質疑応答

【司会からの質問:事例の作り方】

ありがとうございました。質疑の時間まで、まだ5分あります。質疑の時間たっぷりとることができますので、質問のある人はチャットの「質問受付」まで質問内容を送ってください。その際、どなた宛の質問か、鈴木さんか、松崎さんか、分かる方はお書きください。

それから講師の方が使われたパワーポイント資料ですが、講師の方に確認させていただいたのちに、ご希望の方に送りたいと思います。また、そのパワーポイントも盛り込んだ形で報告書も作成いたしますので、そちらの方もご利用いただけたらと思います。

皆さん、おそらく、今、短時間に盛り沢山のことをお聞きになったので、質問については考えていらっしゃるところだと思いますが、私の方から、お二人に質問させていただきます。

できることもちよりワークショップの中心であり、重要なポイントである事例というのは、どんな形で作るのか。

鈴木さんには作り方について、松崎さんには具体的にどういう風に作られたのかを少しお話しいただけたらと思います。よろしくお願いします。

【回答:事例の作り方 鈴木氏】

事例の作り方ということですが、まず、テーマを選ぶのは、地域の実情とか、参加者の方を鑑みながら、関心のあるテーマを選ぶということになります。そして、事例の作り方は結構大変です。事例というのは、A4の紙1枚にまとめないといけないのです。それぐらいの量じゃないと読み込みにすごく時間かかってしまいますので。その程度の情報量ということなので、実在する方を想定すると、もっと情報量が増えてしまうので、そこはワークショップ用ということで、割り切って情報を減らしながらまとめていきます。しかし、基本的には、ベースになるような方を想定してないと本当の事例の温度感がなくなってしまうので、必ず誰か一人もしくは二人ぐらいの実在するモデルを想定しながら、その方のことを、なるべく専門用語を使わず、一般の住民の方が分かるような言葉で説明していきます。これが非常に重要なポイントで、専門用語をいっぱい書いてしまいますと、読む気をなくし、これは、どういう意味ですかとなってしまいます。

あと、もう一つポイントは、記録のような書き方にしないことといいますか。あたかも、その人が困っている主人公として、その方本人がお話になっているような感じで書くようにします。記録だと、書き手は本人を客観的に書くため、ドライな感じになってしまい、盛り上がりに欠けます。ご本人が話されているような感覚を残しながら事例を書くということが大事です。

それから、問題ばっかり書いてしまうと、問題解決型のワークショップになりやすいので、できればその方の好きなこととか、関心があることとか、ちょっとしたことでいいので、その人の素敵なこと部分を必ず事例に入れるようにします。それが、ワークショップが暗くならず、ある程度明るさとか、活気を持って進むポイントだと思っています。

【司会】

ありがとうございます。では松崎さんいかがでしょうか。

【回答:事例の作り方 松崎氏】

今、鈴木さんの方からもありましたように、ワークショップを開催する上で、集客も大変ですが、やはり事例を考えるのは、私たちもすごく考えました。鈴木さんも言われたように、普段私たちは専門用語を使っていますが、やはり地域の方々は、私たちが使っている専門用語が何かということを迷われることもあるので、それをいかに地域の方々に分かってもらえるような言葉で書いていくという作業も必要で、結構大変だと思いました。

あと、A4用紙1枚で事例をまとめるのですが、確かに、文字ばっかりですと皆さん読む気をなくされるので。所々にその事例に関する挿絵や、この方の背景に何があるのかとか、好きなことは何なのかとか、興味があるという事を図にしたりして、読み手が分かりやすいような工夫をしながら事例を展開していくというのは、すごく重要だと思っています。

【司会からの質問:事例を作るにあたって】

ありがとうございます。松崎さんは、事例を作られる過程で地域の方と話し合いの場をもつとか、経験を聞いてみるとか、そんな動きもあったのでしょうか。

【回答:事例を作るにあたって 松崎氏】

そうですね。地域の方々の事例を展開するときには、実例をだしてしまうと個人情報となってしまうので、事実に少し付け加えたり、ちょっと差し引いたりして行っていきました。

【質問者A:チームの作り方・方向性について】

たくさんあるのですが、二つに絞って伺いたいと思います。松崎先生にご質問があります。ご発表ありがとうございました。すごく興味深く聞かせていただきました。病院の中で、最初に、まずチームを作ってから行ったのかどうかというのが一つ気になっているのと、そのチームを作っているとすればこのワークショップを実施して、最終的に、こういうゴール(プロセスモデル)があったのか、それとも、なんとなくワークショップを開催しながら、方向性を決めていったのかについて教えてください。

【回答:チームの作り方・方向性について 松崎氏】

ご質問ありがとうございます。最初、当院で開催するときには、紹介という形で受けました。その中で、病院で、最初にこういった活動があるけど、どういった方々がいいかなというところで、病院の中で、まずチームを作って運営をしていきました。

2番目のご質問にあるように、最終的にどうしていこうかというのもは、スライドの最後の方にあったと思いますが、1年後3年後5年後どうなっていきたいかというところをイメージした時に、やはり地域の人たちに活動して欲しいという思いがあったので、第3回目ぐらいから、地域の方々に入ってもらいましょうということで行っていきました。ですから、最終的なビジョンとしては、やはり地域の方々が開催できるようにしていきたいという思いでいます。

【質問者B:手紙の中身について】

鈴木さん、松崎さんありがとうございます。

お二人にお聞きしたいのですが、最後の手紙、もう一度本人の想いを大事にしていこうという、その中身というのは、このワークショップのミソだと思うのですが。こういうことは絶対入れているというようなものは、何かあるのでしょうか。

【回答:手紙の中身について 鈴木氏】

何を入れるなど、決まっているわけではないのですが、やはりそのモデルになっている人たちが日ごろからよく言っている言葉とか、なるべくそのまま使うようにしています。作文をしてしまうとやはり伝わらない。本人の言葉が一番重いといいますか、一番エネルギーがあるといいますか、人を動かす力があるので。本人が日ごろから言っている言葉を手紙に置き直す、手紙というか、つぶやきみたいなことを書き起こしてお伝えするということを心がけています。

【回答:手紙の中身について 松崎氏】

ご質問ありがとうございます。事例を展開するうえで、やはり手紙というのは私たちもすごく大切にさせていただきました。その中で事例はある程度、事実から少し離れるかもしれないのですが、手紙に関しては現実味のある作文になるように心がけました。

先ほど、鈴木さんも言われたように、定型文ではなくて、この方がどんな思いでいたのかということも聞きながら、実際にはその事例を出してくださった方々にも話を聞きながら手紙を書いて、よりリアルな手紙を作成していきました。

【質問者C:地域共生社会のゴール】

松崎先生にご質問なのですが、対象者が精神障害の方ということですが、最終的に地域がどのような共生社会に変わればいいのかを教えていただきたいです。例えば、具体的に言ってしまうと、アパートを借りるときに、精神障害があってもこだわりなく貸してくれる大家さんであるとか、あるいは、その地域で生活しやすいというのは、一体どういうことなのか。ちょっとイメージしにくいので、このワークショップを実施して、地域をどのように変えていきたいのかというのがあれば、教えていただきたいです。

【回答:地域共生社会のゴール 松崎氏】

ありがとうございます。今、言われたように、実際に精神障害を持った方がアパートを借りに行くとき、精神障害がありますというと、なかなか大家さんは貸してくださらないこともあります。実際に、ワークショップの事例にもあげました。その中で、やはり事例を通してそういった方々がいるのだなということで、市民の方々にも理解をしていただける場を設けることができたと思っています。まだまだ精神障害、特に精神障害者の理解というのは進んでいない現状があるので、今は、こういう機会を通して、困っている人はたくさんいるということを発信しながら、地域の人たちに自分ができることは何かないかというのを少しでも考えてもらう機会を持っている段階かと思っています。その中で、地域の病院主体ではなくて、地域の方々がそういった場を持つという段階ではなく、今は、まだ病院主体でやっているのが現状です。

【司会からの質問:地域住民の中にリーダー的な方はすでにいるのか】

ありがとうございました。松崎さん今のお答えに関して、病院主体から地域住民主体に変わるというときに、地域住民の中にリーダー的な方はすでにいらっしゃるのでしょうか。

【回答:地域住民の中にリーダー的な方はすでにいるのか 松崎氏】

そうですね。3名ぐらいこういった活動に協力して下さっている方がいらっしゃいますので、そういった方々とコロナ禍が終わった後、また開催できるような連絡を取っています。

【質問者A:事例のまとめ方】

何度もすみません。鈴木先生にご質問なのですが、まだ課題解決型じゃないワークショップというのがなかなか想像しづらいのですが。例えば、いろいろグループにいろいろな事例を使うと、最後のまとめがすごく難しくなるような感じがイメージであるのですが。

例えば、その母子の問題であったり、障害を持っている方の問題であったり、事例のなかで散りばめていったときに、最後のまとめってどのようにされているのですか。

【回答:事例のまとめ方 鈴木氏】

ありがとうございます。このワークショップには、まとめというのがあまり存在しないといいますか。事例は、参加者の方々がかなり困難だと感じるものを用意します。困難であるからこそ解決がなかなか難しいわけです。

例えば、簡単な事例を出すと、誰かひとり専門家がいて、こうすれば解決するという一つで終わってしまいます。そうではなく困難な事例にして解決を目指そうとすると、今度は、誰も付箋を出せなくなります。困難な事例でも、実はやれること、その人に対してできることはたくさんある。問題が解決することを目指してしまうのではなく、できることを持ちよって、その人に対して、この地域の人たちがなにをどれだけできるかという可能性を考える。それが、このワークショップの目的ですので、まとめではなく、こんなに出たよというのがひとつの成果です。そして尚且つ、なにかその小さなことでも実はやらないよりかはやったほうが、専門家に任せることで解決することもあるかもしれないけれど、そうはいってもやっぱり地域でできること、持ちよることの方が、もしかしたら価値があるかもしれないということに気づいていただく。そういったことが、まとめといいますか、最後に皆さんにちょっと感じていただくような構成になっています。そこは、他のワークショップの設計との違いなのかなと、思っています。

一度、初期の段階でワークショップをやったときに、お医者さんがいらっしゃって、情報が足りないとか、これはこうだと、お医者さんの知識でたくさん発言をされ、誰一人発言できなくなって。だったら、お医者さんが治せばいいよね、と。お医者さんは地域のことはやってくれないので、そうすると、誰も何もできなくなってしまう。地域のことは住民の方たちしか手を差し伸べられないのに、これはこういう傾向があるから、こういう病気だから、こうだと言われてしまうと、つながりができる要素もなくなってしまうことになって。それで、大反省をして、このようなワークショップ、持ち寄ることが大事で、問題の解決ではなく、問題を持ったままでも豊かに生きられないかと、少しでも幸せに生きられないかってことを目指すみたいなことに少しワークショップの流れができあがってきたのが経緯です。

menu