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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

香港特別行政区障害者の雇用と労働に関する香港レポート

2002年10月

香港は1997年より中華人民共和国の特別行政区であり,人口は6.724.900人(2001年国勢調査)有し,その人口の5%にあたる340.000人には障害がある.雇用と職業リハビリテーションに関する政策目標は,以下のように明記されている.

雇用と職業リハビリテーションにおける完全参加と機会均等の目標達成には,障害者が生産に参加する機会均等と自由市場(労働市場)における有給雇用の保証をすることにある(リハビリテーション・プログラム計画98/99-02/03).

職業リハビリテーションサービスは身体障害者(聴覚・視覚障害を含む),知的障害者(精神遅滞),精神障害者さらに慢性疾患者等に提供される.それゆえ,6種類全ての障害者は,労働と雇用計画のサービスを受けられる.この主要なサービス利用者は,知的障害者と精神障害者である. 

香港における職業リハビリテーションサービスは職業訓練を含んでおり,その方法は公私両部門による障害者の自由雇用を促進することと,競争的な労働市場の需要に対処できない人々に保護作業所(授産施設)と援助付き雇用を提供することである.

職業訓練は5ヵ所の職業訓練技術センターによって提供されている.そこでは障害者に(職業)適性能力評価と1.000時間に及ぶ専任の訓練の場が提供されている.被雇用者再訓練機構は障害者に再訓練課程を提供し,2001年には4.173人の被訓練生が参加した.特別雇用サービスとして,労働局の選択的職業斡旋部門は,自由雇用における障害者のための職業紹介を提供し,労働市場での仕事の機会を促進した.助言者付き試験的職業紹介事業は、障害を持つ応募者に雇用者が試験的に仕事を提供することに取り組んできている。

53ヵ所の保護作業所(授産施設)は,2001年から2002年にかけて社会福祉局から7.527人の障害者に労働訓練を提供するために,3.500万米ドルの資金提供を受けた。この職業形態は簡易組み立て、レターショッピング,縫製,印刷,記念品作り等から洗車や家屋内外の清掃のような戸外労働に至るまで多様である。顕著な成果は,保護作業所の変化である.経済の変化に伴い,簡易組み立て労働は過去10年間に減少してきた.そこで新しい労働供給源が捜し求められ開発されてきた。具体的に言うならば自主生産品は障害者が一日の労働の中で,最終的な成果を確認するのに有効な手段を保証するものである.戸外清掃労働は,保護作業所(授産施設)にとって人気のあるサービスの一つとなっている.保護作業所(授産施設)サービスへの市場での需要が強まるにつれ,経済停滞にもかかわらず,作業所員の月収は約110米ドルへとわずかながら増加している.1.030人の作業所員は戸外の下請け契約労働を行ない,2001年から2002年の間に140万米ドルを稼ぎ,作業所員の1.3%は2001年から2002年の間に,作業所から一般就労への移動である援助付き雇用サービスに移行した。

援助付き雇用サービスは、社会福祉局により1.870人の障害者に一種の雇用サービスを提供するために,2001年から2002年の間に480万米ドルの資金提供を受けた.これにより必要なカウンセリングや援助サービスさらに,市場価格での仕事を得るために有効な給付金等の全てを利用できる総合的で自由な状況下で労働に就くことができるようになった.援助サービスは雇用者との連絡調整,適職判定や職業紹介,就労しながらの訓練,スーパービジョン,ガイダンスさらにサービス利用者へのカウンセリングを包含している.最終的な目標は障害者が,自由で競争的な場面で自立して労働への準備をすることにある.そのサービスは個別の職業紹介、モバイルクルー(移動巡回スタッフ)、シュミレーテッドビジネス(模擬事業)、エンクレイブ(一般事業所内の一部分を請け負う事業)などの形式で経営されている. 多数の模擬事業がNGOによって設立され、例えばコンビンエンス・ストアー、菓子店,日用品店,野菜露店,果物露店,レストラン等、実際的な労働条件下で障害者の訓練を提供している.援助付き雇用訓練生の平均的月収は,2001年から2002年にかけてはおおよそ372米ドルである.

地域社会における自由な雇用確保は障害者を励まし続け、より自立を生み出すことになる。そこで社会福祉局は2001年から3年間にかけて290万米ドルの資金とともに、障害者の現職訓練計画を1,080人の障害者のために実行した.NGOは障害者の仕事に直接関連したこれらの訓練やカウンセリングさらに、仕事との適合等のサービス提供を運営するために招聘された.障害者は3ヶ月間の仕事定着プログラムで手当を与えられた.そして手当付の試験的仕事を考案もしくは提供する雇用者に対して,最大3ヶ月を限度に385米ドルかプログラム参加者に支払う賃金の50%相当のいずれか低い方の給付をもって奨励した.NGOは各々のプログラム参加者に,職業紹介後も同様に最低6ヶ月のサービスを提供した.

社会福祉局の市場相談所は2001年に常設機関として設置された.ここでのスタッフチームには障害者の雇用機会の増進や,労働能力促進に向けた職業リハビリテーション部門の事業開発に向けた戦略あるいは,市場アプローチの導入等の責任が委託されている.

この市場相談所は、約100のサービスユニットと固い同盟を形成しており、これらのサービスユニットを通じて、大小の企業や政府部門に対して障害者による一般市場で通用する多様なサービスや製品を提供している。目的は保護作業所(授産施設)や援助付き雇用サービスの仕事の契約や機会を確保するためである。この市場相談所の事務所ではまた,障害者の能力や可能性についての宣伝と促進(雇用の促進)を請け負っている.

今年の会計年度では,政府は障害者の仕事の機会を創るために,NGOによる小規模会社単位の設立促進に向け640万米ドルの資金提供を決めている.このサービス方式下でNGOは障害のある被雇用者との関係において雇用者となるであろう.

初めに10の事業プロジェクトが,2002年から2003年にかけて操業するために選ばれ、自由市場での清掃サービス、学校への給食提供、軽飲食の小売店、手工芸製造などの事業に着手した。これら全ての新規事業は独立採算で操業されなければならない.

過去2年間に政府とNGOは障害者のための雇用と適職探しを,パートナーシップを基に一緒に行なってきた。その結果,これまでのところ,障害者を勇気付けている。この最終的な目標は香港の自由で競争的な市場において,雇用に加わる障害者を増大することにある。障害者の雇用機会の発見と創出のための公私の組織間ネットワークは強化され始めた。一般市場を(雇用の場として)開拓する方向での戦略や(職業リハビリテーション)サービス提供者のための企業向け訓練事業に加えて、「優しい企業」を募集するキャンペーンも開始された。これは民間企業に企業市民意識を育て、社会サービス分野との戦略的な連携を作り出そうとするものである。「優しい企業」になるには、弱者の雇用、ボランティア,パートナーシップ、助言、寄付,親睦家族を含む6項目のうち2つ(以上)でコミュニティーにサービスする事になっている。さらにまた,社会福祉局はNGOと協同して,障害者の供給するサービスや製造する製品の品質商標の制定に取り組んでいる。これは「障害者雇用を援助しよう=SEPD」と呼ばれる。この商標はやがて地域で活用され、一般市民が障害者の能力に気づくことになるであろう。

Deborah Wan, CEO, New Life Psychiatric Rehabilitation Association

訳:長崎国際大学 中村敏秀