行政の動き-令和4年度意思疎通支援従事者確保等事業の実施について

「新ノーマライゼーション」2022年6月号

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室

厚生労働省では、令和4年度の新規事業として「意思疎通支援従事者確保等事業」を実施いたします。

現在、都道府県及び市町村においては、聴覚、言語機能、音声機能、視覚、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障害や難病により、意思疎通に支障がある障害のある方々(以下「意思疎通障害者等」という。)に対して、それぞれの障害の状況等に応じて、手話通訳、要約筆記や点訳・代筆・代読・音声訳等の方法による意思疎通支援が行われています。意思疎通支援に従事する者(以下「意思疎通支援従事者」という。)については、厚生労働省が指導者の養成を行い、都道府県及び市町村が意思疎通支援従事者の養成を行っています。

また、障害のある方々がICT(情報通信技術)を利用できるように支援するため、都道府県、指定都市及び中核市では、ICT機器の紹介や相談等を行うICTサポートセンターの設置や、ICT機器の使用方法を教える人材(以下「パソコンボランティア」という。)の養成・派遣等を行う事業が行われています。パソコンボランティアの指導者の養成についても、厚生労働省が行っています。

しかし、意思疎通支援従事者の高齢化等による人材不足や近年のデジタル技術の進展といった状況の変化に伴い、専門的な技能を有する若年層の人材確保やデジタル技術の進展を踏まえたICT利用支援の促進といった課題に対応することが急務となっています。

このため、意思疎通支援従事者確保等事業では、若年層の意思疎通支援従事者の確保と意思疎通支援への関心を高めることを目的として、意思疎通支援従事者の活躍や意思疎通支援に取り組んでいる企業等の情報収集・発信、意思疎通支援の意義や魅力の広報・啓発等を行う「意思疎通支援従事者の確保事業」(以下「従事者確保事業」という。)を、並びに、デジタル技術の進展を踏まえたICT機器の利用機会の拡大等を目的として、都道府県等のICTサポートセンターの活動支援、パソコンボランティアによる支援の実態把握や好事例の収集等を行う「障害者等のICT機器利用支援事業」(以下「ICT支援事業」という。)の2事業を実施することとなりました。

2事業の実施団体は公募によって選定され、従事者確保事業は株式会社朝日新聞社が、ICT支援事業は公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会が実施いたします。

1.意思疎通支援従事者の確保事業

図 意思疎通支援従事者の確保事業拡大図・テキスト

意思疎通支援従事者は、意思疎通障害者等の障害種別や障害特性に応じた様々な方法によって、意思疎通を図るための支援を行っています。

【意思疎通支援従事者の主な例】

○手話通訳士、手話通訳者

ろう者の言語と言われている手話を用いて、聞こえる方との通訳を行う。

○要約筆記者

中途失聴者や難聴者に対して、発言内容を要約して文字で伝える。

○盲ろう者向け通訳・介助員

視覚障害と聴覚障害が重複する盲ろう者に対して、触手話や指点字等を用いた通訳等を行う。

○失語症者向け意思疎通支援者

脳の損傷によって言語機能に障害がある失語症者の意思疎通を支援する。

しかし、手話通訳者の平均年齢が上昇傾向にある等、意思疎通支援分野への若年層の参入促進を強化する必要があるという課題を踏まえ、従事者確保事業では、意思疎通支援従事者が実際に活躍している現場や、手話通訳者を雇用するなど意思疎通支援に先駆的に取り組んでいる企業や自治体等に関する情報収集・発信を行うとともに、意思疎通支援従事者への関心を高め、その意義や魅力を発信する効果的な広報・啓発活動等を行うこととしています。

2.障害者等のICT機器利用支援事業

図 障害者等のICT機器利用支援事業拡大図・テキスト

障害のある方々は、ICT機器を活用することによって、様々な情報を取得したり、社会活動に参加することが可能となることから、都道府県等が設置しているICTサポートセンターでは、文字入力やマウス操作を補助する機器や読み書きを支援するアプリの紹介や貸出、操作方法の相談、パソコンボランティアの養成や派遣等の事業を行っています。

また、令和元年6月に施行された視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)は、障害の有無にかかわらず、すべての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようにすることを目的とする法律であり、障害のある方々が、障害種別や障害特性に応じた利用しやすい形式で、書籍の内容にアクセスできるよう、様々な取組が進められています。

具体的な例としては、視覚障害のある方が、インターネットを利用して自宅にいながら、点字や音声の書籍を読書することができる視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」があります。障害のある方々が、このようなICT支援を活用できるようになるためにも、ICTサポートセンターの活動が重要になっています。

さらに、デジタル技術の進展が飛躍的に進む中、デジタル社会形成の司令塔として、新たにデジタル庁が発足し、デジタル活用共生社会の推進が進められています。障害のある方々に対するICT利用支援においても、デジタル技術の進展に遅れることないよう、支援を充実することが急務となっています。

そのため、ICT支援事業では、デジタル技術の進展を踏まえた、障害のある方々のICT機器の利用機会の拡大等を目的として、都道府県等のICTサポートセンターの活動を支援するため、ICT機器に関する最新情報や、ICTサポートセンターにおける活動やパソコンボランティアによる支援に関する好事例の収集・発信等の取組を行うこととしています。

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