさには、患者さんの思いに寄り添いたい、患者さんとともに希望を実現したいとの思いが込められています。当院は精神病棟と医療療養病棟合わせて266床で運営をしております。その他にも法人内の施設として精神科デイケア、グループホーム、訪問看護があり、ここ数年で、退院支援などに力を注いできました。精神医療領域では、政策の中でも改革ビジョンが挙げられています。国民の理解として、心のバリアフリー宣言、精神医療として、早期に退院できる体制整備、地域生活支援として、地域で安心して暮らせる体制整備ということが挙げられ、そこから、これまで入院医療中心から地域生活中心へということを掲げています。当院の取り組みとしましても、行政機関との連携をはじめ、地域医療フォーラムでの発信、家族心理教育等の家族支援や他職種における退院支援等も行なっています。また病院主催で夏祭りや文化祭を開催して、地域の方々との交流も行っています。しかしながら、なかなか進んでいない状況があります。実際に、患者様が地域へ退院して理想の生活を送る際には、さまざまな困りごとがあります。その困りごとに対して、医療・行政だけでの関わりだけではなく、地域の方々との関わりは必要不可欠ではないかと考えています。患者様が地域へ退院するために医療行政機関だけの関わりは、限界があるのではないかという声が上がりました。その中で病院はもっと地域を知る必要があるのではないか、地域の人にも病院を知ってもらう必要があるのでないかということで、この実現には地域社会との協働共闘が不可欠だと考えました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド2(図の内容)

共和病院(大府市)の取り組み:スライド3(図の内容)

その中で、日本障害者リハビリテーション協会の推奨する「CBID誰一人取り残さない地域づくり」に共感し、地域住民に参加していただくワークショップを共和病院でも3年前より開催しています。それではここから実際のワークショップの取り組みについての話をしたいと思います。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド4(図の内容)

愛知県大府市の概要です。赤丸のところに大府市はあります。ワークショップでは、最初に地域の概要を人口・産業・特色というところで分析をしていきます。大府市の人口ですけども名古屋市の近郊のベッドタウンとして、最近では若者世代であったり、子育て世代の方であったりが増えてきています。産業としては、JR大府駅、共和駅、両駅を中心として、商業施設の発展があります。特色としては医療費が中学生まで無料など子育て支援があり、また高齢者支援の充実にも取り組んでいます。近くにレスリングの名門の至学館大学があって、街中を元金メダリストたちが普通に歩いていたり、たまに出合えたりします。そういった特色もあります。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド5(図の内容)

次にプロジェクトの理念目的を考えるのですが、考える視点と致しましては、ワークショップを行うことで地域にどのような変化が期待できるかなどを考慮して考えていきます。私たちがあげた理念は、「誰もが自分らしく生活できる地域の実現を目指します」。目的に「自分らしく生きていきたいという思いをみんなで支えて実現できる地域を目指します」「誰もが障害について理解し助け合える地域を目指していきます」「誰もがどこにでも自由に繋がる地域の実現を目指します」を定め、ワークショップにのぞみました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド6(図の内容)

次に、地域課題の抽出を行います。抽出する際には、キーワードを参考にして考えていきます。当院ではキーワードとして、経済・教育・環境・子育て・福祉・文化・交流・自治組織・企業などのキーワードを挙げています。その中から地域の課題として、下に書いてありますように、障害を持つ方が地域でチャレンジや失敗する機会が少ない、障害者や高齢者が住み良い場所で暮らせない、精神疾患や障害に対して関心が低い、個々のケースに応じた地域社会資源に何があるかわかりにくいというような課題を抽出しました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド7(図の内容)

次に参加の依頼です。集客の方向性ですが、運営会議の中で、退院後の患者様が地域で困ったことがあった際に、医療者がキーマンになることは少ないのではないかということが出てきました。地域の中で患者さんが困った時に、やはり近くで支援をしてくださるのは地域住民の方であるということで、最初の依頼は、地域で支援ができそうな方々に参加していただけるように話を持って行きました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド8(図の内容)

こちらが第1回目に参加依頼をした会社や企業です。行政で言いますと市役所をはじめ保健所、公民館の方々、活動支援センターの方々、あとは派出所とかにも声をかけさせていただきました。企業は、新聞社であったり、移動の際にタクシーを使うということになればタクシー会社であったり、バス会社などにも。あと、先程お伝えしたように、近くにJRの駅もありますので、鉄道会社にもお話を持って行きました。それから、福祉団体。市民の方々でも活動されている方がいらっしゃいますので。シンガーソングライターの方であったり、ボランティアグループの方であったり、スーパーマーケットの店員にも声をかけました。しかし、断られる日々が続きました。「何を言っているのか全く分かりません」と言われる方もいらっしゃいますし、「何か頼みたいことがあれば大府市の広報に載せてください」という方もいらっしゃいました。スーパーマーケットの店長にチラシを渡した時には「従業員の目のつく所に貼っときます」と言っていただいたのですが、その後、一切連絡もなく終わってしまいました。一般企業ですと、一つの団体の取り組みにだけ参加することはできないと、遠まわしに断られる日々が続きました。しかし、そんな中でも、そういう事に興味のある人がいるからその人に聞いてみるといいかもと、紹介してくれたり、参加したいが一人じゃ行きづらいので、誰か誘ってもいいのであればという方もいらっしゃったり。参加してくれそうな方の連絡先を教えてくださり、こちらから連絡しておきますと言ってくれる方もいらっしゃいました。新しくネットワークを構築することは、ワークショップを行う上での理念目的を達成するためにも必要な項目になります。これまで当院、共和病院がつながっていたネットワークだけではなくて、当院にない機能を補ってくれる所や専門的な知識を持っていたり、地域ネットワークの中心になっている団体であったり、新たに開拓すべきネットワークを検討いたしました。これは病院からさまざまな人たちに発信したという形です。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド9(図の内容)

共和病院(大府市)の取り組み:スライド10(図の内容)

共和病院(大府市)の取り組み:スライド11(図の内容)

そして、第1回目の実施です。会場は、共和病院の多目的ホールで開催をしました。参加者は大体52名ほどで、それに運営スタッフが入りました。当院で開催するのは初めてということもあって、沢山の人たちに声を掛けて、これだけの方々に参加していただきました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド12(図の内容)

第2回目も、当院で開催しました。参加者は33名ですが、1回目を踏まえて検討・変更した内容というところにありますように、第1回目の参加者からのネットワークから集客しました。このようなことにより興味があるという人に絞らせていただいたので、第1回目の52名から33名に減ってはいますが、より実りのある会になったのではないかと思います。なるべく地域の人たちにも入っていただきたいという思いもありましたので、プレ研修の時から地域の方々に参加していただきました。昨年、第3回目も共和病院の多目的ホールで行いました。参加者はだいたい36名ぐらいでした。第2回目を踏まえて検討・変更した内容としましては、運営会議の時点から地域の方々に参加をしてもらいました。また、会場には30数名来てくれますが、どんな方が集まっているのか、どんな活動しているのか、同じグループ内でしか分からないという意見もありましたので、どんな方々が参加をされているのかが分かるように、参加者が全体で分かるように貼り出すという工夫をしました。開催が12月のクリスマスの時期でしたので、この丸で囲んであるように、ツリーの飾りの付箋に自分が活動していることや、こういう人と出会いたいというのを書いてもらってクリスマスツリーに貼ってもらいました。そうすると、休憩中や終了後には、参加者さん同士で声を掛け合う場面や、名刺を交換される場面も見られました。事例については、1回目、2回目は、共和病院の中から事例を募ったのですが、3回目は、地域の方からも事例を募りました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド13(図の内容)

共和病院(大府市)の取り組み:スライド14(図の内容)

第1回から3回に参加していただいた方々は、タクシーの運転手さんであったり、福祉団体・大府市内で活躍をされていますママ友の会の方だったり、カフェを経営されている店長さんであったり、このような方々にも参加をしていただいています。参加者からの集客のネットワークとして、私がこの3回を通して感じたことを少しお話できたらと思います。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド15(図の内容)

第1回目では共和病院から集客の依頼に行きましたが、第2回目、第3回目を通していくと、繋がりが得られたように感じます。あの人にも声をかけてみようということで、色々な方が、色々な形で、色々な人に声かけが進んでいったように思います。ですから、第2回目・第3回目の集客の呼びかけは、ほとんどの参加者の方々から行なっていただいたように感じています。ワークショップに参加された方々のご意見ですが、やはり職種にとらわれない発想に出会えてよかったという方もいらっしゃいます。年齢・職業を問わずに、色々な方と話すことができてよかった。ワークショップの流れが素敵でした。あとは、知らない事に出会えた驚きと感動がありました。普段知り合えない人と出会えてよかったというようなご意見を頂いています。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド16(図の内容)

第4回目に向けて検討し、本来であれば第4回目を開催するところでしたが、コロナの影響で今年は中止となりました。4回目に向けて検討していた内容としては、開催場所を病院から地域へということで、市内の活動センターの利用を検討していました。あとは、運営をこれまで病院で行っていましたが、地域住民の方にシフトしていきましょうということで動き出していました。活動内容を市内活動センターに登録し、こういった活動をしていることを新規団体として広報誌に紹介していただきました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド17(図の内容)

今後の課題は、5年ぐらいで地域へ向けてやはり行政機関と連携しながら、地域で安心して暮らせる場所をつくるためにも、やはり地域の方々との話し合いを進めながら病院主体の開催から地域主体の開催へ移行していければと考えています。簡単ではございますが、ご清聴の程ありがとうございました。

共和病院(大府市)の取り組み:スライド18(図の内容)

【司会】

ありがとうございました。3回の開催を経て、4回目の開催では、住民主体へという大きな変化についてお話を聞くことができました。ここまで聞いてきますと「できることもちよりワークショップ」とは、いったいどんな内容なのか、もう少し聞いてみたいと思われるかもしれません。

では、次に、鈴木さんにもう一回ご登場いただきまして「できることもちよりワークショップ」をご紹介いただきます。鈴木さんよろしくお願いいたします。

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