音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

発表会「共通言語」としてのICF(WHO 国際生活機能分類)の活用
-医療・介護・福祉の連携のツールとして

開会あいさつ

仲村 英一
(「ICFの活用のあり方に関する研究」主任研究者)
((財)結核予防会 理事長 元厚生省健康政策局長)

 仲村でございます。ご紹介ございましたように、この研究班の班長を務めさせていただいておりますが、研究成果の発表会に多数お運びいただいたことに御礼を申し上げたいと思います。

 このICFは、皆さん方は専門ですのでご承知のことと思いますが、そのルーツをたどりますと、1980年にICIDH(国際障害分類)としてWHOが決めたものですが、当時としては非常に画期的でございまして、まず、機能障害がある、能力障害がある、社会的なハンディキャップを背負うということで、三つのレベルに分けて障害を考えようということでつくったのですが、実はWHO自体もそんなに完成品として思っていたわけではございません。緊急的な意味合いをもつもの、さらにはトライアル、試行的にやってもらおうということで、二十数年前に始めたわけです。

 その間に使ってみたら、いろいろ問題があって、具体的なことは省略いたしますが、いくつか挙げますと、環境の役割というのはあまり考慮されていない。バリアフリーとか、そういう言葉もあまりなかった時代ではありますけれども。またこれは特に上田先生などがおっしゃっているのですが、私もそう思っておりますけれども、当事者の主観的な側面があまり考慮されていない。つくったのは専門家ばかりでつくり、障害者自身の意見とか、考え方が反映されていない。あるいは機能障害が起きて、能力障害になって、それが結果として社会的ハンディキャップを背負という発想は確かに合理的ではありましたけれども、どうもマイナスの方向ばかり決定論的な、一方的な流れではないかという批判があったわけです。

 それを受けて、国連でも国際障害者年などを設定したりしまして、障害者に対する考え方が非常に変わってきたことを受けて、十数年前からICIDHを改訂しようということで作業を進めておりました。日本からも上田先生以下たくさんの方に参加していただいて、意見を言っていただいたりして、今回のICFになったわけです。何より、考え方として前進したというのは、生きることすべてをとらえて生活機能、functioningという言葉でまとめたわけです。あとからこの言葉が入ってきたように私自身は記憶しておりますが、生物レベルの障害が生じても、個人レベルでは能力障害だけではなく、どのような活動を個人の方はしておられるのか。

 さらに、それが社会レベルにいきますと、単なる制約だけではなくて、参加ということで、プラスの面をもっと見るべきではないかということの発想から、こういうふうな生活機能の概念が導入されたわけです。さらに環境因子や個人因子、これはあとで今日の講演の中でも触れられると思いますけれども、そういう面も考慮してICFを考えていこうということになったわけでして、非常に隔世の感があるような感じの内容であるわけです。

 このICFがどのように活用されるかというのは、今後の問題ですけれども、今までは、例えば福祉の方と医療の方、あるいはリハビリテーションの関係者、さらには障害者ご自身、あるいは行政、介護の関係で、ばらばらに言語を使っておられたわけですが、それをICFという「共通言語」に託して情報が流通するようにしていこう、それから客観的に情報が伝達されるようにしていこうということでICFが活用されているわけです。

 現に、先ほどちょっと話がございましたけれども、介護保険の中の報酬についても、例えばリハビリテーションの総合実施計画をつくるときには、ICFの考え方が導入されているのはご承知のことだと思います。また、つい先月末に老人保健事業の見直しに関する検討会が中間報告を出しましたけれども、その中でも、介護予防の考え方の中にこのICFの考え方が入っているといます。これから日本におきましても、この生活機能(functioning)の考え方をぜひ現場に定着させていくということで、こういう会をもたせていただいたわけです。趣旨をご賛同の上、ぜひ今日の機会を生かしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。