アクセシビリティ入門4-アクセシビリティに関する質問
(財)日本障害者リハビリテーション協会
執筆年月 | 2003年 |
- Q1.アクセシビリティって何だろう?
- Q2.どうしてアクセシブルなウェブサイトにしなくてはいけないの?
- Q3.アクセシブルなウェブサイトを作りたいんだけどどうすればいいの?
- Q4.アクセシブルなウェブサイトかそうでないかどうすれば分かるの?
- Q5.Dinfではアクセシブルにする為にどんな工夫をしているの?
Q1.アクセシビリティって何だろう?
「ユーザーにとっての、ウェブサイトの利用しやすさ」という意味ですが、通常はもっとまとを絞って、「障害者にとっての、ウェブサイトの利用しやすさ」という意味で使います。
ウェブサイトを利用するというのは、ウェブサイトに掲載されている情報を閲覧したり、掲示板に書き込んだり、商品を買ったりするなど、ウェブサイトの機能を利用することをさします。
関連して、アクセシブルなウェブサイトという言葉は、ここでは、「障害者も利用できるように配慮されているウェブサイト」という意味で使っています。
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アクセシビリティは、アクセスという言葉がその基本になっています。 したがって、直接の意味で考えれば、アクセスの可能性ということになるでしょう。「アクセス可能かどうか」、「アクセスしやすいかどうか」、ということです。
「アクセス」するという言葉も分かりにくいかもしれません。「アクセス」は、もとは接近や出し入れという意味ですが、コンピュータの世界においては、情報の出し入れという意味で使われます。
すなわち、「アクセシビリティ=アクセスしやすさ」は、情報の出し入れのしやすさということになります。そこで、ウェブサイトのアクセシビリティは、ウェブサイトに掲載されている情報の出し入れのしやすさ、言い換えれば、ウェブサイトの利用しやすさということになります。
しかし、通常、アクセシビリティは「障害者にとっての」アクセシビリティという意味に解されています。
もっと正確に、米国リハビリテーション法を参考に、定義してみましょう。
アクセシビリティとは、「障害者が、ウェブサイトのサービスを受けたり、情報を検索する際に、障害を持たない一般の個人と同じように、情報およびデータにアクセスし、利用できるようになっているかどうか」ということになります。
Q2.どうしてアクセシブルなウェブサイトにしなくてはいけないの?
第一に、障害を持った人も一般の個人と同じように、そのウェブサイトを利用できるようにするためです。
コンピュータとインターネットの発達は、障害者に福音をもたらしました。
たとえば、他人の手を借りなくても、文字情報を点字でプリントしたり、読み上げたりすることが出来ます。ショッピングも出来ますし、雇用も広がりました。
インターネットやコンピュータの発達により、これまで障害ゆえに出来なかったり、消極的だったいろいろなことを、一人で、積極的に出来るようになったのです。
ですから、ある意味では、健常者よりも、むしろ障害者の方においてこそ、インターネットの利用が切実な問題になっているのです。
第二に、利用者を増やすためです。
アクセシブルなウェブサイトにすれば、利用者も増えます。障害者も利用できるようになるからです。
そして、障害者のユーザーだけなく、一般ユーザーも増えると我々は考えます。
情報が整理されていて、きちんとアクセシビリティに配慮されたサイトであれば、一般ユーザーの印象も好ましいものになるのではないでしょうか。
第三に、公共の場における、公平性の確保のためです。これは、障害者のとってメリットであるとともに、物事が公平である方がすみやすい社会になるという、公共の利益も含まれます。
とくに、公共的なサイトにおける公平性は、重要です。
国や地方自治体のウェブサイトにおいて、障害者を閉め出すようなことになれば、福祉国家をうたった日本国憲法の精神を踏みにじることになってしまいます。
もちろん、当然のことですが、公共的なサイトにおいてアクセシビリティへ何らかの配慮をしてないサイトはほとんどありません。
Q3.アクセシブルなウェブサイトを作りたいんだけどどうすればいいの?
WAIのガイドライン(http://www.zspc.com/documents/wcag10/index.html)に従ってウェブサイトを作ってください。
これに関連する文章として、チェックリスト(http://www.zspc.com/documents/wcag10/full-checklist.html)、ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン1.0 技術書(http://www.zspc.com/documents/wcag10-tech/index.html)、石川准氏によるガイドラインの解説(http://fuji.u-shizuoka-ken.ac.jp/~ishikawa/wcga.htm)も参考になります。
IBMの作成したガイドライン(http://www-6.ibm.com/jp/accessibility/guideline/accessweb.html)もあります。
分かっている人も、参考のために、一度、これらの文章に目を通されてはいかがでしょうか?
これらのガイドラインは、一般的すぎて、もしくはウェブページの言語に関する記述なので、分かりにくいという方も多いと思います。具体的にどうしたらよいか、いろいろな局面で迷う方もいます。
一般の個人がホームページを作る場合、ホームページを作るツールを使う人が多いと思います。これらのツールを使うと、ウェブページ作成の言語であるHTMLやCSSがよく分からなくても、ウェブページを作成できます。
もし、これらのソフトに、アクセシビリティ支援機能がついている場合はその機能を使ってください。
たとえば、IBMホームページ・ビルダーというWEB作成用ツールには、アクセシビリティ・チェック機能があります。アクセシビリティをチェックする項目をきめ細かく設定できます。チェックに引っかかるコンテンツは、エラーとして報告されますので、これを参考にして修正していくことにより、アクセシビリティを実現できます。
ガイドラインは分かるけれども、個別の局面でよく分からない場合もあります。
WAIのガイドラインはどのようなウェブサイトにも適用できるように、一般的な記述を心がけていますから、具体的な対処方法がよく分からないばあいも多く生じます。
その場合、さきほど述べた、ガイドラインに関連する文章が参考になります。ガイドラインをかみ砕いて説明したり、具体的な処方箋を示したりしています。
じつは、事情はもっとやっかいです。
ウェブサイトのデザインや機能は、多岐に渡るし、技術革新のはなはなだしい分野でもあります。ガイドラインに記載されていない問題も生じるでしょうし、いくら読んでも具体的な処方箋に思い当たらない場合だってあります。現行のHTML言語の仕様からは、実現が難しい問題もあります。
例えば、TableEタグをレイアウトに使用するのは勧められないと書いてありますが、現実にはTableタグなしに、望み通りにレイアウトを得ることはほとんど不可能に近いものがあります。
そこで、残念ですが万能薬はありませんので、個別に考えることになります。
既存のウェブページを参考にするのも良いでしょうし、さらに手を広げて、いろいろな記事や文献に当たるのもよいでしょう。
しかし、最後に決めてとなるのは、常識と想像力です。
常識で考えて、情報の整理されているサイト、デザインのすっきりしているサイトがアクセシビリティの観点からも好ましいと考えます。
また、障害者がアクセスする環境を想像してください。マウスの使えない障害者は、キーボードだけで、もしくは音声認識ソフトなどを使ってアクセスしています。また、視覚障害者は、テキストの自動読み上げソフトや、点字ディスプレイを使ってアクセスしているのです。知的障害を持つ人たちにとって、分かりやすいかどうか、考えてみてください。
このように想像力を働かせれば、問題解決の糸口が必ず見つかります。
Q4.アクセシブルなウェブサイトかそうでないかどうすれば分かるの?
ガイドラインのチェックリスト(http://www.zspc.com/documents/wcag10/full-checklist.html)を利用するというのが、一つの方法です。ウェブサイトをこのチェックリストで照らし合わせてみてください。
また、構築したウェブサイトがアクセシブルかどうかを検証する一つの方法として、先にホームページ作成ソフトの機能を使うという方法を述べました。
しかし、ページ数が多かったり、繁盛に更新があるような場合には、手でチェックするのは面倒ですし、現実的ではありません。
アクセシビリティの検証用ツールもしくはサービスが、いくつかインターネット上で公開されています。
多くは無料ですので、以下に紹介します。
「Bobby」(http://bobby.watchfire.com/bobby/html/en/index.jsp)は、「CAST」(Center of Applied Special Technology)の提供するもっとも、メジャーなツールです。オンラインの検証サービスは無料ですが、パソコン上で動くソフトは有料になりました。残念ながら、日本語版はまだ、ないようです。米国IBMと共同で日本語化が進んでいるようです。
「A-Prompt」(http://aprompt.snow.utoronto.ca/)は、パソコン上で動くソフトです。ウェブサイトの問題点を見つけてレポートしてくれます。トロント大学とウィスコンシン大学が共同で開発したソフトです。
「Personal i-Checker」(http://www-6.ibm.com/jp/accessibility/soft/download_etc1.html)は、日本IBMの提供する検証ツールです。日本語化されています。
また、日本で開発したツールとして、総務省のウェブヘルパーというツールのテスト版が公開されています。
アクセシビリティの検証ツールは手近に利用できるようになっていれば、アクセシブルなウェブサイトを作る上で強力な武器になります。ただ、日本語化の遅れている分野でもあり、今しばらく、待たなければならないかもしれません。
Q5.Dinfではアクセシブルにする為にどんな工夫をしているの?