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パネルディスカッション 山中 香奈(兵庫県LD 親の会「たつの子」代表)

皆さん、こんにちは。神戸から参りました山中です。よろしくお願いします。私も早口だと思いますので、資料を見ながら聞いていただけたらと思います。

マルチメディアDAISY使用事例

資料01

LDとは

資料02

私の長男はLD と呼ばれている学習障害です。
聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち、特定のものに著しい困難を示す様々な…と難しく書いてありますが。「読み書き計算ができない」書いてあるとおりの息子です。学習に関してはとても難しい状況で、視覚認知に困難もありますし、短期記憶も弱いので、学校では学習困難児。先生にしてみたら、「何べん教えてもわからへん子」という感じです。

次男はADHD で知的には高いので、学校では勉強ができる子となっているのですが、実は読み書きが困難です。先生がなぜわからないのかなと思ったのですが次男は本を記憶してしまうのです。学校で本読みの宿題が出ると家でDAISY で読
みます。全部暗記して学校へ行きます。先生が次男に読ませるとすらすら読めるものですから学校の先生は全く気がつきません。黒板の板書も、何も先生には困っていないように見えますが、先生が黒板に書いているときに読みながら書くので次男は記憶するんです。字は汚いですが書けないことはないので、それで通ってしまうのです。

LDの息子達

資料03

私の二人の息子はぜんぜん違う症状を持つディスレクシアだなと感じています。

長男は中1ですが4年生までに習う簡単な漢字くらいは読めます。しかし、読むために使う労力はかなり大きくて、とても疲労も感じてしまって、かろうじて読めた文章も読むことで精一杯で、理解・記憶ができないというのが彼の一番の困難だと思います。

読むというのは、我々は読みながら理解していくことですが、彼は文字を音声化するだけで精一杯で、自分が何を読んでいるのかわからないのです。「どんな話やった?」「ん?」、「誰が出てきた?」「ん?」みたいな感じです。ですから長い文章になればなるほどわかりません。私たちには理解できないんですけど、長男は本当に自分で読んでいても内容が理解できていないんです。

長男は何に困っているのか

資料04

これまでの報告では先生方が学校でDAISY を使ってすばらしい指導をしていらっしゃいましたが、うちの場合は、全くの家庭学習のみです。お恥ずかしいのですが、うちの子はよく勉強します。毎日やります。記憶は弱いですけど、字も読めな
いんですけど、それが音読で抑揚がつくぐらいまでやるのです。読書は「面白い」と言います。「読みたい」とも。勉強は嫌いじゃないんです。勉強は好きなんです。でもうまくいかない。

学校にも、いろんなお子さんがいると思います。
勉強嫌いで全然授業に入ってこないとか時には暴れる子もいると思います。

でも、本当は子どもたちは勉強が好きなんじゃないかと私は思います。うちの息子は言います。「勉強は大好きです」と。先生と上手く意思疎通ができたりするとニコニコしています。学校の先生も、DAISY で学習できていると、授業中、指してくれます。息子が回答します。回答が当たっていると教室中、「あいつ、できるやん」みたいな空気になって、国語の授業も大嫌いだったのが大好きに変わっていくんですね。

長男のDAISY使用事例

資料05

こういう変化を、私はマルチメディアDAISY で肌で感じています。今日もいらしている製作ボランティアの方にも、毎年この場でお礼を申し上げています。本当に感謝しております。ありがとうございます。

4年生でマルチメディアDAISY に出会った長男ですけれども、今年、中学生になりました。私の身長を抜かして声変わりをしておじさんっぽくなりました。中間テスト、期末テストは毎回苦労しています。ほとんど10 点もとれない状態なんですけれども、勉強するんですよ。テスト前の日曜日などは1日に7時間机に向かっていました。それでも10 点しかとれないんです。とても辛いと思います。勉強していないのではなくて上手にできないんです。結果が残らない。ものすごくかわいそうだなと親としては思います。

でも、国語の古文の暗唱。前回は「竹取物語」でした。これが、できたんですね。覚えられたんです。自宅で何回も「竹取の翁ありけり・・・」とずっとやっていました。これはマルチメディアDAISY がなければ、彼には乗り越えられない課題だったと思います。英語もしかりです。どこを読んでいるか全くわかりませんので。本当にマルチメディアDAISY、があってよかったと思います。

中学生になって

資料06

彼は、読みたいのは、教科書だけではありません。とても本が大好きです。

今、「ハリー・ポッター」がやっと手に入りました。今年は「赤毛のアン」なども読みました。サピエ図書館はご存じの方が多いと思いますが、インターネットからダウンロードできるDAISY 図書があります。

今までは視覚障害の方だけだったのですが、発達障害でも利用することができるようになりました。息子も登録させていただいて、自宅でダウンロードして、音声のみですけれども、楽しむことができるようになりました。

読みたいのは教科書だけではない

資料07

今は、毎晩毎晩、「ハリー・ポッター」の物語を、息子たちは聞きながら寝ています。音声が大きくて家族中が聞きながら寝ることになります。最初は、「うるさいな」と言っていた主人が、「ハーマイオニーはどうなった?」とか言うんです。途中で寝ちゃうので仕方がありません。「ハリー・ポッター」は8時間も10 時間もあるんですね。最近では一日30 分だけタイマーをつけて、ケータイくらいの大きさのポケット(PTP1)で音声を流して、それで彼らは眠りについています。

夏休みには、読書感想文の課題というのは大変なんです。先ほど田中先生から発表がありました。私、実は田中先生に「どうしても読書感想文が書けないので、お願いします。」ってお願いしてやっていただきました。

読めない子どもが感想文を書くということが、どれだけつらいことか、想像していただきたいんです。すでに田中先生の発表があったので私が伝えるまでもありませんが。

あと、長男はいろんなことに興味があって、今は星や天体が大好きなんです。今年はみなさんご存じのイトカワに着いた人工衛星のニュースをずっと聞いていました。この前、学校からもらってきたチラシに、それが神戸で展示され、いつからどこで展示されるなどと細かいことも書いてありました。A4 3枚で裏表です。「僕、これ読むのに1時間かかる。もっとかかるかもしれへん」と言いながら、チラシを目で追いかけているんです。

読みたいものは教科書だけでないんです。本当に多くの情報から疎外されていると思いました。

ただ、教科書というのは彼らにとって一番長い時間、接します。とにかく彼らが読める教科書の発展を私は望んでいます。何回も何回も皆さんの前でお願いしているんですけど、ボランティアが製作したものしか、今、ないんです。ユーザーとしては、どの教科書もあるわけではないことがとても悲しいです。これはもちろん国の責任だと思っています。このすばらしいDAISY 教科書を知らない方、使い方がわからない方が山ほどいるということを私は本当に感じています。

教師、行政、保護者がもっともっと知り、現在あるものをもっともっと使うべきだと思います。

彼らが読める教科書の発展を望む

資料08

義務教育だけでなく、高等教育はDAISY 教科書がますます必要になると思います。今まで次男は、DAISY 教科書があってもさほどは使っていませんでした。一回聞いたら覚えちゃう程度のことだったんです。ところが4年生になって、最近またよく使うようになりました。なかなか覚えられる量ではなくなってきているのです。4年生の教科書ですら覚えられる量でなくなってきているということは、中学、高校になると、想像がすぐつくと思います。彼らは大学にも進学すると思います。そうなったときに教科書はこんなに厚くなって、参考書もこんなに厚くなって、字ももっと小さくなっていることでしょう。本当にDAISY 教科書が早くどんどん作られるような状況になっていただきたいと願いながら、早口ではございましたが、私の発表を終わりたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

ご清聴ありがとうございました。

資料09

二つ目ですけれども、マルチメディアDAISY の利用・編集についての啓発・啓蒙が必要で、対社会に対してだけではなくて、学校関係者に対しても必要なことで、その際に、学校図書館の果たす役割は大きいのではないかということです。