コロナ禍における生産活動への深刻な影響と社会就労センターの挑戦

「新ノーマライゼーション」2021年1月号

社会福祉法人全国社会福祉協議会
全国社会就労センター協議会

全国社会就労センター協議会(略称:セルプ協)は、障害者の「働く・くらす」を支えることを目的に、障害者に対し福祉的就労の機会を提供する社会就労センター(就労継続支援A型・B型事業所、就労移行・就労定着支援事業所、生産活動を行う生活介護事業所、生保・社会事業授産施設等)を会員とする組織です。

長期化する生産活動への影響(令和2年9月状況)

新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会就労センターにおいても生産活動の大幅な減収等の影響が生じています。本会では令和2年4月以降、会員施設・事業所を対象に就労継続支援における各月の生産活動への影響等について調査を実施していますが、その結果からも生産活動への深刻な影響が確認できます。

B型事業における令和2年9月の就労支援事業(生産活動)収入をみると、前年同月(令和元年9月)との差額が平均で-296,782.5円(-14.0%)となり、減収傾向が続いています(図参照)。国の生産活動活性化事業の助成対象に該当する会員事業所は全体の2割弱にとどまっていますが、9月に前年同月比で減収した事業所は全体の70.3%(214事業所)、50万円以上の収入減となったのは19.4%(59事業所)、さらに20%以上の減収となったのは34.9%(106事業所)となっており、全体として引き続き厳しい状況となっています。

図 就労支援事業収入における前年同月比の推移(セルプ協会員事業所・就労継続支援B型)
図 就労支援事業収入における前年同月比の推移(セルプ協会員事業所・就労継続支援B型)拡大図・テキスト

事業別の生産活動の事業収入についても、前年同月比で減収傾向が続いており、9月の平均実績は、食品(-13.1%)、印刷(-29.7%)、クリーニング(-5.5%)などで減収となっています。一方で、農業(+8.8%)や施設外就労(+4.5%)など、増収となっている事業もあります。縫製については、9月は減収となったものの、4月から8月までの各月で前年同月比増となっています。

生産活動における減収については、A型事業への調査結果においても同様の傾向がみられます。

生産活動の減少に伴う工賃への影響

生産活動の減少は利用者に支払う工賃にも影響が及んでいます。B型事業所が利用者に支払った9月の一人あたりの工賃は、前年同月(令和元年9月)と比較し、平均で-690.4円(-3.3%)でした。4月の平均値-2,475.6円(-11.8%)からは改善をしてきていますが、前年同月比減の傾向が続いています。

会員事業所からは生産活動への影響を懸念する声や、工賃減少に対する補填、徹底した感染症対策に伴う事業者の負担増にかかる措置を求める意見が寄せられており、本会では国等に対して事業所の実情を伝えながら、新型コロナウイルス感染症にかかる制度予算要望を行っています。

「#SELPチャレンジwithコロナ」の推進

こうした状況下にあって、社会就労センターの中には、利用者の方々が安心して働ける環境を守るため、利用者や職員が知恵を出し合い、新たな挑戦を始めた事業所もあります。セルプ協では、こうした会員事業所における感染対策の工夫や生産活動の試行的な取り組みを集め、「#SELPチャレンジwithコロナ」として、20余りの事例を本会のホームページで紹介しています。

特に、移動スーパーによる新たなコミュニティづくり(石川県・日本海倶楽部)、高工賃を維持している作業現場の工夫(愛知県・ワークセンターフレンズ星崎)、椎茸からキクラゲ栽培へ拡大した実践(岩手県・石上の園)については、動画での情報発信をしています。
https://www.selp.or.jp/challenge/index.html


生産活動において1か月で前年同月比50%以上または連続する3か月で前年同月比30%以上減収した事業所に最大50万円が支給される。

menu