快適生活・暮らしのヒント-近未来生活 スマートスピーカー×ニューノーマル×スマートリモコン

「新ノーマライゼーション」2021年9月号

NPO法人日本バリアフリー協会代表理事
貝谷嘉洋(かいやよしひろ)

重度の筋ジストロフィーの私が待ち望んでいたのが、スマートスピーカーである。これは、基本操作をすべて声のみでできる端末である。これにスマートリモコンという機器を連動させると、赤外線リモコンの機能がある電気製品がすべて操作できる。

支援機器でいわゆる環境制御装置が、ついに汎用品で手に入れられることになった。ここ4年くらい前のことである。Wi-Fiがあれば2つの機器を合わせても1万円かからないくらいだ。

また、私が使ってきた20年前からある製品と比べると、音声認識の精度が格段に上がったので、サクサクと操作できるようになった。

例えば普段のワンシーン。

「アレクサ、照明つけて」「○○さん、Tシャツ出してくれる」「アレクサ、家電リモコン。○○さん、トイレ行くので準備して。暖房25度にして」

こんなふうにしゃべりながら電動車いすを動かし、次々と生活を進めていくのである。操作できるのは、テレビ、エアコン、照明、ホームシアター、電動ブラインド、そしてオフィスのドアだ。

実は、NPO法人の代表理事として20名の職員を雇用する私は、職住融合というニューノーマルな生活に10年くらい前から慣れ親しんでいる。また、関節の湾曲防止および疲労軽減を目的に、パソコンはベッドに横になって操作している。

そのベッドから左を向くとオフィス、右を向くとリビングルームがある。

ベッドルームとオフィスの間には2枚の開け閉めできるドアがある。1枚は普通のパターンと開閉するドア、もう1枚が声で開閉する自動ドア。仕事中は、普通のドアは開けっ放しにて、自動ドアを自分の都合によって声で開閉する。

「開けゴマ!」

開けている時は職員とコミュニケーションをとり、閉めている時はメールなどパソコンを使った作業をやる。自分の意思で身軽に動けない私にとって、声で簡単に開閉ができてかなり快適な生活になっている。

私は近未来の技術の中で音声認識は重要であり、その発展によって私のような肢体不自由者、また視覚障がい者、さらに高齢者も大きな恩恵を受けると思う。

現在は、電話は発話のみで「かける」ことはできても「出る」ことはできない。端末の基本ソフト(OS)までは発話のみでできても、ソフトやアプリはほとんどできない。また、赤外線リモコンは使い勝手が悪い。

音声認識技術そのものも日進月歩で進み、使い勝手もよくなりつつある。もっと快適な近未来が楽しみである。

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