肢体不自由特別支援学校が直面した困難~ピンチをチャンスに、保護者と教職員の連携と工夫~

「新ノーマライゼーション」2021年1月号

全国特別支援学校肢体不自由教育校長会理事
東京都立光明学園 統括校長
田村康二朗(たむらこうじろう)

肢体不自由教育を行う特別支援学校は全国に約300校あります。児童生徒とその保護者の皆さんは、コロナ禍の大変な状況を学校と手を取り合いながら乗り越えてきました。私の勤める学校の対応を例に、その一端をご紹介します。

〈臨時休校下の卒業式〉

3月からの臨時休校、そして迎えた卒業式。高校も含めた全都立校では、在校生だけでなく、卒業生の保護者も式場内立入りが不可となりました。そこで本校では、第2体育館を映像中継会場として卒業生保護者席を設け、証書授与の晴れ姿をアップで見られるようにしたり、インスタ映えする記念撮影スポットを設けたりしました。保護者の方からは「学校が精いっぱいの工夫してくださったことに感激しました」とのお言葉をいただきました。

〈家庭での教育を支える工夫〉

春休みを挟んで再度の休校となり、自宅学習期間は5月末まで3か月に及びました。学習の遅れへの心配、日々学校に通わせることで刻んでいた生活リズム変調への心配等々。ご家庭の悩みは尽きなかったことでしょう。そこで本校では毎週木曜日に全児童生徒(約200人)あてに、レターパックを「学習定期便」として郵送しました。厚さ3cm以内の規定内で何を詰めるか、教員の腕の見せどころです。在宅勤務で作成した「飛び出す絵本」や「家庭学習プログラム」「教科書&ワークシート」「学校図書1冊」とともに「担任からのメッセージ」。単調な生活が続く中、週末にご両親でレターパックを開いて、取り出した教材を用いて読み聞かせをしたり、日課のプログラムを行ったりすることで学校との繋がりを実感できたそうです。

〈繋がりを実感できる工夫〉

自宅での「籠城生活」が続く中、保護者の皆さんは、ニュース報道が重なると不安ばかり増幅したそうです。併せて休校の長期化に伴い、学校からの文書配布から速やかに情報を得ることも困難になっていました。そこで学校ホームページに逐次文書を掲載し、緊急連絡システムを使ってお知らせしたパスワードですぐに開けるので、速やかな情報共有が可能となりました。「都対策本部の新方針」「学校での新たな予防策」「マスクやアルコールの確保状況」「休校基準」を次々と感染予防通信「健康の橋」としてホームページに掲載しました。12月までの間に計27号を発行。不安感を払拭し学校と家庭が繋がる大事なツールとなっています。

〈保護者の思いに応える教育活動の工夫〉

感染予防を優先したことから、分散登校開始の6月以降、保護者の校内立入り制限を続けています。1学期の授業参観も保護者行事もすべて中止としました。この判断には、基礎疾患をもつお子さんの保護者はとても安心されたそうです。一方で「学校での学びの様子」を直接確かめたいとの思いも多くの保護者が募らせていたことでしょう。そこで、12月に「授業参観月間」を設けました。第5希望日まで伺った上で、平日の学校指定日に1学年1家庭限定のご招待形式にしました。希望が殺到して密になってしまわないように土曜日は除外しました。恒例の演劇鑑賞や合唱はできないので、入院中や在宅訪問の児童生徒も含めた全員が描いたアートパーツを組み合わせて創作した壁画の鑑賞マップ付き家族招待状を事前にお届けしました。「夫婦でじっくり参観できました」と大好評です。

〈保護者向け遠隔学習会の工夫〉

学校集合が困難だからこそ、PTA活動で支え合おうと役員の皆さんが打って出ました。遠隔会議ソフトを用いて保護者が自宅で学べる学習会を毎月開催しています。「衣服の着脱の教え方」「時計の使い方」等々。保護者から「学びたいこと」を募り、大学教授を招聘しての学びの場です。障害によって通学が難しいために、教員が自宅を訪問して授業を受けているお子さんの保護者の方も自宅から参加OK。ピンチをチャンスに変えてPTA活動への理解がさらに広まっています。

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