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コンピューター・プレイセンターで遊びましょう-コンピューター・プレイセンタープロジェクトに関する図書

エーレブロー市

ダータテークに来るためなら長距離だってやってきます! 

 コンピューター・プレイセンターは音で溢れています。歌声、ラッパの音、口笛にゲーム音等 。アクセル、モア、アンナはそれぞれコンピューターの前に座り、自分の母親と遊んでいます。ニーナ・トルンホルムとグニッラ・カールソンが常に近くにいて新しいプログラムを見せたり、子ども達がコンピューターを楽しんでいるかどうか見たりしています。
   モアとアクセルはこのコンピューター・プレイセンターにすでに何度か来館しています。アンナとアンナの母親は2度目の来館でコンピューターが、アンナが苦労している綴りの学習の助けになるかどうか、試しているところです。アンナは7歳で学校に行きだしたばかりです。会話の学習の為、一年ほど幼児言語療育センター(sprakforskola)に通っています。今彼女はプログラムソフト『もっと知ってみよう』によって、アルファベットを3つ用いる忍耐の必要な単語を書いたり、困難な子音の区別をやったりしています。
 規則上は4人の子ども達が同時にこのコンピューター・プレイセンターに来館することができます。教育的配慮や現実的な必要性から複数の子ども達が同時に来ることを許可しているのです。

遊ぶのは子どもとその親なのです

 もしここに来ている子どもが一人だけだったら私達は常に傍にいるでしょうし、そうなると親達は私達に頼りすぎるようになるでしょう。もし私達の助けが必要な子ども達が複数ここにいたら、親達はコンピューターやプログラムソフトの操作を自分でこなさなくてはならないと気づきます。そうすると親達は自分の子どもと共に真剣に遊びに入っていくことができます。
 私達が目指すのはその状態です。遊ぶのは子どもとその親であって、私達ではないのです。これが教育的配慮の面です。現実的な面を言えば、順番待ちの列は本当に長く、複数の子どもを同時に受け入れざるを得ないのです。」
グニッラは言いました。
 初回に来館するのは親のみです。彼らは次回に子どもを連れてきた時に何をするのかを知っておく為にコンピューターに慣れ、幾つかのプログラムを試しておくのです。
 「中には一人で座ってコンピューターに取り組む必要のある子どももいます。周りに複数の人々がいると興奮してしまうような子どもです。そのような子どもは(他の子どもと同時ではなく)単独で来館してもらうか、建物を共有しているコンピューター・視聴覚センターに頼んで一部屋貸してもらうようにします。」
 「4人の子ども達を同時に受け入れるのはもちろん大変です。」
 グニッラとニーナは言います。特にコンピューター分野においては相変わらず自分を新人で無経験と感じているニーナはそうです。  またニーナはグニッラよりもコンピューター・プレイセンターで働く時間が長いので家族達を時折一人で指導しなくてはなりません。
 「先週のことですが、ヨークスが突然マッキントッシュから消えてしまった時にはあせりました。けれどもそこにいた子どもには別のプログラムで遊んでいてもらい、その間に自分でヨークスを見つけることができました!」
 グニッラ・カールソンは作業療法士です。自分の労働時間のうち、コンピューター・プレイセンターで働くのは40%です。それ以外の時間はエーレブローにあるハルトルプス県立ハビリテーションセンターで働いています。ニーナ・トーンホルムは就学前児童を対象とするソーシャルワーカーで、育児休暇をとっているアン‐クリスティン・ベルリンの代理職員です。ニーナがコンピューター・プレイセンターで働くのは、労働時間のうちの60%です。その他の時間はハルスベリィの県立ハビリテーションセンターで働いています。そこには、ニーナが余りうまく使えずにいた一台のコンピューターがありました。しかしニーナがそちらにフルタイム職員として戻った時、彼女は教育業務の補足教材として上手く使いこなすことでしょう。

長距離旅行の準備があります

 今までに約80人の子ども達がコンピューター・プレイセンターを訪れています。3分の2の子ども達がエーレブローから来ており、後はヴァルムランド、ダーラナ、セルムランドから来ています。
またヴェステルマンランドからも数家族が来ています。彼らは本来ならばウップサラのコンピューター・プレイセンターに行くべきですが、住んでいるのが南部なのでエーレブローの方が近いのです。
 「親達は子ども達がコンピューター・プレイセンターにいけるように、長距離旅行をする準備をしています。ヴァルムランドから来る親達は『たかが100キロメートルさ。』と言うのです。」
 その距離はスウェーデン中部地方内であっても大きなものです。そしてグニッラとニーナは、親達が長距離の旅をしないで済むように時折自分の住む地域以外の場所も訪問したいと望んでいます。現在のところは知的障害児童、青少年、成人のための協会(FUB)の招待によって、カールスタッドへの訪問が実現しているだけです。しかし来年はこのような訪問がもっと増えるでしょう。
 ニーナとグニッラはそれぞれのコンピューター・プレイセンターの業務を月曜日と木曜日に集中して行っています。毎週木曜日の午後には2時間のオープンハウスがあります。その時には始めの5回の来館を終えた子ども達がみんな招待されます。1度に5人の子どもが来館でき、その中で1人だけ個室で遊ぶことができます。

新しいコンピューターに20万

 コンピューター・プレイセンターには貸出用のコンピューターが5台あります。そして今ちょうど、さらに何台か購入する為に20万クローナの助成金を受け取ったところです。政治家達も意思決定機関の公務員達も初めから好意的に関わってくれたとグニッラは思っています。グニッラとアン‐クリスティン・ベルリンは、始めの半年間は独自の事務所がないまま仕事を開始せざるをえませんでしたが。現在コンピューター・プレイセンターはコンピューター視聴覚センターと同じ建物の中にあります。視覚障害児の為のエーケ養護学校には近いのですが、ハルトルプの県立ハビリテーションセンターからは1~2キロメートル離れています。そのハビリテーションセンターは現在改修及び拡張の工事を行っていますが、コンピューター・プレイセンターはまもなくそちらに移動して専用の新しいフロアをもらえる予定です。
 グニッラ・カールソンはコンピューター・プレイセンターが存続していくこと、そして新しいコンピューター・プレイセンターが設立され、成長していくことを確信しています。  「コンピューター・プレイセンターは発展し、変化していくでしょう。遊戯療法センター(Lekotek)と同じように。私達の地域では、ヴェステロースにある他のハビリテーションセンターが独自のコンピューター・プレイセンターの設立に興味を示しています。」
 グニッラは主張しました。
 ハルトルプスの県立ハビリテーションセンターの顧問医師、カーリン・ベンシュも、コンピューター・プレイセンターは子ども達がぜひ利用するべき良い施設であることを理解しています。しかし彼女もこの企画がこの先存続していくかという質問には確実に答えることはできません。全員がこの業務に携わっているにも関わらず。
 「あなたは私達のコンピューター・プレイセンターに来て、遊んでみるべきよ。」  私達が昼食を共にし、ショートインタビューをするために食堂で会った時、グニッラがカーリンに言いました。
 カーリンはため息をつきました。どんなにそうしたくとも、彼女はひと時たりとも仕事の手を休めることはないのです。ですから機会はそう多くはないでしょう。
 「でもコンピューター・プレイセンターのことは大変深く心にかけているんですよ。」
 カーリンはいいました。
 「私は重複した機能障害を持つ子ども達が、何かを自分自身で決めて行ったり、自分でやりとげたりする可能性を得たことを目の当たりにしてきました。私は多くの親達がすでにコンピューター・プレイセンターのことを知っているので驚きました。現在初回の来館をする為に順番を待っている親達にも、もうすでに来館してきたという親達にも会いました。すでにコンピューター・プレイセンターに行ってきた親達は、子ども達が彼らの思っていた以上のことができたとうれしそうに話してくれました。」

相談および支援機関としてのコンピューター・プレイセンター

 「コンピューター・プレイセンターは(機能障害を持つ人々に対する)支援とサービス法に基づく相談及び支援の業務に含まれるのではないでしょうか?それならば重度の機能障害を負う子ども達には無料で利用できる権利があるのではないでしょうか?」
 「アドバイスと支援はまず、子ども達や親達がハビリテーションによって受けるべきものが受けられない時に必要となるのです。このエーレブロー県の医療区では彼らはそれを受けられるのです。それに加えてここにはハビリテーションとアドバイスと支援は自治体の業務ではなく、医療区の業務として残すべきだと見なす賢い政治家達がいますから。」
 カーリン・ベンシュは多くの子ども達が学校に上がる前にコンピューターの訓練を受けて、それを役立てていると考えています。エーレブローにはもしハビリテーションセンターの職員が推薦するならば、重症の肢体不自由を負う子ども達が学校に上がる1年前にコンピューターをもらえる可能性があります。それならば彼らがそれより以前にコンピューターを使ってみる機会があるのは良いことです。県の地域事務所の就学前児童を対象とするソーシャルワーカー達もコンピューターを支給されています。反対の声もありますし、彼らがコンピューターを使うには訓練も必要なのですが、しかし彼らはコンピューターをハビリテーション業務に役立て初めています。

母親は傍にいてはいけません

 イサベッラはもうすぐ6歳になります。母親のソールブリットは、イザベッラがレークスクーラ(Lekskola:学童保育併設の私立保育所)に入学したら、コンピューターを買ってあげようと考えています。イザベッラはペンで文字を書くのにとても時間がかかるので、その為にコンピューターが必要なのです。
 イザベッラはコンピューター・プレイセンターに母親や介助者のブリットといっしょにやってきます。イザベッラは彼女がしたいこと、したくないことをはっきりと表現できます。彼女は「文字でやってみましょう」というゲームで遊びたがり、母親が傍にいるのをいやがります。そこで母親は部屋でイザベッラの傍についている代わりに、一時コーヒーとおしゃべりを楽しむのです。
 「イザベッラはアルファベットに興味を持ち始めました。おそらく彼女の双子の姉妹、ナサリーが文字を読み始めたからだと思いますが。イザベッラは発達においては遅れていますが、この二人の間ではよくちょっとした競争が始まります。イザベッラは数えることはできますが、2と2を足すとどうなるのかは判っていません。」
 文字のプログラムでしばらく遊んだ後イザベッラは、がんばってやり遂げたごほうびとして、王子様かお姫様、猫かうさぎ、魔女か竜等登場人物を選べる彼女のお気に入りのプログラムソフト「物語」で遊べることになりました。お母さんも部屋に入って見ているお許しがもらえました。ただしじゃまをせずに少し離れてみていられるならですが。
 「子ども達の中には母親が傍にいて、いっしょに遊ぶのを嫌がる子もいます。コンピューターは、子どもが母親に干渉されずに自由に動かすことができる最初の機器として適しているのでしょう。」  ニーナとグニッラは言います。
 そんなことは自分でコンピューターを操作した子ども達はとっくに気がついているのです。