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DAISY教科書とともに多様な学習メディアの提供を

野口 武悟(専修大学 文学部 准教授)

スライド1
(スライド1の内容)

よろしくお願いします。これまでの話の中にもありましたように、DAISY教科書の普及の必要性は言うまでもないことです。そして、高校あるいは大学でもマルチメディアDAISY教科書をどう提供していくのかということが、非常に大きな課題だろうと感じています。

スライド2
(スライド2の内容)

特に大学においては、高校段階までのように文科省の検定済み教科書があるわけではありませんので、各授業ごと、あるいは各教員ごとに使っているテキストは異なるわけです。そういったものをどう提供していくか、非常に大きな課題だろうと感じています。

もう一つ重要なのは、特に学校段階が上がれば上がっていくほど必要になってくるのは教科書だけではないということなんです。教科書だけで授業や学びというのが完結するわけでありませんので、学びに必要なメディアというのは実に多様になってきています。

スライド3
(スライド3の内容)

ではどういったものが必要かといえば、それは教科書以外のものはすべてということになるわけです。本であるとか参考書であるとか資料集であるとか辞典類など、こういったものになるわけです。

スライド4
(スライド4の内容)

スライド5
(スライド5の内容)

先ほどの田中さんの話にもありましたように、学習指導要領が変わって学力観というものが転換していく中で、学びのスタイルというものも、探求的な学びであるとか問題解決的な学びというものが広く導入されようとしているわけです。そういった中で学校にあっては、上に挙げたような本や資料集、辞典類というのは学校の図書館の中で所蔵していて、そういったもので調べてみようといったような使い方が非常に広がっていこうとしている状況にあります。

スライド6
(スライド6の内容)

スライド7
(スライド7の内容)

読みに困難のある子どもたちの学びを保障していくためには、まずは読める教科書があることはもちろんなんですけれども、やはり同時に考えていかなければいけないのが、こういった多様な学びを支えるメディアというものを読める方式でどう提供していくかということになってくるだろうと思います。

学習指導要領の改訂の話は先ほどもありましたので簡単に触れますけれども、特に学力観を転換していくこととともに、今回の柱として言語活動が非常に重視されているということです。

なかでも学校図書館の活用ということが言われています。学校図書館を計画的に利用し、その機能の活用を図り、生徒・児童の主体的、意欲的な学習活動や読書活動を充実すること。こういった学習指導要領の改訂に対応して新しい教科書の中でも図書館の資料を使いましょう、図書館の本などを活用していきましょうというような記述が、これまでになく見られるようになってきています。

スライド8
(スライド8の内容)

ただ、こういった形で教科書で図書館を使いましょう、図書館の多様な資料を使いましょうと言っても、読みに困難のある子どもたちにとって、図書室ってどういう場所なんだろうと考えてみると、読めない本あるいは読みにくい本が並んでいる場所、言い方を変えてみると、読みに困難のある子どもたちにとっては非常に制約の大きい環境だと言えるだろうと思います。

ですから、読める環境を学校の中に作っていくということが必要だろうと思います。今日のこれまでの報告の中では、授業作りというか、授業の中でのいろいろな指導が紹介されましたけれども、もう一つ、学校の環境として読める環境をどう作っていくかということも同時に考えていかないといけないのではないかと思います。

スライド9
(スライド9の内容)

その一つとして、学校の図書館という場所にDAISYなど読める方式で作られたメディアや情報機器といったものを整備していくということが方法として考えられるのではないかと思います。

先ほどの事例報告の中で奈良の先生がDAISYコーナーを教室に設けているという紹介がありましたけれども、ぜひそういったものを学校図書館、図書室の中に設けて、どの学年、学級の子どもたちも利用できるような環境を提供していくというのも一つの方法として考えられるのではないかなと思います。

著作権法が変わったこともありまして、読みに困難のある子どもたちのためには、学校図書館においては所蔵する資料などを著作権者に無許諾で読める方式に複製して提供していくということが可能になりました。この法改正をぜひ有効に生かす形で何か取り組みができないだろうかと考えます。

ただそうは言ってもどう整備していくのかを考えると、課題はたくさんあります。まず、人の問題です。学校全体での理解と協力というのは前提の話ですけれども、その上で、ということですが、学校図書館に関して言うと、日本の公立の学校は小学校も中学校も高校も特別支援学校も司書教諭を12学級以上の規模の学校には置くことになっていますが、ほぼすべてが兼任です。つまり、クラス担任、授業担当をしながら担当しているということでして、図書館の整備に十分時間を割けない状況があります。

また、学校司書といって、身分的には事務職員扱いの方が多いんですけれども、これを置いている学校は全国的には小・中学校では50%程度という状況で、まだ半分の学校には置かれていないという状況があります。ただ、ちょっと明るい状況として、来年度、国が初めて学校司書の配置費を措置することになりました。約150億円ということで、小学校に9,800人分、中学校に4,500人分です。しかし、地方交付税なので交付された自治体がこれを実際に学校司書配置に役立てるかどうかというところが非常に重要になってきます。

スライド10
(スライド10の内容)

さらに言えば、司書教諭、学校司書だけでDAISYを整備していこうと言っても無理ですので、やはり専門的なボランティアを地域の中でどう育てていくかということも非常に大きいだろうと思います。

それから予算の問題ですけれども、来年度も、光交付金が継続されることになりました。しかも増額ということです。これをぜひ学校図書館の環境作りに生かしていけないだろうかと思います。実際に学校図書館の図書整備であるとか、公共図書館のDAISY室の整備に使っているケースもこれまでにありましたので、これを学校図書館のDAISY環境作り、整備にうまく活用できないでしょうか。

スライド11
(スライド11の内容)

そして3つ目としては連携の問題です。一からDAISYを作っていくだけではもちろん難しいですので、どうネットワークを生かしていくかということです。サピエという話も今日の話の中で出てきましたけれども、そういったものなどもうまく活用していきながら提供していけないだろうかと思います。ただ、地域による大きな温度差があります。

スライド12
(スライド12の内容)

スライド13
(スライド13の内容)

やはり、まだ理解を示してくれる人が全体的に少ない、あるいはそもそもこういう状況を知らない人たちも多くいる中で、特に学校関係者、教育委員会、あるいは議員等への働きかけが重要になってくるのではないだろうかと思います。

今後の展望の一つとして、読書バリアフリー法を制定しようという動きがあります。昨年の夏、超党派の議員連盟である活字文化議員連盟の中に、読書バリアフリー法に関する小委員会というのができました。実はその前から動きがあって、国会の議員会館で集会なども開かれていたんですけれども、少し動きが具体化してきたかなということです。

スライド14
(スライド14の内容)

国や地方公共団体に学校図書館を含む読書障害者等のための読書環境改善計画の策定、あるいは財政上の措置などを求める、そういうようなものにしていこうというのがこの法案の骨格として示されています。ただあくまでも今こういう動きがあるだけで、実際に実現できるかどうかはまだわかりません。その意味でも、働きかけを強めていくということが非常に重要ではないだろうかと考えています。以上です。ありがとうございました。

スライド15
(スライド15の内容)

スライド16
(スライド16の内容)