行政の動き-就労選択支援(仮称)の創設について

「新ノーマライゼーション」2022年10月号

全国社会就労センター協議会 会長
阿由葉寛(あゆはひろし)

1. 就労を希望する障害者への就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化

『障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて ~社会保障審議会 障害者部会 報告書~』(令和4年6月13日)において、「就労アセスメントの手法を活用して整理した情報に係る書面の作成・提供、関係機関との意見交換等を行うことにより、障害者本人が一般就労や就労系障害福祉サービス事業所などを自ら選択することや、就労開始後の配慮事項の整理等を通じて本人の能力や適性、地域社会や地域の事業所の状況に合った選択ができることを目指して、必要な支援を行う新たなサービス(就労選択支援(仮称))を創設すべき」ことが示されました。

就労選択支援による就労アセスメントは、単に対象者の就労能力や適性を評価するだけのものではなく、本人と協同して、ニーズや強み、職業上の課題等を明らかにし、就労するに当たって必要な支援や配慮を整理することを含むとされていますが、現時点では課題も多いと考えます。

就労選択支援(仮称)が抱える課題を踏まえた全国社会就労センター協議会(以下、全国セルプ協)の提言、就労選択支援(仮称)への期待を述べます。

2. 就労選択支援(仮称)に対する提言

(1)就労選択支援(仮称)の支給決定

障害者部会(第131回/令和4年6月3日)において、就労選択支援(仮称)創設後の就労系障害福祉サービス利用までの流れが示されました(図1)。図1からわかるとおり、利用にあたって、慎重なアセスメントを経ることが提案されています。

図1 新たなサービス(就労選択支援[仮称])創設後の利用の流れ(概要)
図1 新たなサービス(就労選択支援[仮称])創設後の利用の流れ(概要)拡大図・テキスト
出典:社会保障審議会障害者部会(第131回)参考資料1-スライド35

全国セルプ協では障害者部会(第126回/令和4年4月8日)で、就労選択支援(仮称)を一つの事業として創設するのではなく、支給決定の流れの中に機能として位置づけることで、一度の支給決定で就労系障害福祉サービスが利用できる、よりシンプルな流れにすべきと意見出しをしました。

(2)ワンストップ相談体制の構築

また、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会で指摘されてきたとおり、将来的には、障害福祉サービスにとどまらない「福祉・雇用共通の枠組みによるアセスメント」が求められています。

全国セルプ協は、「福祉・雇用共通の就労アセスメント開発」と「福祉・雇用共通の相談窓口の創設」について意見出ししています。さらに、「暮らすこと」と「働くこと」は切り離せないものであり、就労を含む生活全般をコーディネートする「ワンストップ相談体制」の構築を提言しています。

3. 就労選択支援(仮称)への期待

障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会をはじめとするさまざまな場面で「福祉的就労の場に一般就労が可能な障害者が存在するのではないか」と指摘され続けてきました。就労選択支援(仮称)の創設が、「障害者が自分の意思で働き方を選択し、それを尊重し、支援する社会」に変わる第一歩になることを期待しています。

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