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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

日本

概要

アジア太平洋障害者の10年が終了する2002年、ESCAPが定めた107項目の目標の日本での達成状況について、「新10年推進会議」は主な障害者団体のリーダーによる評価を行った。評価に参加した人々(以下、評価者)は、合計約35人を予定したが日本障害者協議会7人、日本身体障害者団体連合会4人、DPI日本会議4人の、合計15人であった。

各評価者は「107項目」から自分の活動領域を中心に10~30項目を選び、日本の過去10年の進展について4ランクで評価し、合わせてそのように評価した理由を項目ごとに文章で説明することとした。ランクは、全く・ほとんど実行されていない(0点)、やや実行(1点)、かなり実行(2点)、ほぼ完全実行されている(3点)である。さらに各評価者は「今後の重要な3つの課題」(タイトル及び数行の説明)の記入も求められた。

評価者が取り上げた項目の分野(「10年」の「行動課題」の12政策領域)別の分布およびその得点等は表1のとおりであった。

表1 政策領域別に見た「107項目の目標」の日本での達成状況
行動課題の12の政策領域 項目数 1項目以上選んだ評価者数(A) 選ばれたのべ評価項目数(B) 評価者一人当たり選択数(B/A) 平均評価点(標準偏差)
(8)障害原因の予防 11 3人 4 1.3 2.00(1.41)
(5)アクセシビリテイとコミュニケーション 11 7 25 3.6 1.52(0.65)
(3)情報 3 3 5 1.7 1.40(0.55)
(9)リハビリテーション 9 5 23 4.6 1.39(0.94)
(6)教育 15 12 85 7.1 1.25(0.90)
(1)国内調整 11 7 26 3.7 1.19(0.63)
(11)自助組織 6 7 25 3.6 1.04(0.89)
(4)国民の啓発 8 8 15 1.9 1.00(0.85)
(7)訓練と雇用 14 9 54 6.0 0.94 (0.66)
(2)法律 11 11 28 2.5 0.89(0.74)
(10)福祉機器 7 3 7 2.3 0.57(0.53)
(12)地域協力 1 0 0 - -
合計 107 15 297 19.8 1.15

注:「地域協力」についての評価をした評価はいなかった。
注:評価は12の「政策領域」自体に対してではなく、その中の「目標」のいくつかを選んで行われた。どの目標を選ぶかは評価者の自由であり、したがって「平均評価点」および「標準偏差」は、その「政策領域」内の選ばれた「目標」について評価の平均であり標準偏差である。

表1に見るように、15人の評価者は一人10~30項目という指示に従って平均約20項目を選んだ。分野によりやや濃淡はあるが107の各項目は平均して約3人により評価された。その平均得点は1.15であった。4ランク(0~3)の平均が1.5であることを考えると、全体的には日本の障害者団体のリーダーによるこの10年の評価は、「やや実行された」(1点)と「かなり実行された」(2点)の間には入ったものの、「やや実行された」というレベルに近いものであった。全体として目標の半分に到達したという認識は持たれていない。

関心が最も高かったのが「教育」であり、評価者15人中最も多い12人が取り上げ、しかも一人当たり件数でも最も多い平均7.1項目について評価していた。ついで11人が取り上げた「法制」、9人が取り上げた「訓練と雇用」などが目立った。とくに「訓練と雇用」では取り上げた9人は平均6項目について評価していた。

反面、「地域協力」を取り上げた人はなく、「障害原因の予防」も強い関心を持たれてはいなかった。「地域協力」分野の目標項目は途上国が協力を求めて行動を起こす、という目標であり、日本などは念頭に置いていないものであったためでもある。

平均評価点が1.5以上の分野は「障害原因の予防」(2.00)と「アクセシビリテイとコミュニケーション」(1.52)の2つであった。「障害原因の予防」では、ビタミンA欠乏症、ポリオ、ハンセン氏病などを主要な国民保健問題でなくする、などすでに日本では達成されていた目標も多かったことが高い評価につながったと思われる。「アクセシビリテイとコミュニケーション」では、ハートビル法や交通バリアフリー法に基づくアクセスの近年の改善、手話通訳の普及、ITやテレビなどのバリアフリーの進展が、ある程度評価されたものといえる。

ついで「情報」が1.40と3番目に高い得点であったが、国による実態調査が行われていることと、「10年」の「行動課題」が翻訳されていることなどが判断根拠であった。第4位で、ほぼ同じ得点(1.39)の「リハビリテーション」では、(CBR,地域に根ざしたリハビリテーションをどう解釈するかにもよるが)各種の医療資源・社会福祉資源が地域に広がってきたことを評価する意見や障害者・家族の参加が弱く医療モデルだとの批判などが記されていた。

第5位の「教育」の15の項目には、すべての障害児への学校教育の保障、そのための設備や福祉機器の整備など、日本でかなり進んでいる項目や、統合教育、家族や地域社会の参加などの遅れている項目が含まれており、総合的には平均1.25となった。

第6位の「国内調整」(1.19)では、とくに地方での政策決定への障害者団体の参加が不十分、国の長期計画での所得保障の位置づけの弱さなどが批判されていた。

第7位の「自助組織」(1.04)では、障害者団体への政府からの助成がないこと、事業委託でも団体間の差別があること、多くの団体で若者の参加が弱い、などがあげられていた。

第8位の「国民の啓発」(1.00)では、スポーツ・芸術などへの障害者参加が報道され、肯定的理解が促されてきたが、反面では事件関連の報道に問題も多いなどと指摘されていた。

第9位の「訓練と雇用」(0.94)では、近年の不況とも関連して障害者雇用が伸びていないこと、効果的な対策が見られないこと、精神障害者が雇用率に入っていないことなどへの批判が見られた。

第10位の「法律」(0.89)では、差別禁止法がないこと、ハートビル法などがあってもその実行に地域格差が大きいこと、などが指摘された。

第11位ともっとも低く評価された「福祉機器」(0.57)では、地域レベルでの適切な福祉機器の作成、適用、専門家援助の体制がないことが批判されていた。

各評価委員から提出された「今後の重要な3つの課題」を整理したところ、今後の日本の障害者施策の課題として、
教育:分離教育から統合教育への変換、高等教育の充実等、
人権保障と差別禁止法の制定、
地域生活支援:総合福祉法への取り組みを含め、
障害者運動と政策・計画決定への参加および障害者団体の強化、
アクセシビリティーと情報保障・コミュニケーションの手段の改善。
市民啓発、
市町村障害者基本計画策定の義務化等の障害者基本法の見直し、
精神障害者施策の抜本的改善、
自立のための所得保障と扶養義務制度の撤廃、
などが重要課題として意識されていることがわかった。

まえがき

RNNのメンバーである「新10年推進会議」は、2002年4月16日の幹事会において「10年」の評価活動に参加することを決めた。「アジア太平洋障害者の10年」および「新長期計画・障害者プラン」の最終年に当たり、障害当事者および関係者による評価と今後への提言が重要であり、各団体の枠を超えて進めることとなった。

具体的にはつぎの方針がおおむね了承され、またその後財団法人損保ジャパン記念財団からの助成も得られることとなった。

  1. 評価委員を各団体から選出する。JD:10程度、日身連:10程度、リハ協:2程度、全社協:2程度、DPI:10程度、合計35人程度。
  2. 評価委員はESCAPの「107項目」について、自分の活動領域を中心に、原則として10項目以上、30項目以内について、数字およびコメント(評価の理由・根拠)により評価する。コメントのない数字のみのものは無効とする。誰がどう評価したかは公表せず、集計結果のみ公表する。
  3. 評価の数字は、(2000年に行ったように)4ランク評価とする。
    レベル0:まったくあるいはほとんど対策が取られていない(0点)
    レベル1:やや実行されている(1点)
    レベル2:かなり実行されている(2点)
    レベル3:完全にあるいはほぼ完全に実行されている(3点)
  4. 各評価委員は、各自の評価をふまえ、「今後の重要な3つの課題」(タイトルおよび数行での説明)をあわせて提出する。
  5. 評価の結果を集計し、カントリーレポートの素案を作成し、それについての討議をする検討会議を開催する(6月10日前後)。そこには各団体から3名程度が参加する。その議論をふまえて修正する。
  6. この活動の事務局は日本障害者協議会におく。
  7. この活動の調整(コーデイネート)は佐藤久夫が行う。
  8. この活動の期間は4-6月とする。

2002年10月までに14名からの回答が寄せられ、翌年ひとりからの回答が得られた。これら15回答を集計したものが本報告である。本報告では、「107の目標」のそれぞれについて、評価をした回答者数、評価点の平均、主な評価点の理由(文章説明)を紹介してある。文章説明では類似意見は省略したが、おおむね半分を掲載した。

また「今後の重要な3つの課題」はすべてを掲載した。

15人の回答者は次のとおり。
青葉 紘宇(全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会)
阿部一彦(日本身体障害者団体連合会)
池田孝一(第一若駒の家)
勝又和夫(東京コロニー)
河端静子(日本障害者協議会)
楠 敏雄(障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議)
黒崎信幸(全日本ろうあ連盟)
阪本英樹(日本身体障害者団体連合会)
薗部英夫(全国障害者問題研究会)
竹内正直(山梨県障害者福祉協会)
殿岡翼(全国障害学生支援センター)
福井典子(日本てんかん協会)
福田文恵(全国青い芝の会)
藤井克徳(きょうされん)
吉本哲夫(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)

札幌会議や大阪会議で忙しい中、アンケートに回答してくださった日本の障害者運動のリーダーの皆様に感謝するとともに、事務局・調整役としてきめ細かい連絡ができなかったこと、そして集団的な結果の分析の機会を持つことができなかったことをお詫びいたします。

また、回答票の整理集計に協力してくれた日本社会事業大学社会福祉学部生、橋本健太君と新橋さち子さんにも心から感謝します。

2003年7月

調整担当 佐藤久夫 (日本障害者協議会 政策委員会副委員長)

「107の目標」の評価

1.国内調整

この課題には7人が、10の目標について評価した。

目標1.1 平均1.5点 回答者4人

評価の理由
 「1993年の障害者基本法に基づいて、国内調整委員会に当る「障害者施策推進協議会」が設置され、学識経験者や官僚、障害者などが参加し定期的な会合がもたれているが、官主導の傾向が否めない。」(評価点2)

目標1.2  2点 回答者1人

評価の理由
「国および都道府県における障害者施策推進協議会は順調に立ち上がり、円滑な運営が進められているが、全般的には官主導。また地方における施策遂行のハードル格差が目立ち、低レベルに平準化していることは遺憾である。」(評価点2)

目標1.3 平均1.2点 回答者5人

評価の理由
「障害者の社会参加といわれて久しいのに、このことは緒についた程度、しかも全国的には差が生じているのが実態。」(評価点1)
「都道府県・指定都市レベルで社会参加推進協議会や障害者施策推進協議会があり、自助団体などからの代表が参加し意見を交換し行政とのパートナーシップを図ろうとしているが、地域による偏りがあるなど、まだ十分に機能しているとは言い難い。」(評価点2)
「市区町村における障害者施策推進協議会の設置は遅々として進まず百年河清を待つもどかしさ。国および都道府県の指導は不十分。とりわけ難病等少数に属する障害者や草の根運動実践者の声は適切に反映されているとは思えない。評価・監視機関の要あり。」(評価点1)

目標1.4 平均1.3点 回答者3人

目標1.5 0点 回答者1人

評価の理由
「国内行動計画に貧しい障害のある人々への施策は特別に配慮されていないし、年金制度から排除されている障害のある人々は10万人にも及んでいる。」(評価点0)

目標1.6  0点 回答者1人

評価の理由
「所得保障が権利として明確に位置付けられておらず、参加の機会もない。」(評価点0)

目標1.8 平均1.5点 回答者4人

評価の理由
「パラリンピックにおける日本選手の活躍がメディアで紹介されるとともに、第一回全国障害者スポーツ大会を記念した切手が発行され、広く国民の関心を招いた。」(評価点2)
「プラスイメージよりマイナスイメージを明らかにするなど、この精神からは後退しているのが現状。先進例はほんのわずかに過ぎない。」(評価点1)
「障害者の日は、中央、都道府県、市町村レベルでそれぞれ行政が中心になって進めているが、近年では当事者団体に委託して開催するところもあり望ましいことである。障害児者の文化の集い、芸術祭等を当事者団体が支援団体とともに開き、また体験学習、レクリエーションを目的としたグループ・個人による国内・国外旅行も可能となって多くが参加している。」(評価点1)

目標1.9 平均1点 回答者2人

目標1.10 平均1点 回答者3人

目標1.11 平均1.3点 回答者4人

評価の理由
「施策策定に生かすことなどを目的に国や県・指定都市レベルで実態調査が行われているが、形式的な調査項目も多く、本当のニーズが把握されているとは言い難い。実態調査項目を検討し、整理するためにはしっかりとゆとりのある期間を設けて行うべきである。」(評価点2)
「定期的な実態調査は実施されているが、政策立案には効果的に役立てられていない。」(評価点1)

2.立法

この課題には11人が、10の目標について評価した。

目標2.1 1点 回答者1人

評価の理由
「障害のある人々にかかわる法・制度見直しは始まったが、組織的・系統的に検討・実施するシステムはない。」(評価点1)

目標2.2 平均0.8点 回答者5人

評価の理由
「欠格条項改正法が成立したが、心身障害を理由とする文言の存続や完全撤廃の僅少など残された課題が多い。」(評価点1)

目標2.3 平均0.5点 回答者4人

評価の理由
「努力目標的規定を盛り込んだ法律はあるものの、差別禁止規定を盛り込んだ法律はないので、その規定が望まれる。」(評価点1) 「障害者のためのハートビル法、交通バリアフリー法、人権擁護制度、欠格条項の見直しなどが図られている。さらに障害者の住みよい街づくり、道路作り等の委員会も当事者団体が参加しているのは一歩前進である。ただし差別禁止や障害者の権利規定は作られていない。」(評価点1)
「「障害者基本法」は制定されたが、請求権・拒否権など国民の1人として平等に生活する権利が示されていない。」(評価点0)

目標2.4 平均1点 回答者6人

評価の理由
「障害者の年金制度や生活保護制度などがある。しかし、年金の金額は少なく、障害者の年金制度や生活に関しては、家族の扶養義務があるため、成人になっても親から独立することを困難にしている。」(評価点2)
「障害基礎年金の給付は収入のない障害者にとっては非常に有効なものであるが、一定額の保障であるため、残念ながら自立できるための年金額ではないので増額を図るべきである。施設入所者、生活保護受給者との差もあり、さらに無年金者に対する福祉制度による支給など見直しが必要である。」(評価点2)

目標2.5 0点 回答者1人

評価の理由
「使用者にとってデザイン・質共に快適で優れた外国製の補助具への配慮がなされていない。」(評価点0)

目標2.6 平均0.5点 回答者2人

評価の理由
「CS放送受信機が日常生活用具に指定されていない。また、補聴器を買い換えるときなど、消費税の減免制度がない。」(評価点1)

目標2.7 平均2点 回答者2人

評価の理由
「ハートビル法や交通バリアフリー法が制定され、バリアフリーの理念が社会に浸透してきた。またユニバーサルデザイン的なしくみも一部の地域では浸透してきているが、地域の格差は極めて大きい。」(評価点2)

目標2.9 平均1点 回答者2人

評価の理由:
「障害のある人の司法扶助はない。権利擁護機関は有料となる場合がある。」(評価点0)

目標2.10 平均1点  回答者3人

評価の理由
「法的な仕組みがつくられても、公平、平等に執行できない。例えば経済的な保障がない等の壁がある。」(評価点1)
「高齢者の虐待や障害者の施設内における人権侵害の多発性を踏まえて法的なチェックシステムが徐々に整備され、「市民オンブズマン」などの取り組みもできつつあるが、システム化は十分になされていない。」(評価点1)
「障害者の権利擁護については、「機会均等化」とともに、基本法に明確に示し、そのための執行体制等については、施行細則で明らかにする。」(評価点1)

目標2.11 平均1点 回答者2人

評価の理由
「一部改正されたが、依然として実効的なものとはなりえていない。」(評価点1)

3.情報

この課題には3人が、3つの目標について評価した。

目標3.1 平均1点 回答者2人

評価の理由
「例えば日本障害者リハビリテーション協会が運営するノーマネットとそのデータベース。厚生労働省のホームページ、またこころwebやパソコンボランティア支援センターなどそれぞれに情報の蓄積はあるが、それぞれの協調体制はない。」(評価点1)
「IT産業の推進により多くの行政機関をはじめ社会的にインターネットの活用が広まり、障害者および障害者団体もホームページを作り就労にかかわりを持つなど、情報を受けまた提供する機会も多くなったので、QOLの向上に寄与している。また自助具としてワープロからパソコンに品目が拡大されたので当事者は大変喜んでいる。ただし情報機器の開発が早すぎて障害者がついてゆけないこともある。手馴れた使いやすいものを長く使いたい。」(評価点1)

目標3.2 平均1.5点 回答者2人

評価の理由
「障害の定義についてはICFの日本語訳を厚生労働省がとりくんだ。全国レベルの障害者調査は数年後とに厚生労働省がとりくむが、手帳のない障害者の実態は十分把握されていない。」(評価点1)

目標3.3 2点 回答者1人

評価の理由
「翻訳はされた。各マスメディアを通じての普及はぼちぼちである。」(評価点2)

4.国民の啓発

この課題には8人が、7つの目標について評価した。

目標4.1 平均1点 回答者2人

評価の理由
「行政の努力のなさのみでなく民間としてもアピールの弱さがあると言わざるを得ない。」(評価点0)
「マスコミなどのメディアによる啓発はかなり前進しており、内容面でも同情をあおる発想よりも、ノーマライゼーションに立脚した積極的なものが目立つようになってきている。」(評価点2)

目標4.2 平均0.3点 回答者3人

評価の理由
「全ての青少年という概念の中に障害者は意識されていない。特別に「障害者のため」と分けている。」(評価点0)

目標4.3 平均1点 回答者2人

評価の理由
「教育の分野で障害を正しく教えるということでは、わが国の遅れは著しい。そこから今もって差別や偏見が生まれる。」(評価点1)

目標4.5 0点 回答者1人

評価の理由
「特に事件が起きたときの知的・精神障害者に関するメディアの取り上げ方は、逆行している面さえ窺える。」(評価点0)

目標4.6 2点 回答者1人

評価の理由
「民間の当事者団体による差別的な報道内容に対する抗議や問題提起は継続され、一定の成果が見られる。」(評価点2)

目標4.7 平均1.8点 回答者4人

評価の理由
「スポーツレベルではフェスピックなどや日本選手権レベルの大会が行われており、日本障害者スポーツ協会に加盟する団体数も増えている。また、絵画、陶芸、さおり織りなどで知的障害者などの芸術活動に注目が集まっている。」(評価点2)

目標4.8 平均0.5点 回答者2人

評価の理由
「すべての公務員・公共団体職員の人事交流にあっては、地方障害者社会参加推進センターもその対象として派遣・出向させ、一度は障害者福祉の現場理解のために体験学習させること。特に教育関係機関は必修プログラムとする。」(評価点0)

5.アクセシビリティーとコミュニケーション

この課題には7人が、11の目標について評価した。

目標5.1 平均1.5点 回答者6人

評価の理由
「ハートビル法などにより、多くの施設がバリアフリー化してきている。しかし、小中学校のバリアフリーかには大きな問題を残している。障害のある両親がPTA等の活動を行うことが妨げられている点は直ちに解消されなければならない。」(評価点2)
「少しずつ改善されているが、点から線へそして面へという発展が望まれる。進行の速度が遅すぎる。」(評価点2)
「1994年に公共建築物の改善に関するハートビル法が施行され現在改正も検討されている。また91年からは自治体レベルで福祉の街づくり条例も制定され始め、全国に波及した。」(評価点2)

目標5.2 平均1点 回答者3人

評価の理由
「法的根拠に基づき、今後の進展が期待される。」(評価点1)
「93年の国内長期行動計画意向、道路の段差解消など、バリアフリー化の取り組みも前進している。」(評価点2)
「都市部では考えられ始めたが、地方ではまだまだゼロに近いところがほとんどだ。」(評価点0)

目標5.3 平均2点 回答者3人

評価の理由
「交通バリアフリー法が成立するとともに、ノンステップバスの導入などが図られつつある。」(評価点2)
「1998年の鉄道駅舎などのうち、多数の乗客が利用するものおよび大規模改修のものの改善を促進した鉄道駅舎エレベーター整備指針の他、2000年5月にはいわゆる「交通バリアフリー法」が施行された。」(評価点2)

目標5.4 平均1点 回答者2人

評価の理由
「こうした根元的な取り組みに力を入れることこそ切望したい。」(評価点1)

目標5.5 1点 回答者1人

評価の理由
「住環境コーディネーターなど新しい資格が生まれ、一定の専門知識を持つ人、関心を持つ人が増えている。」(評価点1)

目標5.6 3点 回答者1人

評価の理由
「DPI日本会議が中心となり、草の根障害者団体間で「交通アクセス行動実行委員会」が1988年に結成され、毎年JR各社や関係省庁に働きかけている。」(評価点3)

目標5.7 平均1点 回答者2人

評価の理由
「福祉機器については老人人口が増えてから各段に改善されてきたが職場への導入などまだ理解不足」(評価点1)

目標5.8 平均2点 回答者2人

評価の理由
「手話通訳制度に大きな進展を見た。標準手話確定事業も行われている、しかし、手話通訳者の処遇の規定が不十分であるために、手話通訳者の資源が増えない。」(評価点2)
「この10年間で手話の標準化や通訳者の資格制度はかなり進んだが、資格制度のあり方については「画一化」との批判も見られる。」(評価点2)

目標5.9 平均1.3点 回答者3人

評価の理由
「警察、病院などでの手話通訳サービスは大きな進展があった。しかし、テレビ番組では私たちの満足する手話通訳サービスが提供されているとは言いがたい。」(評価点2)
「TV番組等民間レベルではある程度進んでいるが、公的機関の手話通訳とりわけ参政権など政治参加の部門は著しく遅れている。」(評価点1)

目標5.10 2点 回答者1人

評価の理由
「点字サービスはまだ不十分だと考えられるが、コンピュータなどの様々な機器を利用するコミュニケーション支援、そして電気製品の説明が大きな文字で示され、ユニバーサルデザインが浸透しつつある。また、点字による即時情報ネットワーク事業や音声による新聞情報提供システム事業などが行われ始めている。」(評価点2)

目標5.11 2点 回答者1人

評価の理由
「字幕付与の努力目標値が放送事業各社から出されたことは評価できる。そしてニュースなど生番組への字幕付与が開始されているのは歓迎すべきことであるが、目標値にはるか届いていない現在である。」(評価点2)

6.教育

この課題には12人が、15の目標について評価した。

目標6.1 平均2点 回答者7人

評価の理由
「教育の全入が制度化されて以来、制度的には目標を達成している。」(評価点3)
「義務教育段階での就学率はほぼ達成し、後期中等教育への進学率も一定進んできているが、「知的障害者教育」においてまだ整備しきれていない(地域格差が顕著)。」(評価点2)
「初等、中等教育においては1972年に養護学校が義務化され、就学猶予状態は解消したが、高等教育においては、障害をもつ若者の進学率は2%台にとどまっている。」(評価点2)

目標6.2 平均1.1点 回答者8人

評価の理由
「経費と教育技術面では進展が見られたが、統合的発想は定着していない。」(評価点2)
「技術支援においては、先達たちの理論と実践にささえられ、成果を上げているが(特に「重度の障害をもつ子どもたちへの教育」は優れている)。統合教育においても「場」は一定増えてきているが、必要な支援を十分供給しているとは言い難い。」(評価点2)
「盲児統合教育では、行政による墨字教科書の点訳・配布が少ない。特殊教育諸学校、特殊学級の教師への特殊教育担当者手当の支給が、統合教育担当教師にはない。特殊教育諸学校や特殊学級に就学する児童への就学奨励費の支給が地域の通常学級に就学する児童にはない。」(評価点1)

目標6.3 平均1.4点 回答者5人

評価の理由
「専門家の育成、福祉機器開発に、必要かつ十分な体制、予算がとられていない。各教育の場での、機器の供給、設備の整備、補助教員の配置等も不十分である。」(評価点1)
「設備や機器面についての供給、幼児教育(保育)及び特殊教育に限っての要員の増配置は道が開かれている。しかし、普通教育の統合を進める場では、配慮が十分でない。」(評価点3)
「ある町村では補助教員をつけているところもあると聞くが、多くは全く相手にもされないで養護学校行きをすすめられてしまう。」(評価点0)

目標6.4 平均1.3点 回答者6人

評価の理由
「地域格差はある。「障害の早期発見」は、医師・保健婦・発達相談等の専門家チームなどによって進んでいるが、それが早期教育へとは結びついていない。幼稚園・保育園の数は、健常の子どもたちへのものも含めて不十分で、仮に入所できても、補助職員不足など多くの課題を抱えている。」(評価点1)

目標6.5 平均2.2点 回答者5人

評価の理由
「義務教育段階までの「就学継続率」だけを見れば「3」に達しているかもしれないが、高等教育まで視野に入れるとまだまだ改善する余地が十分ある。」(評価点2)
「後期中等教育への就学率は進んでいるが、知的障害児のための「専攻科」の設置や卒後の青年期教育の場づくり等課題は山積している。また、今ある障害児学校の統廃合もすすみ、教育の場を奪おうとする動きもある。」(評価点1)

目標6.6 平均1.3点 回答者6人

評価の理由
「教員採用枠の減で障害児学校教員養成課程の縮小されている。採用後の初任者研修は強化されたが、自主的な研究参加などは抑制される傾向にある。」(評価点1)
「要員の訓練や研修体制は制度的には整備されているが、内容的に統合的発想が導入されていない。」(評価点2)

目標6.7 平均0.8点 回答者6人

評価の理由
「職業教育は試みられているが、実効性のある教育が成立していない。」(評価点2)
「教科教育よりも生活訓練や職場実習が重視されている。障害者の就労状況の厳しさも反映して作業学習に著しくかたよっている。」(評価点1)
「障害のある子はお荷物扱いされているのが現状。」(評価点0)

目標6.8 平均1.1点 回答者7人

評価の理由
「必要な予算的措置・人員配置がなされていない。パソコンの導入は広がったが、教育方法及び教材の準備、保守管理については十分な措置がなされていない。普通校でのLD・ADHD児の受け入れを明文化しているが、多くのさまざまな障害をもつ子どもたちが放置されている。」(評価点1)
「教育的アプローチのさまざまな実践の積み重ねが政府としての教育理念・政策に反映されていない。」(評価点1)
「国の政策が統合教育を推進する方向にないため、統合教育の教育方法や教材の開発は、障害児を担任する教師に任されているのが現状。」(評価点1)

目標6.9 平均1.7点 回答者3人

評価の理由
「個別指導計画」を立てることが要請されるようになったが、教育制度に生徒をはめ込むのではなく、生徒に応じたカリキュラムを用意し、場と教材を準備するという意味においては、十分ではない。」(評価点1)
「学科に乗れない子ども達が、生活教育を受けるという国民的通念があり、脱却する努力すらなされていない。」(評価点2)

目標6.10 平均0.9点 回答者7人

評価の理由
「補助教員は国として制度化されていない。地方自治体によって配慮される。いまだ親が一緒に登校し付き添うことが求められている。福祉機器がわかり障害児教育もわかるというマンパワー育成が必要である。」(評価点0)
「補助教員の質の向上が求められている。いい人材が集まるためには、処遇の大幅な改善も必要だと考える。」(評価点1)
「介護の必要のない障害児だけを普通教育の中に入れ、その他の障害児に関しては、別学体制を原則としている。いわば、条件付統合教育であり、全ての障害児を含めた統合教育を促進する意向は全く見られず、分離教育体制の強化も予測できる状態を作り出している。」(評価点0)

目標6.11 平均0.9点 回答者8人

評価の理由
「日本の現在の教育環境では、障害児を統合教育によって教育する制度・環境が整っておらず、教育権のダンピングにつながるおそれがある。現在、家族の意見を尊重する方向で、教育行政の施策の転換が図られようとしているが、子どもの不利益にならないためのフォローアップ体制など、十分な検討が必要である。」(評価点1)
「交流教育という視点は見えるものの、総合教育には程遠いと考えられる。」(評価点1)

目標6.12 平均0.7点 回答者6人

評価の理由
「国の政策は、統合の方向ではなく、障害の種類・程度により地域の通常学級、特殊学級、特殊教育諸学校へと振り分ける分離主義の政策をとっている。その方向を推進する政令を2002年4月に公布した。」(評価点0)

目標6.13 平均1.5点 回答者4人

評価の理由
「日本の障害児教育は、どんなに重い障害をもっていても、その教育権が制度として確立されており、その部分では評価できる。しかし、それは障害児学校、障害児学級においてのみであり、それ以外の教育機関で学んでいる子どもたちに対する教育には、責任を十分におっているとは言いがたい。」(評価点1)
「国及び地方機関が障害教育に責務があることは定着している。」(評価点3)

目標6.14 平均1.2点 回答者5人

評価の理由
「幼児教育は厚生労働省、初等・中等教育は文部科学省、卒業後は厚生労働省と、管轄省庁が断続的で、縦割りであるため、その移行が的確に行われているとは言いがたい。また、法定雇用率は達成できておらず、不況の影響による解雇など深刻である。」(評価点0)

目標6.15 平均1.5点 回答者2人

評価の理由
「ITの普及のより障害者が情報アクセス権をさまざまな場面で主張し始めている。IT普及と著作権法の改正も議論が始まりつつある。しかし、IT活用のためのサポートシステムはボランティア任せで、行政は十分な体制をとっていない。さらに、「市場原理」優先で第3種、第4種郵便制度の改悪の動向がある。」(評価点1)

7.訓練と雇用

この課題には9人が、14の目標について評価した。

目標7.1 平均1点 回答者3人

評価の理由
「障害のある人が職業能力開発校、職業訓練校を受講できるようになってきているが、環境整備や適格基準の改訂までには至っていない。」(評価点1)

目標7.2 平均1点 回答者3人

評価の理由
「不況の長期化によって、障害者の中途解雇ならびに再就職問題が新たにクローズアップされている。」(評価点1)
「職業前訓練のプログラムを持っている専門機関の数が少なく、利用するのは困難である。」(評価点1)

目標7.3 平均1.1点 回答者7人

評価の理由
「新しい政策の好例としてのジョブコーチ制度がスタートするが、民間活力の成果であり行政の主体的な取り組みが望まれる。」(評価点1)
「法定雇用率が定められているが達成されていない。達成への具体的プログラムと実効性が乏しい。」(評価点1)
「法定雇用率の制度があり、身体障害者、知的障害者はその適応を受けるが、精神障害者には適応されない。」(評価点2)
「1960年代に制定された「身体障害者雇用促進法」は徐々に改正されて前進してきたが、法律で定められた雇用率は民間の大企業のうち50%以上が未だに未達成である。他にも雇用主・被雇用者双方に対する制度が設けられているが企業側の社会貢献意識の低さもあり、実態はそれ程前進していない。」(評価点1)

目標7.4 平均0.8点 回答者4人

評価の理由
「これは最も不足しているところ。技術トレーニングの中身が陳腐化している現象は障害者職業訓練校では一般的な問題である。」(評価点1)
「共同機関といえるものの存在が確立されていない。」(評価点0)

目標7.5 平均1点 回答者3人

評価の理由
「規制緩和により若干の成果はあったが総体的に積極的な動きは見受けられない。」(評価点1)
「関係機関の共同行動の目標とはなりえていない。また、年次目標の設定がない。」(評価点0)

目標7.6 平均1点 回答者5人

評価の理由
「実態の好転を感じる公的制度に乏しく、一方で民間レベルの努力のひろがりがある。」(評価点1)「援助付き雇用の仕組みが導入されつつあるが、まだ浸透していない。また、インターネットを利用したSOHOにおいて仕事のチャンスがつくられたが、実質的にはいまだ就業にまでいたっていないケースが多い。」(評価点1)

目標7.7 平均0.7点 回答者3人

評価の理由
「特に収入創出という面では不十分である。」(評価点1)
「収入格差が著しく広がってきている。」(評価点0)

目標7.8 平均0.8点 回答者4人

評価の理由
「特に、事業機会の発見やマーケティングの分野では、著しく立ち後れている。」(評価点1)

目標7.9 平均1.3点 回答者3人

評価の理由
「実態調査がなされているが調査方法に異論もあり、本人にメリットが還元されるものとすることが課題である。」(評価点1)
「公的な職業紹介機関が求職者を把握してはいるが、積極的に調査し把握する営みにはなっていない。」(評価点1)

目標7.10 平均1.3点 回答者3人

評価の理由
「事業主への助成金、奨励金として助成制度がある。」(評価点2)
「チェック体制が不明瞭な上、資金利用者の中で障害者が占める比率も曖昧。」(評価点1)

目標7.11 平均0.6点 回答者5人

評価の理由
「不況の長期化によって、経営不振を理由に解雇される障害者が後を立たない。」(評価点2)
「最賃制の保障もなく、不当解雇が相次いでいる実態。早急に改善すべき点が山積しているのが現状。」(評価点0)
「雇用促進法においては、障害を持つ労働者の権利を擁護する規定は非常にあいまいである。」(評価点1)

目標7.12 平均1点 回答者3人

評価の理由
「こうした取り組みはほとんど行われていない。」(評価点0)
「受託可能な機関が僅少なためいまだ行き届いていない。」(評価点1)

目標7.13 平均1点 回答者4人

評価の理由
「法律はあるが、モニターや評価の仕組みはない。」(評価点1)
「積極的参加の意志表示の期間が少ない。」(評価点1)

目標7.14 平均0.8点 回答者4人

評価の理由
「障害者総合職業センターが情報センターになっているだけ。」(評価点0)
「国際福祉機器展などの開催はあるが、情報交換の機能を持つ国際機関の設立はまだ見ていない。」(評価点1)

8.障害原因の予防

この課題には3人が、3つの目標について評価した。

目標8.2 3点 回答者1人

評価の理由
「公衆衛生や医療技術の進歩により、かつて社会におきな恐怖をもたらした障害を引き起こす疾患の予防が図られるようになった。」(評価点3)

目標8.7 3点 回答者1人

評価の理由
「フェルニッケトン尿症に関する新生児診断や種々の出生前診断の技術が開発された。しかし、診断がついても治療できない患者が多いので、診断技術だけを優先させることには大きな問題があると考えられる。」(評価点3)

目標8.9 平均1点  回答者2人

評価の理由
「保健所の統廃合、保健婦の削減、医療改革などこの目標に逆行している事態を止めるべきである。」(評価点0)
「子供の病気の早期発見・早期治療が必要であり、ナショナルセンターとしての育成医療センターの設立が図られた。成人病においてはナショナルセンターとしてがんセンター、精神・神経センター、循環器センター設置と研究費投入については高く評価する。患者のQOL向上を目指し、早期発見・早期治療を図ってもらいたい。」(評価点2)

9.リハビリテーション(地域に根ざしたリハビリテーション(CBR);保健と社会開発)

この課題には5人が、9つの目標について評価した。

目標9.1 平均0.8点 回答者4人

評価の理由
「障害者や家族の参加は多少あっても、ますます形式的なものになってきている傾向がある。特に政策決定の場への参加が必要。」(評価点0)
「建前は理解され形式的参加はあるが、実質的な参加は少ない。」(評価点2)

目標9.2 平均2点 回答者3人

評価の理由
「政策の方向性は出されている。これから実質を作る段階である。」(評価点3)
「障害者プランに数値目標が入ったが、低調な目標にとどまっている。」(評価点1)
「日本ではCBRの理念や実践は未だ浸透しておらず、現状では医師や一部の専門家を中心とする医療モデルが主流となっている。」(評価点2)

目標9.3 平均1.5点 回答者2人

評価の理由
「ややもすると忘れられる存在である。特に女性障害者問題は。」(評価点2)

目標9.4 平均0.5点 回答者2人

評価の理由
「NGO活動を調整する発想がない。」(評価点1)
評価の理由
「ようやく緒についたところ・・・専門職の育成は急務でここにもっと国は財政的援助をすべきである。」(評価点1)

目標9.6 平均1.7点 回答者3人

評価の理由
「初期医療体制は進歩している。その過程にリハビリの発想は薄い。」(評価点3)
「第一線の保健医療の事業では、むしろ後退している。」(評価点0)

目標9.7 平均2点 回答者2人

評価の理由
「交流機会や支援について、継続性に乏しく端緒的である。」(評価点1)
「都道府県および国では、リハビリテーションセンターを設置し、さらに障害者のための交流センターなど、地域に密着した、入所・通所授産施設、デイサービス、デイケア、小規模作業所、地域支援センター、自立センター、レスパイトサービス、グループホーム、生活ホーム等、当事者・障害者団体と地域行政、支援団体で作り上げ、障害者のQOLの向上の一翼を担っている。」(評価点2)

目標9.8 平均1.5点 回答者2人

評価の理由
「新しい試みや研究を否定する雰囲気は少なくなったが、世界に通用する発想は生まれていない。」(評価点2)

目標9.9 平均1.5点 回答者2人

評価の理由
「生活保護法があるが世帯保護となっているので受給が困難で、利用しづらい。また経済基盤はむしろ厳しくなっている。」(評価点1)
「障害者を特粋に考えた貧困策はない。障害者は慢性的貧困状態であり、特別児童扶養手当・基礎年金が制度化されているのみ。」(評価点2)

10.福祉機器

この課題には3人が、5つの目標について評価した。

目標10.1 1点 回答者1人

目標10.4 平均1点 回答者2人

評価の理由
「福祉機器の開発などは民間企業が、総務省及び経済産業省、さらに厚生労働省の一部の助成金を受けながら行っているのが現状である。この助成金制度には矛盾が多く、単年度予算が強いられているため、持続的な長期的研究に不向きであると共に、地方や小さな団体では活用が困難である。」(評価点1)

目標10.5 平均0点 回答者2人

評価の理由
「地方に開発主体がなく、予算措置もない。リハビリテーションセンターの職員の研修期間や体制がまったく劣悪。」(評価点0)

目標10.6 1点 回答者1人

評価の理由
「総務省と厚生労働省合同の研究会ではNGO支援の方向を打ち出しているものの、予算措置がなされず、施策に結実していない。」(評価点1)

目標10.7 0点 回答者1人

評価の理由
「専門家の要請、育成システムが整備されていない。地方のリハビリテーションセンターでの専門家の位置づけ、予算措置が軽視されている。大切なのはより小さなエリア、住んでいる街レベルでの支援体制である。」(評価点0)

11.自助団体

この課題には7人が、6つの目標について評価した。

目標11.1 平均1.3点 回答者4人

評価の理由
「障害種別の様々な自助団体が全国そして地域において展開している。ただし、それらの地域活動を支援する組織・体制が不十分である。」(評価点2)
「障害や疾病別の団体はあるが、統一されたものはない。政府及び公的機関からの支援はほとんどない。」(評価点1)
「全国組織として障害種別を越えた障害者団体として日本障害者協議会(70団体加盟)が20年余り運動を重ね、政府の政策推進に寄与しているが、政府からの事業委託は一切なく、法人化へも難色を示しているなど、自立的に全国的視野で草の根運動を展開しているこれらの団体を政府は育成してもよいのではないかと思う。」(評価点0)

目標11.2 平均1.3点 回答者3人

評価の理由
「日本身体障害者連合会などの支部が各市町村にあるが、農村部における自助団体の活動は、支援体制がないことなどにより十分には行われていない。」(評価点1)

目標11.3 平均1.3点 回答者4人

評価の理由
「首都圏などの幾つかの地域では、関係団体との協議が行われているとは思うが、地域の団体では関わりを持つ機会はほとんどない。ただし、インターネットなどにより、以前に比べると情報を入手しやすくなった。」(評価点2)
「三者の協議の場は整っているが、行政の発言で決まりやすい。行政の案を承認する場となっている。」(評価点2)

目標11.4 平均0.6点 回答者5人

評価の理由
「資金は特定に団体に提供されているだけで、特に、後発団体には門戸は狭いものとなっている。」(評価点1)
「障害者自助団体の活動する資金、情報、支援体制は地域において特に少なく、形式的な活動しか行うことができない。地域の生活に密着した自助団体支援のための組織・体制が望まれる。」(評価点1)

目標11.5 平均0.8点 回答者4人

評価の理由
「自立生活プログラムなどにより若者が活発に活動しつつある団体も一部には見受けられるが、ほとんどの団体では若者の活動が少ない。」(評価点1)

目標11.6 平均1.2点 回答者5人

評価の理由
「理念を否定する意見は聞かれなくなったが、実質的には自立の実践が薄い。自立の実践は、障害の重い人、知的障害者に浸透していない。」(評価点2)
「自立生活の理念も浸透をみせ、支援費制度(2003年度から)など利用者主体の制度に移り変わろうとしている。」(評価点2)
「これはどの目標を達成するためにも基本となるところ。自立生活のための何よりの保障-所得保障を確立すべきである。」(評価点0)
「自立、自己決定、自己選択などの概念は誤ってかつ一面的に強調されるが、実際の具体策がともなわない。」(評価点1)

12.地域協力

この課題の目標について評価した人はいなかった。

今後の重要な3つの課題

回答者には、すべての分野を通じて「今後の重要な3つの課題」を指摘してもらった。回答のすべてを掲げた。

<教育>

●分離教育から統合教育への変換
  • 幼少の頃から障害児・者との付き合いを日常化・普遍化していくためにも重要である。
  • 障害者の教育と雇用の統合化を進める施策の早期確立
  • 1993年の「サマランカ宣言」でも明らかなように世界の障害児の流れは明確にインテグレーションからインクルージョンへを向かっている。しかし、日本の文部科学省は依然として分離教育の考え方を変えていない。地域の中で共に育ちあうことを願う障害者やその親たちの思いに応えて、教育制度の改革に着手すべきである。
  • 幼稚園、保育園段階の統合教育。
    差別意識の解消と根絶は幼児期からとりつむべき課題である。この時期に仲間意識が定着すると、10年後の日本は確実にいい方向に向かう。
●高等教育の充実
  • 初等・中等教育で行われる統合教育と同様に、障害のある子ども・若者の高等教育を権利として確立する。国および地方行政は、障害のある子ども・若者の高等教育に必要な支援を提供する。その結果として、次世代の障害当事者リーダーを育成する。
  • すべての改革は意識改革であり、その根幹をなくすものが人材教育だと思う。障害者が社会で責任ある立場で説得力ある発言し、社会改革の原動力になるため高等教育はますます重要な役悪を果たすであろう。
●障害のある人の家族形成に関する支援と、当事者主体の教育プログラムの実施
  • すべての障害のある人が自らの選択により家族を形成し、人間らしい生活を営む権利を保障しそれを地域社会、専門家、行政担当者を含めた人々が積極的に支援することを奨励する。

    また政策として一般的な人的サービスや経済的保証に加えて、障害のある人にとくに必要と思われる情報の提供、結婚や離婚・ドメスティックパイオレンス・子育てなどのトラブルに関する当事者主体の相談や援助、若者に対する性教育や母親に対する出産前の教育を含めた多様な教育プログラムの実施が必要である。

●教育
  • 教育を充分なものにすることにより、自主、自律や能力も高まり、これからの障害者問題を自らのものとし、考える障害者になるためにも教育が絶対に必要である。
●教育の谷間の解消
  • 例えば放課後、例えば青年期の教育など「義務教育」外の学齢期の保障

<人権保障と差別禁止>

●人権の保障
  • 国際障害者年以来、障害のある人々のための法・制度は創設・改善されたが、日本国憲法にある基本的人権の保障が明記されておらず、機会均等化も示されていない。障害のある人々の基本的人権を保障するために、総合的で抜本的な法・制度を検討する機関を設置すべきである。
  • 障害者の人権擁護と機会均等化をすすめ、差別を禁止する法制度の確立。
●障害者差別禁止法の制定
  • 現在すでに世界の40数カ国で、障害者差別禁止法もしくは障害者権利法が制定されている。世界第2位の経済大国を誇る日本で未だにそのような法制度が確立していないことは、政府の人権意識の低さと当事者の弱さを物語っているといわざるをえない。早急な法制定が望まれる。
  • 欠格条項改正を実効的なものにし、差別禁止の法的な検討を進めるべきである。
  • 全面的な障害者差別撤廃の法的整備

<地域生活支援>

●総合福祉法への取り組み
  • 障害者施策の実施主体が市町村に移行している中で、身体障害者、知的障害者の福祉法および精神保健と精神障害者福祉に関する法律など、分立・縦割り行政が行われ、難病・自閉症・てんかんなど基本法に付随して挙げられていても多くの問題をはらんでおり、また障害者手帳も手帳の色も赤、緑、青など識別がされており差別につながるといわざるを得ない。
  • 谷間に陥っている障害者分野、施策に遅れのある障害者分野に光を当てること。先発分野の理解と協力が不可欠である。
●全生涯にわたる地域支援システム
  • 生まれてから老いていくまでの障害者への地域での全面的な支援システムが必要。
●相談員制度の確立
  • 民間における障害者相談員制度の確立(現行は身体・知的分野にとどまる)

<障害者運動と決定への参加>

●決定への障害者参加と障害者団体の強化
  • 政策決定における当事者版システムの構築。
    障害者施策を決める国内の委員会や各自治体の協議会などにおいて、当事者参画は十分に補償されていない。国連の障害者に関する行動計画でも指摘されているように、これらの委員会の過半数は、障害当事者で占められるべきであり、政策決定過程における意見は十分に尊重されるべきである。
  • すべての計画、制度化の審議や決定過程への当事者参加と、自助団体の活性化の促進。
  • 政策決定の場へ障害者(団体)の参加をー継続的、持続的、平等に。
  • 障害者団体をめぐる環境の改革を。
    当事者運動がスムーズにできるように、障害者をめぐる社会の仕組みを大きく変えなければならない。補助金の公平な活用、障害者種別・イデオロギーの克服・先発後発団体への公平な対応等が当面の課題であろう。
●中央障害者団体の統合合体と全日本障害者センターの設立を目指す
  • 障害当事者団体として、日本身体障害者団体連合会、全日本ろうあ連盟、日本盲人会連合会、日本障害者協議会、DPI日本会議等が個々に誕生し、それぞれの運動の歴史を刻み今日に至っているが、各団体の統合を図り、政府への働きかけ、社会の啓発啓蒙等、障害者の住みよい社会作りを進めるべきであり、そのためのセンターの設立が必要である。

<アクセシビリティ-と情報保障>

●移動の自由やコミュニケーションの手段の改善。
  • これは障害者の自由を獲得する上で必須の条件である。
●コミュニケーションのバリアフリー
  • 福祉・教育・労働行政における手話の法的かつ一体的な認知による施策の推進を図るべきである。
  • 緊急時の情報保障体制
    放送事業における字幕・手話導入の法的規制、テレビ機器の文字放送受信機内臓義務化、緊急警報の視覚化推進を図るべきである。
  • 情報アクセス権の保障
      ITの利活用による支援とともに、各種メディアの情報バリアフリー化など総合的な保障

<市民啓発>

  • 障害者の生存を当たり前のものとする取り組み。
    地域に障害児・者がいるのを知らない人がほとんどという状況であり、地域で障害児・者が当たり前に生きていない状況である。それをかえていかなければならない。
  • 「障害者に主体性がある」という認識を社会に知らしめること。
    障害者のために健常者が何かをするとき、障害者の意向を無視し、推測で行ってしまうことが多い状況がある。障害者を常に受動的存在としか認識していない現状がある。
  • ノーマライゼーション理念の社会啓発の促進。
  • 社会の通念を変える。
    さまざまな分野において障害者自身によるボランティア活動が行われており、そのための支援体制も充実しているかどうかは、障害者自身が豊かで充実した人生を送るためにも必要なことであり、障害があればなんでも他からの支援を受けなければならないという社会の通念を変える必要がある。

<障害者計画>

●市町村障害者基本計画策定の義務化、障害者基本法の見直し
  • 市町村での福祉施策施行が進められているので、市町村の基盤が整備されていなければ障害者が幸せに地域で生きることができない。当事者団体が参画した上での計画策定をすることが必要である。
  • 障害者計画を実効あるものに-市町村段階での義務化
●最小単位の行政レベルでの地域自立生活のための具体的な施策策定と実施

<精神障害者施策の抜本的改善>

  • 精神障害のある人々は、国の貧しい施策のうえに雇用など国民共通に保障されるべき制度から除外され、交通運賃割引制度など障害者のための制度からも除外されている。そして、社会の偏見と差別の中で人権は侵害され、過酷な生活を強いられている。差別と偏見をなくし、国民として平等に生きていけるよう緊急に根本的な施策の改善をすべきである。
  • 精神障害者(それに準ずるてんかん)の施策の早急な拡充を

<自立のための所得保障と扶養義務制度の撤廃>

  • 障害者の所得、経済基盤の安定・確立に向けての推進
  • 民法466条以下にある親・家族の扶養義務規定は、障害のある人々の経済的自立を著しく損っており、所得保障充実の隠れ蓑となっている。直ちに改善すべきである。
  • 20歳を境に、家族の関わりの発想を大きく回転させる。
    20歳を越えれば、本人中心主義で施策は組まれるべきである。それには24時間ケアシステムを地域に組み立てることだろう。家族から障害者を自立させるには民法の扶養義務規定を改正する必要があるだろう。

<雇用と訓練>

●障害定義の確立と種別や程度を越えてすべての障害者の実態に応じた雇用・訓練機会の創出・拡大
●旧式のトレーニングを廃止し、時代に見合った新しいものを創出する
  • 日本の障害者職業訓練校の内容はますます時代の変化を反映できなくなっている。雇用を確保し、職域を拡大させるためには、常に新しい訓練内容を作り出し、それを奨励する制度や法律面の整備が必要不可欠である。

<健康>

●障害者の二次障害問題、習慣病対策などの健康対策
  • 脳卒中、脳性麻痺、ポリオなどの二次障害に関する問題を始め、生活習慣病対策などを含め障害者の健康問題に関する支援体制が充実しているかどうかはきわめて重要である。

<立法>

  • すべてのことは立法により決定的に改善される。草の根的な運動が必要であるが、アクセス法を見ても立法により急速に改善された感が強い。

<国際化>

●障害のある人のための国際証の発行
  • すべての障害のある人がその障害の種類・程度に関わりなく、観光・留学・商用その他の一般的に許可される目的ですべての加盟国に支障なく出入国できることを保証し、それを明記した国際証を発行する。
    その際には障害によるニーズを満たすための器具や薬品の持ち込み・盲導犬などの動物の同伴が特別な許可を得ることなく可能であることが認められる必要がある。