音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

国際セミナー「認知・知的障害者の社会参加と情報技術」

講演1:
「スウェーデンにおける認知・知的障害者の社会参加と情報技術」

スウェーデン・ハンディキャップインスティチュート
ビルギッタ・イェツバリィ

講演をするビルギッタ・イェツバリィ氏

皆さん、おはようございます。皆さんと今日お目にかかれて非常にうれしく、また光栄に思います。

今日は、これまでスウェーデンで何をしてきたかをお話ししたいと思います。子どものためにコンピューターサポートをどのように活用してきたか、児童だけではなく、読み書き困難を持つ児童やティーンエイジャーのためのサポートシステムです。長らくこの分野で活動してきましたけれども、まだまだ道のりは長いです。児童のなかには、母国語で追加的なトレーニングを受けている子もおりますけれども、それでも同年代の子どもに比べて書き言葉によるコミュニケーションはかなり遅れております。そのような読み書き困難を持つ子どもたちに対しては、知識を得るためには代替策が必要になってきます。さらに、学んだことを活用するためには代替策が必要になってきます。

ICT をもとにした標準プログラムに特別なツールを加えて、子どもたちには十分な支援をすることができます。児童たちはこのツールを使って、読み書き困難を持っていても、書くことを学ぶことができます。即ち、それをしない子どもたちに比べて、より書くことができるようになります。読むことに関しても同じです。

スピーチ合成や録音で読み聞かせをすることによって、子どもたちは知識を得、そして良い文学を知ることができます。これらのツールを、よい学習環境で使うことによって、児童たちは書いた文章により多く触れることができます。それがなければ、書いた言葉に関して子どもたちは避けようとします。もちろん、読むといっても耳から読むということになります。耳から聞いて、読むことによって、読み書きのスキルを高めることができます。

教師たちももちろん補完的なツールを使うことになりますが、それだけでは不十分です。包括的なプログラムで、より多くを学べるプログラム、特殊なプログラムを含むような内容にしなければなりません。

これまでの経験によって、音を使った教授法というのが必要だということがわかってきました。それも初期から始めることが重要です。短期記憶、言葉の順番、音の認識、その他の機能で、読み書きスキルにかかわるような問題というのは、既に4歳から5歳、あるいはそれよりももっと小さい頃に発覚してきます。ですから早い時期からそのような活動をするということが重要になります。

遊びを通じて、このような機能を高める活動が、私たちのところでは行われています。それによって、より高度な読み書きをする時期には、子どもにとって読み書きがより簡単に感じられるはずです。小さい子どもには素晴らしい発達のプロジェクトが目の前に待ち構えています。その子どもが、ヤング・アダルト、ティーンエイジャーになったときには、だいたい四万語から五万語の言葉を理解できるようになります。ということは、もし子どもの発達が成長と同じペースで進んだ場合、毎年三千語の言葉、あるいは、毎日10 の新しい言葉を学ぶことになります。

スウェーデンはこれまで長い間、コンピューターを、機能障害を持つ子どもたちのツールとして使ってきました。そのような子どもたちが遊ぶ際の活動として使ってきました。

1992 年に、私どもの研究所、スウェーデン・ハンディキャップ・インスティテュートが、データテックというものを国中に設けました。今では30に増えています。子どものリハビリテーションセンターの隣にだいたいあるのですけれども、一か所だけは、視覚障害を持つ子どものリソースセンターの隣に設けてあります。

データテックがターゲットとしているのは、読み書き以前の機能障害を持つ児童とティーンエイジャーです。そして、親が子どものための遊びの時間を予約します。子どもはその時間に来て、コンピューターで遊びながら、楽しみながら学びます。ビジターはデータテックでコンピューターやソフト、だいたいのOSを借りることができます。そして適切なソフトウェアと教師による指導によって、コンピューターのゲームが子どもの言語の発達を刺激するということができますし、言語的な意識を高めることができます。1997年に特別なプロジェクトが始まりました。このデータテック、五つにおきまして、どのようにしたら私たちが言語的な意識を高め、そして子どもたちの学習への潜在能力を高めることができるかというプロジェクトです。

この方法論についての本が書かれまして、就学前の保育園などで使われるということを目的にしておりました。そして、二つのコンピュータープログラムによって、たとえば伝承童話ですとか、あとは言葉のゲーム、音素や同音韻字というのを使ったゲーム、そして二つ以上の言葉、文章の構造などというものが勉強できるようになっています。両方の方法論を書いた本と、そしてコンピューターのプログラムを使いまして、まず低学年の児童にこれを提供していきます。こういった児童は、まず読み書きをするということを促す、刺激するというニーズがあるわけです。

こういった学習条件を改良することが必要です。特殊なサポートを必要とする子どもたちがいます。ADHD(注意欠陥多動性障害)とかDAMP(注)、そして識字障害といったものをかかえる子どもたちにとってのパイロットプロジェクトをスウェーデン・ハンディキャップ・インスティテュートが始めました。

また、障害者のための団体三つもこれに協力してくれました。このプロジェクトはまず、スクールデータテックと我々が呼んでいるものを六つの市町村に作るというものです。このプロジェクトの資金面ですが、厚生社会労働省が支援してくれまして、またスウェーデン国家遺産基金というところからもお金が出ております。これで三年間プロジェクトを行うことになっております。この六つの市町村も、やはり全体の費用の50%を担うことになっています。

スクールデータテックの重要な仕事の一つというのは、IT、ICTの訓練を先生たちに施すということです。この先生たちの生徒というのが、識字障害あるいはADHD/DAMP というのを抱えているわけです。こういった子どもたちはしばしば読み書きするということに対して非常に困難を抱えております。トレーニングの中には、コンピューターを学習ツールとして使うということ。これによって、多動性障害や集中できない、あるいは読み書きをする、知覚することができないということを補うことができるわけです。

このスクールデータテックはミーティングも開始しておりまして、ソフトウェアとか補完ツールというものを学校関係の当事者の皆さまにデモンストレーションしております。親御さんたちは、当然どのようにしてコンピューターが自分たちの子どもたちを助けることができるのかということに興味を持っておりますので、データテックのオープンハウスというところに招待されます。やはり親御さんが十分な知識を持って情報を得ているということが大事ですし、子どもたちがふさわしい教育をきちんと受けることができるための運動を団結することができるわけです。

また、教師はソフトウェアやこういったツールを短期的に借りるということができるようになっておりまして、各市町村で行われております。これをすれば、このツールが一体どのようにして機能するのか、ということを試すことができるので、試した後に買おうという評価をすることができるわけです。多くのツールは非常に高額でありますし、学校の方ではまずそれを最初に試して使ってみないと、そんなに投資はできないわけです。しかしながら学校の校長先生等がこういったツールを買うという提案に対してノーと言うのはなかなか難しくなってきています。子どもたちにとっていいツールなわけですから。ですから学校に対して短期的ではありますがこういうツールを借りることを許可することによって、スクールデータテックは専門的な、あるいは学習上のサポートも行っているわけです。そしてまた、ソフトウェアや補完的ツールのインストールも手伝っておりますし、また電話によるサポートも子どもたちに提供しております。

それでは、実際にこういったスクールデータテックからどんなものを借りることができるでしょうか。いくつかの例をご紹介したいと思います。

通常のコンピューターを借りることはもちろんできるわけですけれども、さらにスクリーンリーディング、そしてスピーチシンセサイザーも借りることもできます。スピーチシンセサイザーがあれば、そしてスクリーンリーディングプログラムというのをそこにインストールすれば、文章のテキスト、あるいはホームページというのが見られるわけです。生徒たちは、このスクリーンを読んでくれる音声を聞くことができるわけです。

そして、スピーチシンセサイザーには二種類ありまして、一つはコンピューターが生成したスピーチ、そしてもう一つは、予め録音した人間の声を集めたものによってできた一連のライブラリーというものがあります。より自然な音になっております。それから、OCR プログラム付きのスキャナ、光学読取機というのも借りることができます。これは、テキストを解釈したOCRプログラム、そして画像がついておりますので、これをスキャニングすることができるわけです。そして、コンピューターのワープロでこのテキストを後になって編集することができますし、リーディングプログラムにスクリーンを加えれば、コン
ピューターがテキストを読んでくれるということができるわけです。

ハンドスキャナというものもありまして、これはもう既に日本でも市販されていると思いますけれども、非常に簡単なハンドスキャナで、テキストをスキャニングしてくれるわけです。そして声に出して読んでくれる、あるいは他の言葉に変換するということもできます。ハンドスキャナはまた、テキストを本からコンピューターへ移すということもできます。もちろん、スキャナの性能にもよりますけれども。ポケットメモリというものがありまして、これを持っていれば、生徒たちは小さなテープレコーダを持っているようなものですから、クラスでのノートをとるときに、これに録音すればいいわけです。実際にペンで書く必要がないわけです。

DAISYのテープレコーダも、もちろん借りることができます。スクールデータテックにこのツールがありますから、DAISY プレイヤーというDAISY の再生機があります。この装置は録音図書ということで、DAISY のフォーマットになっておりますので、使うことができます。

そしてまた、翻訳ペンというものもあります。このペンはスキャナのペンと似ているのですが、たとえば英語の文章の上に書きますと、スウェーデン語に翻訳される、たとえば日本語に翻訳されるわけです。また、コンピューター用のソフトもあります。これを使えば、簡単にインターネットを翻訳し、発音してくれます。

そしてもちろん、ソフトウェアも借りることができます。スクールデータテックはライブラリーのようなものをもっておりまして、たくさんのいろいろなソフトウェアを揃えております。学校側はそれを借りることができます。

スペルチェックのプログラムなどもありますし、用語集、辞書など、ユーザのニーズに合わせたものがあります。それからコンピュータープログラム。これは先生、そして訓練向けのコンピュータープログラムというのがあります。もし時間がありましたら、いちばん最後に実際にソフトウェアをお見せしたいと思っております。

スクールデータテックというのは、もう始まりまして約一年になるわけですけれども、最初の評価が行われました。六つの市町村においてスクールデータテックが活躍しているわけですけれど、ここでのオペレーションというのが非常に高く評価されております。特にこういったツールを貸し出すという部分に高い評価が加えられております。多くの学校がこうしたツールを借りて、それを利用してサポートサービスをしております。先生への訓練というものもしますし、専門的な質問にも答えることができるわけです。

また、トレーニングはスクールデータテックによっても提供されており、これも評価を受けております。特にICTを教室でどういうふうにして使うかというトレーニングですとか、またこの特別なサポートを必要とする子どもたちを分離しないためにはどうしたらいいかというようなデモンストレーションも行われております。こういった作業は非常に新しいトレーニングにとって多くの得るところがあると先生たちも言っています。

また最近のことですけれども、作業グループが設定され、こういった補完的なツール、コンピュータープログラムをどのように使ったらいいのかの方法論を開発することも考えられております。この作業は2004年までに何らかの指針をつくるという作業なのですけれども、スクールデータテックの作業のための指針ということは、三つの障害者団体の方が参加している実行委員会があり、そこと協力してやっております。このグループの中には、スウェーデンの国家学校教育庁からの代表、スウェーデン特殊教育研究所からの代表も参加しております。もちろんスクールデータテックのスタッフも参加しております。特に私どもはグループのこういった行動の全体の調整役になっているわけです。各スクールデータテックというのは、リファレンスグループがあり、このリファレンスグループの中には、障害者のための団体からの参加者もおりますし、また、スウェーデンの特殊教育研究所からの代表も入っております。

このプロジェクトの三年目、最後の年ですけれども、スウェーデンハンディキャップインスティテュートというのがスクールデータと協力しまして、いくつかの地域における会議を行おうと思っております。この会議の目的は、これまで我々が解説してきたこと、そしてこれまでの我々の経験、スクールデータテックにおける経験を共有していこうということです。長期的にみまして、各市町村が独自のスクールデータテックを作って、識字障害を持った子どもたち、ADHD/DAMPをもった子どもたちがこのようなサポートを得ることができるようになることを期待しているわけです。

まとめになりますけれども、読み書きの障害を抱えた、あるいはADHDを抱えた子どもたちがきちんとした良い環境で教育を受けられるためには、どうしたらいいでしょうか。

まず、彼らが必要なのは、本、そして教材、そしてそれを補うもの、そしてDAISY のフォーマットでのCD-ROM、そして将来はこういったものがウェブで手に入るということが大事です。

また、教材をつくる側、つまり著者や出版社のほうも、ある程度の責任があると思います。彼らの作るものが、識字障害を抱えた子どもたちにもアクセス可能なものであるように設計することが必要です。そしてこれを買う側、つまり先生や学校側がやはり識字障害を持った子どもたちにとってアクセス可能なものであるような教材にしてくれるよう要求する、そうでなければ買わないという態度が必要であります。

学習障害から、我々は視点を、どういうふうにして子どもたちをよりよく教育できるか、その教育能力へと移さなければなりません。必要なら、少なくとも私の国では、教師たちがどのようにしたら彼らが子どもたちをよりよくこういった教材、あるいは新しい方法論を用いて指導できるか、ということに熱心に耳を傾けております。

最後になりましたけれども、私、個人的にも少なくとも一つのスクールデータテックがすべての市町村にできるということを願っております。

と、ここまでお話ししたところで、皆さんにあるソフトウェアをお見せしたいと思います。これは、教師向けに作ったガイドラインです。子どもたち、特にディスレクシアを持った子どもたちを指導する上でどうすればいいのかをまとめたガイドラインです。スウェーデン語でしかないのですけれども、用意してあります。

それからこちらのガイドラインと教育資料ですけれども、読み書きに困難が伴う子どもたちのためのガイドラインということで、また別のものです。英語版になっています。これらの資料は、もちろんこのような紙の状態でも用意していますし、CD-ROMのバージョンもあります。スウェーデンの教材を作っている会社すべてに、このガイドラインは配布されています。そしてここに書いてある勧告、こういったことをお勧めしますということを、いわゆる教材メーカーに理解してもらおうという努力をしています。

これは通常のコンピューターで使えるDAISY のCD-ROM です。これも、無料で必要な方にお配りしています。さらに、ストックホルムでは、ある図書館、ライブラリーで、DAISY 基準に則った翻訳作業をどんどん行っています。ここの図書館が主導して、いろいろな教材などをどんどんDAISYのフォーマットに翻訳している、そういう作業も進んでいます。

こちらは、小さな子どもたち用に使っているソフトウェアです。トレーニングではあるのですが、子どもたちはあたかも自分たちが遊んでいるかのように思える、そういうソフトウェアです。小さな子どもたちの場合、やはりトレーニングを受けている時にそれを楽しいと思えるようでなければいけません。教える側、トレーニングをする側も、それを楽しいものとしなければいけないわけです。

今では、ソフトウェアにもいろいろなものが出ているのですが、これはその一つです。文字を学ぶソフトウェアです。この中に、いろいろな文字が入っています。たとえば、これはパズルのようですよね。いろいろな言葉をこれで作ったり、メモリープレイ、記憶遊びというのもできますし、それから、この文字が入っている言葉を検索することもできます。シンプルな言葉をこれで作ったりすることもできます。

たとえば、「Bという字を探してみよう」と今ナレーションが入りました。ここでもし間違ってしまうと何も起きないのですけれども、B はどこだということで探してみます。そうしますと、普通のキーボード上でB がどこにあるかを見つけていく。そうすると今度はこんな画面がでます。B という文字は、Book、本という単語のなかに入っていますよ、という解説が入ります。さあ、いよいよここでパズルのような作業が始まります。(ブザー音)これは間違い、ここですね。(ゲームのプレイ音)スウェーデンでは、だいたい四歳から五歳くらいの子どもがこういったソフトウェアで学んでいきます。子どものためのコンピュータープレイセンターに、こういった障害を持った子どもたちが来て、無料でこういったソフトウェアを使うことができます。

さらに、記憶遊びもできます。ちょっと難しいんですよ。頭の中できちんと記憶でいているかどうか、その能力を高めるためのゲームです。ADHD/DAMPの障害を持っている子どもたちには、このトレーニングが非常に有効です。最後に、バーン、小屋という言葉がでました。B という文字で始まる言葉を見つけましょう、そしてこの中の一つは、B では始まりません。Box、箱。それから、バンジー、オウムですね。それから、Boy、少年。さて、これらの言葉のなかで、B という字を探してみましょう。B、骨(Bone)という単語のなかのB、クチバシ(Beak)という意味のビークのなかのB、少年(Boy)のなかのB。そして、ラム、小羊(Lamb)という言葉のなかのB。もう一度やってみましょう。私たちの国で開発し、そしてチルドレンズコンピューターセンターで使っているこのソフトウェアなんですけれども、これらは何も、ソフトウェアの専門の会社の人たちが作った、あるいはデザインしたものではありません。むしろ、いわゆる先生ですとか、こういったニーズをよく理解している人たちが開発、デザインをしたということになっています。ということで、このソフトウェアをご紹介したところで、ぜひ皆さんからも質問があればお受けしたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

注:DAMP(Deficit in Attention, Motor control and Perception)は注意欠陥障害と運動知覚障害を併せ持つ

【司会】
質問のある方、ございますでしょうか?
お名前と、もしよろしければ所属をおっしゃっていただければと思います。

【会場:石塚】
文京区から来ました石塚と申します。私は子どものためにアメリカからエデュケーションソフトをたくさん買っていて、このようなセンターがあるといいなと、今すごく思いました。なぜかと言うと、私はお金持ちの親ではありませんので、アメリカからたくさんのエデュケーションソフトを買うことはとても辛いことです。こちらのセンターは、どのくらいの先生や、また一般の親も利用できるのでしょうか。そういうことを教えてください。

【ビルギッタ・イェツバリィ】
はい、もちろんです。
ぜひスウェーデンにもいらして、チルドレンズコンピュータープレイセンターで遊んでみてください。スクールデータテックももちろんオープンにしてあります。ストックホルムには二か所、こういったセンターもございます。北部と南部です。一番いいのはスウェーデンにいらっしゃって、スウェーデン・ハンディキャップ・インスティテュート、私の組織に連絡をとっていただいて、実際にスクールデータテックなどを見学していただけると一番いいんですけれど。

【司会】
他に質問はありますか?

【会場:藤堂】
ディスレクシアのサポートをしております、NPOの藤堂栄子と申します。資金についてうかがいたいんですけれども。こういうセンターを無料で開放する、またソフトを開発なさるとき、資金はどういうふうになさっているのか。先ほどちょっとご説明があったと思いますが、もう少し詳しく教えてください。

【ビルギッタ・イェツバリィ】
小さい子どもたちを対象にしたこのセンターなんですけれども、一方でリハビリテーションセンターという施設もあるんです。こちらはスウェーデンの郡で運営をしています。というとこは、言ってみれば税金で運営をしているということです。一方のスクールデータテックは、まだプロジェクトベースのものです。市町村単位で、約三か年のプロジェクトということでスタートをしています。これをプロジェクトとしてスタートするのは誰のお金でやるのか。これもまた税金なんです。

【司会】
よろしいでしょうか。もう一つくらい質問をお受けできるかと思います。お願いします。

【会場:鈴木】
千葉県の総合教育センターというところからまいりました鈴木と申します。私は仕事では特にそういう環境の学校の先生方にいろいろとお話を伺ったり、また指導する立場におります。今の働きについてはお話を伺ったところですが、コンピューターの進歩に応じて、これらかどんなふうに障害者に対する指導が変わっていくのか、発展していくのか。こういうところをお聞きしたいと思います。日本には5 年後にはユビキタスなんていう社会ができるというふうに言われています。こういう環境のなかでどういう発展があるのか、聞きたいと思います。

【ビルギッタ・イェツバリィ】
日本の教育制度についてはよく存じておりませんので難しいですが、やはり、先生方をよく教育していくということが重要だと思います。スウェーデンではコンピューターは十分にあるんだけれども、そのコンピューターを十分に活用するための教師に対する教育というのが十分でなかったという背景があります。そこで政府から資金を得て、まずは教師たちにコンピューター教育を行うということをしました。まさに教師がまず教育を受ける、トレーニングを受けるということが重要かと思います。また、私の組織で今までいろいろなプロジェクトを行ってまいりましたし、多くの子どもたちと接してきました。そのなかで一つ思っているのは、どんなプロジェクトでもそれを運営する側に当事者、あるいは本当に子どもたちのニーズがわかっている人たちが参加していなければいけないということをしみじみ感じています。資金自体は政府から得て、そしてプロジェクトを進めていくわけですが、やはり、障害を持った子どもたち、あるいは障害の状況をよく理解している人たちがそのプロジェクトにきちんと入り、そのニーズを改めて政府に訴えることによって適切な資金調達ができるのだと思います。

【司会】
最後に質問の方、お願いします。

【ビルギッタ・イェツバリィ】
時間がよろしければぜひどうぞ。

【会場:木村】
先ほど、ソフトを見せていただいたのですが、マウスで使用していると思うんですけれども、マウスを使うことができないお子さんはどのような操作をするのか。そのときにマウスに代わるような周辺機器っていうのはあるんでしょうか?

【ビルギッタ・イェツバリィ】
はい、いろいろあります。スイッチもありますし、それからフレキシボードというものがあって、たとえば目の不自由な子どもも使えるような道具もあります。先週の水曜日にたまたまこんなものもいただきました。これは聴覚障害のある子どもたちが使えるものなのですが、本のような感じです。スウェーデン語でできているのですが、もちろん録音図書のように耳で聞くこともできる。それから手話でどんな内容なのかを理解することもできます。ですからこの場合は、どんな障害を持った子どもたちでも共通のソフトを使えるという例です。それからヘッドマウスというものもあります。それから音声認知をするようなコンピューターがありますから、話しかけて、たとえば「次のファイル」というような指示を出すこともできます。コンピュータープレイセンターでは、このようなさまざまな道具が用意されていますので、異なる障害を持った子どもたちか来ても、親たちは適切な道具を選択して利用することができます。

【司会】
それではビルギッタさんの講演を終わりにしたいと思います。盛大な拍手をお願いしたいと思います