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平成17年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した
障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

当事者の立場から
肢体不自由児・者のICT
(情報通信コミュニケーション技術)

―ICT利用に必要な支援―

内山 幸久 日本テレビ放送網株式会社考査部嘱託社員
福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員

在宅20年、頚損C4
mtpengin2@yahoo.co.jp

背景

私が頸髄損傷という障害を負ったのは、既に22年も前のことです。2年弱ほどの入院治療とリハビリ期間を経て、在宅生活は20年、親元を離れて自立生活は10年になります。

頸髄損傷もC4番ともなれば、自分で食事を取ることも、トイレを済ますことも、姿勢を変えたりすることすらできないのですから、障害の程度としては、最重度となるでしょう。実際に行政のサービス区分の中でも、特別障害者というくくりの中に位置しています。私の身体障害者手帳を見ると一種一級とは書いてありますが、特別障害者とは書いていません。障害等級は、一種一級が最高のように感じますが、実際には私より障害の程度がかなり軽い障害者でも一種一級は存在します。つまり、時代の認識に応じて、障害の最重度が変化してきたこと、ITユーザーの障害の重度化も進むことを意味します。

福祉のサービスのメニューは、毎年増えるわけではありませんが、5年~10年の単位で見ると新しいものが存在します。もう20年以上前には、「福祉のあらまし」という冊子を手帳保持者には送付したらしいのですが、私が障害を負ってからはそのような事はありません。情報の入手方法は、その冊子を福祉事務所に電話をかけて送ってもらうか、インターネットの普及した現在では区のホームページからダウンロードするという方法もあります。しかし情報というものは、掲載するだけでは意味がありません。情報が生き生きとする為には、人を介したり人の口で伝わるという事が重要です。障害者間(ピアサポート)の情報は、取り分け有益です。それは、ITにおいても同じでしょう。

私は退院時にまずワープロを1台購入しました。安い買い物ではありませんでしたが、退院前に同レベルの障害を持つ方を紹介してもらい、在宅生活を見学し、使用している方と同じ機種を購入することを決意しました。私のこの事例は、当時機器の種類も少なく、たまたま同じ障害で同程度であったため、そのケーススタディーを、そのままあてはめることで正解でした。が、似ているが違う障害、同じ障害でも程度が違う場合では、そのケーススタディーはそのまま使えない事が多いので念のため。なお二台目のワープロ選びは、福祉制度化された時、一台目を基準として、自分で電話やカタログで情報を収集して決定しました。私がパソコンボランティアと出会ったのはそれから2,3年先のことです。

利用者としてパソコンボランティアに望むこと

パソコンボランティアに望まれる事は、いくつかあると思いますが、ここで列挙しましょ う。

a.パソコンに関する知識を幅広く持つ
b.障害者のパソコン使用例(ケーススタディー)をより多く持つ
c.サービス受給者の事情をよく理解する
d.問題解決するまでの猶予の期間が、短期と長期によってアプローチを変える。
e.長期の場合は相談業務にゆっくり時間をかける
f.サービス受給者の自発性を喚起する

私がパソコンを使うようになったのは、パソコンボランティア(?)のおかげです。まず二台目のワープロを使っているときワープロ通信を勧めてくれた人(現星城大学・畠山卓朗教授)がいて、勧められるまま通信を始めトーコロBBSに参加するようになりました。たった一言の助言ではありましたが私の事情を良く知った的確な一言でした。そしてこのトーコロBBSを経緯に、「ネットワーキング・フォーラムin横浜」に参加することになり、私を支えてくれるネットワーク・コンソーシアム研究会のメンバーと出会うことになりました。

この研究会のメンバーは、私にとってパソコンが本当に必要な物であるか、時間をかけて一緒に悩んでくれました。その時の有難い姿勢を列挙します。

a.家の中に入り込む時は礼儀正しく、でもしっかりと入り込む。
b.帰るときには、家族の空気を読み、あっさりと引きずらず。
c.オンライン会議はマイペースで、オフライン会議は一~二ヶ月にかけて一度開催。
d.目線を同じにして、同じ目標を共有し、同等な立場で、サポート提供をしてくれ、サポートを受ける側にも役割を担わしてくれた事。
e.あせらずにゆっくりと受給者のペースに合わせてくれた事。

以上が、私が、パソコンを使うに至った人々(ボランティア?)との出会いについてですが、最後に、私の経験に基づく知識と方法を紹介します。

IT支援についての「考え」及び「提言」と利用者から見たIT利用の現状と課題

私は、自分自身の経験から、IT支援は以下のように行う事が無難であり、また将来性があると考えます。

a.プラットホームは、マッキントッシュよりWindowsXPの方が一般的で、より多くの支 援者からの協力が得られやすい。
b.なるべく特殊仕様にしない。あまり特殊な仕様になると、特定な支援者しか依頼できな い事になりがち。
c.サポートの甲斐がなくても、受給者が意欲的でなくても、がっかりしない。
d.必ずしも就労につながる物ではない
e.入力場面(方法)は、二、三通りもった方が就職後に役立つ。

以下、私の姿勢別の入力例を参考までに挙げておきます。

室内仕様(電動車椅子)

写真(1可変キーボード台+マウススティック)

写真(2液晶モニタ+VESAフリーマウント)

ベット仕様

写真(1岩田陽商会製フリーマウント+液晶モニタ)

写真(2呼気スイッチ(ECS)+HA-USBでPC操作)

岩田陽商会製フリーマウントの仕組み

写真

外出先仕様

写真(1手動車椅子に取り付けた支持具とSW)

写真(2HA-USB+外出先のPC)