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平成19年度パソコンボランティア指導者養成事業

セミナー
障害者IT支援とパソコンボランティアの展望
報告書

パネルディスカッション(前半)

テーマ:「パソコンボランティアのニーズと育成」

パネルディスカッションの様子

司会●

テーマは「パソコンボランティアのニーズと育成」ということで進めさせていただきたいと思います。ファシリテーターを静岡県立大学国際関係学部教授でございます石川准様にお願いしたいと思います。石川先生は、私どもで協力して開発をしておりますALTAIR―視覚障害者のツールでございますけれども―を開発をしている方でございます。それではこれからの司会進行を石川先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

石川●

今ご紹介いただきました石川です。よろしくお願いいたします。それでは午後はパネルディスカッションとなっておりまして、午前中に講演を頂きました畠山さんと河村さん、それにこれからあともうお二方お願いいたしまして、4時までパネルディスカッションということになっております。最初に、もうお二方のパネリストに少しまとまった時間を話していただいて、その後4人の方にぜひ壇上に上がっていただいてディスカッションをします。またフロアからもいろいろなご意見やらご質問やらを頂きながら進めていくということでやっていきたいと思います。

それでは早速ですが始めさせていただきます。最初に三崎吉剛さんに―立川ろう学校の先生でいらっしゃいますが―まずお話を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

障害者IT支援とパソコンボランティアの展望
三崎吉剛(都立立川ろう学校 副校長)

石川●

三崎先生、どうもありがとうございました。

石川●

それでは引き続きまして、次のパネラーの方をご紹介いたします。松本琢磨さんです。神奈川県の総合リハビリテーションセンターで作業療法士をなさっていらっしゃいます。よろしくお願いいたします。

医療・福祉制度の変化によるPVのニーズと育成
松本琢磨(神奈川県総合リハビリテーションセンター 作業療法士)

石川●

どうもありがとうございました。それではこれから皆さんに壇上に上がっていただきまして、パネルディスカッションを始めたいと思います。よろしくお願いします。準備に若干時間がかかりますけれども。準備している間に進め方について少し説明をさせていただきたいと思います。

5人の方にお話を頂きましたので、今日、参加されている皆さん、多くの方がパソコンボランティアとしての活動を進めていらっしゃる方だと思います。あるいは利用者の方もいらっしゃるかと思いますけれども。日頃の活動を通じて感じていらっしゃることですとか、問題意識を持っていらっしゃることですとかが一方でおありで、かつ今日5人の方の話があったわけですので、そのことをふまえて、ここのところについてもう少し聞いてみたいとか、私はこういうふうに思っているのだけれどもどうでしょうかなど、フロアからまず発言をしていただいて、パネラーの皆さんにそれに対してまた応答していただくということからパネルディスカッションを始めたいと思います。ということでやっていきたいと思いますので準備をしておいていただけるとありがたいです。

それでは、レイアウトが整ったようですので、皆さん壇上にお集まりください。途中で1回、適当なところで休憩を入れますので、それを一つの仕切りにして、休憩後、例えばこちらのほうで、それまでの話を受けて柱を立てて切り直していくということにもなるかと思いますが、それでは始めたいと思います。フロアからご意見、ご感想、ご質問を受けたいと思いますので、ちょっと手を挙げていただいて。では真ん中の方。

会場●

ユーザーの立場で今日参加させてもらいました。何年か前にパソコンボランティアを受けたことがあるのですけれども、割と文字を書くこととかWordの使い方とかExcelの使い方ということは教えたりしているみたいですけれども、インターネットの設定の仕方とかを教えるところがあまりないなと思ったのです。それから自分でパソコンをいじるようになってインターネットの設定なんかも自分でやらなければいけないのですが、なかなかうまく設定できない。つい最近、実は視覚障害者音声PDA端末というのを手に入れまして設定をしたのですが、最初のうちなかなかうまくいかなくて。説明書も何か物足りないなあというような感覚で使っていたのですけれども、やっと最近どうにかこうにか使えるようになったかなと思ったら、イヤホンとUSB端子の調子が悪くて、早く修理に出さないといけないなと思ったりしているのですけれども。そういうインターネットの設定とかを聞く場所がないなあと。聞いたところで、ちゃんと音声ガイドの通りに設定すればうまくいきますよと簡単に言われてしまう。そういうのは少し、もうちょっと詳しく説明してもらえるような場所があればなと、よく思うことがあります。

それと、さっきのPSPに文字を出すソフトですが、あれも、もしかしたら視覚障害者の音声ソフトがあれば文字情報として取得できるのかなと思ったのですが、そのあたりのこともお答えを頂きたいと思います。よろしくお願いします。

石川●

はい、ありがとうございました。何人かの方にまず出していただいてから答えていただくという形にしたいと思います。前のほうにいらっしゃるということですので。

会場●

パソコンボランティアという立場と社会福祉士という立場、その両者からの質問です。

具体的にずっと関わってきて悩んでいるところは、パソコンボランティアをどう捉えたらよいのか、どういうところに足場を置くかということです。

いろいろな立場があって、特にボランティアというところを強調される立場もあると思います。実際具体的な場面では、行政とかかわったところでパソコンボランティアが何らかのことをやっていくという場合が、おそらく多いのではないかと思います。そのような行政と関わらないところであってもいいのです。パソコンボランティアないしはパソコンボランティアグループなり、その前に「NPO」と付けてもいいです。技術論とか、障害者の皆さんとどのように関わって、本来の、満足していただける、ないしはこちらも満足できるようなものを構築できるかということ、横にどういうふうにつながっていくか、いろいろな問題もあります。

以上を背景に、パソコンボランティアは、まず足場をどこに置くのか、それをどのように永続的に続けていくような形にしていくのかについて、各先生方のお考えをお伺いしたいと思います。

石川●

ちょうど今お二人、ユーザーの立場とパソボラの立場からのご意見あるいは質問がありました。他にはいかがでしょう。では前の方、お願いします。

会場●

私は聴覚障害2級で、右は補聴器で左が人工内耳です。中途失聴なので手話は少し。文字で情報を得る形になっています。私はパソコンボランティアを受けたことはないのですけれども、今回は、先ほど国連の障害者権利条約のことがありましたので、やはり私もよく分からないというところで具体的な話を伺えると思って来ました。

2点、質問があります。一つは、今お話を伺って、この権利条約というのが非常に大きな変化をもたらすものであると。その変化に対してやはり抵抗が出てくると思うのですね。今も、条約の条文でありますとか、まだ批准されていないということもあると思うのですが、それに関して、今の段階で私たちがどう考えていけばいいのかということをお伺いしたいと思います。

それからもう一つは、先ほどの方とも重なると思うのですけれども、パソコンボランティアはこの障害者の権利条約によって、あり方が変わってくると思います。具体的には、当事者も主体としてパソコンボランティアを考えていく形になるかと思いますので、そういうことについても、どう考えていったらいいのかということをお聞きしたいと思います。以上です。

石川●

ありがとうございました。他にもいらっしゃいますでしょうか。

会場●

横浜でパソコンボランティアをやっております。質問は二つありまして、一つは、さっき松本さんの話にもありましたように、パソコンボランティアと医療関係の方々との関係をどうとらえているか。例えばメーカーさんなどは、最近はパソコンボランティアなどからいろいろ意見を聞いたり、さまざまな情報を聞いて、ソフトだとか機器を改良・改善したりやっているのですけれども、医療関係者の方と接触することがほとんどなくて。例えば松本さんのお話でもありましたけれども、いろいろ身体の状況などについて、適切なアドバイスは、当然我々医療関係ではないものですからできないわけですね。ところが医療関係の方がパソコンボランティアに入っているというケースはほとんど聞いたことがありません。技術関係の方が入っていることがほとんど多いのですけれども、そういった関係で、なるべく接触を持てるところですね。例えば私、横浜なものですから、神奈リハでパソコンボランティアと現場で実際に患者さんと対応している方々との研修会みたいなものを持てたらいいかなというような気持ちがあります。ですから医療関係の方々がパソコンボランティアに対して今どういう考えなのか、それから今後どうしていくのかというのを一つお聞きしたいです。

もう一つは、ちょっとこれは最近社会的な問題にもなっていますセキュリティの問題ですね。例えば障害者とか高齢者を対象にした事件・事故が大変多く発生しております。どうしてもこういうICTが普及してきますと、やはりインターネットとかそういう問題が入りまして、狙う連中は、別に相手は誰でもいいのですけれども、ある意味、標的になっている部分もありますので、そのあたりについてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

石川●

どうもありがとうございました。4人、これでお話を頂きまして、ちょうど偶然なんですけれども、利用者の方お2人、ボランティアの方お2人ということで、ご意見、ご質問、比較的多岐にわたっておりますけれども、一つはボランティアと利用者との間のコミュニケーションであったり、あるいは医療関係者とボランティアとの間のコミュニケーションであったりといったようなところ、あるいは足場の話などがございました。

それからパソコンボランティアはどこまで何をすればいいのかという、パソコンボランティアの守備範囲や役割がどのあたりなのかというようなこととか、あるいは利用者の方がパソコンボランティアに対するさらなる期待というか、もっとより高いスキルというか技術を提供してほしい、支援してほしいというお話もあったわけですけれども。どうしましょうか。どなたから行きますか。では、畠山先生から、どの質問に対してでも結構ですので。

畠山●

パソコンボランティアをどう考えているかということについて、私なりにお話しします。あるいはパソコンボランティアと違う立場にいる人間は、何が違うのかというと、ごめんなさい、正直に言いまして、あまり深くは考えてないです。ただ共通点は「支援する」と言いますか。もう一方は、職業として、支援者としてやってきたわけです。一方ではパソコンボランティアの方たち、今まで関わってきた方たちは、何か別にご職業があって、なおかついろいろな形があると思うのですけれども、リタイアされた後、自分の何か社会貢献をしたいという方もおられますし、企業でお勤めの若い方で、こんな方もおられたのですね。自分が作っている、開発している製品のユーザーの顔が見えない。で、ぜひ、畠山さんがやっているような、ユーザーの顔が見える関わり、その技術を通しての関わりを体験したいとか、貢献したいという形で、そういう違いははっきりしているのですけれども、支援というところでは、あまり区別はしていなかったのです。ただ先ほどの繰り返しになるのですけれど、中には自分の技術にこだわっておられる方もおられて、そこから抜けきれない場合には途中で関係が絶たれてしまうことがあるのです。私たちの場合には、職業として関わる場合には、途中で脱落するわけにいかないのと、それからチームで動くということがありますので、そのあたりの違いはあるのですけれど、やはりパソコンボランティアの方たちに求めたいのは、医療機関に勤めたり、リハビリセンターにいる人たちといかにキャッチボールをしながら、よりよい支援ができるか。チームアプローチの中に、ぜひパソコンボランティアをしっかり取り込んでいきたい。それは単に利用するということではなくて、パソコンボランティアさんを利用するという気持ちはむしろなくて、お互いが何か望むものに対して、一緒に、そういう場を作っていくというふうに捉えています。以上です。

石川●

河村先生、いかがでしょうか。

河村●

前提的に、今いろいろご質問があったものを伺っての感想的なことを申し上げます。私は、「すごく幅広い、いろいろな場所で参加が必要になるんじゃないですか?」と私の「権利条約の効果」というところで申し上げたのですけれども。つまり、「ユニバーサルデザインがこれから合理的配慮と呼ばれるもののボーダーラインを、どんどん押し上げることができるような、そういう法律的な背景を持てるようになるのではないか。それは実際にそういうことを実現する方法が見つかってないと実現しないのですね。それは条件があるところ、環境があるところで、どんどんどんどん、それをうまく使って、そこでチャンスがある人が声を出し、こういうふうにすると今自分が困難を抱えていることが解決する、より生きやすくなる、やっと他の人と同じになるんだということを、問題を提起して解決法を一緒に探る、そういう機会を、法律を根拠に作ることができるようになるのだと。でもそれは、そのときにコミュニケーションが保障されなければいけないし、発言が保障されないといけない。そこに行くことが保障されないといけない。あらゆる場面に、そういう法律が、職場であれ学校であれ地域であれ交通機関であれ適用されたときには、膨大な行動が必要になって、その行動をすぐそばで支える活動が必要になる。そこにITというものがどうしても必要になってボランティア活動が必然的にたくさん生まれるんじゃないですか?」という問題提起だったんですね。

そこで最初に質問された方の発言を聞いて、私、実は思ったのは、その質問をされた方は、随分もういろいろなことを知ってらっしゃるので、「あ、この人は他の人のボランティアができるな」と私は聞いていて思ったんですよ。「単なるユーザーではなく、もう自分が知っていること、できることを使って、ある意味ではボランティアをできる力を持っておられる方、そういう方たちが、どんどん同じ立場でまだそういうことが分からないで困っている人に手をさしのべる。それがNPOであれ、法人格を持たないボランティアグループであれ、あるいは個人的なボランティアであれ、そういうITの知識を持っている人が無数にいろいろな場で活躍することによって前へ進む、そういう時代が来るんじゃないでしょうか?」というのが私の問題提起です。

そういう意味で言いますと、ボランティアというのは一つは心の持ち方ですよね。寺島先生がおっしゃったみたいに。「報酬を受けることを前提とする・しないに関わらず、これはやろう、やって気分よくなるし、やることに意味がある、だから自分は自発的にやるんだというのがボランティアというものの共通項だとすれば、それはむしろあらゆる人にそういうチャンスがあるし、そういう活動の機会が、法律をバックにできるんじゃないですか?」ということだったんです。

そういう意味で言うと、今ボランティアをコーディネートするような立場で活動しておられる、実はボランティアでやっている方たちも結構いるのですけれども、何を言いたいかというと、誰かが一方的にボランティアによる支援を受ける時代は終わった。それぞれの人が自分が既に持っているもの、あるいは自分もここが不便に感じているのだということでもいいのです。それを自分が行動して、このユニバーサルデザインを「仕組み」として、あるいは「制度」として実現していくためにどういう貢献ができるのか。そのときに人の手助けも必要になる。そのときにお互いにボランタリーに助け合って活動していくということが無数に必要になって。だけどそれを、てんてんばらばらにやっていたって、うまくいかないので、それをどうやってコーディネートし、つないでいくのかということが、これから問われていく。それはITだからこそ、インターネット等のネットワークも使って効率的に進めていく。それをどうやって進めるかが今問われているのかなと思っているということを最初に申し上げたいと思います。

石川●

はい、ありがとうございました。それでは次に三崎先生、お願いします。

三崎●

今の話につながる話を最初にさせていただきたいのですが、ボランティアとかあるいは儲けを考えないでやる行為というのは、なかなか難しいという考え方があって、何が難しいかというと、成功と失敗の見極めが難しいのです。営利企業であれば、成功と失敗は利益がどのぐらい上がるかということで見えるのですけれども、非営利的な組織の場合は難しいんだよということを学ぶことがあります。これは、有名な経営学者のP.F.ドラッカーという人がいますけれども、その方の書いた「非営利組織の経営」かな、ダイヤモンド社から出ているのですが、その本の中に書いてあります。この非営利組織は、学校や教会や病院や、その他ボーイスカウトとか、そういうものも全部含めた組織で経営をどういうふうにするか、組織をどういうふうにするか、成功と失敗をどういうふうに見極めるかといったようなことが書いてあります。非営利組織はなぜ存在するかということも書いてありまして、それは多くの人が営利組織ではないところで生き甲斐を感じているのだ、だからその生き甲斐を与えられるような組織にしていかなければならないという言い方をしています。ちょっと参考になるかもしれませんので、もし興味があれば読んでみてください。

それから細かい質問ですけれども、PSPの音声化についてはまったく私は分からないです。あの中にはネットフロントというブラウザが入っているということは知っているのですが、その先のことについては分かりません。もし分かったら教えていただきたいと思います。ただ、それでふと思い出したのは、以前NHKが開発したのかな、文字放送で、それを音声で読み上げてやるというようなラジオ放送があって、聴覚障害者がキャスターをやって放送したというような実験的な試みがありました。そんなものにつながっていく可能性も、もしかしたらあるかなと、ふと思いました。

それからついでですが、今、要約筆記で使われているIPtalkというソフトウェアは音声化ができます。これはたまたまできるという話ではなくて、最初から音声化できるように作られています。ですから今のような、そこでやられている支援の中に、視覚障害者が入ることは十分可能です。私の知っている範囲でも、企業の中で、視覚障害者と聴覚障害者がいて、会議のときに視覚障害者の方が聴覚障害の方に情報保障をしている事例を三つ知っております。ですから三つあるということは、かなりあるのではないかと思います。そうしたような聴覚障害者への視覚障害者の支援への参加ということもあるのではないかと思っています。

それからもう1個、最後なのですが、医療関係とボランティアとの関係ですが、日本障害者リハビリテーション協会のホームページに箱根病院の事例報告を私が書きました。(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/it2005/kikitori13.html)ここはパソコンボランティアのメンバーが病院に勤務する言語聴覚士、心理療法士、保育士、作業療法士の方たちで、それに外部のエンジニアが入って行っているような会です。ぜひそのページを見ていただくと参考になるかもしれません。よろしくお願いします。以上です。

石川●

ありがとうございました。それでは松本先生、お願いします。

松本●

リハビリテーション自体があまり病院の採算には合わなくて、非営利目的がすごく多いのですね。そういった中で病院は営利を目的にしないとつぶれてしまうようなものが出てくるという逆行した時代に来ています。ただ横浜リハ、神奈川リハの二つのセンターは、県立民営である施設なのですね。そういった意味では、県立で、政策医療として認められているところの作業療法士、理学療法士、エンジニアは、今のところ地域に出て皆さんと接点を持ちやすい状況にあるのですが、民間の病院に勤めている理学療法士、作業療法士と接点を結ぼうとすると、それは収益を得られないものですから、なかなか難しい現状があるのではないかと感じています。

本当に作業療法士、理学療法士、リハのメンバーがIT支援に関わることができた、関わってきたのって、ここ最近だと思っています。最初にエンジニア、メーカーが流入し始めて進んできた分野ですから、それに合わせてパソコンボランティア、養護学校の先生。リハは、一番後に参画した職種じゃないかなと思っています。そういった意味では、すべてのセラピスト、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)が、このIT支援に精通しているかというと、そうではない現状があるのですね。それに関しては当センターの中で私が代表になりまして研修会という形でやっています。それに2回目、昨年から、実際にパソボラさんにも来ていただいて、メーカーの方にも来ていただいて開催したり。お互い相互交通で情報を交換できて、自分たちが持っている視点を皆さんに知っていただくということが大事かなと。「こちらはこういうお手伝いができますよ」みたいな形でやらせていただくといいと思っています。

あとシステムに関してですが、本当に、最初に述べましたように、なかなか業務として対応しているケースは少ないと思うんですね。神奈川であれば、大きなリハセンターが二つありますので、それで県央地区、あと横浜地区という形に分けて、物事を考えてやっているんですけれども、本当に僕たちもパソコンボランティアさんと一緒に支援できるとベストだと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。以上です。

石川●

ありがとうございました。1回ずつお話を、それぞれフロアからと、それから壇上からということで、ひと通り一巡しました。既に核心的な、話が相当熟した内容になってきておりますけれども、これをふまえて、またフロアから引き続きあれば、ご意見あるいは、さらに重ねてご質問等あればお受けしますし、なければ壇上のほうで議論を進めていくことにしたいと思いますけれども。どういう観点でも結構ですし、「福祉の心」ですとか「ホスピタリティ」ですとか、ボランティアとしての、支援についてのものの考え方、哲学、そういったものの話があったり、あるいはスキルの問題があったり、さらには政治参加を支援するという話があったり、かなり広範囲にわたっておりますので、どういう話でも、たぶんこちらの4人の方は対応できるかと思いますので、何かございますか。お願いします。

会場●

今日は、セミナーという形では初めて参加させていただいたのですが、DAISYの研修等で、こういうことを以前から聞いておりました。私たち図書館の音訳者はDAISY図書化をもうやっているのですけれども、その中でやはり、まだテープをお使いになりたいという要望とか、DAISYとテープでの両方をやらなければいけないという、DAISYで録音はしているけれども、実際に利用者サイドで考えると、まだ両方作っていかなければいけないという現状が今あります。そして、たくさん今まで所蔵テープもあるのですけれども、それがDAISY利用者にとって、これからどうやってバックアップしていくかとか、そのテープがもう長く使えない状態でもありますし、その先のことを考えると、ITのボランティアさんとかと連携しての将来というのがあるのかなと思いまして、今回セミナーに参加させていただきました。

そういうことで、ITのパソコンボランティアさんと、私たち音訳者とのコーディネートをしていただくような組織とか、また行政に働きかけなくてはいけないこともいっぱいあるなと、今回参加させていただきまして思いました。河村先生のお話で、これから何もしないでいるのはダメなんだなというのをとても感じましたし、非常に施設面でも大変なところでやっておりますし、いろいろ山積しているなというふうに感じました。また、そういうコーディネートをしていただけるようなところがあったら教えていただきたいと思います。ありがとうございました。

石川●

ありがとうございます。最初の視覚障害者のユーザーの方。

会場●

河村先生にお伺いしたいのですが、先ほどの答えの中で、ユーザーだけではなくてボランティアもできるのではというお答えがあったのですが、一応今考えていることが1個ありまして、私、実は神奈川県の平塚という所に住んでいまして、神奈川リハビリテーションセンターも見学に行かせていただいたこともあって、よく知っているのですけれども、それとは別に湘南地域に、そういう障害者の情報ステーションみたいなものを将来作りたいな、という構想がちょっとあります。まだ何も動き出してはいないのですけれども、ホームページと直接事務所を構えて、直接来て、こういう情報がほしいんだけどどうしたらいいのかという相談を受けられるようなセンターが地域に一つあったほうがいいのではないかと。今まで私がいろいろな所で過ごしてきた経験を、できるだけ生かせるような方法は何かないだろうかということが1点と、もう一つは、今後増えるであろう中途視覚障害の人たちのそういった相談なんかを聞くと、行政に行ってもすぐ盲学校へとか、そういう施設へ行ってくださいということぐらいしか方法がないとか、もっとひどい話になると、そういう相談も一切受け付けてくれないところがあるよとか、ということも今まで聞いてきたので、それではまずいだろうというところで、そういった情報センターを作る必要性があるのかなということを、ちょっと思っているのですけれども、私ができるボランティアというのはそれぐらいなのかなとは思うんですが。他にできることがあるとすれば、パソコンとかで何ができるのだろうと考えても、なかなか思い当たらないんですけれども、そのあたりのところで何か、こういうやり方もあるというようなことがあれば、教えていただきたいですが。

石川●

ありがとうございました。もうひと方いらっしゃるので、発言していただこうと思います。

会場●

今直前に発言された方と関連しているのですけれども、今日のお話を伺いますと、もう既にボランティアと医療関係者と、さまざまなところがつながっているという前提でお話が進んでいるのですけれども、地元で活躍しております者としては、そもそもボランティアと当事者がどうやったらつながったらいいのかというところが昨今の悩みでありまして、情報は個人情報の問題もあり行政あるいは社協からも下りてこないと。必要としている人に必要なボランティアをつなげるという、まさに先ほどの方の情報センターではないですけれども、そういう役割を、例えばリハビリテーションのところであるとか、盲学校、ろう学校の先生方であるとか、そういうところで担っていただくようなことはないのでしょうか。ということを、ちょっと伺いたいと思います。

石川●

はい。ありがとうございました。コーディネートとかマッチマイクとか、ニーズとシーズをつなぎ合わせたり、あるいは専門職とボランティアをつないだり、あるいはメーカーとボランティアをつないだりと、そういう、いろいろなところでいろいろな人たちが一生懸命頑張っているのですけれども、どうもバラバラにやっていて、それがうまくつながらないということを、先ほどからいろいろな方の発言で出てきているように思うのですけれども、これについて、特にDAISYの話もあったので河村さんお願いします。

河村●

それでは、今3人の方のご発言を聞いて、ちょっと思うところを述べさせていただきます。何か分からないことがあったとき、私たちは言葉ですと辞書を引いたり、あるいは事柄ですと百科事典を引いたりします。そして図書館に行くというのが伝統的な物の調べ方。さらに誰か知っていそうな人に聞く。そんなことをやってきていると思うのですね。今もやっていると思うのです。でも最近私などは、もう手紙はほとんど書かないというか書けなくなってきまして、メールが日に500通以上来ると、もうスパムをどうやって切るかにすごい時間を取られて、もうこれ何とかならないのかと思う状態で。その一方で、Googleを非常に私は便利に使っていまして、何か分からないことがあるとウィキペディアかGoogleか、そんなところで手軽にすませてしまうのですね。そのときに思うのは、ちょうど今おっしゃられていたような「こういうことはどうなっているんだろう?」というものを、何か的確につかめるような仕組みというのを、せっかくあるインターネットのネットワークの上で作れないのだろうかということを、いつも私は思うのですね。

だけどなかなかできない理由があるのですね。発信が結構難しいのです。それからGoogleにインデックスを切ってもらって、上位にヒットするように持っていくのも結構難しいですよね。下位にヒットしても、何ページも何ページも行ってからでは誰も見てくれない。つまり、自分が発信したいことと、それを受けたい人とかピタッと結ばれるほど、意味を明らかにしながらネット上で検索するというのは、まだ技術がきちんとできてない。あるいは「ポータル」と言いながら、ポータルサイトがまだ十分に機能していない。でも、いろんなことをやりながら、私はGoogleの検索とかポータルサイトの構築とか、そういうことの先に、結構何とか展望が開けるのではないのかなという期待を持っているのです。

そうすると、「じゃあそのネットにつながってない人はどうなっちゃうの?」という問題が起きるわけですよね。これがデジタル・ディバイドです。そうすると今、デジタル・ディバイドの、切り離されちゃったほうに属していると、他の人たちが前に進むときにどんどんどんどん置いていかれるという状態になるわけですね。ここのところを、実際障害があって困っている、その困っている者がネットから切り離されている、あるいはITから切り離されているというところを何とかつなぐ。そして一番展望がありそうなところで一緒に歩んでいく。そこに何よりも重要な、今の、いわゆる情報社会の中で人権を確保し社会参加をしていくという命綱なのではないかというのが、私の考えです。その命綱を一人ひとりにどうやって保障するのか。そのときに既に制度でできているものがあれば、それを最大限に活用する。特に商品なんかでメーカーがそれを売っている、あるいは売ってくれているものについては、やはりメーカーにきちんと責任を持ってもらう。実は、医療を提供しているところが、自分のところは最大限やって、その上でさらにまだここに穴がある、ここを何とかボランティアグループで埋めてくれないかという発信をしてくれれば、それを、じゃあ自分たちはこういうことができるからやりましょうという、その発信があれば、受信できてつながるということもできるのだと思うのです。ですから、そういうときに、結構私はGoogle検索、あるいは何の検索でもいいです。別にGoogleの回し者ではないので、たまたまいつもGoogleを使っているというだけで、たぶんYahoo!でも、マイクロソフトの何かでも、それからgooというのもありますね。何でもいいですから、検索エンジンというのを、とことん使ってみる。またそこに発信をしていくというチャンネルというのがものすごく大事なのだろうと思います。

出版されて印刷されて手に入るというのは、すごいタイムラグがあります。でも、ネット上で発信したのは、リアルタイムで、もうみんなアクセスできるようになるわけですね。うまくGoogleのほうに更新を通知すれば、他の検索エンジンもそうだと思うのですけれども、早い、短いタイムラグでそこに乗っかっていくチャンスがあるわけです。そういったことを理解し使っていく。それを今一番、情報から阻害されている、コミュニケーションの発信から阻害されている人たちが使えるように支援していくというのが、最も核になる、中心になるITにおける支援の必要がある分野ではないかと。そこがどうやっても、今、メーカーの努力や、あるいは病院の努力や、医療関係者の努力で隙間ができている部分がたくさんありますので、そこを埋めていくのがボランティア活動であり、あるいはそれが少し組織化して、もっと手広くやろうというふうになると、どうしても資産が必要なります。そうなった資産を個人の経営でやろうとすると税制面でも大変なことになっていきます。ですからそういうときにはNPOなり社会福祉法人なり、そういう制度を研究し、うまく使えるものは活用していくと。でもそれは、既に先輩の、NPOでうまくいったところもあれば、辞めてもとの任意団体に戻ったほうがいいみたいと言っているところもあるわけですね。そういったところの経験も、やはりネットを通じてできるだけ早く得ていく。そういうサイクルを、ITを活用することによって成立させるというあたりに、みんなで何かを作り上げていく、一人ひとりの人が、その中で何ができるかと考えていける基盤なんじゃないかなと思います。

石川●

ありがとうございます。今の検索の話を聞いていて、ちょっと私もひと言、それに便乗して言いたくなったのですが、人力検索というのもネット上ではあるんですよね。つまり「はてな」の人力検索。分からないことがあると聞く。自分が分かっていることがあると答えるというふうにして、そこでの検索というのが成り立っていて、答えることがその人に対する評価となって、ポイントとなって貯まっていくというような仕組みがそこにはあって、ひたすら質問する人と、ひたすら答える人となっていかないような工夫というか、それもやっぱり大事なんじゃないかなと。今はもう一方的に、ボランティアをする人とされる人という時代ではないけれども、それを進めていくための仕組みが、ないよりはあったほうが進んでいくのではないかと思うのですね。地域通貨なんかもそうですが、結局一方的に、何か自分ができることはないかと思って、一生懸命考えると出てくるので、考えなければ出てこなかったりすると思うのです。だから自分は障害者だからできないのだという思いこみがあると、もう受ける一方という立場であろうと思いこんでしまって、自分の可能性を閉じてしまうということもあるので。けれども、そういう仕組みがあると、一生懸命考えれば出てくるというものではないかと思うのですね。

メーリングリストでも、一方的に質問に答える人がいるけれども、それは何でも知っているわけじゃなくて、そういうものを一生懸命調べて答えていると。聞いている人も、もしかしたら既に調べる時間を持っているかもしれないけれども、聞いたほうが楽だからという人もいるかもしれないと。それだと、さっき河村さんが言ったような方向には進まないので、それを進めていくという、一人ひとりの意識を高く持つということももちろん大事なのですが、それを進めていくような社会的な仕組みというか工夫も大事ではないかと。

それでは河村さんから、今、ネットを使って、ITを使った一つの提案があったのですが、つまりコーディネートとかそういったことについての提案があったのですが、畠山さんから何か別のご意見はございますか?

畠山●

先ほど、湘南地域で情報ステーションを作りたいというお話の中でパソコンに関するいろいろな相談についてお話がありました。私は主に肢体不自由の方から相談を受けることがあるのですけれども、パソコンのことをとりあえずお答えしながら、もう一方で生活全体の様子をもう一度原点に戻ってお聞きすることがあるのですね。例えばパソコンのご相談なのですが、「電話がかかってきたときに、ご自分で今どうやって出ておられるんですか?」とか、あるいは病院に入院中の方ですと、「ナースコールはどのように押せているんでしょうか?」とか。生活全体を捉えていくという視点がもう一つあると、たぶん、先ほどおっしゃっていた方なんかは、まさにご自分でいろいろ工夫されていることが、もっともっと生かしていけると思うのですね。パソコンボランティアは、実は生活支援ボランティアなのかなという、そこだけは申し上げたかったのですけれども、それはもうお分かりのことですから失礼しました。

石川●

それでは、松本さんは何か、今の件に関連してありますか?

松本●

本当にボランティアと医療職の結びつきというのはないのが不思議なぐらい僕は大いに利用させていただいているのですけれども。うちで受けている相談というのが、患者様個人から受けるというよりは、地域を回っているスタッフ、保健師であったり訪問看護師であったり医師であったりPT、OT、専門職であったり、もちろん学校の先生。ここにパソボラさんも入ると思っています。そこの専門職からの相談に対して、僕たちがちょっとお手伝いをしましょうというのが支援センターという名前ですけれども、そういったおつきあいをさせてもらっていますから、どちらかというと勝手にネットワークができてくるようなものになっています。そういった意味では、今改めてうまく利用させていただいているなと感じています。

もう一つ、重度障害者の意思伝達装置という、一つのスイッチで文字が打てますよという機械があるのですけれども、神奈川県では、その購入申請に関しては、ちょっと審査をやらせていただいているのですね。そういった場合に、物は行政的に支給されるけれども、実際納品されてから、メーカーのサポートが切れると埃をかぶってしまうということが往々にしてあるそうです。そういった意味では、メーカーだけにその責任を負っていただくのではなくて、購入時にはその申請とともに誰がサポートするかというのを、僕のほうであらかじめちょっと聞くようにさせていただいています。それが家族なのかそれとも友達なのかどうなのかというところで。その中にパソボラさんがこの地区にはいないのですかというふうに、なるべくそこの市町村のケースワーカーに聞くようにしています。市町村の方はボランティア登録されている会員の中からパソコンの得意な人を見つけ出していただいて顔合わせをしたり、あと社会福祉協議会からのパソコンボランティア登録というのもあるので、そのあたりの紹介をさせていただいて、なるべく機械を有効に長く使っていただくようなことを行政に代わってやりながら、行政にもそういう、定着していっていただくといいなと思って、今やらせていただいている現状です。

石川●

同じ質問ですが、三崎さん、いかがでしょうか。コーディネートについて。

三崎●

コーディネートですか。直接答えになるかどうか分からないのですが、支援を必要としている人を探すというのは、なかなか難しいですねということを言われたのだと思うのですね。先ほど河村さんが、Googleなどを使ってと言われたのですが、Googleを使っても支援をしてほしい人は検索にヒットしてこないんじゃないかなと思うのです。でも逆にね、情報ボランティアとか、あるいはパソコンボランティアという言葉で検索すると、ボランティアのグループが出てきます。そこの会合へ出ると、そこに支援してほしい人が集まっていますし、支援してほしい人のネットにつながりますので、そういうことをするといいと思うのですね。さっきGoogleで「情報ボランティア」って引きましたら、「情報ボランティアの会(八王子)」というのが出ました。これは私がちょっと関わったのですが、ここは非常に有名なグループで、障害のある人、ない人、入り交じって支援をしているのですが、大学の先生とかエンジニアの方とかが入っていまして、非常にいろいろなことが分かります。さっき言われたインターネットの接続なんかも当然答えていただけるようなところです。それから湘南では「湘南パソコンボランティア」というグループがありますので、そういうところに行ってみると支援を必要とする人に出会えると思います。

石川●

ありがとうございました。ふと見ると時間が3時近くになっておりまして、ちょうどキリがいいかどうかは分かりませんが、いいということにして、ちょっと休憩を入れて、また後半ということにしていきたいと思います。

(休憩)

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