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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

インド

2002年10月4日

RNNカントリーレポート

独立以前の時期

障害のある人々のためのリハビリテーションへの取り組みは、インドでは何ら新しいことではありません。視覚や聴覚に障害のある子供たちや大人たちのための学校や技術訓練センターは、インドが独立するよりもずっと以前から存在していました。

独立以後の時期

1947年インドが独立し、開発計画が立案されたとき、リハビリテーションは当然配慮されるべきケアとして含まれていました。リハビリテーションへの予算配分は、人口の増加にともなう教育の充足の必要性、医療設備や機関の充実、農業や工業のための基盤整備と通信網などの他に優先されるべき関心事があったため決して高いものではありませんでした。それにもかかわらず、中央政府や州政府によって、リハビリテーションに関する既存の施設は支援を受けて強化され、同時に、新たな施設も設立されていきました。

施設は国内と国外の両方のNGOによってほとんどが設立され運営されていました。政府はそれら施設を維持するために惜しみない支援を計りました。この支援は独立後も立派な方策としてすみやかに続けられています。インド政府は、実情に合う専門的な手法を用いて、障害者支援に取り組むための4つの国立センターを設立しました。

  1. 視覚障害者のための国立施設 デーラドン

  2. 肢体不自由者のための国立施設 カルカッタ

  3. 聴覚障害者のための国立施設 ムンバイ(ボンベイ)

  4. 知的障害者のための国立施設 セクンダラバード

さらに、インド政府は義肢補装具の類いを製作するためのワールドクラスの生産センターを設置しました。そこで生産された義肢補装具は、センターが国内に網羅しているネットワークを通してインド全域に配布されています。

アジア太平洋障害者の10年間

インドは、UNESCAPの会合や討議に積極的に参加していた政府やNGOの代表を通して、障害者の10年に関しても同様に活発に参加しました。インド政府も個々のNGO代表者も共に、これらの討議に参加していました。討議を通して新しいアイディアや実施要領が決議されました。いくつかの分野においては専門的な取り組みが認められた一方で、遅々として進展しない分野も存在しました。

政府は障害のある子供たちの教育に関する分野、福祉機器の製造に関する分野、義肢装具の製造と支給に関する分野、教育のための奨学金を供給する分野、障害のある子供たちが普通学級や他のいろいろな活動への参加を促進する分野などにおいて、専門的な取り組みを実施しました。

政府が作成し実施を試みた事業計画はさまざまなレベルでの成功をおさめました。とても大きな変革をおさめた分野もいくつか確認されました。一方で、実施に向けての熱意が欠如している分野もありました。熱意が欠けていた主な理由は、事業計画そのものは十分に設計されていたものの、州や県、現場レベルの実務担当者が、いい加減で熱心でなかったことにありました。それは、重要な担い手である政府の官僚の、障害のある人々の活動能力や制限に対する思いやりや敏感さが、求められているレベルにまで至っていないということが原因といえます。

障害者のためのサービスの進展において、2つの価値のある出来事があります。その1つは、障害者に関する調査です。インドでは障害分野に関する国の調査が10年毎に行われてきました。それは極めて限られた地域でのサンプル調査にすぎなかったため、その結果をインド全体に波及できるだけの大きな問題に発展させるインパクトを持ちえませんでした。ある地域で実施された調査結果から国全体を推測するということは、開発レベルの格差やコミュニケーションの相違などの諸事情から不可能でした。

2001年2月に、初めて、インド政府は障害に関する詳細な調査を実施しました。その結果はまだ公表されておらず活用することはできません。しかし、少なくとも政府は更に進めるべき政策を計画するための基礎となる情報を有しているのです。

2つめの画期的な事件は、1995年に「障害のある人のための法(機会平等、権利保護、および完全参加)」THE PERSONS WITH DISABILITIES (Equal Opportunities, Protection of Rights and Full Participation)が可決したことです。この法律は、障害者の支援活動を主な業績としている組織や、障害のある人々からの関心を集めました。しかしながら、まもなくこの法律には修正が必要であることが明らかになり、インド政府も要望に合わせてこの法律を修正することに同意しました。これは画期的な出来事ではありましたが、障害のある人々へのリハビリテーションの取り組みまでには長い道のりがかかりました。その理由は、リハビリテーション供給を実施することに関して、実行のための決意が不十分であったことにあります。政府の担当分野ですら実行が遅れ、現在においても、それは未だ実施されてはいないのです。

インドにおいては、ほかに大きく展開したものが2つあります。障害のある人々自らが活動する組織であるインドDPIと、障害のある多数の人々を支援するDGGの活動です。この2つの組織は障害者の権利擁護を高らかに表明し、いくつかの決定を政府に迫りました。遅々として進まない政府部署の対応に、彼らは最高裁判所まで出かけ、いくつかの決定事項の実施を政府に命じる判決を勝ちとりました。

障害者に対する権利擁護に基づいて提出された決定により、障害のある人々へのさまざまなレベルでのサービスが開始されました。例えば公共の場所などをある程度アクセスできるようにするなど。最高裁は、障害のある人々の不平や苦情を調整することに関して、常に迅速に行動しました。しかし、障害のある人のための法が存在しているにもかかわらず、新しい政府の建物でさえも、障害者のアクセスの利便性やそれに関連した対応が取られることもなく今も建設されています。

さまざまな領域におけるリハビリテーションを成功させるためには、インド政府と障害者のために活動しているNGOが、活発な協働作業に取り組んでいくことが必要です。障害者に関係する請願は、押さえ込んでおかなければならない要求として行政官僚から認識されています。政府が、NGOを障害者へのサービス供給を拡大していく大きな役割を担っていると認識したときに、インドの障害のある人々の未来は明るいものになると考えられます。

インドにおいては、憲法によって小学校が義務教育とされ無償で提供されています。小学校教育の無料化と児童における労働の回避を、インド政府は何度も強調し続け、法令を公布してきました。しかし、この問題は、インド政府、ILOそしてNGOの努力にも関わらずいまだ解決されてはいません。理論的には、障害のある子供たちは一般学級で教育を受けたり奨学金をもらうことが望ましいといえますが、実際には、障害のある子供たちの就学率は極めて低く、ましてそのなかで奨学金を受け取っている子どもは極めて珍しい状況であります。

雇用においては、インド政府は障害者雇用3%を規定しています。しかし、インド国内の高い失業率のために、これは単なる勧告にすぎず、実効性はほとんどないものになっています。政府部局においてさえ"適切な空きポジション"の不足という理由で実行されないでいます。政府は障害のある人々の雇用専門の公共職業センターを設置することに関して専門的な取り組みを開始しています。それはいくつかの基本的な短期トレーニングの機会を提供していますが、現実には、就労への評価だけが行なわれ、職業紹介の業績は極めて緩慢なものとなっています。

政府は国家レベルでの福祉機器や設備の支給に取り組みました。私たちは普通に車椅子や三輪自転車を目にすることができるようになり、それは田舎でも普及し始めています。その大部分は政府が無料で支給しているものです。このことによって移動手段が確保され、障害のある人々の生活にめざましい変化をもたらしました。福祉機器は、彼ら障害者が教育を受けたり、仕事や公共の場に出向いたりすることを可能にし、彼らの社会との結びつきやQOLを向上させています。

インドは、立法や他にもいくつかの分野において、かなり整備されていることが注目されています。しかし他の多くの分野ではもっと進歩しなければなりません。その理由の大きなものとして、インドの人口があまりに巨大であることと、政府や中央および地方行政によってニーズの優先度がより高いと判断された別の問題に集中していることなどがあげられます。

障害のある子供たちや大人たちばかりが苦しんでいるのではなく、インドにおいては他の人々もまたそのような苦しい状況にあるのです。人口の相当数が貧困層以下の生活を送っています。国民の生活状況が向上したときに、障害のある人々の生活も向上することになるでしょう。政府が関与できることはかなり多く存在し、わがインド政府はこれら障害者に関連した分野にも関心を集中させていくべきであると考えます。アクセシビリティの向上や、教育、職業訓練や雇用を含めた多くの必要不可欠な分野を含んでいる障害のある人々のための法の厳格な実施をスタートさせることが重要といえます。

結論

われわれは、コンピューターに関して、技術的に高度に熟練した人材を有しています。また、宇宙計画を推進し、人工衛星を打ち上げる能力があることも立証されています。しかし障害のあるほとんど大部分の人たちはこうした進歩とは無縁の状況におかれています。

大多数の人々が第一次産業である農業に従事していて、そのほとんどが慣習的な低いレベルの生産性にあります。しかし、このような状況にすら障害のある人びとは積極的には関わっていません。

障害者支援の展開はゆっくりで限られたもののようにも見えますが、振り返ってみると、かなりの数の障害のある人々の生活に極めて大きな改善がなされているといえます。しかし、必要とされるレベルまでには未だ至ってはいません。新しい世紀に入り、障害のある人々は、インド政府とNGO間の確かなる協同の働きによって輝ける未来が訪れることを期待しています。

障害のある人々に関するわが国の基本的な情報

a.インドにおける障害のある人々のための国の機関。

  1. Ali Yavar Jung National Institute for the Hearing Handicapped,
    (聴覚障害者のための機関)
    K.C. Marg,
    Bandra Reclamation,
    Bandra (W),
    Mumbai - 400 050.
    India.
    Tel:00 91 22 640 0215 / 640 0228 / 640 0176
    Fax:00 91 22 642 2638
    Email:director@giasbm01.vsnl.net.in
    Contact Person: Mr. Arun Banik - Reader - HOD / MDD
  2. National Institute for the Visually Handicapped,
    (視覚障害者のための機関)
    116, Rajpur Road,
    Dehra Dun - 248 001.
    Uttar Pradesh,
    India.
    Ph: 00 91 135 744491, 748147, 744578, 744979
    Fax: 00 91 135 748147
    Email: nivh@vsnl.com
    Contact Person: Dr. S.R. Shukla, Director.
  3. National Institute for the Mentally Handicapped
    (知的障害者のための機関)
    Manovikas Nagar PO
    Secunderabad - 500 009
    India.
  4. National Institute for the Orthopaedically Handicapped,
    (肢体不自由者のための機関)
    B.T. Road, Bob-Hooghly,
    Calcutta - 700 090.
    India.

b.わが国で障害者の分野において重要な協働のプログラムを実践している外国の組織

  1. Christoffel Blindenmission,
    South Asia Regional Office (South)
    No.4, 1st Cross, 2nd Stage, 1st Block,
    Raja Mahal Vilas Extension,
    Ashwath Nagar,
    Bangalore - 560 094.
    Tel: 00 91 80 351 2851 / 2852
    Fax: 00 91 80 351 2853
    Email: cbmsaros@blr.vsnl.net.in
    Contact person:Mrs. Silvana Inselmann, Regional Representative / Mrs. Gunawathy Fernandez, Programme Manager
  2. Caritas India,
    CBCI Centre,
    1, Ashok Place,
    Goledakkana,
    New Delhi - 110 001.
    Tel: 00 91 11 3363390 / 3732339
    Fax: 011 371 5146
    Email: caritas_india@vsnl.com
    Contact person: Fr. John Noronha, Executive Director
  3. MISEREOR
    Postfach 1450,
    D-52015,
    AACHEN.
    GERMANY
    Tel: 00 49 241 44 2 - 0
    Fax: 00 49 0 241 44 21 88
    Email: postmaster@misereor.de
    Contact person: Dr. Josef Sayer, Executive Director.

C. Antony Samy, Managing Director, WORTH Trust

訳:日本社会事業大学大学院 高田明子