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平成18年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

意見交換

コーディネーター:望月 優 株式会社アメディア 代表取締役

話題提供者:
「『情報保障』というICTボランティア」
三崎 吉剛 東京都立中央ろう学校 主幹
「自立と参加を支えるITとは」
河村 宏 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部長
「障害者支援におけるパソコンボランティアへの期待」
寺島 彰 浦和大学総合福祉学部 教授
コメンテーター:
加納尚明  札幌チャレンジド 理事・事務局長
湯汲 英史  社団法人 精神発達障害指導教育協会 常務理事

望月:皆さん、こんにちは。望月です。後半の意見交換の司会をやらせていただきます。
今ご紹介いただいたように、私はアメディアの会社を経営していますけれども、今日はIT支援セミナーということで、全障害者を対象にしていますので、そういう角度から言うと私は東京中小企業家同友会の障害者委員会の委員長という立場にあります。全部の障害者を対象にしていますので、そちらの心得をもって司会をしたいと思います。

今日、最初にこの意見交換会では3名の方に話題提供としてお話をしていただきます。3名とも、錚々たるメンバーです。一人目は三崎吉剛先生。養護学校、盲学校、聾学校って全部障害者の学校を経験されている、先生の大ベテランです。二人目が河村宏さん。国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所の部長さんですけれども、説明すると長くなるので、とにかくすごい方なんです。私もいろいろお世話になっていてですね、説明するときりがないんですよ。とにかく、視覚障害者の読書環境の恩人です。三人目が寺島彰さん。この方は現在は浦和大学の教授ですけれども、この方もものすごい方で、私は個人的にたいへんお世話になっています。アメディアが始まるときの本当の大恩人ですし、この方は元厚生省の優良官僚でしたからね、要するに政治のことも全部わかっている方なので、こういう3名の方に順次お話をうかがいますので、よろしくお願いします。

それではまず、三崎先生、よろしくお願いします。

話題提供1

「『情報保障』というICTボランティア」
三崎 吉剛 東京都立中央ろう学校 主幹

今紹介していただきました都立中央ろう学校の三崎といいます。先ほど、筑波技術大学のことが、紹介されていました。この大学は昨年の10月に短期大学から四年制大学に変わりました。都立のろう学校では都立中央ろう学校が4月から生徒を迎えて動いています。大阪では「だいせん高等聾学校」という新しい聾学校ができています。このように、聴覚障害教育は大激動の中に入っておりまして、私は今その激動の嵐の中にいるような感じがしております。

まず、中央ろう学校の紹介をして、どんなふうに生徒が勉強しているかという様子をご紹介したいと考えています。先ほど「内発的動機付けということを畠山さんが言われていました、「やる気を起こさせるようにするにはどうしたらいいか」という話で、これは我々教育者にとっては一番大事な課題だと思います。私は数学を教えていますが、数学の勉強でもどうしたら興味・関心を持ってもらうかということが第一のことと考えています。障害者のIT支援をするときに、障害のある方がコミュニケーションに対して強い関心を持って動機付けられて行くためにはどうしたらいいかということで関係すると思いますので、ちょっとそれをお話させていただきます。

教師は内発的動機付けのためには、いろいろな教材での提示の仕方を用意しなければならない。中学生に図形の勉強を教えているのですが、中学3年生は「平行線の性質」があって、「中点連結定理」というのがあります。中点連結定理を「証明をする」という方法で学習させるように教科書は書いてあります。教科書というのは、障害を持っていない方のための一斉授業のために書かれたもので、このままやると障害のある生徒はのってこられない場合があります。また、一般の学校で学力の低い方にとってはちょっと辛いものがある。これは、問題の配列が優しいものから難しいものになっていて、うっかりするとその時間の最後が一番難しい問題をすることになってしまうことなどです。

さて、「証明」というものは、定規とコンパスによる作図という操作を言語化したものであるということがわかれば、作図でそれを置き換えることができます。ただし、作図することによって時間がかかりますから精選する必要はありますが、代替的手段で目標に到達することができる。

もう一つは、定規とコンパスによる作図というのは、実は折り紙と同じなんですね。折り紙をやれば作図ができて、証明ができるということです。たとえば、さっき聞きながらいじったのですが、ここに三角形があります。これは私のレジュメなんですが、自分で三角形に折りました。この三角形を、一番上の頂点を底辺に持ってくるように折るんです。次に、後で見えない方にはお渡ししますので触ってください。各、2つの頂点、他の頂点を底辺のところで半分に折って、長方形の形に変えるんですね。そうすると、これはよく見ると、この小さい左側の三角形の底辺というのは半分になっていて、右側のほうの三角形の底辺も半分になっていて、大きな三角形の底辺とそれから上にある線分とが1:2の関係になっていることが一目瞭然なんですね。これが中点連結定理です。これで子どもたちはわかっちゃうわけですよね。なんでこんなところで数学の話をするのかというと、要するにいろいろな方法を持っているということが大事であることを知っていただきたかったからです。生徒が思いもよらないような方法で提示する。あるいは、畠山さんも言われていましたけれど、その方の生活に密着するような課題とくっつけてやるというようなことをすると、生徒はのってきます。この論理は、おそらく障害者のIT支援でも同じだろうと思います。

さて、ろう学校では、昔は生徒が手話を使うと先生に怒られたらしいんですけど、今はもう手話はどんどん使っていますし、しゃべるし、すごくうるさいんですよ。手話にしろ口形を読むにしろ、人間が人間に対して直接コミュニケーションする方法ですから、一斉に情報を伝えるということがろう学校ではできなかった。つまり、一般の学校の校内放送のようなことができない。私はろう教育にきて非常に疑問に思ったのは、コミュニケーションのことを非常に問題にしていながら、こういった一般の学校にあるような校内放送についてまったく検討されてこなかったということはどういうことなのだろうかなと思いました。筑波技術大学には「見える校内放送」があるんですよね。今回それを中央ろう学校ではつけましたのでご覧に入れます。

大きなプラズマディスプレイが各教室にありこれがLANで結ばれています。ご覧になっているのは、2時間目の授業が終わったことを知らせているものですね。

プラズマディスプレイ上に文字の表示 これは、授業のチャイムの代わりをします。また、お昼休みにはいろんなスポーツ大会の写真をここに出して、クラス全員とか学年全員が一つの話題で食事をすることができるようになります。
電子黒板としてのプラズマディスプレイの利用 次は授業での電子黒板としての活用です。寒冷前線と天気の変化と書いてあるパワーポイントの表示ですね。
先生が手話を使って授業をしている様子 授業中の様子です。理科の先生が、手話を使って声を出して、指を差して授業をしているところですね。
プロジェクターを使った授業の様子 こちらの写真は社会の先生で、この先生はプラズマディスプレイではなくてプロジェクターでやっています。

黒板の前の右側にプロジェクターのスクリーンがあって、ここに社会の地図かなにかが出ています。左側にはプラズマディスプレイがあります。正面にはホワイトボードが置いてあります。生徒はその前に4人くらいいるのですが、馬蹄形というかU字型に生徒がすわっていまして、お互いの口形や手話が読み取れるように並んでいます。ろう学校の中学部の定員は、1クラス6名になります。

ろう学校ではこういうふうに「聞こえない」ということのために情報保障をしています。私はすべての障害というのはコミュニケーションの障害というふうにとらえる視点が必要かなと思っています。つまり、聞こえないということ、それから肢体不自由者であれば書けないということ。あるいはページがめくれなくて本が読めないということ。見えないということ。見づらいということ。それから言語障害があるということ。これはみんなコミュニケーションの障害で、すべての障害をこの視点に立って、それを支援を考える。

これを、人の力で支援するということはもちろん大事なのだけれど、おそらく人だけでは足りない。そこにICTの活用の道がある。さらに、人が助けてはいけない場面だってある。つまり、自立して自分から情報をとるような環境を作るということが生徒にとって、あるいは人々にとっていいわけですから、そういう環境を作るために人間が介在しないようなコミュニケーションの手段を作り出していかなければならないというふうに考えています。

さて、全国各地でやられていて、今銀座で東京都がやっているのですが、小さなICチップを町中いたるところに埋め込んで障害者を助けようという国土交通省の企画があります。小さな携帯電話のようなコミュニケーターに手話を出したり文字を出したり音声を出したりして、障害のある方を支援する。お店で何を売っているかとか、ここがどこであるかということをガイドしようという試みです。点字ブロックの中に埋め込まれたICチップによって電動車椅子を目的地まで安全に運転するということも実験されています。

先日これをやっている方と話したのですが、何をどのように伝えるかということが、まったくわからないという話をしていました。つまり、聴覚障害や視覚障害の方が、いたるところで情報を得られるということは今までなかったわけなので、こういうふうなときに一体どうしたらいいのだろうか、ということが起こってきています。是非こういうところにボランティアの方が関わっていただけたらいいなと思っています。

最後ですが、ちょっと大風呂敷になりますけれども、パソコンボランティアに限らないのですが、技術開発の出発点に障害者の利用を置く。障害者が使えるようにものを開発していく。最終的には、子どもも老人も外国人も使えるような、すべての人の利用を置く。ICタグで人々を導こうというのはこういう視点なので、是非このことに関わっていただきたいと思います。

以上です、終わります。

話題提供2

「自立と参加を支えるITとは」
河村 宏 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部長

最初に、ITによる支援というときには、そもそも障害のある方たちの自立と社会参加を支援するときに、私は4つの視点というのが自分自身にいつも課しているというふうに整理をしております。

1つは、本人の能力をどうやって発展させるのか。既に皆さんは能力をお持ちなので、それをどうやって一緒に見つけるか、ということだと思います。そのご自身の持っている能力から発しないことには何も始まらないと思います。

2番目には、場を作る、あるいは環境を整備するということだと思います。その方がどんなにいろいろなことができても、なにかやろうとすると環境が整っていなければそれを発揮できない。その環境を身近なところでどう作るのか、あるいは場をどう作るのか。

3番目は、そういうご本人と向かい合い、周辺の環境を整備していくということが、特定の個人に最も適した方法をとるということが大前提なのですけれども、であるからこそ、それが他の障害をお持ちの方もそれぞれそのようにしていく。あるいは、高齢の方、社会一般の人たちがそれぞれ最適というものがあるとすれば、最終的にそれらが調和し合って、いわゆる「共に生きる社会」につながっていく、その展望をはっきり持たないと、個別の改善というものが最終的にはバッティングしかねないというふうに思います。具体例を挙げますと、この部分が非常に難しいことなのですけれども、たとえば今視覚障害の方がだんだん高齢になられますと、聴覚にも障害が出てくる可能性がある。さらには、肢体不自不自由になる可能性もありますし、あるいは認知症等ですね、さまざまな加齢に伴う障害というものがあるわけです。これは長生きすればどうしても出てくるものですね。それは長生きしたことの、ある意味ではそれを受け入れながらの、やはりまだ楽しい、豊かな、みんなと一緒に暮らしていく楽しさがそこになければ、長生きする甲斐がないわけですね。ですから私たちは健康とか社会参加とかいろいろなことを活動していきますけれども、最終的にはみんなが長生きして楽しめる老後というものを、自由な時間を思いっきり楽しんでいく、そういった老後を目指したことを、最後に考えながら、今それぞれの分野でチャレンジをしている障害のある人たちと一緒に、そういう社会を作っていくんだという展望を持つことが、非常に大事なのではないかと考えるわけです。従いまして3番目の視点として、共生社会ということは欠かせないというふうに思っております。

そして4番目ですが、これは実は、あらゆるレベルにおいてご本人の積極的な参加というものがないことには、何も始まらないわけです。つまり、それぞれの場面において、まずご自分の能力を見つけ発展させるというところは、本当にご本人が動かないことには何もできません。環境を作る。これは誰かがやってくれるのを待っているだけでは、環境はできないんですね。一緒に何らかの形で、自分はここに不自由をしている、ここが不便だ、これをなんとかしたい、ということを一緒に考えていただいて、それを表していただかないと、何も始まりません。3番目の共生社会というのは、今障害をお持ちの方がここが不便である、ということを明らかにする。それを解決していく。その解決を連結させることによって社会そのものを発展させるデザイナーになっていただく。つまり、言葉の上で「参加」というのは簡単ですけれども、本当の参加というのは積極的に社会をより暮らしやすくしていく、より充実した人生をそこで展望していく、積極的な働き手の一人として参加していただく。そうしなければ本当の共生社会もできないと思います。つまり、あらゆる場面で本人が積極的に参加していくということが重要だと思います。

ITというキーワードの会ですので、ではITはそこで何をするのか、ということになるかと思います。 先ほど、三崎先生が言われましたように、コミュニケーションを保障していく。これはITの最も重要な役割の一つだと思います。私はそれにもう一つ、知識と文化を共有していくというふうに一つ付け加えさせていただきたいと思います。何故かといいますと、やはり記録されたもの、あるいは、これは自分の頭の外に記憶されたもの、自分の頭の中に記憶されたもの、あるいは身体で覚えているもの、あらゆるものを通して、記録された知識あるいは記録された文化、それを最大限に活用するということが、先ほどの積極的な、自ら一緒にいろんなことにチャレンジしていく、そして社会参加していくということに不可欠だからです。ですから、その意味で、記録をしていき、必要なときにその記録された知識・文化が取り出せて、一緒に楽しめる。これが非常に重要だと思います。

そのようにITというのはコミュニケーションと記録において決定的な役割を果たします。そういうふうに考えますと、先ほどの畠山先生が的確に日常の生活から社会参加までということでまとめてくださったのですが、その全体を通じてITはコミュニケーションと知識、および文化の共有において決定的な役割を果たさなければいけないだろう。そういう形でIT支援というのが個別の一人一人と向かい合うところから始まって、視座をともにしながら共感を持って、一緒にものを見ていく。そしてちょっと距離を置いて、先ほども畠山先生がおっしゃったように、観察し、客観的に分析をして必要な助言、あるいはそこから得られた知見を得ていく。そして最終的には一人一人が自分自身に対する、障害をお持ちの方のイメージをどんどんよくしていく。つまり自分はこれができるんだ、あれも一緒にできるんだ、ということで世界を一緒に広げていく。そういう活動の中でITが活用されるということがITによる支援というものの一番重要な点ではないかと思います。

ちょっと抽象的なことになってしまいましたけれど、さらに具体的なことを一言だけ申し上げます。
盲聾者という言葉と、聾盲者という言葉がございます。医学的にみると何も違いません。見えなくて聞こえない方のことです。ところが、聾ベースの聾盲者と呼ばれる方たちは、手話、目で見る手話から始まって、目が見えなくなったときには指で触る手話、触手話というものに主として依存してコミュニケーションすると言われています。逆に盲聾者と呼ばれる方たちは、聴覚に依存し、あるいは点字に依存するということで、暮らしてこられて、そこで聴覚を失われたときには最後に点字が残る、ということになります。ともに触覚が残るわけです。

この点字による触覚のコミュニケーションと、指、触手話によるコミュニケーションの間には、やはりまだ深い断絶があります。同じ医学的な障害でありながら、まったく違う文化、違うコミュニケーションに生きるというのが、盲聾者と聾盲者の壁ということになります。私たちは、こういった問題をどうやったら解決できるのかということを考えて日常のIT支援を深めていくということが必要だと思います。
つまり、ビジョンが必要なのだと思います。そのビジョンというのは、最終的にはいろいろな形があります。点字、書かれた文字によるコミュニケーションを触手話に変換するということは、技術的には可能です。ですから、技術的には可能なのですけれども、隠れた文字体系による概念把握と、もともと手話という同時に多チャンネルで視覚的な情報が出てくる概念把握とでは、かなりそこに違いがあるというふうに言われております。ではどうやったら解決できるのか。おそらくマルチメディアを、初期の段階から活用していく。まだ2つくらいの、触覚プラス聴覚、あるいは触覚プラス視覚、この両方が使えるときに、マルチメディアとしての概念形成を、あるいはサポートを充実させていく。これを特に就学以前の言語獲得段階くらいから併用していくということに将来があるのではないか、ということを漠然と考えておりますけども、そのあたり、これから皆さんと一緒に、いろんな現実に障害をお持ちの方たちとともに歩みながら、最終的にはともに暮らす社会づくりに歩んでいきたいと考えているところであります。

話題提供3

「障害者支援におけるパソコンボランティアへの期待」
寺島 彰    浦和大学総合福祉学部 教授

ご紹介ありがとうございました、寺島です。 今ご紹介いただきましたように、私は浦和大学というところで教員をやっているのですけれども、研究テーマが2つありまして、1つは障害者福祉政策で、もう1つは福祉機器を活用したソーシャルワークというのを研究しております。この後者に関係あることなのですけれども、先ほどご紹介いただきましたように、自分で視覚障害者用のワープロのNRCD-Penというのを作りましたが、技術者の方に障害者のことを伝えるというのはなかなか大変だというのがわかりまして、時間をかけてもなかなか伝わらないくらいなら自分で開発してしまったほうが早いと思いまして作成しました。それ以来この業界に関わらせてもらっています。それというのも、いったん何かを開発したものを、開発しますとそのサポートがずっと続くんです。そのお蔭でずっとボランティアをさせていただいております。ボランティアで企業に土曜日に行って、誰もいない中で利用者と2人でカチカチカチカチとイントラネットにいかに接続するかみたいなそういうボランティアをやっていたりして、なかなか面白い経験をさせていただいております。

本日は障害者のICT支援の今後についてお話したいと思います。私が勤め始めたころは、視覚障害者の方は盲人カナタイプでしか文字を打てなかったんです。要はカナしか書けなかった。しかも読み返すことができませんでした。しかし、今は音声ワープロを使って事務もばりばりこなせるようになっています。そういうICTの有効性は、もう既にここにおられる方は十分ご理解いただいていると思うのですが、有効であるにも関わらず、支援者が不足しているという状況にあります。たとえば、金沢さんが先ほど言われていましたように、完全にブラインドタッチでパソコンを操作できる晴眼の指導者は、たぶん日本には1人か2人くらいしかいないと思うのですけれども、でもそれができないと本当は十分教えられないはずですよね。そういった支援者の不足というのがあります。
一方でボランティア活動は活発なんです。日本障害者リハビリテーション協会でパソコンボランティアの指導者養成等やっているわけですけれども、全国にすごく活動的なボランティアのグループがたくさんあります。今日発表していただきます札幌チャレンジドの方などのように自前の貸し出し用の機器を用意されているというすごいボランティアがあったりするわけです。

一方で、公的機関の不十分な支援体制があります。ICTの指導などは、本来公的機関でやるべきであると思いますが、予算削減のためとてもやれるような状況にはない。そのためできるだけ市場化をしようとしているわけです。しかし、非常に長く訓練を必要とする、たとえば今河村先生が言われておりました盲ろう者の方ですと、パソコンを指導するのにたぶん2年くらいは軽くかかるんじゃないかと思いますが、そのような指導まで市場で提供できるかといと、きっとできないと思うんですね。そういった部分はやはりある程度ボランティアの方たちが支援してあげないとしょうがないのではないかと思います。
ニーズに合えばボランティアとして若干行政機関を補完するような役割を果たしてもいいのではないかと考えることもできます。ボランティアに対するいろいろな期待があるのではないかと思います。
今後のボランティアへの期待についていえば、現状を見ますと全国的な広がりが十分ではないとうことがあります。札幌、東京、福岡、北九州など、大都市にはすごくいいボランティア団体がある。そもそもこのセミナーなどは、研究の一環として実施しているわけですけれども、日本障害者リハビリテーション協会が実施している研究により全国に非常に多くのボランティアの方が活動されているのがわかりました。でも地方都市は十分やれていないわけです。病院は出たけれどどうしていいかわからない。ずっと自宅にいるという障害のある方もやはりおられました。そういうことを考えると、全国的な広がりがいるのではないかと思います。

もう一つは一定の質の確保がいるのではないかということです。ボランティアですので質は問わないかというとそうでもなくて、やはり先ほどお話の中に出ていましたように、医療的な知識などがないとボランティアをやって怪我をさせてしまうとか、病気を重くしてしまうということもあります。やはり一定の質の確保をする必要があろうと思います。
また高度なボランティアもあってもいいのではないかと思います。私たちが非常にほしいと思っているのは、必要に応じてハードとかソフトをすぐ作ってくれるような人がいないだろうかということです。これを市場に求めるのはたぶん無理だと思うんですね。なぜかと言いますと、そんなことができる人ならきっと一般の企業でばりばり働けるんだと思います。そういう人を雇うとすると、たとえば年間2,000万円とか3,000万円とか必要なると思うんですね。そうすると、そういう方でも余暇を生かしてボランティアとして活躍いただける可能性もあるのではないかと思います。

それから、これは職業センターなどと共同で支援していただきたいと思うのですが、職業的な支援を可能にする技術や要員を提供できるシステムがないのです。私がボランティアとして企業に行って土曜日に利用者の技術支援をしているような状態は異常でして、そういったことはやはり職業センターで、もっと高度なジョブコーチを作ればどうかと思います。

それから信頼性の高い支援を提供できるシステムが必要です。そういうものもボランティアであっても構わないのではないかと思います。 あとはあんまり時間もありませんので、継続的に支援できるシステムも必要なのではないかと思います。

最後に、地域での連携が一番大切ではないかと思います。多様なボランティアの方がボランティアをしたいと思っているのに、それを受け入れるシステムが十分にない。企業、公的機関であるとか、ボランティアが連携をとってその地域の障害のある方々の支援をできないのだろうか。たとえば、病院から切れてしまわないように、病院にいるときからボランティアの人が参加するとか、それを公的機関が支援するとか、さらに、必要に応じて企業が採算に乗る部分を負担するとか、そういうふうな連携ができないのだろうかと考えております。
時間がないので端折ってしまいますけれども、こういった役割分担等を地域で行えないかというふうなことを考えております。

以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

望月:ありがとうございました。
この会はもちろんIT支援、ITによる障害者の支援なのですけれども、元来ね、ボランティアというところにフォーカスしたい会なんですよね。そこで最後に寺島さんがそのボランティアの視点からいろいろ発表してくれました。