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国際セミナー「認知・知的障害者の社会参加と情報技術」

情報
チルドレン・コンピューター・プレイ・センター

ビルギッタ・イェツバリィ
スウェーデン・ハンディキャップ・インスティテュート
2002年

チルドレン・コンピューター・センター

チルドレン・コンピューター・センターの活動は、1992年の春に試験的な活動として始められ、Stockholm(ストックホルム)、Umea、Sundsvall、Uppsala、Orebro、Goteborg、Linkoping及びLundの8つの小児リハビリテーションセンターで集中的に展開された。スウェーデン政府の保健社会問題省は、3年間の試験的な活動期間中、Swedish Inheritance Fund(スウェーデン相続基金財団)を通じて補助金を工面し、最も多くの経費を負担した。また、チルドレン・コンピューター・センターの基金に加えて、州議会、更にあるケースでは民間の社会事業財団からも、場所代や運営費の一部について経済的な支援があった。このプロジェクトの背景には、特別なニーズがある子ども達に、将来役立つコンピューターの使い方を教え、その知識を広めようという考えがあり、これによって、小児リハビリテーションセンターで教育活動を実施しようという目的があった。しかしこの活動では、テストをするとか、教育的治療をするということは問題にしておらず、チルドレン・コンピューター・センターは、「遊ぶ」ことを中心に据えている。すべての児童は発達を遂げるために遊ぶことが必要である。障害のある児童にとっては、コンピューターは遊ぶことを可能にする方法となりうるのだ。遊ぶことを通してこそ、子ども達は認知能力や運動能力を養うことができるといえる。遊びながら子どもは、試し、新しい経験をし、刺激を受け、自主的な選択をし、指導力を養い、自信をつけ、創造力を増し、コミュニケーションの仕方やバランス感覚、運動感覚、集中力を訓練し、失敗の処理の仕方も学ぶのである。障害のある子ども達は、他の子ども達が当然できるような生活体験ができないことが多い。例えば、絵を描いたり、様々なゲームをしたりすることは、重度の障害児にとって不可能であることがある。しかし、特別仕様のコンピューターや、優れたソフトを利用すれば、最も重い障害のある子どもでも遊ぶことができるのである。

チルドレン・コンピューター・センターを利用する子ども達は発達がよく、また学校生活を始める際に有利である。子どもの適応性を考慮し、慎重に準備された問題や良質な教育ソフトを通じて、子どもはプログラムをうまく処理していく。そしてうまくいったことによって更に意欲的になる。チルドレン・コンピューター・センターは、読み書きがまだできない年齢の子ども達に対しても活動を行っており、また、あらゆる障害児が親と一緒にセンターを訪れ、コンピューターの遊び方を学び、各自のニーズにあった特別な仕様を試すことができるよう、障害児を対象としたプログラムも用意している。

この試験的な活動が始まって以来、1,751名の様々な障害を持つ子供達が親と一緒にセンターを訪れた。このうち最も多かったのは、知的障害児で、次に身体障害児が続いている。身体障害児の親達は、センターで行われている活動に対して大変積極的で、我が子が自分自身で遊ぶ姿を初めてみたというケースが多かった。多数の障害者団体も、コンピューター・センターの努力を高く評価しており、自分たちの小児リハビリテーションセンターにも独自のコンピューター・センターを開設することが重要であると考えている。

いくつかのコンピューター・センターでは、移動式のコンピューター・センターを試験的に実施し、成功を収めている。コンピューターとその他の必要な機器をライトバンに積んで、特に北部のいなかの地方の小児リハビリテーションセンターを訪問するのである。これは、大好評で、小さな子どもを持つ親達は、極端な長旅をせずにすむので助かっている。

オープン・ハウス活動も、役に立つ新しいソフトや方法を見ることができるということで、親をはじめ特殊教育に携わる教師や、福祉センターの職員らの好評を得た。

ソフトやコンピューター、その他すべての必要な機器を借り、家庭に持ち帰ることができるシステムは、大変高く評価されている。自分たちの家の落ち着いた静かな環境の中で子ども達と遊ぶことができるというのは、本当に素晴らしい経験である。

多くの親達は、我が子が自分自身で遊ぶことができるようになって喜ぶのを見て、自分達のコンピューターを買う。その際、保健関係の公共機関から、子どもがコンピューターを操作できるようにするために必要な機器や、改造のための費用が出されることもよくある。ますます多くの技術支援センターが、幼い身体障害児にコンピューターを勧めている。コンピューターを受け取った子ども達の中で、今までで最も幼かった例は、わずか3歳半の子どもであった。以前は子どもが読み書きをできるようになるまで待つのが普通だったが、今では絵を描いたりゲームをしたりすることで、読み書きがうまく始められるとされている。チルドレン・コンピューター・センターでは、幼稚園や小学校の教師が活動を指導することが多い。ただし、これらの教師は、コンピューターを学んだ経験がある者である。また、常時セラピストに相談する機会があり、時にはコンピューター技術者にさえも相談できるようになっている。聴覚障害者や視覚障害者、また言語訓練を行っている人を支援するためのプログラムに関する情報も、もちろん利用できる。

このプロジェクトが開始されたとき、すべての職員は完璧な基礎教育を受けたが、更にその後、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートが実施する継続システムによりフォロー・アップ研修も受けている。センターの職員は、読み書きのできない子ども達のための、コンピューターゲーム分野における教育活動について大変熱心に研究を続けてきた。職員達は、他の教育グループ、例えばコンピューター・リソース・センターや教師向けの研修機関による講座にも参加した。

読み書きのできない子ども達のためのソフトの開発もまた非常に広範囲に渡る課題である。数人のコンピューター教師やセラピストが独自のソフトを出しており、特に知的障害児の学校が市場として考えられている。Linkopingのセンターでは、オクトパスと呼ばれる特殊なキーボードが生み出され、ストックホルムでは「Klippanbox」といわれる新しい装置が発表された。これらはどちらもスイッチによるガイダンスでコンピューターを操作できるようにする装置である。コンピューター・センターでは、現在利用できるものが何もない全盲・聾の子ども達のために、今後も引き続き新しい遊び用ソフトのニーズがある。

チルドレン・コンピューター・センターの活動は大きな成功を収めている。マスメディアの関心も大変高いが、多くの地元テレビ局は、「その地域の」センターだけを特集したプログラムを作成している。主要な国営テレビ局でさえも、世界的に有名な児童文学作家であるAstrid Lindgren (アストリッド・リンドグレーン)がストックホルムのセンターの開所式に出席した時に特集を組むなど、活動を部分的に紹介しているにすぎない。しかし、このリンドグレーンの出席により、彼女の児童文学作品のいくつかをCD-ROMで制作する権利がスウェーデンの会社に与えられた。これらのCD-ROMによる図書は、身体障害児が使えるようにコンピューター上でスイッチを使って操作することもできるようになっている。

コンピューター・センターでの活動

児童とその親を対象とした教育活動

1,751名の、様々な障害がある児童及び青年達が親と一緒に、試験的なプロジェクトの一環として行われたチルドレン・コンピューター・センターでの親子教室に参加した。その大部分は男の子で、1,181人を占めた。それぞれの子どもは、平均して5回センターを訪れたが、中には少なくとも20回は訪問したという子ども達もいた。

  • ほとんどの子ども達は5歳から10歳の間であった。
  • 最年少は、1歳になったばかりの幼児だった。
  • 最年長は、25歳であった。
  • 最も多数を占めたのは知的障害者で、それについで身体障害者が多かった。

下に示したのが、障害別の来館者の内訳である。同じ子どもが重複障害のために二つ以上の項目で数えられている場合もある。

知的障害者:860名

  • 軽度348名
  • 中度322名
  • 重度190名

身体障害者:596名

  • 軽度226名
  • 中度166名
  • 重度204名

聴覚障害者:67名

聾・重度の聴覚障害18名

難聴49名

視覚障害者:273名

  • 弱視196名   
  • 重度の視覚障害・全盲77名

自閉症児・青年:181名

言語障害者:202名

その他:(MBD/DAMP、学習障害者):69名

チルドレン・コンピューター・センターでの子ども達

Pelle(ペレ)

Pelleは、利口で気が利く4歳半の少年で、重度の身体障害と、言語障害を持っている。知的能力は高いが、周囲の人達すべてと会話をすることができないので非常に失望しており、不満を持っている。センターに来たとき、Pelleは画面に触れて操作するタイプのソフを使っていたが、すぐに、もっといろいろなソフトを選べるようになるためには、他の方法が必要であることに気づいた。スキャンを使うソフトは、Pelleの身体的な障害のため難しかったが、トラックボールやマウスを使って操作するソフトが入ったコンピューターを借りて家に持ち帰る許可を得た。そして非常に強い意志で何度も何度も練習を重ね、ついにはトラックボールを使ってソフトを最後までやり遂げられるようになった。チルドレン・コンピューター・センターでは、これに大変感銘を受け、Pelleは自分用の個人的な介助用品としてコンピューターを手に入れるべきだと考え、彼の名前をコンピューター・リソース・センターの認可を得るためのリストに登録した。Pelleはチルドレン・コンピューター・センターで短い単語の読み方を学び、数字についての十分な知識を得た。彼は視覚認知能力が高く、学習意欲も十分にあった。そして、簡単な計算や読みのソフトの他に、絵を描いたり記憶ゲームをしたりするソフトも利用していた。

コンピューター・リソース・センターでは、Pelleが幼すぎるのでテストをすることに少し不安を抱いていたが、最終的には、状況をチェックすることを決定した。Pelleはトラックボールを内蔵した自分自身のコンピューターを与えられ、更に、できるだけ簡単に操作ができるよう、アイコン・ボードなどを使った他の操作方法についてもテストを受けた。チルドレン・コンピューター・センターは、就学前のできるだけ早い時期に、このような子ども達を見つけ出すという、非常に重要な役割を負っている。重度の障害児は機器の使い方を学ぶのに、人よりよけいに長い時間が必要なのである。Pelleはセンターからソフトを借りることができ、その上でなお、チルドレン・コンピューター・センターで一緒に遊ぶ子ども達の小さなグループにも所属している。

Anna(アンナ)

Annaは5歳で脊柱損傷の障害がある。この障害を持つ子供達はしばしば知覚にも障害があり、記憶力が悪く、要求に対して過敏に反応することが多い。チルドレン・コンピューター・センターではAnnaははじめ少し警戒していたが、手で押して操作するタイプの簡単なソフトを使い出し、かなり楽しんでいた。Annaは小さなゼリービーンズ型のスイッチでソフトを動かしていたが、お絵かきのプログラムを始めるよう提案されると、もう楽しめなくなってしまい、家に帰りたがった。Annaの母親は、いつも失敗してしまうので家では決して絵を描いたり色を塗ったりしようとしないと説明してくれた。しかし、別のソフトをすすめられてやったあと、ちょうどその日の活動を終えようとしていたときにアシスタントがお絵かきソフトのことを口にしたところ、猫を塗ることができた。その次にAnnaがセンターを訪れたときは、自分からお絵かきソフトをやってみて、特にカラープリンターから本当にすてきな絵が出てきたとき、この上なく喜んでいた。その後Annaは誇らしげにこの絵を保育園に持って行き、友達に見せたそうだ。以後、センターに来たときは絵を続けたがり、更に上級者向けのソフトであるDe Luxe Paintを使って取り組んだ。

成功したことで自信をつけたAnnaは、キーボードまで使いはじめ、非常に短い期間で自分の名前を書けるようになった。チルドレン・コンピューター・センターに5回来た後、Annaの家族はコンピューターを買うことを決心した。Annaは家でコンピューターを使って字を書いたり絵を描いたりしており、そして何よりも素晴らしいことには、画面で見る文字をクレヨンで書き留めるようにもなったのである。コンピューターは、Annaが絵を描いたり色を塗ったりするのをおっくうに思う気持ちを克服するのに役に立ったばかりか、彼女が自分の体を動かしたりその動きをコントロールしたりする訓練の機会をも提供したのだ。

Oskar(オスカー)

Oskarは自閉症児で、初めてセンターに来たときはまだ3歳だった。この時は大変な騒ぎで、母親は彼がすきさえあれば部屋から逃げ出そうとすると確信し、ドアに鍵をかけた。Oskarは10分間のうちに1,2回画面を見たが、それ以外は部屋を走り回り、その後はもうそれ以上そこにいさせることはできなかった。しかし母親は、新しくやってみる価値があることだと考えた。その次の時にもほとんど同じ状態で、ずいぶん走っていたが、前よりはそこにいるのに慣れてきたようだった。しばらくしてから画面の前で母親の膝の上で座ることを自分で納得したようで、母親の助けを借りながら画面を指さしたり押してみたりしていた。アシスタントは1,2個のソフトを選び、Oskarは興味を示し始めた。3回目に来たときには、すばらしい事が起こった。Oskarは自分自身でコンピューターの前のいすに座って画面を押したのである。母親は後に私たちに涙を流しながら、Oskarが自分でいすに座ったのはこれが初めてであると語った。チルドレン・コンピューター・センターに来るたびに、Oskarは進歩を見せ、今ではコンピューターの前に座り、集中して、楽しみながら自分ができるソフトが立ち上がるのを待っており、ソフトを操作したり、何か新しいソフトを探したりもできるようになった。彼の進歩に対する家族の喜びは言葉にできないほどである。

貸し出し事業

コンピューターと必要なソフトを借りられるようになって、親も子供も大変喜んでいる。自分達の家で落ち着いた静かな環境の中、子どもとソフトで遊ぶことができるようになり、多くの親達は自宅にコンピューターを買おうと決心するのである。子どもにだけ必要なその他の機器は、個人向け介助用品として保健関係の公共機関から手に入れられることが多い。いくつかの州議会では、障害がどれだけ重いかをチェックし、それがコンピューターによってどれだけ助けられるかを見ることができれば、一式全部を供給するということまで決議された。チルドレン・コンピューター・センターが貸し出しているコンピューターは、様々なメーカーのものである。一家庭で、一度に一ヶ月間一台のコンピューターを借りることができ、その後は順番待ちリストの最後尾に戻って再び次の機会を待たなければならない。各コンピューターは当然マシンを操作する機器、トラックボール、キーボード、タッチ画面などすべて完備している。また、様々なソフトに関する質問が、特に自分でコンピューターを購入した親から大変多くよせられる。各センターは、膨大な数の教育用ソフトを所有しており、市場に新しく出されるものすべてについて確実に更新するようにしている。しかし残念ながら、資金は限られており、非常に高価なソフトをいつも複数購入するということはできない。

オープン・ハウス事業

すべてのチルドレン・コンピューター・センターは、何らかの形式のオープン・ハウス活動を行っている。たいていは、一ヶ月に一晩行うことにしており、訪れる人の多くは、最新の事情に通じていたいと考えている親達で、自分の子どもに適した新しいソフトは何か無いか見にやって来る。多くの親達にとって、オープン・ハウスの晩にセンターを訪れるのが、チルドレン・コンピューター・センターへの最初の一歩となっている。オープン・ハウスの晩はまた、デイ・センターや小児リハビリテーションセンター、知的障害学級の職員にとっても、センターが何を提供できるのかを知るよい機会である。

チルドレン・コンピューター・センターの企画による講座
チルドレン・コンピューター・センターは幅広い講座を開設している。様々な機種のコンピューター(IBM、マッキントッシュ、アミーガ、エイコーン)について、児童や青年がコンピューターで遊んだり操作したりするのに必要な補助機器に関する講座が企画されてきた。また、いろいろなプログラムについての講座も開かれており、たいていの場合、デイ・センターや小児リハビリテーションセンター、知的障害学級から参加がある。講座に関する広告は、情報技術と障害を扱った、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートのパンフレットに載っている。更に、もっと子どもを支援したいと考え、コンピューターの知識を深めたいと希望する親を対象とした講座も設けられている。一方、ストックホルム地域では、少し違った趣向の講座も企画された。これは、コンピューターを使った遊びについての親の知識を増やそうというもので、親達がチルドレン・コンピューター・センターの職員を指導者として始めた勉強会である。センターを訪れたことのある親子が招待され、大変高い評価を得た。

チルドレン・コンピューター・センターによる特別企画
いくつかのセンターは、子ども達や親達との関わりの中で、様々な形式の活動を試してきた。その一つに、同じ種類の障害を持つ子供達による小グループ活動を始めるということがあった。グループの子ども達はみんな一緒にセンターに来て、コンピューターで遊ぶのである。以前は個別にセンターに来ていた子ども達が、グループ活動を経験するようになって、大変好ましい結果がもたらされた。多くの子ども達は、障害のために他の子どもと遊ぶ経験がほとんどなく、単にコンピューターの順番をときどき待たなければならないというだけでも、彼らにとっては社会性を身につける非常によい訓練となったのである。

重度の身体障害、視覚障害、聴覚障害のある子ども達がグループに分けられ、親やセンターの職員の助けを借りながら、お互いに遊ぶことができるようになった。我が子がコンピューターだけでなく、他の子ども達と遊ぶ姿を見ることは、多くの場合親達にとっても素晴らしい経験であった。なぜなら、親達は、子どもが自立して遊ぶ姿を見るのは初めてだったからである。更に、移民者の身体障害児のグループまでもが、親や特殊学級の教師とともにセンターを訪れ、チルドレン・コンピューター・センターが極めて有望であることを知るという例もあった。

移動コンピューター・センター

チルドレン・コンピューター・センターの、3年間の試行期間中、北部地域を対象に移動コンピューター・センターを派遣するというシステムが2年目に組織された。これはUmeaに拠点を置いたが、このようなシステムが作られた理由は、北部地域では、親子達がたった1時間のセンター訪問のために、時には約250キロメートルもの非常に長い距離を旅する必要があったからである。Umeaのセンターは、大型のライトバンにコンピューターとすべての必要な機器を積み込んで、Boden、Gallivare、Lycksele、そしてSkellefteaの各小児リハビリテーションセンター内に地域センターを設置するため、北に向かって出発した。地元のスタッフはこの訪問について親達に知らせ、数百人の親子がこの機会を利用して、センターが提供するサービスを知ることができた。晩にはオープン・ハウスが行われ、様々なセンターや学校の教師や職員が、センターでどんなことができるのかを見る機会を得た。移動チルドレン・コンピューター・センターはこのプロジェクトの3年目にも続けて行われ、大変人気を集めた。また、その他の地域でも、センターでどんなことができるのかを紹介する活動が行われた。SundsvallはOstersundへ、ストックホルムはGotlandへ、そしてLinkopingはSmalandへ移動センターを派遣した。関心を持つ人々は大変多く、今ではいくつかの小児リハビリテーションセンターでも、独自のチルドレン・コンピューター・センターの運営を始めている。

会議、展示会、そしてその他の講座への参加
チルドレン・コンピューター・センターは、他の機関や団体による講座や会議に数多く参加している。センターは、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートのID-days(補助具協会主催で補助具、自助具を紹介)にも参加し、様々なソフトや操作方法に関するワークショップを開いた。ストックホルムで開かれたECART 2(リハビリテーション・テクノロジーに関する第2回ヨーロッパ会議)には、ストックホルムとLundのセンターから代表が参加し、イングランド、フランス、イスラエルに加え、スカンジナビアの国々から参加者を迎えて、教育講座を開いた。

ストックホルムのチルドレン・コンピューター・センターは会議中、スクリーン・ディスプレイ・ユニットの設置まで行った。いくつかのセンターはまた、読み書きを始める前の子ども達のためのコンピューターによる支援に関する北欧障害者委員会会議にも参加した。この会議にはスカンジナビアの国々から多くの人々が参加し、チルドレン・コンピューター・センターへの関心と注目も大きかった。会議の結果、フィンランドとノルウェイが独自の活動を始め、デンマークでは、どのようにしたら同様な組織を開設できるかを検討する話し合いが始められた。

チルドレン・コンピューター・センターは更にREDAHセンター(障害者を対象にコンピューター技術を使った援助を行う地域センター)による講座にも何度か参加したり、教師やセラピスト、言語治療士を対象とした研修で講演したりした。

様々なセンターの職員も、多くの地元や地域の会議に参加しており、チルドレン・コンピューター・センターが実施している活動について講演している。

説明会や展示会に参加することも、センターの情報活動の重要な一部である。センターは、スウェーデン知的障害者協会とスウェーデン・障害のある児童・青年のための協会とともに開催した2つの大きな会議で展示を行った。Orebroのセンターは1992年のOrebro BO エキシビションの開催地であったし、Linkopingのセンターからは、1994年にNorrkopingで開かれた「子どもの日会議」に代表が出席した。ストックホルムとUppsalasのセンターはともに1994年にSollentunaで開かれた児童ケアの展示会に出展したし、Goteborgのセンターも、1993年にGothenburgで行われた障害者展示会に出展した。試行期間中に作られた8ヶ所のセンターすべてが、新しくチルドレン・コンピューター・センターを設立するために開かれた2つの講座の指導者として手伝いを派遣した。

チルドレン・コンピューター・センター新聞

読み書きのできない子供用の優れた教育ソフトに関する情報を求める声が、あらゆる方面からわき上がり、重度の身体障害がある子ども達や青年達にふさわしい新しいソフトや、現在使っている機器の改造について紹介できるような総合新聞を制作する案が生まれた。「Datatekbladet」と呼ばれるこの新聞は、約1年前に発刊し、年間3,4回発行される。新聞は無料で、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートが印刷、配布している。これまで3回、毎回およそ3,000部が印刷された。この新聞の購読システムは形式化されておらず、主な購読者である親や学校、デイ・センターや障害者団体は、センターやスウェーデン・ハンディキャップインスティチュートから新聞を入手している。

職員

チルドレン・コンピューター・センターは教育センターとして運営されており、コンピューターで遊ぶことが、活動の中心となっている。各センターには多くの場合、幼稚園や小学校の教師がいるが、いずれもコンピューターに関する特別な教育を受けた者である。教師は活動を指導し、そのアシスタントとして、子ども達が適切な機器を使ってコンピューターを利用できるように、責任を持って援助する作業療法士がいる。センターが運営されている間、教師やセラピストは更に引き続き研修を受ける。

また、必要な技術者や言語療法士、そして視覚や聴覚の専門家を雇うための資金も用意された。センターで働くすべての職員は、視覚に障害がある子ども達がコンピューターを使った遊びに関わる場面でどのように反応するかについて、基本的な教育を受けた。いくつかのセンターでは、半日勤務の契約で技術者を雇うことまで行っている。センターの所有者や、州議会、またあるケースでは民間の社会事業財団が、これらの費用について資金援助をしてくれ、雇用責任を引き受けることさえもしてくれた。

チルドレン・コンピューター・センターの設備

各センターは、コンピューター、改造用機器及びソフトを大量に持っている。機種も多様で、IBM、マッキントッシュ、Amiga and Acornのコンピューターが利用されている。コンピューターの進歩は大変早く、センターが開設されたときに購入されたコンピューターは、現在では石器時代のもののようで、新しいソフトを使おうとしてもうまく作動しないし、電力を消費する。もちろん2,3は新しいものも購入したが、センターの経済状態では、大規模な投資は制限されてしまう。

センターを訪れるほとんどの子ども達は、普通のキーボードを使ったり、マウスを操作したりすることができない。そこでコンピューターを操作する代わりの方法を見つけられるかどうかが、その子どもがコンピューターで遊ぶ利益を活用できるかどうかを決定する要素となる。

そのためセンターでは、数多くの様々な障害のある子ども達が使える多種多様の製品にお金をかけてきた。たとえば、手や足、或いは頭でさえも使えるようなたくさんの種類のスイッチや、いろいろなキーボード代用品である。キーボードの代用品としては、コンセプトキーボードや自動読み取りができるオーバーレイがついたインテリキー、Linkopingのセンターで開発された、スイッチで操作するようにデザインされたオクトパスと呼ばれる特殊なキーボードなどを使うことができる。現在、すべてのコンピューターに、もとの画面の上に取り付けられるタッチスクリーンがついており、子ども達は画面に触れて、マウスを使ったときと同じように操作することができる。

すべてのセンターは、読み書きのできない子ども達のためのソフトを多数所有しており、この事業では、教育性の高いソフトだけを利用することをめざして活動が続けられてきた。プロジェクトの期間中、たくさんの新しいソフトが開発されたが、今なお視覚障害児や聴覚障害児のための特別なソフトに対するニーズは大きい。多くのソフトは海外、主にアメリカ合衆国から輸入されている。いくつかのスウェーデンの企業は現在、チルドレン・コンピューター・センターが良質だと評価しているソフトを輸入することに積極的な姿勢を示している。小児リハビリテーションセンターや特殊学級で働く非常に多くの職員が、ソフトの選択を検討するためにセンターを訪れるので、このような人達も輸入ソフトの購入に関心を持つようになった。

親達によるチルドレン・コンピューター・センターの活動の体験
いくつかのセンターは、この試行期間中、活動を改善し、発展させるために、その評価を行った。

この評価は、一連のアンケートと、子ども達の親に直にインタビューすることによって実施された。ほとんどすべての親が、チルドレン・コンピューター・センターの活動について、非官僚的であり、制約だらけの障害児の世界で、お役所主義的でない経験ができたとして、高く評価していた。子どもがセンターを訪問するに当たって何の紹介状も必要なく、ただ電話して予約を取りさえすればよいからだ。しかし、センターを訪問したり、何か機器を借りる機会を得たりするために、長いこと順番を待たなくてはならないことは、非常につらいということだった。

我が子とともに座って、コンピューターを遊び道具として利用することは、新しい経験であり、信じられないほど大きな可能性を広げた。多くの親達は、初めて子どもが自立して遊び、自分で決断をして、友人や兄弟姉妹と同等に遊ぶ姿を見たのである。驚いたことには、多数の父親達が、障害を持つ子供達をセンターに連れてくるのに非常に熱心であった。コンピューターで遊ぶことは、それ自体自分の子どもとコミュニケーションをとるための素晴らしい方法だと分かったのである。多くの父親達は、独自のソフトまで開発し、センターに評価された。これらのソフトの中には大変優れているものも多く、センターを通じて販売され、子どもと親の両方に非常に喜ばれている。

チルドレン・コンピューター・センターの今後の活動

このプロジェクトを始めた8つのコンピューター・センターは、今後も活動を続け、それぞれの地域の小児リハビリテーションセンターに特別部門として統合される予定である。活動を支援する資金の出所は変わるが、その事業は、実質的には試行期間中と同じ程度に続けられるであろう。センターはこれまで非常に好意的に受け入れられており、誰もが、コンピューター・センターは小児リハビリテーションセンターにより多くの知識を提供したと考えている。いくつかの他のグループ、特に言語療法士や教師及び看護士が、センターの職員の援助を受けて、それぞれの専門分野においてコンピューターが役立てられるかどうかを試してみた。そして実際に障害児の訓練にコンピューターをうまく利用し始めている。

1994年の春、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートは、チルドレン・コンピューター・センターが、読み書きができるようになる直前の段階の障害児や障害のある青年達との活動から得た知識を伝えるために、すべての小児リハビリテーションセンターを研究所に招いた。その結果、また、試行期間中に大きな成功を収めた事実から、25の小児リハビリテーションセンターが、自己資金を使って独自のチルドレン・コンピューター・センターを開設するに至った。現在、スウェーデンでは33のチルドレン・コンピューター・センターが運営されている。

スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートの役割
チルドレン・コンピューター・センターのプロジェクトにおけるスウェーデン・ハンディキャップインスティチュートの役割は、活動の組織・調整をはかり、プロジェクトのためのスウェーデン相続基金財団の運営に責任を持つということであった。プロジェクトの期間中、スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートは、職員を対象に基礎的なものから更に進んだ内容に至るまで、総合的な教育研修を企画した。毎年、プロジェクト会議が開かれ、監督部門の部長達や政治家達が、どのようにしたらプロジェクト期間が終了したときに事業をしっかりと確立できるかを議論するために招待された。

スウェーデン・ハンディキャップインスティチュートはまた、各センターから得たすべての情報をまとめ、更に「Datatekbladet」という新聞の発行及び配布を担当した。

チルドレン・コンピューター・プレイ・センター

  • コンピューター・プレイ・センターは、身体障害・言語障害・知的障害・視覚及び聴覚障害のために特別なニーズがある子ども達や青年達のために設立された。

  • コンピューターゲームで遊ぶことは、子どもや青年が遊んで楽しめる一方で、その能力の開発や自立を促す手段でもある。

  • コンピューター・プレイ・センターは、州議会や社会事業財団の援助を受けており、教育的な活動と小児リハビリテーションセンターとしての活動を基盤としている。

  • コンピューター・プレイ・センターは、

    • 上記の児童及び青年のために役立てられるような、コンピューター市場における開発について、最新の情報を得続ける。
    • コンピューター分野の図書や雑誌を所蔵する。
    • 適切なソフトのリストを発行する。
    • 児童や青年、親、職員にアドバイスを提供する。
  • コンピューター・センターでは、

    • 児童及び青年、また親を対象としたコンピューター講座に参加できる。
    • ソフトや機器を短期間借りることができる。(有料)
    • 就学前の子ども達を対象としたグループ活動に参加できる。
    • オープン・ハウス活動に参加できる。
    • 児童、青年、親、教師、リハビリテーション関係の職員を対象としたアドバイスを得ることができる。