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国際セミナー「認知・知的障害者の社会参加と情報技術」

講演2:
「米国における認知・知的障害者の社会参加と情報技術」

ルイビル大学ケンタッキー自閉症支援センター所長
ジョン・チャールズ・バーク

皆さん、本日はこの場にお招きいただきましてありがとうございます。ここに来ることができて非常に光栄に思います。このセミナーを開催して下さった中央競馬馬主社会福祉財団に感謝申し上げます。ケンタッキーにも競馬がありますので、特にうれしく思います。そしてリハビリテーション協会の皆さま、ご尽力いただいた皆さま、ありがとうございました。

今日私たちが話をしている課題というのは、世界的な課題であります。そして皆さんはこの分野でのリーダーです。変化を起こそうとしている方々です。ですから、その方々の前で、アメリカを代表してお話しできることを非常にうれしく思います。

私はジョンズ・ホプキンスでフルタイムで研究をしておりましたが、そこを辞めて今は自閉症に関する情報を普及する立場におります。私が今所長をしているセンターはトレーニングセンターです。目的は、情報を普及するということです。大学院のコースを通じて情報を普及しています。そして今でもウェブサイト上で情報を普及しています。より多くの人が参加できるためにそのようにしています。実は二人、日本からマスターコースで私のクラスに参加した生徒さんがいます。

さて今日は、戦略で非常にうまくいったものをご紹介したいと思います。自立とコミュニケーションと社会の中への統合、そして社会の中で仕事をしていく上での戦略で、成功したものをご紹介します。

今回のトピックですが、自閉症の範囲と多様性についてご紹介します。子ども、成人の両方です。それぞれの自閉症の個人の、特異かつ個々に違った特徴について理解するということ。三つ目は、社会とコミュニケーションにおいて、自立性、独立性を促すということの重要性、そして選択肢を持つということについて話をしたいと思います。全員が同じ靴を履けるわけではありません。一人ひとりが違ったサイズの靴を履きます。ですから選択肢を持つという話をしたいと思います。

さて、この自閉症という病気を定義したのはカナー先生で、1943 年のことでした。ジョンズ・ホプキンス大学の先生です。私が生まれるずっと前の話です。自閉症とは何かというと、脳の障害です。どこでそれが起きているかはわかりません。少し日本語を学んだので、「どこ」という言葉を使いたかったのですが、どこかと聞かれてもまだわかりません。もっと研究が必要です。ただわかっていることは、コミュニケーションに影響をもたらす障害であるということ。社会的な人間関係、環境に対する対応に支障をきたす障害です。

自閉症のスペクトル、範囲というのは、ここに書いてありますが、小さい子どもにも発症します。一般的に五つのカテゴリーに分かれています。一つが自閉症。二つ目は「NOS」と書いてありますが、Not OtherwiseSpecified という言葉の略です。どういう意味かというと、自閉症の特徴は持っているけれども、すべての自閉症の特徴を備えていないというカテゴリーです。三つ目はアスぺルガー症候群。アメリカではアスぺルガー症候群というのは自閉症のスペクトルの中に入っていると考えられています。四つ目がレッツ症候群。これは今日はあまり話をしません。最後が、児童期における崩壊性の障害です。これらが自閉症というスペクトルの中に入る障害になります。

自閉症とは何か。どうやったらその人が自閉症かどうかわかるかということで、ビデオをお見せしたいと思います。この人たちが自閉症かどうか、皆さんどう思うかおっしゃってみてください。

【ビデオ音声】
私はうまくドライブできるんですよ。

【ジョン・バーク】
これは映画の「レインマン」のシーンです。これ、何だかおわかりですか? 「レインマン」という映画で何年も前に上映されました。これは自閉症についての意識を高めるためです。もちろんすべての子どもたちがレインマンのような自閉症の症状を持っているわけではありません。私たちは、自閉症に関してもっと学ぼうとしていますので、自閉症の人たちを集めて会議をしたりしています。その会議の様子をビデオに撮りましたのでそれをご紹介したいと思います。

【ビデオ音声】
こんにちは。このパネルを聞いてくださってありがとうございます。自閉症に関するパネルです。参加者は全員自閉症です。全員が共有するものがあります。さて、まずパネリストを紹介しましょう。一番右にいるのがポール・マクドネル、その隣がエミリー・ハーグ、真ん中がデイブ・ハムリック。私のすぐ隣がキャシー・グラント。私はジョン・ポール・ボベイです。司会者を務めます。

【ジョン・バーク】
ジョン・ポール・ボベイ、彼は二つ修士号を持っていて、今は大学で障害を持った成人の支援をしています。統合化に努めています。彼は言葉を5歳ぐらいまで話せなかったんです。かんしゃくを起こしていました。彼の母親の話をぜひ皆さんにお聞かせしたいと思います。非常にいい話をしてくれます。次のビデオですが、診断を受けたときの様子をそれぞれの参加者が話しています。それぞれ、若い頃の様子は違っていたようです。

【ビデオ音声】
それでは経験について話をしましょう。私が自閉症と診断されたのはずいぶん昔のようですが、29年くら
い前の話です。二回目に診断されたのが6歳でした。基本的に私は何もなし遂げられないだろうと言われ
たんです。当時、自閉症の定義では、何も貢献できないような人間になってしまうという時代でした。も
ちろんそれは間違いでした。私の教育については後でお話ししましょう。

【ビデオ音声】
私はキャシー・グラントです。私が診断されたのは1994 年で28 歳のときでした。私の母親は妊娠5週目のときに風疹にかかりました。風疹は胎児に影響を与える可能性もあります。4歳のときには知能指数が48 と言われ、決して読み書きや話をすることはできないだろうと言われました。しかし今はこんなにおしゃべりで、誰も私を止めることはできません。

【ジョン・バーク】
IQ48、知能指数48。非常に興味深いと思いませんか?

【ビデオ音声】
私は1983 年に自閉症と診断されました。ものすごく前の話です。ジョン・ポール・ボベイさんはそのずっと前に診断されたわけですけれども。そのとき私は3歳で、まあ同じように周囲はあまり楽観的ではありませんでした。私は高機能自閉症で、高等教育への進学は難しいというふうに診断されたわけです。しかし今や私は順調にカレッジに通っています。来年は3年生になりますし、ゆくゆくは間口を広げて学位を取るつもりでいます。

【ビデオ音声】
彼の興味だけではなくて、自閉症ということにあまりにもとらわれてしまったということがいえると思います。つまり、自閉症の子どもというのはどういう子どもなのか。何か言いたいことはありますか? エミリー。

【ビデオ音声】
私は18 歳のときに高機能自閉症と診断されまして、私、もうすぐ20 歳になるわけですけれど、それまで私は自分のどこかがおかしいと思っていましたけれどもそれが何であるかはわかりませんでした。その名前が知りたかったので、それが何かわかってうれしく思っています。

【ビデオ音声】
じゃ、ポール。

【ビデオ音声】
私は5歳半のときに自閉症であると診断されました。普通の子と自閉症の子との境にある感じだったようです。そして、不運にも16 歳で「レインマン」という映画を見るまで、自分が自閉症であるとは知りませんでした。なぜなら、両親が私の周りで自閉症という言葉を使わないようにアドバイスを受けていたからです。ですから、16 歳まで、自分はただ人より遅れているのだと思っていました。

【ジョン・バーク】
ここでお伝えしたいのは、それぞれの一人ひとりの個人が、こんなに話せるようになるというわけではないんですね、自閉症を抱えていると。とにかくこの五人に参加をしてもらって、もし子どもの頃に学習する機会を与えられれば、これくらいにまでなるんだよということをお示ししたかったわけです。社会的なスキルというのは非常に重要ですね。アメリカ、あるいはその他の国におきましても、なぜ自閉症の人が仕事に就けないかというと、まず社会との関わりができないからということです。ですから我々が協調したいのは、特に社会性というものを教えたいというふうに思っています。それをまず小さい、幼少のときに始めないといけないわけです。では、その社会との関わりというのを子どもたちはどう見ているんでしょうか。もう一回、このパネルを見ていただきたいと思います。これはいずれウェブ上で日本語でもご覧いただけるようにしたいと思っています。

【ビデオ音声】
それでは友人関係について話してくれますか?

【ビデオ音声】
いいですよ。エミリーはもう1年以上私のガールフレンドです。今年の2月に私が住むミネソタに引っ越してきてくれました。お互いとてもうまくいっていて、相性がぴったりのようです。残念なことに、エミリー以前の女性との交際の多くで、私は傷つきました。私は、弱虫とか泣き虫とかいろんな名前で呼ばれました。それでしばらくの間は恐くなってしまい、交際をしたくなかったんです。二人の女性が私と交際をしたいと言ってくれましたけれども、私は交際したいとは思いませんでした。交際が深まるのを恐れたからです。そして私に良くしてれて、あるがままの私を受け入れてくれる人物と幸運にもめぐり会うために、そのような傷を乗り越えなくてはならなかったんです。友情ということに関しては6歳のときにアランという名前の男の子に出会いました。それ以来の親友です。私は学校にいた間ずっと親友がいたことはとてもラッキーだったと思います。ときどき彼が唯一の友人だったこともありました。少なくとも彼が私と仲良くしてくれたただ一人の友人です。ですから彼なしでは高校まで卒業できたかどうかわかりません。というわけで、私は彼に、そしてエミリーにもたくさん借りがあります。

【ビデオ音声】
そうですね。交際に関してはポールが言ったように私たちは付き合っていて、私は死ぬまで一緒にいたい
と思っています。

【ジョン・バーク】
この二人ですが、今はもう結婚しています。昨年結婚しまして、とても幸せです。

そして介入ということですけれども、社会スキル、コミュニケーションスキルというものを一緒にしがちですけれども、コミュニケーションのスキルというのは、まず受容する言語ということを考えなければいけません。つまり、視覚的であれ、または言葉からであれ、あるいは触れるということによる受容であれ、自閉症児というのはここの分野で非常に大きな困難を抱えているわけです。つまり、何をしなさいと言われているのかわからないという問題なわけです。

まず最初の例ですが、小さな子どもです。13 歳、ジョニーと呼ばれている子どもです。先生はジョニーに対して、椅子に座りなさい、そして作業をしなさい、と言います。そしてベルが鳴るまでやりなさいと。そうしたら自由に遊んでいいよ、というふうに言われているんですね。でもそれがわからなかったんです。もう百回くらい先生が言っても、ぜんぜん効果がないわけです。

では我々は何をしたかというと、そのルールを絵に描いたんです。そして先生がそれを指し示して、「ジョニー、まず椅子に座って作業をしなさい」と。「ベルが聞こえたら遊んでいいよ」と。先生がまずもちろん言葉で、それから視覚的にこういったものを見せて説明をしました。そうすると彼は議論を始めたんです。そして絵の上を叩き始めたんです。ということはつまり、何をしたらいいか、少なくともわかったわけです。ですから、手話もたくさん使います。自閉症の子に対してはこれはとてもいい手段なんです。多くの子どもたちがそれによって会話ができるようになるわけです。

そしてアウトプットの装置というものも使っています。これはウェブ上に情報が載っていますが、この訓練センターのウェブを見ていただければと思います。コンピューターのプログラムも使いまして、自閉症の子の教育も行っています。また、一つのインプットのやり方から、さらに他の目的へ対応するということにも使っています。

このビデオをちょっと見てください。これは何を言っているかというと、この子どもは通常はこのスクリーンに対して注意を払わないわけです。しかしこのコンピューターに関しては音、スクリーンに注意を払って学習をしています。それがその例です。

ですからこのような社会における関わりということを教えるためには、ある程度の指針が必要です。まず社会的な言語を使うということ。これは非常に重要です。つまり実際の現状における言葉を使わなければいけないということです。そしてコミュニケーションというものもそれを通じて行われるようにしないといけないわけです。

次に簡単なビデオをお見せします。どのようにして人と関わりを持つのか。人と意思の疎通をするのかということがこれでおわかりいただけるかと思います。

これは小さな男の子で、食べ物をファーストフード店で注文しています。先生は、この絵をベースにしたシステムを使いなさいと言っているんですが、この男の子は先生に対して、普通の注文の仕方をしたいと言っているんです。ただそれが先生に十分に伝わっていなかったわけです。ここで重要なのは、子どもを見て、子どもが何を伝えようとしているのかということを理解するということです。

そして次の例もやはり男の子です。このビデオはいろんな生活の場面でのビデオですが、ここでもやはり受容する言語、それから表現する言語ということに焦点を当ててみます。これです。小さい男の子がいてくるくる回っています。自閉症の子どもによく見られる動作です。社会との関わり、周りとコミュニケーションをとらないで自分だけで遊んでいるわけです。これは、二人のセラピストがいるんですけれども、クリニックですね。言語療法士と作業療法士がいて、後ろの方にお母さんも映っています。ここで話をさせようとしているんです。絵を使いながら話してもらおうとしています。

これはもうちょっと時間が経ってからです。自然な言語ボードというのを使っているんです。ただこれが効果が出ているかどうかはこの時点ではわからないのです。これはもうちょっと時間が経ってから。これはスクリプティングと呼んでいます。一つの手順なんですけれども。絵を見ているわけです。読めないわけですから。でも何をやりなさいと言われているかというと、絵を読みなさいと言っているんです。絵を元に話をしなさいと言われているわけです。アイスクリームはコーンがいいですか、カップがいいですか、と聞いていますね、子どもが。ではこういうカップがあります、それでいいですよ、と言っています。かわいいですよね。

そしてもう一つの例です。今度は女の子です。やはりこれもスクリプティングというのを使用している例なんですけれども。9歳のリアという女の子です。3年生なんですが、5歳まで話ができなかった。いろんなかんしゃくを起こしました。そして社会との関わりが非常に少ないわけですし、認知度も平均以下ということなんですけれども、それから特別教育の必要があるということ、そして自分から何かものを始めるということをほとんどしないという女の子です。

これは私のチームにいるセラピスト。私がやったのではなくショーンというのが彼女に対してセラピーをやりました。たいへんいい仕事をしてくれました。データを見てみると、リサーチをたくさんやっていますけれども、社会との関わり、これは特に教室におけるものですが、ここで、リアとはほとんど会話ができなかったわけですけれども、このスクリプティングというのを使ったのです。スクリプティングというのは、絵とかコミュニケーションを助けるためのプリントといったようなものです。ここで先生とリアが練習をしているわけです。先生が「水泳に行きたいですか?」と聞きます。するとリアは「イエス」と言うんです。そこで先生が「どこに?」。そうするとリアは「私の裏庭で」と言います。ですから、まず練習をするんです。こうやって。これが第一です。

もちろんここで非常に重要なことは……ちょっとお待ちください。スライドを変えてみます。この練習で覚えたことを、他の子どもたちと対応するときにこの女の子、リアが使えるかどうかということなんです。先生に言わせると、いまやソーシャル・バタフライ、本当に社会の中でちょうちょのように人と行き来ができるというほどまでに回復しています。

こちらのグラフを見てみますと、いまやリアのおしゃべり度は他の子どもたちと同じくらいになったということがわかりました。そして今では他の子どもたちよりもさらにおしゃべりになっているようです。

やはりこういった障害を持つ子どもたちに対応するときには、彼らがどんなことをするのが好きなのか、それをまず最初に把握するのが良いということがわかっています。日本で同じような遊びをしているかどうかわからないのですが、「ダック・ダック・ダック・グース」。あひるさん、あひるさん、あひるさん、がちょうさん、というふうに呼んでいく遊びなんですが、日本にも同じようなのがあるんでしょうか。あひるさん、あひるさん、あひるさん、がちょうさんと言われたがちょうさんの子は、そこに座らなきゃいけないとか、順番にそれをやっていくんですけれども。いずれにしてもこういった遊びのなかで子どもたちは社交を学んでいけるわけです。

そしてコミュニケーションを子どもたちに教えるには、まず、その子どもたちに、自分が何か言葉を発すれば、あるいは何かを話せば、それに返事が返ってくるんだということを理解させなければいけません。つまり動機づけが非常に重要なわけです。かんしゃくを起こす子どもがいた場合に、皆さんだったらどう対応するでしょうか。自分の子どもはかんしゃく持ちだという方、手を挙げてください。ありがとうございます。私の子どももずいぶんかんしゃく持ちなんですけど、幸い自閉症ではありません。

ここでご紹介する例は、デニーという9歳の男の子です。やはりこの子もかんしゃく持ち。そして非常に触られるのを嫌がる子どもなんです。それから人にかみついたりすることもあります。デニーは、本当に言葉を発しないですし、たまに口をあけたと思うと非常に不思議な音を発するくらいでした。そして非常に重度な認知障害であるという診断を下され、人と協力し合えるかというとまったくそんなことはできなかった、そういう子どもです。ジョンズ・ホプキンス大学で1989年に撮ったビデオをここでご覧に入れましょう。ちょっと古いですが。

セラピストは、「はいここに来てお座りをして作業をしましょう」と言っています。通常の子どもですとそれができるわけなんですが、ここではこの自閉症の子どもに対して、座ってみようよということで促しているわけです。特にこういった子どもの場合ですと、飛び出して外に行ってしまうということもあり得ますので、セラピストはドアのところに立っています。そこで、このケースの場合、デニーという男の子に「もっと(more)」という言葉、それから「もうおしまい(finish)」という言葉を教えるようにしました。そしてそれを手話でわかるようにしました。これがだいぶ大きな効果を表しました。コミュニケーションの度合いがずっと増えました。またかんしゃくが逆に減りました。先ほどの状態から2か月半たってからデニーはどうなったでしょうか。週2回のセラピーを受けての状況です。

非常に大切なことなんですけれども、やはりこういった子どもたちに選択肢を与えるということは大切です。「これをやりたいかい? それともこっちなのか?」ということを本人に考えさせることが重要です。さあ、デニーがついに座って作業を始めました。かみつきもありません。ちなみに私とこの子のお母さんは、窓の外側にいました。さてその後のデニーはどうなったでしょうか。5年を経て、なんとデニーは学校にちゃんと行っていました。まだ言葉を話すというのは下手でしたが、手話でいろんな感情を表現することができていました。ただ食べ物を盗んでしまう、ロッカーからとっちゃう、その癖はまだ残っていました。でもコミュニティの中で仕事というかお手伝いをするということまでできたわけなんです。コミュニティ、何だと思いますか? ケンタッキー・フライドチキンです。このデニーにとってはすごい動機づけがあったんです。一日がんばって仕事をすれば、お気に入りのケンタッキー、フライドチキンが食べられる。これは彼にとって大きな動機づけだったわけです。

ということで、本当はもっとお話ししたかったんですが、時間切れのようです。本日はこれで終わりにしたいと思います。ご清聴、どうもありがとうございました。

【司会】
それでは質問をお受けしたいと思います。

【会場・大井】
障害者もやはり欲を持って向上することを目指すということが、性格の向上というか人格の向上につながるのでしょうか? その点を聞きたくて。一つだけです。

【ジョン・バーク】
いい質問をありがとうございます。やはり障害がある側、ない側が一緒に協働、コラボレートするべきだと思います。もちろんこれまでいろいろなケースを見てきて、ケンタッキー州での状況もよくわかっているのですが、やはり障害がある側、ない側の間にいろいろな対立があるとうまくいきません。いろいろな政策、施策を作るためには、全員で話し合っていくということ。権利や欲求をきちんと擁護して、障害のある人が発することも必要ですし、また受ける側もそれと同じようなレベルできちんと対応していくことが重要だと思います。他に質問はありますか?

【会場・江原】
自閉症の方の生活支援をしています江原と申します。先ほど、ソーシャル・スキルというのは教えることができるとおっしゃっていたんですけれども、成人されたというか、ある程度年齢のいかれた、たとえば私の施設にいる方はけっこう重度の方なんですが、そういう方でもソーシャル・スキルというものを成人されてからも学んでいくことは可能なのでしょうか?何かそういう実践とかはありますか?

【ジョン・バーク】
いい質問ですね、ありがとうございます。答えは「イエス」です。ただ、どの程度までそれを教えられるか、これは個人によりますし、また実際どのスキルを教えたいかによって変わってくると思います。たとえば2歳ぐらいの子どもにいろいろなソーシャル・スキルを教えたこともありますし、40、50歳の人を相手にしたこともあります。その中で、やはり年代の差というのは大きいということがわかりました。やはりコミュニティベース、そして機能に関するもの、どうやったら仕事ができるのか、その仕事の仕方はどういうものなのか、どうやって人と相互に連絡をするのか、こういったものがやはり大人の自閉症の方には望まれているのではないかと思います。積極的にどうやって対応していくかですね。また子どもの場合でしたら、反対に親を通して, 親御さんに「こういうスキルが必要ですね」ということで、またそれに対応したものを考えていけると思います。

【会場:ブライトマン】
こんにちは。東京大学のジェームズ・ブライトマンです。英語で質問させてください。IQ48 という女性がさっきビデオに出てきました。このIQ なんですが、自閉症の人のIQを計るのに、標準的な計り方でいいのでしょうか。何かより良い試験というのはないのでしょうか。

【ジョン・バーク】
これもいい質問ですね。自閉症の方に対してのIQ試験。これは私もいろいろと問題があるのではないかと思うところがあります。それこそ言葉を使ってIQを計るという場合には、自閉症の方には非常に難しくなりますよね。ですが、その子どもの本当の知能を計るのには、本当はどうしたらいいのか。私自身、心理学者ではないのでわからないんですけれども。行動心理学の専門家に言わせると、この専門家はケネディー・クリガー研究所というジョンズ・ホプキンスの一部で働いている人なんですけれども、彼に言わせると、やはり自閉症の子どもの知能がいったい、本当にはどのくらいなのか。そしてそれがどのくらいかを計るのは重要だけれども、それだけにとらわれるのではなく、あくまでもそれは一つの指針なんだと彼は言うんですね。実際にIQが何であれ、その子どもが実際に生活する機能を持っているか、生活できるのかどうか、これのほうが重要だと私は言われました。

【司会】
それでは午前中はこれで終わりにしたいと思います。ジョンさん、どうもありがとうございました。