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シンポジウム 図書館におけるディスレクシアの人への支援

スウェーデンにおけるディスレクシアの人々に向けた図書館の取り組み

野村 美佐子(日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長)

野村美佐子氏 スライド1(スライド1の内容)

はじめに

皆さん、こんにちは。日本障害者リハビリテーション協会情報センターの野村と申します。私の話は、本日皆様に配布いたしましたが、日本障害者リハビリテーション協会の月刊誌「ノーマライゼーション」の10月号に掲載されました『図書館にようこそ。スウェーデンのディスレクシアの人への支援』の記事がベースになります。

その記事の中には、国際図書館連盟の話が出てきます。英語では、International Federation of Library Associations and Institutionsで略して、IFLA(イフラ)と言います。日本ではあまり知られてなく、「IFLAって何ですか?」って言われることが多いですが、国際図書館連盟というのは、世界中の図書館や関係施設で構成するコンソーシアムみたいなところです。

最初にこのIFLAのお話をします。特に、私が入っております特別なニーズを持つ人々に対する図書館サービス分科会(IFLA/LSN)の活動のお話をさせていただきたいと思います。またその活動の1つにディスレクシア・ガイドライン・プロジェクトがありましたが、有効事例の収集のためスウェーデンに訪問取材を致しました。取材先というのは、同じ分科会で一緒に活動をしている「ハイディ」という図書館員の図書館でした。そこでのディスレクシアの人への支援方法と、活用しているスウェーデンの支援機関についてしてお話をします。さらに彼女はどちらかというと、ディスレクシアの成人を対象にした図書館サービスを行っておりますが、ディスレクシアの子どもへの支援についても少しお話をしたいと思っております。そして、最後に、図書館ができることとして日本の公共図書館に向けた提案をさせていただきたいと思っております。

野村美佐子氏 スライド2(スライド2の内容)

野村美佐子氏 スライド3(スライド3の内容)

IFLAについて

IFLAというのは、1927年に設立され、図書館情報サービスとその利用者の利益を代表する第一線の国際非営利機関です。基本的には、図書館に関わる活動であり、図書館活動と、情報サービスのあらゆる分野における意見交換と、国際的な協力、研究および、開発の発信・推進の場を提供しています。

IFLAの活動については、国会図書館のカレントアウェアネスっていうポータルサイトがあるのですが、そこで時々、情報提供をしていただいていますので、そちらを見ていただきたいと思います。本日、国会図書館の方もいらしていますので、個人的にお話しすれば、もっといろんなことを教えていただけると思います。

IFLAには、150カ国から1600以上の図書館、および、情報関連団体が加入しています。日本の図書館、それから関連団体の加入が少ないように思います。

私の情報センターでも、加入しておりまして、注目しているのは、障害者サービス分科会です。どういうふうに障害者に特化した図書館サービスが行われていくかに注目致しまして、実際に1999年から委員として活動をしております。

野村美佐子氏 スライド4(スライド4の内容)

野村美佐子氏 スライド5(スライド5の内容)

毎年8月に年次大会があって、3000人以上の人が参加します。今年はリヨンだったのですが、3500人が参加しました。リヨンでは、どこに行っても図書館員にぶつかり、また100人以上の図書館員の方がボランティアをしてくださいましたので、リヨンの町は、図書館員の町になったという感じが致しました。

IFLAの活動は、五つの部門に分けられ、その中には43の分科会がありまして、2つの障害サービスに関する分科会があります。一つは、特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会、IFLA/LSNといっております。もう1つは、印刷物を読むことに障害がある人々ための図書館分科会です。こちらは、プリントディスアビリティと言っているのですが、印刷物にアクセスできない人たちの図書館サービスを考える分科会になります。IFLA/LPDと呼んでいます。

この2つの分科会の活動に関連しまして多文化社会図書館サービス分科会、公共図書館サービス分科会、児童・ヤングアダルト分科会があります。多分、図書館員の方には、ぜひ国際図書館連盟の年次大会に行っていただきたいと思います。いろいろなお話が聞けるのではないかと思います。

特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会(LSN)

私が現在、所属しているのが、特別なニーズがある人々に対する図書館サービス分科会で、略してLSNと呼んでいます。この分科会は、どちらかというと、プリントディスアビリティ以外の人たちを対象にしているのですが、ディスレクシアのかたがたのサービスも対象としています。具体的にいうと、入院患者、服役の人たち。老人施設に入所している高齢者、在宅介護者、聴覚障害、身体および発達障害の方、そしてホームレスを対象にしておりますので、実は、様々な専門の方が、集まっており、なかなか同じテーマで、1つの目標に向かって取り組むことができないことがこの分科会の課題だと思っています。

例えば、テーマを「ディスレクシア」にすると、入院・患者図書館の人たちは、あんまり興味がないとか、なかなか、うまく関連付けてみんなで取り組むことが難しいです。でも、2014年の9月に私がたまたまこの分科会常任委員会の委員長になりましたので、皆で取り組むテーマを私の今の課題として見つけるしかないと思っています。

先ほど申し上げましたように、LSNは、ホームレスなども対象にしておりますので、来年の年次大会では、ホームレスを含めた社会的な弱者への図書館サービスについてセッションをやろうという話にもなっております。

また、通常の図書館サービスを利用できない人々へのサービスについてガイドラインをたくさん出版しており、日本語で翻訳されたガイドラインもあるので、ぜひ読んでいただければと思います。

ガイドラインに、「Easy to Read」という概念を利用した読みやすい図書を、主として知的障害者に、つまり、なかなか読んでも分かりにくいとか、理解できない人たちを対象にした図書のガイドラインがあります。スウェーデンが発祥地です。2010年には、私も、LSNの活動として読みやすい図書のためのIFLA指針改訂版の作成に関わりました。

野村美佐子氏 スライド6(スライド6の内容)

こちらに、URLが出ておりますのでアクセスしていただければ無料で読むことができます。または、読みやすい図書のためのIFLA指針の改訂版で検索していただくと、簡単に見つかると思います。

こちらの写真は、2012年にエストニアでサテライト会議を、ホームレスと図書館をテーマにしてセッションを行った時の写真です。LSNの常任委員会の委員と発表者がいます。次の写真は、2014年の年次大会の時の写真でが、お子さんも連れてくる方もいらっしゃいます。ぜひ、機会があれば年次大会に行っていただければと思います。

私どものDINFサイトには、IFLAに関する情報サイトがあります。今まで私がお話してきたことは、すべてこちらにございますので、ぜひアクセスをしてください。私が参加しました会議の報告など、全てDINFサイトに入っています。DINFというのは、英語で「Disability Information Resources」と言い、日本語では、「障害保険福祉研究情報システム」という長い名前になりますが、障害に関わる情報サイトになっております。

野村美佐子氏 スライド7(スライド7の内容)

ディスレクシアガイドラインプロジェクト

LSNによるディスレクシアガイドラインプロジェクトというのは、2012年から、2013年にかけて、LSNとLPDという二つの障害サービス関連の分科会で協力し合って取り組んだプロジェクトです。

ガイドラインの内容としては、最初にディスレクシアについてなんですが、「ディスレクシアとは何か」を明確に言うのは難しいです。いろんなパターンがあるからです。と言うのは、ディスレクシアの方々の50パーセント以上は、それ以外の何らかの困難を抱えているという統計があるからです。そのため、純粋なディスレクシアというのは本当に少ないと言われています。

野村美佐子氏 スライド8(スライド8の内容)

野村美佐子氏 スライド9(スライド9の内容)

それから蔵書と支援技術(機器)、スペースの活用と配架の工夫、図書館スタッフと連携についてです。またマーケティングについては、ビジネスの世界の話だけでなく、図書館においてもディスレクシアへの支援を普及するためには、マーケティングは必要だということです。支援おいては、総合的なアプローチが必要で、そのためのチェックリストも作成しました。さらに有効事例もたくさん掲載しています。またナレッジ・ベース(knowledge Base)、への掲載、これは、ディスレクシアについてや、ディスレクシアの人への支援に関する知識や情報の提供の場になります。1年ごとに見直しをして更新の予定です。

ガイドラインの内容については、どんどん話が膨らんでしまいまして、やっと終わったんですが。最終的には、IFLAの承認が要ります。そして今、承認待ちなので、実はもう出来上がっているんですが、皆さんにお見せすることができない状態です。

チェックリストも、日本語に訳してあります。本来ならきょうお渡ししたかったんですが、承認してないものは配布しちゃいけないという指令がでてしまいまた。そのため、今日は、残念ながらお出しすることはできないんですけれども、今月中には承認がとれますので、ホームページに掲載する予定です。

スウェーデンの図書館におけるディスレクシアの人への支援

次にスウェーデンの図書館についてです。先ほど申し上げた私の記事を見ていただくと、理解しやすいと思います。まずは、スウェーデンの図書館のネットワークは、どういうふうになっているかをお話します。2011年の統計によれば、290の公共図書館があり、4000の学校図書館があります。日本は、公共図書館が3000ぐらいあるのでそれと比べると少ないですよね。やっぱり人口が少ないからでしょうか。日本と違い、100の病院図書館があります。その中に医学図書館や患者図書館があります。 それから38の大学と単科大学図書館があります。75の専門および政府機関の図書館や20の地域図書館があります。三つの貸し出しセンターもあります。資料提供センターというのは、公共図書館のシステムをサポートしています。

野村美佐子氏 スライド10(スライド10の内容)

野村美佐子氏 スライド11(スライド11の内容)

最後にMTM、こちらは、昔、国立録音点字図書館(TPB)と呼ばれ、読むことに困難がある方に資料を提供していた図書館です。最初は、視覚障害者のために始まった点字図書館なのですが、2012年は、もっといろんな人に、いろいろなメディアで提供しようと、アクセシブルメディア機関(スウェーデン語の略称はMTM)と呼ぶ図書館になりました。ここは、デイジーコンソーシアムと連携してサービスを行っている機関です。

次に、スウェーデンのレラム図書館と「ハイディ」の写真があります。次の写真は、ディスレクシアの人のためのコーナーに置かれている読みやすい本です。その近くには、テーブルがあり、コーヒーメーカーも置かれていて、コーヒーが低額で飲めるので、何となく、居心地よくお話をしながら図書を選んでいく場所になっているそうなんですね。そこは、ディスレクシアの人のための場所で、自分が管理するスペースだと言っておりました。

野村美佐子氏 スライド12

こちらについて詳しいことは、私が書いた記事を見ていただければと思うのですが、いろんな利用者が、どちらかというと、どんな図書を読んだらいいのか、どういう図書だったらうまく読めるのかといった相談をする場所となっております。

この図書館を取材した時に、日本でも同じところがあるかもしれませんが、スウェーデンは、2年前ぐらいから図書館っていうのは、「静かに」と言われる場所ではなくなり、笑い声があってもいいんだっていう場所になってきたという話がでました。もちろん学習室はあると思うのですが、図書館が、みんなが集まってお話をしたりとか、相談したりする場所になってきているということです。

日本の図書館は、どちらかというと、静かな場所という印象が強いと思いますが、これからは変っていくかもしれません。視覚障害者の方がオンラインで電子図書をダウンロードするとか、インターネットで検索ができるとか、それから、カタログで図書の検索できるとか、図書館員が必要でなくなっていくように思います。しかし、図書館っていうのは、知識の宝庫なので、レファレンスを行う図書館員も必要ではないかと思っています。そのための場所になっていく、あるいは、人が集まる場所になっていく可能性はあるかと思います。

野村美佐子氏 スライド13(スライド13の内容)

次は、LLブックについてです。ご存知の方も多いかと思いますが、英語でいうと、[Easy to Read book]と言います。今回訪問をした、スウェーデン・ディスレクシア協会によると今後は、「Easy to Understand」で、つまり理解しやすいという方向で普及されていくとおしゃっている方がいました。「読める」ではなく、「理解できる」、そういう本が欲しいのだという運動を続けているということも聞きました。

野村美佐子氏 スライド14(スライド14の内容)

次の写真は、本にCD-ROMが同梱している写真です。私どもも、読みやすい本にCD-ROM付ける取り組みを行いました。日本では、後ろにCD-ROMを付けましたが、スウェーデンでは、前に付けています。その理由は、印刷された本を選ぶのか、それとも音声を聞くことにするか、あるいは、印刷された本と一緒に読むのか、選択できることが当たり前になっているからだと思います。日本の図書館では、CD-ROM付きの本は、別々にされてしまうというお話を聞いたことがありました。今もそうなのでしょうか。

次の写真は、皆さんに向かって右側になりますけれども、こちらは、知的障害者向けの8ページの読みやすい新聞です。こういうものを、図書館で閲覧することができるようになっています。これを作っているのが、LLブックセンターというところなのですが、1987年に始まり、初代のLLブックセンター長というのが、LSN分科会での活動を通して知り合った方でした。彼からLLブックについて多くのことを学びました。

LLブックは、かなりスウェーデンでは普及しておりまして、LLセンターは、年間32冊ぐらい出版しております。またそれらの本は、MTMと呼ばれるアクセシブルなメディア機関で、デイジー化され、図書館に、配布されております。

LLセンターは、国立ではないのですが、助成金、運営資金の半分が国から出ており、国の助成があるってうらやましいなと思っていました。そのLLブックセンターが12月で閉鎖されるそうです。「どうしてなのか?」と思うのですが、いままでの運営体制はそのままで、MTMに移るということです。来年からは、MTMという組織の中での一つの分科会として、LLブックセンターの機能が復活することになります。LL出版とか、8ページのLL新聞は、今後もずっと続けていくそうです。MTMにおいても、読みやすくてわかりやすい情報提供もMTMの中心的なサービスと考えているそうで、LLブックを活用して、デイジー化や、動画を作る計画をこれから模索していくようです。このようなことが起こっていたというのは、向こうに行って初めて知りました。ディスレクシア協会の人たちは、「もっとわかりやすい図書を、紙だけでなくて、紙以外のメディアにという思いがあって、国に呼びかけて、こういう結果になったのだと聞かされ、びっくりしております。この動きについて、国外からLLブックがなくなるっていう危機感がありまして、LLブックセンターとか、MTMに問い合わせがすごかったそうで、MTMとLLブックセンターのウェブサイトには、このことについて、質疑応答の形式で状況を掲載しています。ぜひ、見ていただきたいのですが。スウェーデン語です。

次のスライドは、ドロップインサービスについてです。ノーマライゼーションの記事にも書きましたが、家庭で直接、ダウンロードサービスを受けられるとか、インターネットで図書の検索ができるようになっておりますので、図書館はいらなさそうです。しかし、反対に新たなニーズに答えた活動があります。この「ドロップイン」というのは、ちょっと立ち寄るっていう意味で、予約なしに立ち寄る機会を提供する場になります。それから、ディスレクシアの人たち同士が情報交換を行うとか、デイジーの機器などの操作方法について教えてもらう場所にもなります。日本でもDAISY図書の操作支援など図書館でやってくれたら本当に私たちは助かります。ぜひ考えていただきたいと思います。また、図書館員にとって重要な事だと思うのですが、サービスのフィードバックをもらう場所にもなるそうです。

野村美佐子氏 スライド15(スライド15の内容)

デイジー図書に関連しまして、さきほどから何度も申し上げていますMTMですが、こちらのウェブサイトにいきますと、昔のウェブサイトと違って、もっと若者向きの、音声でも聞けるアクセシブルなホームページになっております。私は10年前以上からこの組織を知っていて、たぶん、河村宏さんもっと前から知っていると思いますが、ずっと見てきて、良い方向に変わっていっているように思います。

野村美佐子氏 スライド16(スライド16の内容)

MTMは、先ほど申し上げましたように、2012年から名称変更し、デイジー図書のダウンロードサービスを提供しています。大学図書館、県立図書館、市町村図書館、小規模図書館などの図書館にダウンロードを提供し、それらのデータを図書館員がダウンロードをして利用者に提供をしています。また、個人でも直接ダウンロードして再生することができます。その際に使われるソフトは、レギマス(LEGUMUS)と呼び、その名称は、オンライン図書館の名前にもなっています。日本のサピエ図書館と同じような機能を持っています。利用者は、地元の図書館において、申請することが必要です。但し、診断書がいるアメリカと違って診断書がいりません。利用者は「読めない」と申請をすれば、図書館員の判断で登録ができます。

次のスライドは、レラム図書館ではやっていないことですが、スットクホルム市にある。

野村美佐子氏 スライド17(スライド17の内容)

スウェーデン語で「メディアオーティケット」と呼ばれ、市が運営をする各種学校および、幼稚園などに提供する教育用の資料センターについてです。ここは、ICT(情報通信技術)の使用方法について、学校の先生や図書館員に教えているセンターになります。

具体的にいえば、音声デイジー図書、テキストデイジー図書、MP3図書、CD図書、eブック、オンラインブックの説明やダウンロードや利用方法についての研修があり、また最初に紹介の研修、次に試用のため研修、そして最後に希望する機器やソフトの研修といった3段階に分かれた研修も開始したとのことです。

そのセンターのホームページにアクセスをしたところ、知っている女性の名前を見つけました。その人は、ストックホルムの郊外にある学校図書館の図書館員だったのですが、たまたま同じ名前なので、連絡しましたら、まさにその人だったのですね。4年前に彼女がいた学校訪問をしました。この学校図書館では、図書館員がデイジー教科書を管理・提供ししておりましたので取材をしたわけなのですが、その時対応してくれた方が彼女でした。とても懐かしく思いました。DINFに掲載されている私の報告書は、日本語なのですが、Googleでスウェーデン語にして読んでくれたらしく、お礼を言われました。現在は、この資料センターで働いていて、楽しいとも語ってくれました。

いろいろなメディアを使用するというのは、とっても難しいと思う方たちがいますし、それぞれの障害に合った支援技術や機器操作について研修をしてくれる場所が日本にあったらいいなと思いました。

ディスレクシアの子どもの支援に向けて

次にディスレクシアの子どもの支援に向けてこれは昔から私が普及したいと思っていることですが、スウェーデンのりんごの棚のプロジェクトです。リンゴのマークがある棚に、いろんな障害を持った方でもアクセスできるアクセシブルな本が置かれている場所をりんごの棚と呼びます。

野村美佐子氏 スライド18(スライド18の内容)

野村美佐子氏 スライド19

もともとイギリスから始まったのですが、イギリスは、ほとんどやめてしまっていて、現在は、スウェーデンが主流となって、国際図書館連盟を通して世界的な普及を行っており、日本でも始まった図書館があります。

公共図書館に対する提案

それでは、最後に、ディスレクシアを対象にした図書館のサービスについて提案をしたいと思います。ディスレクシアについての理解がまず必要です。ディスレクシアは、見えない障害と言われています。視覚障害でもないわけですし、聴覚障害者でもないのですが、読むことに苦しんでいるのだということを理解してほしいです。それから、ディスレクシアの人のニーズをやっぱり、当事者の方々と一緒にいることで探ることが必要じゃないかなと思います。私も、こういう事業に関わってきて、ディスレクシアの外国人の多くの方々と親しくしていますが、彼らのニーズについて自ら語らなければわからないと申し上げています。

また対象者が読める資料の提供が必要です。さっき申し上げたような、読みやすい図書のコーナーの設置とか、ディスレクシアの人が集まれるドロップインサービスの提供とか、ディスレクシアにとって静かな図書館ではなく、居心地のよいスペースが必要であることも考えていただけたらと思います。

野村美佐子氏 スライド20(スライド20の内容)

ディスレクシアの人に向けて「こんなことをしているから来てください。」とこちらからアプローチしなければ駄目なんですね。昔は、「私の図書館は、ディスレクシアの人なんて来ませんので、別に何もやっておりません。」という図書館員も多かったのですが それは「来ない」のではなくて、「来れない」環境だということをわかってほしいと思います。日本のディスレクシアの方で20歳くらいの男性ですが、「やっぱり図書館には行けない。だって、まずどこに行っていいかわからないし、ディスレクシアですなんて言えない。」とおしゃっていました。そういう意味では、私の記事の中で説明をしているのですが、「担当図書館員とか、あるいは専属図書館員」が必要なのだと思います。自分の知っている図書館員がいれば、行きますよね。もう障害について何度も言わなくてすむわけですから。そういう担当の図書館員も必要です。

そして情報交換も有効だと思います。いろいろな観点から情報交換をすれば、ディスレクシアの人の支援っていうのは、うまくいくのではないかと思います。

さらに、すでに説明をさせていただきましたスウェーデンの「オーディオチケット」のようなセンターがあればと思います。またどんなにやってもボランティアは、限界があります。もっと広く、取り組みをしたいとか、全国的に取り組んでいきたいと思ったときには、行政との連携はとても必要だと思います。

日本障害者リハビリテーション協会がコーディネートするデイジー教科書の提供プロジェクトについてもボランティアで行うことには限界があります。そのようなことを考えると、この提供の最終的な目標は、やはり、国がきちんと支援をしてくれるように要望していくことであり、そのための活動を続けていきたいと思っております。