平成17年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した
障害者情報支援に関する調査研究事業報告書
未来の障害者ICT支援
三崎 吉剛
都立中央ろう学校主幹
1.見えない人が聞こえない人の支援をする
先日、「三田パソコン要約筆記勉強会」の集まりに呼ばれました。宮下あけみ氏http://www2u.biglobe.ne.jp/~momo1/sub1/akemizo2.htmによって、全盲で音声を利用してパソコンの画面を読みとっている方が、どのような条件があれば聴覚障害者のためのパソコン要約筆記が可能であるか検討が行われていました。私は、4月まで13年間、都立八王子盲学校で勤務をし、いま都立中央ろう学校にいるということで、視覚障害と聴覚障害の両方の教育に関係しているということで声をかけていただいたのです。
会場には、全盲や弱視の方が数名いらしていました。また聴覚障害者や要約筆記ボランティアの方もいらしていました。4人ひと組のLANで連携して入力している要約筆記の方たちが会場の情報保障をしていました。その反対側に全盲の方がいてやはり要約筆記をしています。
全盲の方が、話している声を聞き取りすばやく入力して表示しているのをみて、聴覚障害の方はずいぶん驚いていらっしゃいました。会場でのディスカッションを聞いていると、要約筆記ソフトであるIPtalk http://iptalk.hp.infoseek.co.jp/は、視覚障害者の方の利用も考えてスクリーンリーダーにのるように作られているそうです。また、ショートカットキーで操作出来るように作られているそうです。作者の方が初めから、ユニバーサルデザインをしていたのです。これには、驚きました。さらに、私が驚いたのは、会場の全盲の方が、職場にいる聴覚障害者のための情報保障でパソコン要約筆記をしているということを話していたことです。
2.車いすの人が見えない人の支援をする
東京の全盲の長谷川貞夫氏が、Videoカメラのついた携帯電話を使って視覚障害者のための支援を試みています。「テレサポート」http://www5d.biglobe.ne.jp/~sptnet/というものです。
そのテレサポートを通して視覚障害者を支援する方の中には重度の肢体不自由者も含まれています。視覚障害者が携帯電話で送るリアルタイムの動画画像を車いすの方が読みとり(例えば自動販売機の動画画像を見て)「2段目の右から2つ目が日本茶です。」というように、音声で説明するということをします。これであれば、家から出るのがなかなか大変な肢体不自由の方も視覚障害者の情報支援が可能になるのです。
3.未来の障害者ICT支援
これらの二つの事例をみると、いままで「支援される側」であった人がICTを使って、支援者になる可能性があることがわかります。
例えば、ろう学校に全盲の方がいらしてパソコン要約筆記のデモをしたら、そこの生徒たちはどんなことを感じるでしょうか。逆に、盲学校の生徒たちが、ビデオカメラつきの携帯電話で遠隔地の肢体不自由者から情報支援をうけることができることを体験したらどんなことを感じるでしょうか。生徒たちが話すこと言葉から、私たち大人はどのような支援の可能性を見いだしていくでしょうか。
このようなことから未来のICT支援が作られていくかも知れません。