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コンピューター・プレイセンターで遊びましょう-コンピューター・プレイセンタープロジェクトに関する図書

ウーメオ市

コンピューター・プレイセンターにはお父さん達も来ます

 10月の第2週目、ボーデンに突然の大雪が降りました。しかしコンピューター・プレイセンターがウーメオから出張してきています。ですから予約していたノルボッテン地方の数軒の家族はつるつるした道路をわざわざやってきたのです。マルクスはアルヴィッズヤウル、アンドレアスはカレスアンド、カッレとエリサベットはカーリックス、ペトルスはヴィッドセル、そそしてクリステルはハパランダから来ていました。ビョーンは遅れてきました。ビョーンの家族はルレオーからの道すがら車で溝に突っ込んでしまったのです。それでもやってきました。母親、父親、妹、それにヘルパー、それにビョーンがコンピューターで遊ぶ時間が新たにスケジュール表に組み込まれました。ビョーンは重度の機能障害があり、集中していると疲れてしまいます。彼がどの程度画面を見ていて、コンタクトキーボード(kontaktplattan)のどのクリックをビョーンが本当にしたくてやっているのか見極めるのは少々困難でした。しかしビョーンの周りの大人達は、彼が前回よりももっと興味を示したと意見が一致しました。
 スウェーデン内で最北に位置するコンピューター・プレイセンターが、職員のアンナ‐カーリン・ニルソンとロージー・アンダションによって、ボーデンのガンメレングスハビリテーションセンターに出張してきたのは2回目です。前回は40家族が予約をしていて、今回は25家族が来館しています。親達は県立のハビリテーションセンターか養護学校を通して招待を受けます。
 ロージーとアンナ・カーリンは学校における障害者問題の為の国立研究所『SIH』に勤務するソーシャルワーカー達や自閉症協会や、地域内の発達障害を持つ児童、青年、成人の為の各協会、肢体不自由を持つ児童と成人の為の各協会、それに視覚障害や聴覚障害を持つ児童の親の会にも案内を送りました。  「この方法で多くの人には情報が届いています。しかし全員に行き渡ってはいないでしょう。」  彼女達は言います。

コンピューター・プレイセンターまで300キロメートル

 スウェーデンで最北のコンピューター・プレイセンターに勤めていると、200キロメートル、300キロメートルの距離を車でやってくる親達に会います。彼らはコンピューターの助けを借りて、子どもを遊ばせてみる為にはるばる来るのです。彼らが経費の一部を受給できるように、ハビリテーションセンターへの来館にあわせて予約を組むこともありますが、ほとんどの場合彼らはコンピューター・プレイセンターに来館するだけの為にやってきます。ですからアンナ・カーリンとロージーは、時々は逆に二人の方から親達を訪問することに決めたのです。
 2度のボーデン出張の他、ウーメオのコンピューター・プレイセンターはイェリヴァレ、リィクセレ、シェレフレオー等に出張しています。幾つかのコンピューター・プレイセンターがこのように出張ができるように、特別な助成金を受給しています。ウーメオはその中でも最もこの出張助成金を必要としているコンピューター・プレイセンターなのです。
 「現在私達は移動コンピューター・プレイセンターの為にバスを一台調達できないかと思案しているところです。そうすれば私達は車に機材を積んだり、降ろしたりといった作業をしないですむので、出張がずっと楽になりますから。5台のコンピューターとその他必要なものを全て一台のボルボ740に詰め込むのは、芸当以外の何ものでもありません!」  ロージーとアンナ・カーリンは言いました。
 「私達はこの春再びイェリバレに出張する計画を立てています。最初の出張の時に多くの人が来て、2度目の来館を望んでいました。また始めての来館を望む子ども達もたくさんいます。コンピューターを家に持っている家族達はその時にプログラムを借りていきましたし、その他の人々はコンピューターのレンタルの待ちリストに名前を残していきました。」  ロージーとアンナ・カーリンの2度目の出張時には3家族がコンピューターを借りていきました。彼らは1ヶ月それを利用した後、ウーメオのコンピューター・プレイセンターにバス便で返却するのです。

もし傍を通るなら

 ロージーは作業療法士、アンナ・カーリンは養護教諭です。彼らは就労時間の半分だけコンピューター・プレイセンターで働き、後の半分はコールベッケンのハビリテーションセンターで勤務しています。彼らは業務を通して常に人々と会っているため、フレキシビリティとは何かということを学んできました。今ノルボッテン地方の内陸に住む家族達がそれで大喜びしています。コンピューター・プレイセンターが彼らの所にやってきます。少なくとも近くにはきます。そしてもし子ども達と親達がウーメオの傍を通るなら、彼らは立ち寄ってひと時コンピューターで遊ぶことができるのです。彼らがこの市を通りすぎるだけ、または週末を過ごすだけであったとしても、土曜日か日曜日に来館できるように調整しますと、アンナ‐カーリンとロージーは約束しています。
 「これは私がしてきた中でも最も楽しい仕事です。私は子ども達と親達の喜びを見るたびに嬉しくなります。ここでは子ども達自身も親達もできるとは思っていなかったことを、子ども達がやりこなしてしまうということが起こります。先日は息子の傍に座っていたある父親が、喜びのあまり泣き出してしまいました。男の子はここに来る前には、そんなに多くを自分でこなすことができなかったのです。彼は嬉々としてキーボードに向かい、時々父親の方を向いては楽しそうな笑い声を上げました。コンピューター・プレイセンターでは、よくそんな場面に立ち会うことができるのです。」 アンナ・カーリンは言います。

全ての子ども達に何かしら良いものが見つかります

 当初アンナ‐カーリンとロージーは子ども達に会うのが少々不安でした。もし彼らが自分に合うプログラムを見つけられなかったらどうすればよいのでしょう。けれどもそんな心配はいりませんでした。二人は何も得られない子どもになど会うことは一度もありませんでした。
 「けれども初回または2度目までは何が起こっているのかさっぱり分からない子ども達はいました。また子ども達が遊びたがらないこと、集中できないこと、プログラムの遊び方が理解できないこともありました。しかしほとんど場合、私も親達もこれは困難ではあっても、何度か試す価値はあるのだと気がつくのです。そしてある日突然子ども達は面白いと言い出すのです。」  アンナ‐カーリンとロージーは言いました。
 中にはたとえコンピューターの遊びが面白くても、5分、10分と続けては座っていられない子どももいます。このような子ども達は集中するのに不安や困難を感じているのです。彼らはそれでも予約を取り、その子のできる範囲で座っているのです。そうして何回か来館してやってみるうちに、ずっと座っていられるようになるのです。
 新しい子どもがコンピューター・プレイセンターにくると、ロージーとアンナ‐カーリンはまず簡単なプログラムから始めることにしています。そうすると、それが適切なレベルなのか、もっと難しいプログラムへと進めるのかすぐに把握することができるからです。
 「子どもが失敗から始めることのないようにするのは、大変大事です。プログラムが簡単ならば子ども達は必ずほめ言葉を与えられます。その後高いレベルへと進んでいけばいいのです。」

お母さんの膝で

 4歳のマルクスはアールヴィッドヤウルから、生まれて始めてコンピューター・プレイセンターに来ました。彼にはお父さんとお母さんがなんの為に130キロの道のりをはるばるやってきたのか、分かりませんでした。彼はいやがって、安心の為にお母さんの膝に座っていることも拒否しました。マルクスにとっては外の廊下で三輪車に乗っている方がよかったのです。マルクスのお母さんがコンピューターの前に座るとさまざまなことが起こり始めました。画面上に、煙をもくもく吐きだす機関車が一台やってきます。お母さんが大きな黄色いボタンを押すと、ポッポーと汽笛が鳴りました。一分も経たないうちにマルクスは画面に引きつけられ、誰かが気がつくまもなく椅子の1つに座っていました。画面がもっとよく見えるように。
 マルクスのお母さんはそれまで一度もコンピューターを使ったことがありませんでした。ですからお母さんはマルクスが楽しんでいる間、ロージーが静かに述べる説明を注意深く聞いていました。
 「このゲームが終わったらカーソルをホークス・ポークスのウィンドウに移してエンターキーを押してください。そうしたら新しいゲームを選ぶことができます。」
 マルクスのお母さんはコンピューターを借りる為の予約リストに名前を書きました。約半年待てばマルクスはコンピューターを家に持ち帰ることができますし、お父さんとお母さんはマルクスを手伝う為の短い講習を受けることになります。
 「マルクスの姉達も喜ぶと思います。」
お母さんは言いました。
 ボーデンのガンメレングにあるハビリテーションセンターは独自のコンピューター・プレイセンターの開設を計画しており、マルクスの家族はそれを心待ちにしています。そうすればコンピューターを持って帰るのに、往復で130キロメートル車を走らせればいいのですから。アールヴィッドヤウルからウーメオまではその2倍以上遠いのです。

早期のコンピューター・プレイセンターデビュー

 ヨアキムが始めてコンピューター・プレイセンターにやってきた時、彼はまだ1歳7ヶ月でした。1年経った今、彼は画面上のボートをクリックすることと、そのボートが波の上を揺れながら進み始めることの関係性をきちんと理解しています。
 ヨアキムのお父さんは息子と同じように積極的です。またヨアキムが他の子ども達のように遊ぶことが困難だった為、こんなに早くコンピューターで遊ぶチャンスが得られたことを喜んでいました。
 次の週ヨアキムはついに言語療法士に会うことができます。言語療法士はノルボッテン地方の子ども達の必要にわずかでも応えるために、月に一度ウーメオのハビリテーションセンターからやってきます。
 「ボーデンにも言語療法サービスはあるんだけどね。誰もそれに行きたがる人はいないんだ。」
 ヨアキムのお父さんは話してくれました。

ついにお父さん達もやってきました!

 ボーデンにもウーメオにもたくさんのお父さん達が来ました。
 私は20年ハビリテーションの仕事をしてきて、これほど多くのお父さん達に会ったことはありません。」
アンナ‐カーリンは言いました。
 「時々私は、『彼らにここに来てもらうのに必要なのがコンピューターだなんて!』と考えます。しかしその後自分自身に言い聞かせるのです。とにかく大事なのは来てくれることなのだと。ところで、多くの場合ここへは両親が揃ってやってきます。彼らはコンピューター・プレイセンターに興味を持ち、子ども達がどんな風に反応するのか見てみたいと思うのです。」
 多くの男性達はコンピューターの経験があるだけに有利です。だからこそお父さん達はハビリテーションセンター内よりもコンピューター・プレイセンターにおいて、子ども達に関する業務に参加しやすいのです。お母さん達が「PCとIBMって同じこと?」だの「そこにあるのがマウスというもの?」と聞いている間にお父さん達はCDI技術について議論を交わし、そろそろサウンドブラスターを入手する時期ではないかと話し合っているのですから。

父母の会

 ボーデンに出張している間にアンナ‐カーリンとロージーは親達の為に説明会を開きました。日中に自分の子どもと一緒にコンピューター・プレイセンターに来ていた人々が、今度はコンピューター・プレイセンターが何を提供してくれるのか落ち着いた環境で聞いたり幾つかプログラムを試してみたりするために再び来館しました。また支援器具としてのコンピューターの可能性についてディスカッションする場にもなりました。親達の多くは子ども達が必ず喜ぶものがあるのに、それを与えられないことのつらさを感じていました。彼らは中にはコンピューターが買えるように何らかの基金から数千クローナを与えられている親達もいることを知っています。しかしその幸運を手にする人は少ないのです。
 何人かは、アンナ‐カーリンとロージーはどのコンピューターを薦めるのか、質問しました。しかし二人ははっきりと何を推薦するとは言えないと答えました。
 「それは人々に確かな商標の車を買いなさいとアドバイスをするようなものです。私達は家族全体では何が必要でどの程度の資産を持っているのかをよく考えて決めてくださいとアドバイスすることにしています。このコンピューター・プレイセンターにある4台のコンピューターは、どんな人にも利益になる点と不都合になる点とを兼ね備えているのです。またある特定の子どもに最も適したコンピューターはどれかを決定するには、様々な要素が関わってくるものなのです。」

面白いもの全てをクリックしてごらん

 4歳のエヴェリーナは多くの子供達が始めて来た時にするのとまったく同じようなことをしました。やみくもに様々なクリックスイッチを押したのです。トラックも動物もさっと画面を通り過ぎてしまいました。そしてコンピューターもクリックスイッチも画面を通ったのが何だったのか示しました。アンナ‐カーリンはエヴェリーナにタッチウィンドウを試してみるように勧めました。しかしエヴェリーナは頑固に「いや、できない。上手くいかないもの。」と言い張りました。最初の30分間は、エヴェリーナにとって最も面白かったのは押してみることだったのです。その後なんだか自分の目の前でおかしなことが起こっているのに気がつきました。そして2回目にはトラックから牛、犬、馬、猫が出てくるのを食い入るように見始めたのです。
 アンドレアスはフィンランドとの国境沿いのかなり北に位置するカーレスアンドから家族全員と一緒にボーデンに来ています。彼はハビリテーションセンターで数日間かけて検査を受けるので、それに合わせてコンピューター・プレイセンターにも来館しています。アンドレアスは今年学校に行き始め、家でも学校でもコンピューターを使えるようになりました。彼は学校と家ではタッチパッドを使っています。しかしここではプログラムを上手にマウスで操作することができました。アンドレアスと彼のお兄さんはすぐにお気に入りのプログラムを見つけました。"Grandma and me"(お祖母ちゃんと私)です。このプログラムの中ではありとあらゆる楽しいことが起こり、様々な要素を自分で決めることができます。お兄さんはマウスを自分で操作したくてうずうずするのですが、今回はアンドレアスがコンピューターを使う番だとちゃんと分かっていました。
 エヴェリーナとアンドレアスは二人ともダウン症です。この二人のように発達障害を持つ子ども達やその他肢体不自由を持つ子ども達にとってコンピューターは、大いに利用価値があるとロージーとアンナ‐カーリンは考えています。コンピューター・プレイセンターに来る子ども達の中には、ここで生まれて始めて遊ぶことができたという子も少なくないのです。国内のほとんどの地域において、肢体不自由を持つ子ども達が就学前にコンピューターを個人的な支援器具として入手することは困難です。ウーメオコンピューター・プレイセンターがあるヴェステルボッテン県はこの問題に関しては先駆者です。
 重度の肢体不自由がある子ども達は、一般的な方法では遊ぶことができません。またコミュニケーションを取ったり、学校に行けたりするようになるために、必ずコンピューターが必要になります。ですからこの県では個人的な支援器具としてコンピューターを与えられるのです。

無事に火を消し止められた嬉しさに、思わずキス

 ハパランダからきている15歳のクリステルにとっては、あるプログラムは大きな冒険です。このプログラムの中では、物語のお姫様が旅の仲間にするのは、猫なのかのかうさぎなのか自分で決めることができます。クリステルはどちらにしようか長い間考えたあげく、結局うさぎを連れていくことに決めました。その後お姫様がジンジャークッキーハウスの中をのぞきこみました。  「ここにはまだ行ったことがなかったんだ。」
彼は言いました。
 「こんなコンピューターが家にもあったらいいのに。」
 彼がゲームの最中に言うと、お母さんのメーリがため息をつきました。彼女がコンピューターに関してできるのは、一台借りることだけです。
 クリステルはこのプログラムで充分に楽しむことができました。彼にとっては画面の中の左右や上下に注意を払うのは容易ではありませんでした。またプログラムの中である家が燃えだし、消防車がそこに辿りつかなければならない時には大忙しでした。  ついに火を消し止めた時にはクリステルは嬉しさと安心の余り、アンナ‐カーリンにキスをしたほどでした。