平成18年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した障害者情報支援に関する調査研究事業報告書
埼玉県障害者ITサポートセンターの事業とパソコンサポートボランティア活動の概要
-よりよいパソコンボランティア活動推進にむけて-
増 田 隆
埼玉県障害者ITサポートセンター
埼玉県障害者ITサポートセンター(以下「ITSC」と略す)の推進員として、埼玉県から受託した事業を運営して、3周年を迎えようとしております。より良いサポートを目指して努力を重ねておりますが、その現状と課題について報告させていただきます。
1.埼玉県障害者ITサポートセンター(以下「ITSC」と略す)の事業概要
- 2004年5月、埼玉県福祉部より、埼玉県障害者協議会(県内障害者団体連合会)・社会参加推進センターが受託して、さいたま市浦和区の埼玉県障害者交流センター内に、常勤1名体制で発足。
- 事業内容は、埼玉県策定の「障害者ITサポートセンター運営要綱」にもとづき、以下のとおり。
①障害者への電話、FAX、電子メール、面談によるIT利用相談事業(04年6月から)
②パソコンサポートボランティア(パソボラ)養成事業(04年11月から)
③パソボラによる障害者への個別訪問サポート事業(04年1月から)
2.埼玉県障害者ITSCのIT利用相談とパソボラ活動状況
1)ITSCパソボラの現状とプロフィール(07年3月現在)
- 登録パソボラ数: 85名 (男: 42 女: 43) (内9名は活動休止中)
- 年齢構成: 39歳未満 8名、40-59歳 39名、60歳以上 38名
- パソボラ、PC教室講師等経験者:約50%、ボランティア経験者:約20%、障害当事者:約15%
- パソボラの地域分布:ほぼ埼玉県全域に派遣可能
2)最近の活動実績
- 2006年の相談・訪問サポート件数(1ヶ月あたり平均)
期 間 | 相談件数 | 訪問サポート件数 | 訪問パソボラ数 |
06年4月~06年12月 | 約120件 | 17件 | 20人 |
(注) 相談件数にはパソボラや市町村からの照会、連絡件数を含む |
- 障害別サポート割合: 視覚障害 61%、肢体障害 17%、 内部障害 13%、その他9%
- サポート対象者: 障害者手帳を保持する埼玉県内在住者。但し、「障害があることで、パソコンによる情報の入手やパソコン操作の習得等が困難な方」
- サポート場所別割合: 自宅訪問 76%、 ITSC等施設サポート 26%(本人PC持参を含む)
- 依頼を受けてから訪問までの日数: 通常1週間、緊急時1-2日
- 訪問サポート時の平均サポート時間: 2-3時間
- サポートの内容:パソコンと周辺機器の利用支援(Micro SoftのOSとMS-Officeをベースにした、文字入力、ブラウザ、メールソフト利用)
3)関連団体との連携-より効率的、永続的なサポートにむけて
- ITSCが同居する障害者交流センターでは、以前より障害者向け初心者パソコン講習や相談会を実施しており、これらの受講者が個別サポートを希望した時はITSCが引き受けている。
- ITSCのパソボラ養成講座開催時に交流センターの講習設備や障害者向入力補助機器等を利用させていただくとともに、パソボラの技能向上のための講習会を共同開催している。
- 多数のパソボラに交流センターとITSC両方登録願い、一緒に活動いただいている。
②地域のパソボラ団体との連携
- 埼玉県内にはITSC設置前から、経験豊富な地域のパソボラ団体があり、代表の方にパソボラ養成講座の講師を委嘱したり、会員にITSCパソボラとして登録いただき相互に連携して活動している。
- パソボラ団体のない地域では、ITSCパソボラが中核となって、地域のパソボラ団体結成推進を支援している。
③障害者団体との連携
- ITSCの受託母体である、埼玉県障害者協議会は県内40有余の障害・難病団体の連合会で、各団体を通じてもサポート要望に対応している。
- 同協議会内には以前からIT委員会があり、パソコン教室、視覚障害者や盲ろうの方への継続的パソコン講習を実施しており、これらの設備をITSC内での個別サポートに利用している。
- パソボラには地域の障害者団体や障害者通所施設等でのパソコン講習会等での講師としても活動いただいている。
3.ITSCの運用状況-より効果的なサポート実現に向けて
1)サポート地域-訪問サポート不可能地域はほぼ解消
- パソボラの訪問サポート範囲は自宅から片道1時間、交通費が活動手当範囲内、車で片道25Km以内を目安としているが、ほぼ県内全域を訪問サポート対象地域としている。
- ITSC事務所のあるさいたま市から県内全域をみることは困難であるため一部地域については、地域のパソボラ団体の幹部に訪問調整を委託している。
2)各種サポートへのパソボラの対応力強化(サポート技能向上対策)
- 地域のパソボラ団体活動、教室への参加促進(視覚、肢体障害対応等)
- 障害者交流センターと連携したサポート技能向上講座開催(年数回開催)
- 重度肢体障害者への対応(各種補助機器の試用等)
- 各種専用ソフト業者の協力を得て、研修用ソフトの確保と研修用PCの貸し出し(特に音声関連)
- Mailing Listを活用したパソボラ相互の情報交換(サポート概要は都度MLに報告)
3)ITSCの予算制約(超過)への対応
- 予算の制約と同一人へのサポート偏重回避と機会均等の観点から派遣サポートを抑制している。(障害種別派遣サポート回数制限、サポート範囲の限定等)
- サポート回数超過(サポート終了)時には地域パソボラ団体やパソボラ個人へ引継ぎ、依頼者の一部個人負担など、地域での柔軟な対応をお願いしている。
- 複数でサポートすることを原則とするものの、実態に応じ単独サポートも実施。
4)依頼内容への対応(サポートすべき範囲)について――障害実態に応じた柔軟な対応
①H/Wトラブルや購入アドバイス
- メーカー/販売業者サポートとの切り分け(視覚障害者の場合、訪問して確認が必要)。
- メーカーなどへの送付作業支援と修理返送後のサポート
- 購入時のアドバイス、サポート依頼への対応、回線接続トラブルへの対応
- ITSCの「パソコン入門」テキスト、某100円ショップの入門用市販テキスト(OS/インターネット、メール、MS-Office)内容程度でサポートレベルを統一
- 代表的な音声ソフト(スクリーンリーダー、メーラー、音声出力ブラウザなど)
- 入力支援機器(特殊マウス、トラックボール、KBガード、トーキングエイドなど)
- 入力支援ソフト(音声入力ソフト、PETE、オペレートナビなど)
4.増大する課題への対応-ITSC、ボランティア活動の限界
-ITの進化により、益々格差が広がる障害者の情報バリアフリーを実現するための課題-
- 予算の制約により実施している回数制限やサポート範囲の限定をどう乗り越えるか?
- 重度肢体障害、知的障害者、精神障害者など長期間サポートを要する方の対応策
- 盲ろう者など重複障害者への対応、点字サポート可能なボランティアの不足
- MS社の最新OSのような多機能化、マルチメディア化にともなうサポート要望へ対応策
(MS社のOSやMS-Officeなど標準的な支援のみでも限界にが来ている。) - 新規の専用ソフトへの対応は殆ど困難(音声ソフトでも、K社以外は殆ど困難である。)
- ウイルスソフトの多機能化と迷惑メール増大に伴うトラブル増加への対応
- デジカメや多機能化するPDA、携帯電話などの要望への対応
参考資料 ①埼玉県障害者ITサポートセンター広報チラシ(パソコンサポートと110番)
障害者パソコン・サポート110番
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②障害者ITサポートセンターの役割とパソボラ活動