ひと~マイライフ-「寄り添い、支える人」を目指して

「新ノーマライゼーション」2021年1月号

細木伸泰(ほそきのぶひろ)

1985年北海道生まれ。11歳でクローン病を発症。以後、服薬、食事制限、点滴・注射等による治療を行いながら生活。京都大学を卒業後、地元の北海道に戻り、自治体職員として公務に従事する傍ら、北海道の炎症性腸疾患の患者と家族の会「北海道IBD」の運営に参加。2019年からは同会の会長を務めている。

お尻が腫れあがって痛い。ウンチをすると便器に血が付く。「痔ろう」と呼ばれるこの症状が、病気の始まりでした。痔ろうの発症から約1年後の小学6年生の時、胃カメラや大腸カメラなどのさまざまな検査の結果、原因不明の難病である「クローン病」と診断されました。

クローン病は、口から肛門に至る、消化管のあらゆる部位で炎症や潰瘍(かいよう:粘膜が欠損すること)が起こる病気で、特に小腸や大腸が好発部位です。腹痛や下痢の症状のほか、腸が狭くなって食べ物が詰まる、腸に穴が開いてしまうなどの合併症が起こる場合があります。

クローン病は身体の内部で起こる障害であるため、一見すると難病患者とわからない場合が多く、私も投薬や厳しい食事制限をしていることなどを伝えると「元気そうに見えるのに」と驚かれます。また、脂質や消化しづらい食べ物が症状を悪化させやすいと言われており、診断がついた際に、カレー、焼肉、ケーキ、その他多くのメニューを制限するように教えられました。小中学生の頃はクラスで一人だけお弁当で、給食を食べられるクラスメイトがうらやましかったですが、お腹に優しいメニューを考えて毎日お弁当を作ってくれた母にはとても感謝しています。

最も体調が悪かった頃は、食事をとることができず、点滴だけで栄養を摂取していました。この時は点滴と送液用のポンプを1日じゅう身につけている必要があり、自由に外出やスポーツができないなどの制約があったため、非常に不便でした。現在は、腸の悪化した部分を手術で取り除き、新薬の開発などにも助けられ、お腹にやさしい食事と定期的な通院・投薬で体調を保っています。ただ、どんなに規則正しい生活を心がけていても、突然強い腹痛・下痢や40度近い高熱などの症状が出て、最悪の場合、入院や再手術に至る場合もあります。いくら頑張りたいと思っていても、勉強や仕事を続けられなくなってしまいます。

何度も入院や手術を繰り返し、心が折れそうになった時、何よりも有難かったのは、周りの多くの方々が私を支え、理解し、励ましてくれたことでした。地元の病院では、入院時に勉強部屋を貸していただくなど、高校・大学受験をスタッフの皆さんが応援してくださいました。学校のクラスメイトは授業のノートのコピーや配布物を届けてくれました。大学で休学した時は、担当教官が「焦らずに体調が良くなってから頑張ればいい」と励ましてくださいました。就職後に大きな手術のため長期入院となり、職場に大変な迷惑をかけてしまった時は、同僚がたびたびお見舞いや連絡をくれて励ましてくれました。私の主治医はプライベートのことも考慮の上、治療の計画を立ててくださいます。そして、家族はどんな時も私を応援し、支えてくれています。手を差し伸べてくれる皆さんのおかげで、また頑張ろう、と前向きな気持ちになることができます。

クローン病に限らず、障害や難病と共に生き、社会生活を送っていくためには、家族、友人、同僚など、寄り添ってくれる身近な方の存在はとても大きな力になります。私は今、北海道潰瘍性大腸炎・クローン病友の会(北海道IBD)という患者会の会長として活動に取組んでいますが、自分がそうしてもらったように、患者さんやご家族などに寄り添い支える人になりたい、ということを目標にしています。また、今後は、患者さんやご家族ばかりではなく、身近な方々や社会全体にも障害や難病を正しく理解してもらえるよう、活動の輪を広げていきたいと考えています。

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