地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-御代田町産ライ麦ストロー作りの活動を通した他業種との協働による共生の地域づくり~長野県御代田町社会福祉協議会の取り組み~

「新ノーマライゼーション」2021年1月号

御代田町社会福祉協議会 居宅介護支援事業所
東城美苗(とうじょうみなえ)

御代田町の概要

長野県御代田町は、活火山の一つでもある浅間山の南麓の裾野にある高原の町で、レタスなどの高原野菜が有名です。人口は約1万5千人で、軽井沢町・佐久市・小諸市の真ん中に位置し、首都圏からの交通アクセスが良く、さまざまな要因が重なり移住者が増えています。

プロジェクトを始めた経緯

レジ袋が有料化され、脱プラスチックが加速する中、御代田町社会福祉協議会(以下、社協)では、脱プラスチックに貢献するライ麦ストローの取り組みを始めました。麦わらは、英語で「straw(ストロー)」というように、茎の中が空洞になっており、明治時代から戦後にかけて実際にストローとして使われていました。町でもかつては、牛馬の飼料等としてライ麦が盛んに栽培されていました。

ライ麦ストローは、クラフト作家の上原かなえさん(フィンランドの伝統工芸である「ヒンメリ」(麦わらを使ったモビール)を自前のライ麦にて製作し、都内や軽井沢で教室やワークショップを開いています)がストロー作りに関心があり、社協と思いを共有したことから始まりました。

2019年9月に試行的に社協の通所介護事業所(ハートピアみよた、定員34名)等の利用者の方々との協働で下処理作業を行いました(※ライ麦は、下部の太い部分がストローの材料となり、上部の細い部分がヒンメリの材料となります。ストローの下処理作業は、1本1本の葉をむき、節をカットし、洗浄・煮沸・乾燥の工程を得て完成します)。

社協と関わりのあるボランティアの協力も得て、延べ100人以上の方が関わることができました。昔ライ麦を育てていた方もおられ、当時の話に花を咲かせる方や繊細で美しいヒンメリ細工に感銘を受けた方など、さまざまな反応がありました。

9月に御代田町役場庁舎で開催された「長野コーヒーフェスティバル」(来場者約6,000人)にて、ライ麦ストローの配布を始め、2020年1月には台風19号の被災支援チャリティイベント「誰かのためにみんなのために冬のあったかマルシェ」(来場者200人)にて、ライ麦ストローの取り組みを紹介し、好評を得ました。

MIYOTAライ麦ストロープロジェクトの活動

イベントを通じて、ライ麦ストロー作りの機運が高まり、2020年4月、クラフト作家、デザイナー、農家、社協、ボランティアの連携・協働による「MIYOTAライ麦ストロープロジェクト」が立ち上がりました。7月にはライ麦を刈り取り、天日で干し、8月から社協の通所介護事業所に通う利用者と本格的に作業を開始しました。週2回、10人前後の利用者と昼食後の自由時間を活用し、和気あいあいとした雰囲気のなかで作業を行っています(写真)。地域の役に立てているという自己有用感を得ることができ、作業後には握力測定で効果が出るなど、フレイル予防にも効果が期待できると感じます。ボランティアは5~7人が参加しています。ボランティアの中にはこもりがちになっていた方もいましたが、役割を担うことで生きがいに繋がるなどのきっかけとなっています。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真はウェブには掲載しておりません。

下処理作業後のライ麦は、社協の就労継続支援B型事業のやまゆり共同作業所にて長さ・太さを揃えて、包装を請け負っています。作業工程も試行錯誤を重ねることにより、日に日に効率が上がり、作業日を楽しみにされている利用者もいます。

完成したライ麦ストローは、町内外のレストランやカフェなどの販路が得られています。

プロジェクトが目指していること

ライ麦ストローの活動を通じて、自然に優しい持続可能な町や社会の構築、また高齢者や障害者など地域の方々との協働により進めることで地域共生社会づくりへのモデル実践となることを目指しています。ライ麦は、ストローにとどまらず、茎はヒンメリやストローハットなど麦わら細工に、穂はパンやお菓子、ビールにと、町の新たな特産品としての可能性を秘めています。

始まったばかりのプロジェクトですが、今後さらなる発展ができるよう、地域の皆様と共に歩んでいきたいと思います。

menu