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平成17年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した
障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

NPO法人JCI Teleworkers’Network

正式名称:NPO法人ジェーシーアイ テレワーカーズ ネットワーク
所在地:〒779-0303 鳴門市大麻町池谷字丸池29-3
メールアドレス:jcinoko@gray.plala.or.jp
ウェブサイト:http://www.jci-tn.jp/

団体の概要

NPO法人JCI Teleworkers’Networkは、社会参加と就労に対する強い意志を持ちながら「心身の障害、高齢、育児、家族の介護」などの理由で、外出を必要とする社会参加や通勤を伴う就労が困難な方たちに対して、在宅での社会参加と就労(=『テレワーク』)の実現を支援することを目的として、平成11年4月に創設、平成14年1月に特定非営利活動法人として認証された。

活動としては「会員制の就労支援」という形で様々な事業を展開しており、いずれも障害者の経済的・精神的な自立を目指したものである。現在、障害者の「自立」をはかるために、2009年4月を目途に完全に障害者だけで運営する「複合的な経営体」の実現に向け、各部が「独立採算」を基本とした経営(投資・営業活動・資本の回収)を実践するための仕組みづくりに取り組んでいる。今後も更に障害者が就業を通じ、社会参加とヒューマンネットワークの形成を実現させるための新しい就業形態や分業システムの開発に取り組んでいる。

活動の内容

○障害特性に応じたIT利用技術の指導ができる人材の養成

障害者パソコンボランティア養成講座(基礎・応用コース)」の企画・運営。平成14年度から徳島県の委託事業として実施。

○IT講習会・研修会の企画運営と講師派遣・教材作成

講習会の企画運営(教育計画の作成、講習会テキストの作成、講師団の編成・派遣)

・講習会の種別

a.障害者IT技能養成職業訓練講習会
b.地域別障害者IT講習会
c.知的障害者IT講習会
d.他団体主催の障害者IT講習会への講師派遣

○重度の移動障害者(難病者、知的障害者他)を対象とした、訪問指導などの在宅学習支援

訪問指導:受講者の自宅(療護施設を含む)を訪問して指導、年間8~10名約240日、720時間

○リサイクルなどによる情報機器の調達と無償貸し出し

再生パソコンの無償貸与:NPO法人イー・エルダー、日本IBM社、マイクロソフト社が提携して行う「リユースPC寄贈支援プログラム」の再生工場に指定される。

○新しい就労形態の創出と就労機会の提供

・印刷物の作成

スキルに応じた分業で入力・編集し、印刷・製本のみを印刷所に依頼(本年度から印刷・製本も可能)、年間20本

・Webサイトの設計・作成・更新

受注、依頼者との協議による基本設計、Webサイトの作成、開設作業、開設後の維持・更新作業および自主運営までの支援、視覚障害者のためのページも作成

・点字シール貼付の名刺作成
・テープリライト

○パソコン要約筆記者の養成と講演会・講習会などへの派遣

JCIが運営するIT講習会のほか、県・市町村単位のフォーラムや研修会、聴覚障害者のグループ研修などに派遣

○資源リサイクル事業

個人や企業などから回収した古紙を、回収業者に搬入し、回収量計算書を市役所担当課に提出して奨励金を受領し、新聞紙などの処理に難渋している在宅障害者宅の個別回収の最優先で実施している。

○ユニバーサルな社会実現に向けた事業への積極的な参画

チャレンジドが積極的に外に出ることが「社会参加の第一歩」であると自覚し、イベントや社会実験への参画を推進している。

例)ユニバーサル空間創出モデル事業(徳島県)タウンウォッチング参加

歩行空間のサービスレベル確保に関する実験(国土交通省)参加

○移送・介助支援体制の整備

会員同志で、移送・介助を担当する「互助」方式の制度化を推進。

○民間企業との共同経営

「受注・納品」から「共同経営による利益配分」への移行。「徳島WAどっと混む(Webショッピングサイト)」の開設・運営。

対象となる支援利用者

肢体・聴覚・視覚・知的・精神障害・学習障害・高齢者・難病患者他を対象とする。

支援方法

講習会・研修会、訪問支援、電話、メール、その他として就労体験提供によるOJTなど。

会員の構成

会員数200名、うち7割が当事者(肢体・聴覚・視覚・知的・精神障害者、難病者)。

団体の構成員は、すべて正会員であり、200名のうち、140名が障害者他である。IT講習会ほかを通して支援した者が、順次会員となり、指導スタッフ(講師・補助員)として講習会に参加する。

活動資金

委託金、寄付金(定額の入会金、会費は徴収していないが、会員がJCIの提供する仕事で報酬を得た場合、20%を活動資金として事務局に納付する。)

行政・民間との協同

○マイクロソフトUPプログラムへの参加

マイクロソフトは、世界中の人たちの可能性を最大限に引き出すための支援として、ITを活用した社会貢献プログラム「Unlimited Potential」プログラム(以下、UPプログラムとする)を2003年から78ヶ国で展開している。その一環である徳島UPプログラムでは、JCIがマイクロソフトと連携し徳島県の後援を得て、2004年7月にスタート、2007年6月までの3年間で障害者へのIT研修をいっそう充実させるため、徳島市や鳴門市で障害者のIT講習会や指導者を養成する講習会を実施する。遠隔地でも移動式のパソコン教室を開く予定である。

この事業によりマイクロソフトからハードウェア、ソフトウェア、カリキュラム、資金などIT研修のためのサポートを受けて、現在のIT講習会や就労事業の基盤をつくることが可能になった。現在、徳島UPプログラムの指導者養成研修を受講した人たちの多くがUPプログラムのアシスタント講師として活躍しており、IT研修を受けたほとんどの人が印刷物の作成やデータ入力などの就労体験に加わっている。また、視覚障害や重度の移動障害などにより、講習を受けに来られない人のための「訪問講習」や、徳島県内初の難病患者を対象としたパソコン講座(パソコンの仕組みやキーボード打ちなどの基礎から学習)の資金も提供され、彼らの在宅就労への道を開いている。また、難病患者を対象とした講座は期限を設けず、受講生の技術向上に合わせてデータ入力など企業からの受託業務を発注している。

○徳島県との協働

  1. 「徳島県障害者テレワーク促進事業」企画への参画(平成12年度)
  2. 「徳島県障害者テレワーク促進事業」への参加(平成13年度~15年度)
  3. 「障害者パソコンボランティア養成・派遣事業」の受託(平成14年度~15年度)
  4. 「ITが拓く障害者の未来フォーラム」への参画(平成13年度~15年度)
  5. 「徳島県パソコンリサイクル事業」の受託(平成14年度~15年度)
  6. 県の施設の提供(講習会場、活動拠点として)
  7. 就労機会の提供(印刷物・ウェブサイトの製作)

今後の目標

○専門性の高い、IT指導者の養成

「障害種別」と「個」に対応した指導の徹底。

肢体・聴覚・視覚・知的・精神障害、難病者ほかを対象としたIT講習会を運営できる指導者の養成、県外のメンバーを対象としてオンラインでIT指導ができる人材(パートナー)の育成を行う。

○専門性の高い、テレワーカーの育成

知識・技術・職業意識をあわせた、専門性の向上。

画像処理・ネットワーク技術・アプリケーション開発分野のスキル習得の強化。

徳島UPプログラムの独自講習会のメニューに、画像処理など専門性の高い内容を加え、テレワーカーとしての資質の向上を図るとともに、職業意識の向上を目指す。

○受益者の拡大

移動パソコン教室、訪問指導の拡充。

前年度に引き続き、ニーズの掘り起こしを行い、受益者拡大のための広報を積極的に推進する。

○最終目標「税金の払える障害者となって初めて一つの完結をみる」

JCIの会員であり、現在はチャレンジドとして講習会の講師として活動している6名の方に聞き取り調査を実施した。JCIの講習会に参加して一番変化したことは、仲間が増え視野が広がったという答えが共通していた。また、パソコンのスキルを身につけたことによって、将来に対する希望を持つことが出来たという。しかしながら、パソコンの長時間作業が障害を悪化させることもあるという回答もあり、必ずしも個人の長時間の就業に重点を置くのではなく、一人一人の障害にあわせて助け合う「チームによる分業体制」が大きな意義を持ち機能している。

障害者自立支援法の施行によって、障害者の生活が「就労による自立」を基本としたものへと変化がせまられている中で、障害者の特性に応じ得手・不得手をカバーしあう助け合いの分業体制と就業スタイルや就業時間にとらわれない「テレワーク」といった、新しい就業形態を創出しているJCIの取り組みは非常に時代の要請を捉えた取り組みだといえる。

「税金の払える障害者となって初めて一つの完結をみる」という猪子代表の言葉には、臨機応変に障害者一人一人の抱える問題をクリアにしながら、障害者にとって無理のないの真の「自立」(=他人の手を借りずに何でも自分でやる「身辺自立」ではなく、必要なときには手を借り、自分の生き方を選択して暮らす「自立」)を目標とした仕組みつくりに取り組んでいる姿勢が反映されていると感じた。

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