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「DAISYによる教科書づくりを考える」 -欧米から学ぶ-

セッション2:パネルディスカッション「DAISY版教科書製作をどう促進するか」

神山 忠
岐阜県立関特別支援学校 教諭

皆さん、こんにちは。岐阜で今特別支援学校に勤めている神山といいます。私自身、実はディスレクシアでありまして・・・。

今から8年ぐらい前に点字図書館に録音図書があると聞いて、あっ、自分でも好きな本を読めると言うか聞けると思って、ちょっと恥ずかしかったんですけど、勇気を出して点字図書館に行きました。すると、「録音図書は貸し出せないんです。ちゃんと手帳がないとダメなんです。」と言われて、落ち込んで帰ってきたことがあります。

スライド1

(スライド1の内容)

そんな私がマルチメディアDAISYに出会って、すごく「あ、いいな~。」と思いました。そこで、ここ数年もっと広がらないかなと思っていろいろ活動しています。

私自身、字が読めなかったことで学齢期とっても辛い思いをしていました。みんなにバカ扱いされたり、授業も全然ついていけなくて落ちこぼれたり、非行に走ったり、閉じこもってしまったりといろんな時期がありました。

もしあのときに、さっきのハイブリッド図書ではないですけど、マルチメディアDAISYのようなものがあったら、あんな辛い思いをせずに過ごせたかなと思います。

スライド2

(スライド2の内容)

第1部の話を聞いていて、「あ、オランダに生まれていればなあ」「アメリカに生まれていればなあ」「スウェーデンに生まれていればなあ」「イギリスに生まれていればなあ」などと羨ましく思いました。しかし、それ以上に羨ましく思っているばかりじゃなくて、この日本も、そんないろんな特性があっても困らない、そういう社会にしていかなきゃいけないなと思いました。

今、自分自身もこのDAISYの有効性というのを感じています。特別支援学校に勤めながら、支援者として関わっている子どもたちも、いろんな障害がある子どもたちなんだけどみんなこのDAISYをいいツールとして喜んでくれています。だからもっと普及しないかなと思っています。

スライド3

(スライド3の内容)

いろんな所で講演する機会があるんですけど、DAISYの認知度を聞いてみると、だいたい参加者が200人ぐらいの講演だと3~4人かな。最近ちょっと多くなってきたんですけど、パーセントにすると1.5%~2%まで行かないぐらいです。当事者の認知度になると、私が最近調べたところでは、約500人に2人の方が知っていました。その内で1人は使ったことがあるということで、1人は聞いたことがあるといった感じでした。こんなにいいものがあるのにと思うのですが、とても残念です。

実際にDAISYを触ってもらったら、支援者側も当事者側も、すごく好感触と言うか好印象を持ってもらえているんです。特に当事者の方たちというのは、もう感動してくれるのですが、でもなかなか使い続けられない毎日と言うか現状でした。

スライド4

(スライド4の内容)

いろいろ聞いてみたり考えてみたりしたんですけど、支援者側としては、今の生活でいっぱいいっぱい。親御さんもいっぱいいっぱいだし、教師側としても、他のことがあって今の教育課程をこなすだけでいっぱいいっぱいで、そんなコンテンツを作るとか、コンテンツを授業で活用するとか、子どもに合ったものを提供するとかはなかなか難しい状況だと感じています。

スライド5

(スライド5の内容)

また、子どもたちもコンテンツに制限があると感じています。もっと簡単に手に入れられれば使い続けるんだけれども、なかなか手に入れられないのであきらめるという状況にあります。

そして、コンテンツ自体、DAISY自体楽しめるんだけれども、それをこんなふうに活用すると自分の読みの障害を楽にできるよというに、レクチャーしてくれる人がいないのも課題だと思っています。例えば、初めは視覚的なものと音声と両方聞く。その次に音声をどんどん小さくしていき自分で読めるようにしていくなど、その子の特性にあった使い方のステップを教えてくれる人が近くに「いる」のと「いない」ではDAISYの有効活用度も変わってくると思います。

スライド6

(スライド6の内容)

このように、誰もが有効であることは認識して実感しているんだけど広がっていかない現状であるので、自分が学齢期味わった辛かった思いを今の子どもたちでも感じていると思うと苦しくなってきます。

スライド7

(スライド7の内容)

もし同じように辛い思いをしている子がいるんだったら、少しでも力になって、他の国を羨ましがってばかりじゃなく、少しでも早く日本でも、どんな特性があっても生まれてよかったなと思える、そんな時代、社会にしていかなくてはと思っています。

スライド8

(スライド8の内容)

これは自分の今のクラスの子の写真なんですけれど、この子は肢体不自由で左の手首がちょっと動かせるだけなんですけど、自分でDAISYプレイヤーを操作できるようにインタフェイスを作ったら、何度も聞きたいところを選んで聞き「自分で読めた!」とすごく喜んでいました。

やっぱり自分で読める喜びというのはあるんだなあ、普段読めない人ほど喜びをすごく感じてくれるんだなあと思いました。

こんな笑顔がどの学校に行っても、どの子からでも引き出せる、そんな社会が来るように、DAISY教科書が一役買ってほしいなと思っています。

視力が弱い人にめがねが使える社会と同じで、このDAISYが読みに困難を感じている人たちへの合理的な配慮・支援と認識されるよう願っています。誰もが人として生まれてきてよかったと感じられるよう、そして、誰もが適切な教育が受けられるように、障害特性の正しい認識と、それに対して有効なツールや支援が得られる社会を築いて行きたいです。ご清聴ありがとうございました。

スライド9

(スライド9の内容)

河村●

神山先生、ありがとうございました。それではこれからパネリストの皆さんにご登壇いただきます。神山先生は一番左の席にいらしてください。他のパネリストの方、壇上に来てください。日本語で名前が書いてあるのでご案内をお願いいたします。