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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

フィジー

セタレキ・マカナワイ( Setareki S Macanawai )フィジー障害者協会会長

「107項目の目標」の評価の一覧

レベル0:
まったくあるいはほとんど対策が取られていない(0点)
レベル1:
やや実行されている(1点)
レベル2:
かなり実行されている(2点)
レベル3:
完全にあるいはほぼ完全に実行されている(3点)
1. 国内調整
目標 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 1.10 1.11
評価 3 3 2 0 0 0 1 1 1 0 1
2. 立法
目標 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 2.10 2.11
評価 0 0 0 2 0 0 1 0 0 1 0
3. 情報
目標 3.1 3.2 3.3
評価 1 1 0
4. 国民の啓発
目標 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8
評価 0 1 1 0 1 0 0 1
5. アクセシビリティーとコミュニケーション
目標 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 5.7 5.8 5.9 5.10 5.11
評価 2 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0
6. 教育
目標 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9 6.10 6.11 6.12 6.13 6.14 6.15
評価 1 2 1 2 2 1 2 1 0 1 1 2 1 1 1
7. 訓練と雇用
目標 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7 7.8 7.9 7.10 7.11 7.12 7.13 7.14
評価 1 1 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0
8. 障害原因の予防
目標 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 8.6 8.7 8.8 8.9 8.10 8.11
評価 1 0 1 0 0 1 0 2 1 0 0
9. リハビリテーション(地域に根ざしたリハビリテーション(CBR);保健と社会開発)
目標 9.1 9.2 9.3 9.4 9.5 9.6 9.7 9.8 9.9
評価 2 1 2 1 1 1 1 0 0
10. 福祉機器
目標 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 10.6 10.7
評価 0 1 1 0 0 0 0
11. 自助団体
目標 11.1 11.2 11.3 11.4 11.5 11.6
評価 3 3 2 1 2 2
12. 地域協力
目標 12.1
評価 1

総括と将来の方向、およびフィジーにおける障害者の基礎データ

[a-1] アジア・太平洋障害者の十年の期間のフィジーにおける障害者の生活に関する3つの大きな変化

A.障害関連活動における障害者参加の大幅な拡大。

アジア・太平洋障害者の十年の間に、障害者団体運営、セミナー/ワークショップ/会議、そしてある程度は雇用においても、 障害者の参加と関与が促進した。この間、幾つかの単独障害者団体も設立された。

B.社会一般の人々における障害理解の拡大

アジア・太平洋障害者の十年の間に、上記の理由などにより、社会一般の人々の障害者問題に関する認識が広まった。 障害者活動はより顕著になり、フィジー社会における障害者問題に関する対応姿勢、認知、行動に大きな影響がみられた。 障害者団体もまた、アジア・太平洋障害者の十年の間にプログラムを通して障害認知に関して、きわめて活発に活動した。

C.国内における障害者運動の強化

フィジーでは、アジア・太平洋障害者の十年の間に、自助団体活動を通して多くの障害者が活動し、 障害者運動がより強力化かつ活性化した。その結果、フィジーはこの地域における他の太平洋諸島の国々にリーダーシップをとり、 貴重な経験を提供することができた。

[a-2] フィジーの非障害者と比較した場合の障害者における最も遅れている3つの課題

A.効果的な職業訓練と雇用機会の欠如

フィジーでは、障害者に十分な教育を提供したが、障害者を対象とした職業教育、学校から雇用の場や家庭への移行措置については、 健常者に較べて配慮や支援は少なかった。その結果、障害者は、実践的な職業能力を欠如し、最低限の登録資格にも満たず、 雇用の機会を失って、定職のないまま自宅で生活している。

B.障害者に関する法制度や政府施策

「行動課題」の第2のキーとなる目標であるにもかかわらず、フィジーは今だ、障害者に関する特別な法制度や政策を有していない。 そこで、フィジーの障害者に関する進展、アクセス、参加は、人々の善意や厚意、優先権に大きく依存しており、そのために、 その進歩はきわめて緩慢である。

C.優先順位の低さ、政治的意向と決意の欠如

アジア・太平洋障害者の十年の間のフィジーにおける障害者問題に関する進歩の停滞は、政府当局や民間セクターの政治的意向、 優先度、決意の欠如に起因する。フィジーでは、非政府組織(NGO)が障害者サービスの創設と提供に大きく関わっているが、 それらの活動は政府プログラムの補助を受けていない。また、これらのNGOは援助や慈善団体に依存しており、 そのサービスの継続や拡大は種々の団体や寄贈者から得られる財源獲得の可能性に依存している。

[a-3] 障害者のためのフィジー政府による3つの優先施策

  1. 教育、訓練/雇用、住宅、交通移動、アクセス、人権などの重点領域に目標を定めた障害者法制度の策定、制定
  2. 目標とされる障害者各団体グループのサービス提供の支援のための年間財政援助の増額化
  3. 障害者に関する積極的差別是正措置プログラムの履行

[a-4] フィジーにおける障害者のため地域協力の3つの優先プログラム

  1. 特殊教育、リーダーシップ、マネージメント、エンパワーメントなどの障害関連領域におけるトレーニングプログラムの提供
  2. 既存の障害者サービスのサポートまたは新規サービス創設のための財源援助
  3. 技術補助と情報の共有

[b] 基礎データ

[b-1] フィジーにおける障害者の基礎データの引用と記述

フィジーにおける障害者人口については現在でさえよくわかっていない。他の国々と同様に、 フィジーでは障害に関して多様な定義と区分分けシステムを導入している。たとえば、最近の国勢調査(1996年)では、 障害に関する質問事項もあったが、障害に関して特定の定義を用いなかったり、方法論的問題があったため、障害発生の頻度がきわめて 低く推定されてしまった。フィジー全国障害者評議会法(the Fiji National Council for Disabled Persons Act (FNCDP) (1994年12月1日から施行)が、障害者に関する事項を全面的に扱っている。障害者問題に係る主要な調整及び政策立案機関として 全国評議会(the National Council)が設立された。全国評議会は障害者の全国自助団体を含む主要障害者NGOsと関連政府閣僚に よって構成されている。FNCDP Actでは、障害者とは、“身体的、または精神的、または感覚的損傷の結果、 人間としてのノーマルな活動を行う場合の能力が制限されているか、あるいは欠如しているもの”と定義されている。 (1部、第2条項)同法には、なんら障害に関する特別なカテゴリー(障害分類)は示されていない。

フィジーには、障害者のための全国的な登録システムがないので、データ集計のための公的区分分けシステムも存在しない。 それにもかかわらず、障害のカテゴリー(障害分類)が、適切な基準や発生数に関する知見のないまま国内の障害者団体や 特殊養護学校によって広く行われている。その分類とは、重複障害者、発達遅滞者、学習遅延者、身体障害者、聴覚障害者、 知的障害者、精神発達遅滞者、全盲者、弱視者などである。(専門的・医学的な)障害診断ではなく障害確認に焦点を当てた 全国障害者調査を行うためのイニシアティブ(提唱発議)が、アジア・太平洋地域国際育成会 (Inclusion International Asia/Pacific Region )やフィジー障害者協会(Fiji Disabled People’s Association) の協力のもとに討議されている。暫定的作業委員会が任命され、対象となるグループ(target group)と接触し、 方法と戦略を確認して、調査様式作成準備作業を行っている。

障害者の教育は、公認された慈善団体によって設立運営される、主として国内の都市部に存在する17の特殊学校によって行われている。統合教育 (mainstream education) はいくつかの特殊学校で実践され、障害のある生徒は、いまでは初等学校、中等学校、高等学校に在籍している。フィジー政府の「すべての人のための教育」政策では、幾つかの障害者機関の調停・介入に基づき、障害児のためのサービスをもうけている。障害のある少女や婦人は、障害のある男性と対等に、教育への同様の権利と手段(アクセス)を有している。そのようなことから、とくに基本的レベルにおける教育の機会が提供されているため、フィジーにおける障害者の識字率は比較的高いレベルにある。しかしながら、フィジーには、今だ特別な障害者教育政策や特別な障害者法は存在しない。1997年のフィジー共和国憲法には有効な障害者に対する差別禁止の条項が存在する。また、2001年の社会公正法( the Social Justice Act )には、社会福祉省によって実行される障害者のケアとリハビリテーションとともに教育省の責任で教育領域における障害者のための積極的差別是正措置を規定している。最近、2003-2005年のフィジー戦略的発展計画では、国内レベルの障害者問題に関して幾つかの重要施策としてとりあげることが約束されている。

[b-2] フィジー国民の推定意識について…・

1993-2002のアジア太平洋障害者の十年を知っている国民は:1%以下。

政府は、アジア太平洋障害者の十年に関する情報を国民に伝えたか:ノー。

1975年の国連障害者宣言について知っている国民は:ほとんどだれもいない。

1981年の国際障害者年を知っている国民は:1%以下。

( 訳:東北福祉大学教授 阿部一彦)